(31)鳥居みゆき著『夜にはずっと深い夜を』
◎意外にも文学的クオリティ高し 評価★★★☆☆
妄想系というか、引きこもり系というか、ぶっ飛んだパフォーマンスで知られる鳥居みゆきさんの初めての小説集「です。活字でも〝カルト女芸人〟の名にふさわしい、奇妙な味わいの世界を作り出しています。
いくつかの掌編からなっていますが、華子、葉子、のり子といった、いずれもいびつな感情や過剰なこだわりにとらわれる人物たちが、不条理な一人語りをするというお話です。怖いテーストでもあるのですが、独自のユーモアも怪しく輝いています。
「だんごむし」という小説は、自身の自画像のようです。「ゆりちゃん わたしが石の下にいるのは 陽があたらない為なの 御天道様に あてて貰う陽が勿体ないから ゆりちゃん あたしの体が黒いのは 闇に紛れる為なの ゆりちゃん こんなわたしが生きているのは 人間共が人間として生きていく為なの 見える世界がでかすぎるから けれどもわたしのような存在が あなたの天使のような無邪気さを 破壊したいと思うのは いけないことでしょうか」
なかなか太宰治的な怨念のテーストがはいっていて、結構な書き手だと思います。ゴミ屋敷の女のつぶやき、地獄の記事を依頼され狂っていくライターの独白など、設定もこったものが多いです。
劇団ひとりさんの「陰日向に咲く」もそうですが、いまは表現をみてもらいたいという人たちは、お笑いを入り口にするようですね。お笑いで認知してもらって、本当に自分がやりたいことをやる、と。お笑いができない表現者には受難の時代でしょうか?
いずれにせよ鳥居さんは相当の書き手と見ました読むの暗い気分になりながら、じわじわとユーモアを理解して、笑いがこみあげてくるという作品たちです。