勝又清和著『最新戦法の話』の英訳プロジェクトスタート

おひさしぶりです。

このブログが情報の発信源として今でも機能しているのか定かではないのですが、梅田望夫著『シリコンバレーから将棋を観る』の英訳プロジェクトに続く英訳プロジェクト第2弾が立ち上がっているようなので、告知させていただきます。

最新戦法の話 (最強将棋21)

最新戦法の話 (最強将棋21)

発起人は『シリコンバレーから将棋を観る』の英訳プロジェクトのメンバーtakodoriさん及び多大なる協力を頂いたHIDETCHIさんのようです。そしてHIDETCHIさんはブログで協力者を募っておられます。

将棋と英語を同時に勉強して一挙両得したい方、是非ご参加下さい。

今回は僕自身は多忙のため参加はできないのですが、英訳プロジェクト第1弾に興味を持っていただいた方及び将棋以外の分野で英訳プロジェクトを立ち上げるためにコツを掴んでおきたい方などなど、参加してみてはいかがですか?


シリコンバレーから将棋を観る』の英訳プロジェクトが一定の成果を残したことを受けて書いた前回のエントリーで今後の構想として、
"今度は他の本で"
"日本文化を世界に発信する大きなCrowd"
ということを書きましたが、ようやくその構想に向かって再び歩みだせたことが喜ばしいです。


HIDETCHIさんはこうも書かれています。

自分の理想だけ語りますと、これらのバラバラに存在している英訳が、集約されたら素晴らしいだろうなと思います。

同感です。実際『シリコンバレーから将棋を観る』の英訳プロジェクトのメンバー間でも、以降のプロジェクトが立ち上がった時にそれが活動しやすいプラットフォームを用意しようという話題も出たほどでした。HIDECHIさんが現在使用されているshogipediaは長文を読むにはちょっと読みづらいかなという印象はありますが(http://modernshogi.pbworks.com/も決して読みやすいものではなかったとは思いますが)、「読みやすい」という点に関して技術的に協力いただける方がもしいれば英訳プロジェクトの更なる飛躍に大いに役立つだろうと思います。

英訳プロジェクトの今後の発展が楽しみでたまりません。

「深さ」×「広さ」

公開から二週間が経ちました。いろいろ考えさせられた二週間でした。

「十数名のメンバーではできることに限界がある。
でも、1億2千万人のメンバーができることには希望がある」

これを書いた時点では机上の空論でしかなかった「限界と希望」。実際、限界がどのようなもので希望がどれほどのものだったのか。経過報告を兼ねて自分が思ったところを書こうと思います。

英訳の質

質について(梅田さんが既に言及されているが)、ネイティブの反応のいいとこ取りをすると、

Given that this is an ‘open-source’ effort, I think it is VERY good.

First reaction: Wow. This is actually a readable piece of work!

とりあえず最低限の意味が通じるラインは達成できていたようです。一安心。社交辞令疑惑払拭のために、ネイティブによる感想をもう一つ

ok finally finished this online book. Quite interesting. I must disagree with some of the philosophy of Chapter 1.

直接質には言及がないものの、本の内容に関する考察がされていることから想像するに、少なくとも原著の内容とニュアンスはある程度伝わっていると考えていいだろう。

英語→多(他)言語

さらに、仏訳リーダーid:yoshihisa_yamadaさんの圧倒的な発想力

原著=日本語→英語→他の外国語

と行動力

スペイン語訳、ポーランド語訳プロジェクト発足か

のおかげで、公開されている英訳から新たな試みが派生しようとしている。このような英語経由の翻訳の試みは改めて英語の強さを知らしめるものであり面白いし、『将棋を観る』がさらに多くの人に読んでもらえることになる可能性が高まったということであり素晴らしい。
そして、以前Wisdom of Crowdsの可能性として書いた

例えばこの翻訳を読んでくれたアメリカ人将棋ファンが、「ここは棋譜を見るだけだとわかりにくいから、オレが実際に解説を口頭で説明したものを録画して、Youtubeにアップするから、翻訳にリンクをつけておいてよ」

Youtubeで海外向けの将棋紹介ビデオを配信しているHIDETCHIさんhttp://www.youtube.com/watch?v=EIBBYf9iZeI:title=「Famous Shogi Games: HABU vs SATOU (Jun. 11th, 2008)」]に早くも現実にしていただいた。いい意味で予想が裏切られて、日本人がこれをやったのには驚いた!

