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Paradism このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-08-02

『Re:ゼロから始める異世界生活』 18話の演出とカメラワークについて

本編のほとんどを二人の会話に費やした今回の18話。スバルの激情と諦観を迎えうつレムの愛のある言葉には大きく心を揺さぶられたわけですが、そうした心の情動は何も言葉からのみ得られたものではなく、この挿話においてはそのための演出やカメラワークにも十分に語り得るものが含まれていたように感じられました。

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(カットの順序は上段左から1〜4、下段左から5〜8  ※以下同様の順序)

まず、この序盤のカメラワーク。一番初めのカットでは上手側を向いていたレムが最終カットでは下手側に向き直っているのが分かります。二つのカットの間には正面からそれぞれの表情を捉えたものなど幾つかのカットが挟まれていますが、つまりここでカメラはイマジナリーラインを越えながら相対するキャラ同士の上(またはその周囲)を大きく跨いでいるということになります。それこそイマジナリーラインを越える、ということに関しては受けとめ方によっても諸説あるものだと思いますが、ここではやはりレムの心情にカメラがリンクしああした行動を起こさせたのだと個人的には解釈せざるを得ませんでした。

それこそレムにしてみれば好きな人に一緒に居て欲しいと言われ嬉しくなかったはずがなく、彼との生活を想像してしまうまでにそれは夢にまで見た未来予想図であったはずなのだと思います。けれど今のスバルは彼女を救ったあの日のスバルとは程遠かったわけで、だからこそ愛して止まないその彼が音を立てて崩れ落ちていくのをレムは見過ごすことが出来なかったのでしょうし、“好きな人のそんな姿を許す自分自身” を彼女は断じて許容することが出来なかったのでしょう。

そしてカメラが彼女たち二人のラインを越えたのもきっとそれが原因なのだと思うのです。スバルの誘いに乗ってはいけない。ここで私が彼を甘やかしてはいけないし、私が彼の弱さにつけ込んでもいけないというそれは断固たる決意にも似たレムの自制で、その想いが伝播したからこそカメラはその想いに応えるようにその軌道を描いたのだと思います。

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この辺りのシーンも同様です。「ここから始めましょう」というレムの語りに応えるよう、そしてその言葉を受けたスバルの心に重なるようにカメラはその位置を反転させます。むしろこのシーンにおいてはレムの側面から背後に向けフレームが動いているので彼女の後ろからカメラが回り込んだと言ってもいいのではないかと思います。

他にも幾つかカメラがイマジナリーラインを越えるシーンはありましたがやはりそのどれもが感情の転換気に据えられており、こうした演出の意図はやはり確信的に描かれているように思えずにはいられませんでした。それこそこの挿話は二人の感情の変遷と想いの吐露に主観を置いた重要な局面であったわけですから、むしろメタ的な視点で見ても互いの想いがそうした演出面にまで影響を及ぼすのは必然だったのかもしれません。

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また雲間から差す光に飛び立つ鳥の群れと、レムがスバルに与えた無償の愛、彼に向けた信頼、そして厳しさにまるで世界が呼応するかのように祝福をあげる様は彼女という存在を多分に象徴していたようにも感じられました。そしてそれはもちろんレムに対してのものだけではなく、スバルに対し贈られたこれまでの物語に対する労(ねぎら)いとしても描かれたものであったのだと思います。

ただそうは言っても私自身、誰よりも親身になってスバルのことを想ってくれたレムや身の回りの全てに対し幾つもの暴言を吐いてきた彼を良く思っているわけでは決してありません。彼に対し 「ふざけるな」 と思ったことは何度もありましたし、嫌悪感を通り越し呆れすら感じたことだって幾度となくありました。

けれど、それはレムがスバルに向けた愛情を否定する理由には到底なり得ないのです。彼女の言葉通り、彼女が彼を想う気持ちの何を私が分かるのかと問われれば私はきっと何も分かってはいないのでしょうし、たとえ彼がどんな暴言を吐いたとしてもスバルがレムを救ったという事実だけは決して変わらない不変の軌跡。それを否定することなんて誰に出来ることでもないし、していいことでもないはずです。

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故にだからこそこの世界は彼女の愛を全力で肯定してくれるのだと思います。カメラの軌道によって。あらゆるモチーフによって。その愛情が不変であり、誰からも否定されるものでないことをこの挿話は雄弁に語り掛けてくれる。そして何を隠そうこの挿話はそうした彼女の想いが確信的なものであることを伝えるためのターニングポイントでもあるんですよね。スバルのためだけではなく、レムが 「愛している」 と彼に伝えるための場所をもこの挿話は描いてくれている。

それこそメイド足るものいついかなる時でも優雅に、華怜に、そして慎ましく在れと云わんばかりに彼女が魅せてくれたお辞儀はスバルとの間に一線を引いている様にも感じられましたが、でも今だけは泣いたっていいと思うんです。貴女の強さと想いはきっと多くの人に届いてるはずだから。だからこそ今だけは、今この瞬間だけは存分に声を上げてその涙が枯れるまで泣けばいいって。一人の従者としてではなく、一人の少女として。貴女の想いと敗れた恋に貴賤はないのだから。

