[] Enlightenment Now その8


第1部で啓蒙運動の中身とその現代的意義を語ったピンカーは,この啓蒙運動を擁護するために,それが真に人類に進歩をもたらしているかの吟味を行う.ここはデータドリブンで,本書で最もページ数の多い部分になる.


<第2部 進歩>

冒頭の引用はオバマのものだ.

「もしあなたが自分の生まれてくる時代を選ばなければならないなら,そしてその時代の誰になれるかはわからないとするなら,つまり裕福な家庭に生まれるか貧乏な家庭に生まれるか,あるいはどの国に生まれるか,さらに自分が男として生まれるか女として生まれるかわからないとするなら,つまり全く盲目的に時代だけを選ばなければならないなら,今この時を選ぶだろう.」


そして第2部の序言をおかずに一気に第4章に進む.この第4章が第2部全体の序章の役割を果たしているのだろう.


第4章 進歩恐怖症 その1

ピンカーはここで,近年の西洋思想家たちにある進歩嫌悪,進歩恐怖を描き出す.


引用されているアーサー・ヘルマンの本はこれになる.

The Idea of Decline in Western History (English Edition)

The Idea of Decline in Western History (English Edition)


ここからピンカーはインテリではなく普通の人々が進歩を受け入れないことについての話題に移る.ピンカーは進歩恐怖のインテリたちに対しては第3部で痛烈に批判を行うが,一般の人々に対しては何とかうまく説得したいということなのだろう.ここから一般的人々の進歩受け入れ拒否症候群について丁寧に解説が行われる.




ここからはこの暴力の人類史出版後の状況が描かれる.なお非論理的に抵抗する人々の支離滅裂な言い分が詳しく描かれていてなかなか面白い.





ここが「暴力の人類史」に続いて本書を執筆するに至ったピンカーの動機の1つになるのだろう.とんちんかんな批判に驚きあきれ果てているピンカーの顔が見えるようだ.しかしただあきれていても事態は改善しない.そこで本書ということなのだろう.

*1ヴォルテールがパングロス博士を持ち出して皮肉っていたのは啓蒙運動による進歩のアイデアではなく,その逆である神義論,つまり苦しみを宗教的に正当化する(世界は疫病と虐殺なしには不可能だとする)試みだったとピンカーは解説している

*2:ピンカーはこう言う歴史の中の細かな上下をチェリーピックした反論があったことも記している

*3:もちろんスタートレックのスポックの台詞だ

*4:Romantic(ロマン主義的)だという批判に対しては,ピンカーは私はこれ以上ないほど反ロマン主義的な「The Blank Slate(邦題 人間の本性を考える)」の著者であり,そこでは人間は進化適応として同情や向上心とともに強欲,情欲,報復心,自己欺瞞を持っていることを示していると書いている.

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