「将棋」という壁

英訳から様々な新たな試みが派生するなど盛り上がりを見せている一方で肝心の英訳のブラッシュアップ自体はさほど盛り上がっていない。かなり真剣に取り組んでくれている人もたくさんいるのだが、公開した時点で予想していた数には残念ながら及ばない。

わたしも最初は、修正作業はどんどん進むのではないかと勝手に考えていたが、現状は決して楽観できないように思える。

と"Party in Preparation"さんが書かれているが、僕も全く同じように感じている。さらに続けて"Party in Preparation"さんから引用させて頂くが、

62億人の中に、日本の将棋について書かれた英文に興味を持ち、修正を加えようという人間が果たしてどのくらいいるのか。

本当にその通りである。翻訳段階の狂気じみたスピードにどっぷり浸かってしまっていたために客観的視点を持てずにいたが、そのスピード感から解放されたいま冷静に考えてみて、はたして将棋関連の書物を読んでやろうと思う人がどれだけいるだろうか。一つ確実に言えるのは、僕が単に62億人分の単なる1人だったら絶対に修正作業には加わらなかったであろうことである。あの膨大な訳を突きつけられて読んでやろうなんて思ったとは思えないし、ましてや特に日本人は原著が読めるんだから英語に直してやろうなんて思う余地がない。それでも修正作業に協力してくれる人がいるとしたら、「これを他の言語の人にも読んでほしい」と思う将棋好きの人くらいということになろう。Wisdom of Crowdsを取り込もうといろいろ試行錯誤をしてはきたものの、そもそもそのCrowdの母数自体が少ないのである。しかも追い討ちをかけるようにid:hyoshiokさんが 40代、50代の人たちはなぜ表現しないのかというエントリーを書かれている。「40代、50代の人たち」にこそ将棋好きが多くいるというのに。。。表現をする将棋好きのパイが圧倒的に小さいという現実に直面して考えてみると、少し悲観的過ぎるかもしれないが、ここからの劇的な翻訳の質の向上は望めそうにない。
が、だからといって今回の試みが失敗だったかと問われれば自信をもってそんなことないと答えられる。現に、頼んだワケでもないのに世界のどこかに最初から最後まで訳文を読んでくれている人がいる。
今回僕たちグループメンバーは、熱意を持った10人が集まれば本一冊くらい余裕で十分にreadableな質を保証した上で訳せてしまうことは証明できたのである。(今回は何もかもが初めて尽くしだったために余分な人手が必要だったが、取りかかりから公開までの流れがもっとスムーズになれば5人で十分かもしれない。)これだけで十分に新たな可能性を世に示せたと自負している。

今度は他の本で

現状で満足しているわけでは決してない。どうすればWisdom of Crowdsを今以上に巻き込めるのだろうか。思うに、母数の大きいCrowdsが躍動する場はまだできていない。「母数が大きい」とはどういう状態か。二つ考えられる。一つに、将棋好きを増えること、二つに、そもそも興味を持っている人が多い他の分野の本で新たなプロジェクトを立ち上げること。一つ目は非現実的であろう。となると二つ目しか残らない。将棋には興味がなくても他の分野なら興味がある人はいくらでもいる。今回が「将棋」の本でなく「野球」の本だったらどうだったか。野球好きなんていくらでもいる。より多くの「野球」好きのCrowdを巻き込めたかもしれない。

日本文化を世界に発信する大きなCrowd

今の段階ではこれまた「机上の空論」でしかない。ただ、様々な例えば日本文化に関するニッチな本が翻訳されるようになれば、面白いと思う。ミクロ(一冊単位)ではそれほどCrowdはないけどマクロ(たくさんの本)でみたらそこには日本文化を世界に発信する膨大なCrowdsがありえる。 今の時点では『将棋を観る』からいろいろな試みが派生して「深み」を帯びているが、ここに他の本でもという「広さ」が合わされば劇的な変化が生まれるかも?