そして、まただからこそ私はスバルに対し心からお願いしたいとも思うのです。もう二度とレムを泣かさないでくれと。もう二度と彼女が悲しむような姿は見せないでくれと。私が願うのはただ一つそれだけで、そのためならどんな負の感情も切り捨て私は彼を応援します。この挿話がそうしてくれたように。私の愛した人が懸命に向き合いその背を支えたように。それがレムの幸せに繋がっていくのなら私は自分の下らない価値観や感情なんて殺してみせます。

もちろん、これからもきっと多くの試練が彼らを待ち受けていることでしょうけど、その度にこの日のことを想い出しながら彼には彼らしく立ち向かって欲しいですし、そうしてくれるのなら私自身も少しは報われた気持ちになれるんじゃないかって、そう思います。今後、彼らの物語に多くの幸せが訪れることを祈りつつ、これからの物語もしっかりと見守っていきたいと思います。自分の信じた道を真っ直ぐ見つめて。任せたぞ、スバル。

富士重工富士重工 2016/08/02 07:39 イマジナリーラインって言いたいだけかよ!

shirooo105shirooo105 2016/08/02 07:45 >富士重工さん
本記事を読まれましてもイマジナリーラインと言いたいだけ、と思われたのでしたら
それはこの文章を書いた私の不徳の致すところです。申し訳ありません。
必要最低限しかその言葉も遣わないようにしたつもりですし、
そのような意図は決してありませんのでご理解頂きますようお願い致します。

匿名希望 匿名希望  2016/08/02 14:38 びっくりしました。こんな良識あるコメントを目にすることができるとは。汚い唾をはきあって神回がどうの売り上げがどうのと不毛なタタキ合いをしている他のサイトにはウンザリしていたんです。個人的にはレムの細やかな指の動きとか、会話劇の割によく動くなあぐらいにしか思っていませんでしたが、なるほど秀逸なカメラワークが感動をもりあげていたんですね。。また、レムの心情理解は原作者の意図をくみとって余りあるほど正鵠を射たご意見だと思います。これからも大人のコメントを期待しています。

まっちゃんまっちゃん 2016/08/02 15:23 ブログを読ませていただいて、「なるほど、その視点、忘れてた」とハッとしました。
EP18は何度も見ましたが、セリフに集中しすぎたところがあったのですが、もう一度、その視点で見直そうと思いました。
おかげさまでさらに楽しめます。
ありがとうございました。

shirooo105shirooo105 2016/08/02 21:00 >匿名希望さん
嬉しいお言葉ありがとうございます。仰る通りレムの仕草や表情もよく描かれていてとても良かったですよね。彼女のことが大好きなだけに色々思うところも多かった今話でしたが、今は二人の未来に幸多きことを祈りつつ、これからの彼らを見守っていきたいなと思います。

shirooo105shirooo105 2016/08/02 21:07 >まっちゃんさん
演者の方々の力こもる演技に感情を爆発させるような台詞も大変素晴らしいものだったと思いますが、終始会話劇がメインだったのでその辺りの見せ方をかなり工夫しているような印象がありましたし、この記事が視聴のご助力になれたのでしたらこれ以上の喜びはありません。こちらこそ、嬉しいお言葉本当にありがとうございました。

ナツナツ 2016/08/03 00:47 はじめまして。
神回と噂の18話の感想が見たくて此処にたどり着きました。

正直言うと、自分はレムがあまり好きになれません。
なので、ブログ主様の様にレムの素晴らしいところを
あげてくれるのはとても嬉しいです。

少しはレムのことを良く思えるようになれるから。

自分は、エミリアやラム、ロム爺、フェルトなどが好きです。
彼女らの言動は分かり易いのですが、
他の主要キャラクターは動機付けと言うか、
何を思って行動しているのか分かりづらい。
自分には、この作品は難しいです(^^;

それにしても、ブログ主様は同じアニメを見ていたとは思えないほど
よく見ていますね!
丁寧な文章といい、良いブログに出逢えて嬉しいです。
ブックマークさせて頂きます。

では。

shirooo105shirooo105 2016/08/06 18:49 >ナツさん
始めまして。有難いお言葉本当にありがとうございます。

確かにキャラクターの心情というのは理解するにも難しいものがあると思いますし、
言葉であったり映像であったりとその見せ方も様々だと思います。
私自身彼女の気持ちの何割を理解出来て居るのかは分かりませんが、
それでも親身になって寄り添えば少しは分かり合えるものだと思いますし、
多用な解釈を出来ることこそがアニメの素晴らしいところなのではないかなとも思います。

これからも少しでも嬉しいお言葉を頂けるように、自分の気持ちに誠実な記事を書いていきたいと思います。重ね重ねになりますが、本当にありがとうございました。

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