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2014-10-10

[][][]続ぼくを探しに ビッグ・オーとの出会い-書評-私の男 pic.twitter.com/nWaaJF1ZC5

 男は娘を血の袋として愛してしまう。自分と同じ血が入った袋として、それを娘のように、母親のように、そして自分のように愛そうとした。「欠損家族」の中でハカり知れない孤独と、それによって繰り返し訪れる破壊衝動とを情愛に依って覆い隠し、血がつながっている他の個体に自己を憑依させ、それを愛す。一度血のつながりを知ってしまえば、それはただの理由の一つにすぎないはずなのに、血がつながっていない者を愛せなくなる。そんな狂ったような実直さを淡々と再現した物語。

私の男 (文春文庫)
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 本書「私の男」は桜庭一樹による同名の映画の原作小説で直木賞受賞作。小説なんて滅多に読まないのだけれど、映画を見たと言ったら批評家クラスタに原作も読んでみて下さいと言われたので図書館で借りてみた。

 映画とは逆の時系列で、この物語は群像劇形式で各章の主人公視点から始まる。ヒロインである花が映画とは違う男と結婚するところから始まり、過去にさかのぼりながら、一つ、一つ、主人公達の放つ「象徴的な言葉」の発生したエピソードが描かれていく。いちいちねっとりした表現と、女々しい語り口調に作者は女流作家かと錯覚したら、本当に女流作家だったらしい。

 90年代以降主流なテーゼとなった機能不全家族を、快活にあつかった作品を何度かブログでも紹介してきたけれど、気づけば逆にここまで女々しい作品は見たことが無かった気もする。すべて希望へつなげようとするか破壊衝動につなげる作品が多かった中、本書は「消える」。どこへかはわからないが、「消える」。近親相姦を扱った本作は、第一章で、父が消えてから物語が始まるのである。

 本書でも取り扱わなかった、愛情と血が濃すぎて父を嫌いになる描写の代わりに、スローモーションのように<恐怖>が愛情へ、母性へと少女を変えていく描写が何度も何度も描かれる。少女と男の中には自己、親密な異性、家族、他者、各々にすべてが住まっており、イベントごとにペルソナを変えていく。お互いがお互いの望むものを、今力の及ぶ限りに於いて贈与しあい、やがてその世界を守るために人を殺してしまう。あっけなく死んでいく描写については何とも言えないのだけれど、(そして殺す必要あったのかという議論もあるのだろうけれど)本書のミソはそこではなく、やはり自己愛を家族へ投影することの病理をこれだけ極端な例で描いたことである。家族というもの、血統というものが呪いとしてしか機能しなくなってしまった現代に於いて、ある程度のしがらみを感じながらも自由な野に放たれた二つの個体は、アメーバのように溶解し合成しては分裂する。合成し分裂するたびに、お互いの一部を自己の一部として身体に刻み、やがてもう一人の自分を愛するようにもう一人を愛するようになる。それは決して方翼のからすのような生易しい描写ではない。

 作中、彼らは妄想をしない。互いに思いを馳せることや、過去を振り返ることはあっても、想像や妄想の世界を広げることは無い。えんえんと、判断についてが記述され、それが一番病的な世界観を醸し出しているのかもしれない、

 何人か映画と原作を両方見た人の話を聞いたが、皆やはり原作の方が良かったという話をしている。現代の映画は基本的に2時間かけてPVをつくるような構成になっているため、作品自体の魅力が消臭されてしまっている気もした。

 読んだのはハードカバーだったのだけれど、文庫本も出ているらしいので、そちらを求めるのも良い。欠損した何かを埋めるための恋愛と、欠損した自己を肯定するための恋愛が両立するのだと気づかせてもらった作品であった。

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[][][]耽美系正統派ミステリーにホモォ-書評-神様が殺してくれる pic.twitter.com/kmJGiU143B