お待たせ致しました

ようやく、1億2千万人による「希望」の萌芽を世に送り出す準備が整いました。

梅田望夫さんの『シリコンバレーから将棋を観る』の'英訳'が一般公開されました。

第二ステージが始まります。



1.Yoshiharu Habu and Modern Shogi

http://modernshogi.pbworks.com/

本文。形式はPBwiki

6日間で英訳された下訳がすべてご覧いただけます。

敲き台というより「敲かれ台」

登録すると誰でも直接、翻訳作業ができます。





2.Let's Brushup 『シリコンバレーから将棋を観る』 English version!

http://modern-shogi.g.hatena.ne.jp/

ディスカッション。形式ははてなグループ

翻訳のダメだし大歓迎です。ここはWikipedia「ノート」に相当する場所です。

id:Moto_Mが先に発表してくれたので、同じ文章をそっくり載せちゃいました。公開方法について、こうしたほうがいいのではというのがありましたらアドバイスください!)
やっぱ思ったとおりしょぼい訳だなと感じてもらったり、ぁ意外にちゃんと訳せてるじゃんと感じてもらったり。そんな一人ひとりの想いがこのプロジェクト新たな高みに持っていってくれると思っています。特に、ひっでーなと思った人、じゃんじゃん修正しちゃってください!



話はちょっと変わって、「本」とは何かについて。
またまたid:takuya514にインスピレートされたことなのですが、このプロジェクト、「本」の概念すらをも変えてしまう可能性を持っているのではないかなと。本は最初の一文字から最後の一文字まで首尾一貫したもの・流れのあるものであるというのが、常識的な考えでしょう。ただ、本当にその一貫性は必須条件なのか。確かに文学作品はその"流れ"が何よりも重要な要素なのかもしれない。でも、とにかく情報を広める・触れてもらうというのが第一義の本であれば、そこまで流れに固執する必要はないのかもしれない。全体を通してみたらちょっと歪な感じはしなくもないけど、でも論点はちゃんと伝わってくる。そんな本があってもいいんじゃないかなと思います。今は何かを調べるときにはgoogleで検索して、いろんなサイトから情報を集めて自分の頭の中で体系化しますよね。そんな情報の寄せ集めみたいな本があってもいいのではないでしょうか。この「本」は、昨日書いたように

例えばこの翻訳を読んでくれたアメリカ人将棋ファンが、「ここは棋譜を見るだけだとわかりにくいから、オレが実際に解説を口頭で説明したものを録画して、Youtubeにアップするから、翻訳にリンクをつけておいてよ」とか、羽生さんに興味を持ってくれた人がWikipedia.comの羽生さんの項目を大幅加筆してくれたりだとか、もっと強いコンピューター将棋を作ってやろうとするインド人が出てきたりとか、もっともっと今の段階では想定不可能なことなことが次から次へと起こって

くれることを期待しているのです。"流れ"など全くない、"歪"な箇所だらけの「本」、そんなものに発展したらなぁと期待を膨らませながら、推移を見守っていこうと思います。

限界とそして希望

数日前に"Party in Preparation"さんよりトラックバックをいただきました。

最初に公開する本や訳文が良ければ良いほど後の修正も楽であり、なによりも出発点のレベルが高ければ到達点もまた高くなる。

このエントリー、「こんな短期間で仕上げちゃっては翻訳の質が不安だ」という声が聞こえてくる中、それらの声の結集としてしっかり重く受け止めさせていただきました。
ただ、
まだこうして当プロジェクトに対する関心が高いうちに、そして期待感を表明してくれている人がいるうちに、この公開直前というタイミングで敢えて言わせてていただきます。

僕たちの訳は完璧からは程遠い、さらに言えばみなさんが読んでみて質が低いとさえ思うかもしれない。

今の段階ではそんなレベルの翻訳です。残念ながら。自覚してるんだったらもっと時間かけて質上げてから公開しろよって思われるかもしれません。それでも僕たちは数日中に訳を公開します。なぜか?

