キャリアデザイン入門 I 基礎力編 / II 専門力編 (2006)大久保幸夫 日経文庫

キャリアデザイン入門〈1〉基礎力編 (日経文庫) キャリアデザイン入門〈2〉専門力編 (日経文庫)
多様性を理解し尊重する力は、多様な人々とコミュニケーションをした経験の積み重ねによってしか得ることができない。数人の友達とだけいつも一緒にいるという人は、あうんの呼吸でわかりあえる楽な人間関係の中に埋没していることになり、このような力は磨かれない。年齢の離れた人、全く違う環境で生活をしている人、国籍の異なる人など、背景・文脈の異なる人とのたくさんの接触が大事なのである。(基礎力編 III 基礎力を身につける p-112)
私は講演などでよく言うのだが、「四〇歳を過ぎたらもう弱みは直らない」と思う。対人、耐自己能力などは四〇歳で身についていないものがそれから伸びるとは考えにくい。上司や同僚から指摘される欠点も、自分で分かっていながら直せなくなっていると実感するはずだ。人間として、もう骨格となる部分は完成してしまっているのである。だからこそ、四〇歳を迎える頃までが勝負時で、今一度基礎力の完成にこだわってほしいと思う。そして、漂流しないように山を見つけてほしいと思う。(専門力編 III 年齢段階別キャリアデザインの方法(40歳前後から)p-117)
仕事に必要で読んだのだが、このタイミングでこうした本の存在を知ることができたことに感謝。我ながら自分の嗅覚の確かさに嬉しくなる。この本の最初に述べられているように「現在のミドルは、会社が強かった時代に入社しているため、当初は会社任せのキャリアを歩んできたが、途中からルールが変更になって、キャリアの自律を求められるようになってしまった(基礎力編 p-16)」ことが、キャリアを作る、ということにいまだ確信が持てないこと、世代間で歴然とした意識の差を感じることの原因であることが分かり、疑問が氷解。私が学生の頃には、こういう議論は存在しなかったのだから、無理もない。あと数年で四十代を迎えるにあたって、いまいちど自分のキャリアを振り返り、「弱み」を正すための努力を始めたい。これまでの十数年間、いろいろな「力」を切り捨て、手放し、諦めまでして「専門力」で一点突破を図ってきたわけだけれども、もう一段のブレークスルーを実現するには、自らの「力」を自覚的に再構築することが必要なのだと思う。
(2009年8月1日、2日読了)

働く人のためのキャリアデザイン(2002)金井壽宏 PHP新書

働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書)
二十代のころにはまだ難しいが、三十代、四十代以降になると、これまでの来し方を振り返ることが出来る。今までやってきたこと、できたこと、できなかったこと、できたことがすごくうれしかったこと、できたけれどさほど感動しなかったこと、できなかったけれど落ち込まなかったこと、できなかったことが未だにくやしくてくやしくて仕方がないことなどを振り返る。振り返るとあらためて見えてくる方向感覚というものがある。(第6章 元気よくキャリアを歩むために p-259)
ただ、出来たか出来ないかではなく、それに対して素直にどう思ったのか、というところに着目する点に、なるほどと思う。簡単なことだが、このような区分で丹念にチェックすると、自分でも気づかない自分の思い、欲求といったものが見えてきそうだ。現代は世界が、社会が大きく変化する時期にさしかかっており、それとシンクロする形で節目の時期を迎えた人間は、深く自分のキャリアについて考えるべきだと著者は説く。このごろ集中的に読んでいる社会起業の話を見ても、社会が(あるいは少なくとも世界が)自分が「こうだ」と思っているものからかなり変わってしまっていることは言を俟たない。その新しい世界で自分に何が出来るのか。目の前にある仕事をただ、旧来どおりのやり方で片付けていていいのか、問い直さねばならない。まぁ、言われずともそう問うてしまうところが、自分の「コンピテンシー」なのだろうが。
(2009年8月8日読了)