 図書館で借りてきた。フィットネスで自転車こぎながら読んでたけれど、ライトノベルばりの軽い文体で、すーっと耽美な世界に引き込んでくれる。性別、血統、神様、様々な要素が泡のように出てきては、捕まえられる事も無く上へ上へと離れていく独特の感覚は面白かった。

神様が殺してくれる
神様が殺してくれる
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森 博嗣
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 本作「神様が殺してくれる」は森 博嗣 による幻冬舎創立20周年記念特別書き下ろし作品。大学のルームメイトだった女性以上に美しい男、リオンによって、殺人事件に巻き込まれる話。リオンは遺体の隣で裸で拘束されたまま寝転がっていて、主人公が殺した、と供述する。あとはもう犯人を追ってヨーロッパ中を駆け巡って、最後は日本で事件の全貌が明らかになるのだけれど、その辺はぜひ読んで確認していただきたい。

 なんとなくそんなことは無いよなー的なこちら側の予想を、最後に見事に全部ぶっ込んできたあたりさすがだなという終わり方。よく読んでみると至る所に伏線が張り巡らされていて、それは何を書いていて何が書かれていないのかを読み取らなければ見て取れないものでもある。

 同時に作中、既婚者の主人公が何度もリオンに心が揺さぶられる様が描かれる。主人公は何を愛したのか、何を愛したかったのか、それを追求もせず理性ですべて押さえ込んでしまうあたり、まともな作品でもあった。もっとリオンと寝ちゃうような描写があっても面白かったかもしれない。

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彷徨い人
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2013-06-10

[][][][][]世界よ、これが日本の漫画だ!ぼくなりに今読んでおきたい本7選2013

 なんて釣りタイトル。今読んでおきたい本が盛り上がっているのだけれど、がっつりサブカルクソヤローワナビー厨二病邪気眼の違いもわからず読むような漫画ばかり紹介されててうずうずするのでいっそ紹介エントリを書いておこうと思い一筆。ヲタ向けの作品なんて笑えるやつと笑えないやつが極端に2分するのだけれど、日本の漫画のガラパゴス化やばい。

 完結済。ヒロインに水木しげるの子泣きじじいのコスプレをさせている表紙からしておかしい一冊。愛人で超絶美人なヒロインが男に追いかけられながら泰葉フライディ・チャイナタウンを歌ったり芸妓さんに顔面パイされたりする作品。岡田あーみん的な破天荒ギャグ漫画新井理恵的なニヒリズムを連想させる作風ははまると絶対に抜け出せない。テレビドラマ化もしたのだが安達由美が演じた狂気メンヘラ人妻ミュージカルも半端なかったのだがこれはまた別エントリで。kindle版もあるよ。

 完結済。もう十数年前に連載、アニメ化した魔方陣グルグルの続編。ガンガンオンラインで連載していたのを単行本化したもの。すね毛で腰みので踊りの布教しか考えてないハゲ親父が主人公になり、モンスターにされたりモンスターに殺されたり、少年漫画の王道を踏襲しながらも決してシリアスに展開させない発想はキチガイとしか思えない。なお魔方陣グルグルは現在第2シリーズがオンラインでひっそりと連載中。魔法陣グルグル2 | ガンガンONLINE | SQUARE ENIX

こちらもガンガンコミックスから。声に出して読みたい日本語作品。コミュ障のオタク少女の自意識を扱った作品なのであるが、読みながらリアルタイムで積み重ねられていく黒歴史に、もうやめてあげて!!!と本気で嗚咽を漏らしそうになった。笑えるやつはどうかしてる。アニメ化も本当にやめてあげてほしい。kindle版あり。

 ガンガンが続くけども。今俺の中で話題の作家押切先生の作品。メタ妖怪ギャグ漫画で出世作のでろでろ

とどっちを紹介しようか迷ったけれど、こちら。90年代のレトロゲームの進化と共に進んでいく少年と少女の甘酸っぱい関係を描いたボーイミーツガール作品。一見平和そうな作品だが、鈍感な少年の恋愛にマニアックなゲームキャラたちがアドバイスをくれるシーンなどはなかなかヲタ心を刺激してくれる。あの時代にゲーセンに通って、もしくはテレビゲームにはまって青春を送った層にはたまらない作品。kindle版あり。