まず分かっていただきたいのが、メンバーのほとんどが海外で教育を受けたことがない人であるということ。また、メイン翻訳者の平均年齢は21歳くらいであり、これまでに翻訳の経験が皆無なこと。それでも彼らは、少しでもこのプロジェクトの役に立ちたいと思い、手を挙げてくれたのです。そして、自分の英語力のなさに愕然としながらもしっかりと与えられた章を訳し切りました。それでも、改めて、僕たちがどんなに頑張ってところで、英語力には「限界」があるのです。ここまで読んで、よくもぬけぬけとそんなことが言えるなと思った人がいるかもしれません。そんな声にはこう答えさせていただきます。
そもそも梅田さんだって僕たちには翻訳の質なんて求めていない、と。
もし初めから完璧な訳を求めていたのなら、どうぞご自由に訳してくださいなどとはブログに書かなかったでしょう。だって、そんなのプロに頼んじゃえば質の高い訳が保証されるんだから。

話を元に戻して、なぜそんなレベルで公開するのかについて、まずはid:takuya514のプロジェクト内での発言を読んでください。

でもよく考えると、第一段階は特にOpen Sourceと言えるものでもなく、時間をかけてしっかり取り組めばできてしまうという、いわば想定可能領域だったと思います(もちろん、スピードの面においては、日本語圏ウェブではあまり見られなかったことかもしれませんが、英語圏ウェブでは、例えば、アメリカの大学生ボランティア2人が、オバマ大統領の透明性ある政治に共感して「http://www.stimuluswatch.org/」という大規模サイトを7週間で作ったり、そういった例が枚挙に暇がなくあります)。
このプロジェクトが本当にグローバルに大きなインパクトを持ち得るものになるためには、Wisdom of Crowdsの力を借りる第二段階こそが重要で、例えばこの翻訳を読んでくれたアメリカ人将棋ファンが、「ここは棋譜を見るだけだとわかりにくいから、オレが実際に解説を口頭で説明したものを録画して、Youtubeにアップするから、翻訳にリンクをつけておいてよ」とか、羽生さんに興味を持ってくれた人がWikipedia.comの羽生さんの項目を大幅加筆してくれたりだとか、もっと強いコンピューター将棋を作ってやろうとするインド人が出てきたりとか、もっともっと今の段階では想定不可能なことが次から次へと起こってきてこそ、本当の成功と言えるのではないかと思います。
そのために大事なことである、(1)情熱を持ち続けること、(2)こういったことが起こりやすいようなプラットフォームを用意することなどが、これからの自分たちにできることだと思います(......)。

これこそが僕たちが抱いている思いであるのですが、これをさらに要約すればこんなフレーズになると思います。

"WE WANT TO BRIGHTEN THE NOW GLOOMY JAPANESE WEB"

そうです。僕たちは日本のウェブを明るくしたいんです。揚げ足取りのネガティブなウェブから高め合いのポジティブなウェブへ。ここまで当プロジェクトがやってきたのは、ポジティブな風を少しでも吹き込めるようにするための土台作りです。もう一回言います、「土台作り」です。所詮「土台」です。でも土台がなければ建物は立たない。だから僕たちはゴールデンウィークを丸々費やして急いで土台を作った。高め合いのポジティブなウェブ(Wisdom of Crowds)、という「建物」を立てるために。プロジェクトメンバーだけでは数が少なすぎで、到底「建物」は立てられない。だからせめてその土台となる公開用の仮の翻訳を急いで仕上げたかった。

ここまでだらだらと書いてきた、急いで公開する理由、まとめるとこうです。

「十数名のメンバーではできることに限界がある。でも、1億2千万人のメンバーができることには希望がある」

日本はもう立ち直れないと思う。

なんて言われて悔しいじゃないですか。僕はまだ立ち直れないなんて信じたくない。Wisdom of Crowdsの風が吹き荒れて日本を救う、そんな日が来ることを信じたい。

終わったどー!!!

ぃやー長かった。
5日も掛ってしまいました。
が、ついに、一通り『将棋を観る』を訳し尽くしました!!!

