「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」 今野晴貴 (2012) 文春新書

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)
こうした、「ソフトな退職強要」が横行する社会では、心身を仕事に没入させようなどと考える方が、間違っている。そのため、今度は、もしまともな企業が若者を育てる目的のために厳しい業務を課したり、厳しい叱責を行ったとしても、それが本当に「育てるため」なのかが疑われてしまう。最近、「厳しく育てようとすると、パワハラだと感じる若者が増えている」というデータが各所で示されている。ブラック企業からの相談を受けている私からすると、これは若者の「受け止め方」の問題ではなく、実際にブラック企業という「リスク」が存在するために自然と発生した自衛的な思考である。(第6章 ブラック企業が日本を食い潰す p-168)
若者を使い捨てにするかのような会社を、何となく「ブラック」と呼んでしまっているが、専門的にはどのような事例をそう呼ぶのかが分かる。旧来の日本の労働習慣を悪用し、タダ乗りする形で彼らが利益を得ているのだという指摘はなるほどと思う。一方、こんなに酷くはないという意味で「グレー企業」から「ブラック」という汚名を晴らすことになるかもしれない。しかし、一部のブラックを潰していくだけでなく、大多数のグレーをきちんと白くして、良質な雇用に変換せねばならないだろう。この20年間、彼らの「グレー度」は改善したのだろうか? そうした経営改善の欠如にも、景気低迷の根本原因が隠れていないだろうか? (2013年1月22日読了)