梅田さんは、

「翻訳が世に出るまで、まあどんなに早くても半年以上、契約からだいたい一年後」という感覚ですが、そんな感覚とはまったく違うスピードで物事が動いているようです。

そして西塔さんは、

最初にGoogleグループを作るためid:shotayakushijiとメールのやり取りしました。
その時の彼が言った言葉が忘れられません・・・
「1週間で全訳完成させるよっ♪」
……
狂ってる(゜o゜)

とそれぞれブログに書かれていましたが、
そんな「狂った」感覚をメンバーみんなで共有でき、尋常でないスピード感を楽しみながら実感できたのは稀有な体験でした。


一通り終わったということで、即公開することもできるのですが、いかんせん個々人がバラバラに担当章を訳したので、主要な単語の訳の統一化は意識してやったものの、一冊の「本」としての整合性・文脈性はどうしてもまだない。
そこでメンバーで「公開の時期とその内容の質」について話し合いまして、

「翻訳の完成」を仮に目標5日とした場合、「公開」は10日前後を目標とする。
→作業完了後、皆で通読して「ゆくゆく直したい点、今は解決できない問題点」を話し合う。
→話し合った結果を反映したバージョンの文書を「公開」する。

という形で決着がつきました。
10日公開だとちょっと時間が掛かり過ぎな感があるので、名人戦第三局がある7日8日に被せての公開を目標にこれから訳をメンバーで詰めていきます。
みなさまの力をお借りする時が刻一刻と近づいてきています。ぁ、ちなみにWisdom of Crowds発揮の場の題を「Let's Brushup 『シリコンバレーから将棋を観る』 English version!」に決定しましたので、解禁までどうぞ楽しみにしていてください!公開の手順の詳細が決定しましたら、改めてここで発表させていただきます。

では。

経過報告をします。

このプロジェクトがキックオフしてから3日経過した段階で、「はじめに」「第七章」「あとがき」の翻訳が一回り終了、他章も順調に進んでいます(約140/290ページ翻訳終了)。図面などについても活発にディスカッションが進んでおり、予想以上の進行具合で本当に驚いています。

ウェブの特性を生かし、最初のプラットフォームを作る段階はスピード重視でやっていて、英語の表現への配慮もそれほどできておらず、ここからが皆さんのWisdom of crowdsのお力をお借りしたいところです。梅田さんの将棋に対する愛情、熱意を出来るだけ多くの海外の人達に理解していただけるように、何かアドバイスがありましたら、どんどん受け入れていきたいと思っています。チームに参加していただいている『将棋を観る』編集者のid:okadaicさんからは第七章の訳について、

「敬語」のニュアンスを盛り込めるといいなぁと思いました。
向こうのTV番組のインタビュアーみたいな質疑応答とは少し雰囲気違うと思うので。

「いかがでしたか」「光栄です」的なフレーズは、直訳以上に大仰に訳してみるとか……?
年下の羽生さんが年長の梅田さんを敬い、己を理解してくれる人とみなして心を開き、
そして梅田さんは、それ以上に永世名人の羽生さんを敬って、その存在を言祝いでいる。
……というのが、海外の将棋ファンに伝わるといいなぁと思いました。
フランス将棋連盟の会長(武道の達人で日本人以上に和の礼節を重んじる人)みたいな海外ファンに
我々日本人が抱く羽生さんへの畏敬の念まで伝えられたら、感激すると思うんですよね。


と、熱がこもったアドバイスをいただき、こういったアドバイスがオープン化によって増えてくれば、素晴らしい翻訳が出来上がるのでは、ととてもわくわくしています。

とりあえず最初のプラットフォームを作る段階では、シンプルにGoogle Docsを使っていたのですが、次の段階(Wisdom of Crowds)では、また必要なアプリケーションが変わってくるのかもしれません。次の段階では、Wikipediaのように誰でも閲覧・編集・加筆が可能なようにし、更なるスピード感というものが活かせるようにできれば、と思っています。つきましては、何かこの目的を達成するために必要なサービスやアイディアがありましたら、是非ご教授願いたいと思います。まずは出来上がっている、「はじめに」「第七章」「あとがき」からオープンにしていきます。

これまでにあまり見られなかった試みで、わからないことだらけですが、いろいろ実験をしながら、日本語圏ウェブの今後につながるプロジェクトになれば、と思って頑張りますので、どうぞご協力よろしくお願い致します!


追記:
ついに「第一章」も訳了。current word count at around 25,000!!!

翻訳プロジェクト、第二ステージ突入

ついにフランス語でも翻訳作業が始動したようです。
こうやって一つの本からウェブ上でいくつものプロジェクトが派生していく凄み。これを身をもって体験できていること、そしてそのスピード感に身をさらしていること、いままで「こちら側」の世界でしか生きてこなかった僕には新しい発見の連続でわくわくがとまりません。

ところでフランス語訳プロジェクトとそれに先立ってにスタートした英語訳プロジェクト、両者の理念は合致しています。
それは、

むろん、何が起きるかはわかりませんが、将棋のグローバル普及という文脈で何か面白いことが起きればと思い、本書についてはこういう新しい試みに挑戦してみることにしました。

この実験の一翼を担いたいということです。

ただこの両者、実験に対するアプローチは多少異なります。
フランス語訳の発起人id:yoshihisa_yamadaさんから頂いたメールに、

フランス語プロジェクトはあまり人もいないので、中々一気呵成に進めることが難しいという制約もありますね。

とありました。決定的な違いは英語を繰れる人の絶対数がそもそもフランス語のそれと比べて圧倒的に多いというところにあります。フランス語チームの場合はオープンにやるより他はない。他方、英語チームの方は幸運なことに半日のうちに十人集まり、オープンのままにすることもできるし、一旦クローズしてある程度しっかりとした翻訳土台を作ったあとで再びオープンすることもできる、そんな贅沢な選択肢が与えられたのである。結局はご存じの通り一旦クローズするという運びになったのだが、これが結果としてフランス語チームとは違う方策を採ることになったということで、今回の試みの実験的性格を考えると間違った選択ではなかったように思う。

もともとクローズすることに至ったことの背景には、

  1. スピード
  2. クオリティー

の主に二つの要素があった。

第一のスピードについて、

人数が多くなると「スピード」の遅さに直結します。専門分野の違う優秀な人たちが協力して作り上げることで確かにクオリティは高くなるのですが、開発時の意見のぶつかり合いによるストレスは格段に増え、あるいは専門による分業を明確にして衝突を避けようとするとその隙間でとんでもない見落としがあったりして、どうしてもスピードが落ちます。それぞれ個人としていかに優秀であっても、その能力が存分に活かせなくなってしまうのです。

江島健太郎さんがインフォテリアUSAの事業失敗の反省として挙げたのが「人数の多さ」でした。人数が多くなるとスピードが落ちる。江島さんの場合人数が多いといってもたったの4人だった。それでもうまくいかなかった。今回の英語チームにはすでに10人も集まってくれたのだが、これ以上増えると組織として動けなくなってしまうのではないかという懸念が、江島さんのこのエントリーを読む前から既に僕の中で生まれていた。

第二のクオリティーについて、
メンバーに手を挙げた者は、暫定英訳をオープンできるまでに漕ぎ着ける責務を負う。みなさんどうぞ好き勝手に英訳・編集していいですよと丸投げするのと比べて、メンバーがコミットメントをした以上、良質な訳が仕上がる可能性が高いと言っていいだろう。ただ、今回の試みの主眼はオープンソースのすごさ・群衆の叡智の偉大さを再認識することにあったのではなかったか。この葛藤がいまでもある。ただ、

少数名で予め叩き台を一通り用意しておくってのはかなり良いね。大抵のWikiは始めから開放して拡散して自然消滅してるし。

id:Yuichirouさんがブックマークに書き残したように、ある程度のクローズ性は仕方がないのかなと思わなくもない。オープンかクローズ、どっちがいいのか正直答えは自分でも定まっていないが、今回はスピード重視でいこうかなと思い、答えが出ないままとりあえずはクローズで妥協することにした。


英訳の暫定版一般公開まではクローズな空間で作業をすることになる。その埋め合わせにといってはなんだが、これからもグループ内での進歩の状況をこのブログで報告できたらなと思います。