 かわいい表紙にだまされてはいけない。ガチムチボディビルダー高田厚志(35歳)がセーラー服を身にまといクトゥルフ神話の神たちと戦うという異色作。ストーリー以外にも、軍ヲタの作者が台詞やタイトルにちょいちょい入れてくる「民主主義有権者が皆最低でも総理大臣並の知能を持たないと成り立たないシステム」とか「人は驚くほど当たり前ができない」みたいな社会風刺というか社会分析を通した自意識の発露が非常に面白い一冊でもある。ライトなグロ描写もあるので注意。サブカルクソヤローならぜひチェックしておきたい一冊。

アゲイン!!(1) (KCデラックス)
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 モテキほどの破壊力はないものの、いたるところにあーわかるわかるとうなづいてしまう一品。やっぱりコミュ障だった主人公がタイムスリップして過去に戻って人生をやり直し始めたら無駄にモテだしたというありきたりな展開なのだけれど女子の描き方がやっぱり半端ない。悩んだときに読んだら何に悩んでたのか多分忘れるくらいの破壊力はある。そしてバリアを張る生き方だった主人公がだんだんバリアを氷解していく様は割と泣ける。kindle版あり。

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2013-06-01

[][][][][]「ポストモラトリアム時代の若者たち」は僕の中で2012年一番のスゴ本だった-書評-ポストモラトリアム時代の若者たち

 いやー面白い。心理学、社会学、哲学を往復して現代の社会構造と若者の心理と問題を鳥肌が立つくらい綺麗〜に洗い出した一冊。なぜ腐女子が増えるのか、引きこもりは本当にわれわれが想像しているとおりのキャラなのか、イケダハヤト氏や家入氏はなぜ生まれたかなど、これが答えであるとしか思えない内容が書かれている。

ポストモラトリアム時代の若者たち (社会的排除を超えて)
村澤 和多里 山尾 貴則 村澤 真保呂
世界思想社
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 本書、「ポストモラトリアム時代の若者たち」は、さまざまな社会背景の下、<モラトリアム>を自由に謳歌できなくなった若者たちの心理、環境、事例をあつかったもの。ちゃんと若者論3原則に則りながら、現在の若者について、教育や就職、価値観やヒエラルキー、心理的葛藤を淡々と描き出す快作だ。第5章で急にテンポが悪くなるのだけれどそれをさし引いても面白い。どうやら大学のゼミの輪講などでも扱っている模様。多少専門用語がでてきてもググれば高校生でも読める上参考文献もしっかり書いてあるので初心者から中級者まで非常に刺激的な読書体験を提供してくれるだろう。

 第1部では就職難の話やアイデンティティ拡散の話やフォーディズム体制、パイプラインシステムの崩壊の話など。実はこのブログでもインスパイアされて過去に言及して炎上した内容である。

意識の高い人追悼2012 - 技術教師ブログ

 そこから導き出される結論は「再帰性の内面化」である。再帰性とはすなわち「自分はどうか?」という問いかけが自分に飛び掛ってくる頻度のことで、たとえば教室で誰かが人をバカにしたとき、笑いながらも自分はどうか?彼にバカにされる領域にいないか、自問自答する経験は誰しもがあるだろう。

 メディアなど種類や語り口が変わることで自問自答の頻度、すなわち再帰性は格段に高まった。たとえば近所で事故や事件が起きた場合、あなたは安全ですか?とワイドショーは問いかけてくる。例えば成功者の体験を語るようなテレビや本は、あなたはどうですか?と問いかけてくる。ネットでニートをバカにしながら、「(俺は大丈夫か?)俺はまだ大丈夫」と自分に言い聞かせる。とりわけ社会の発展に関連してメディアだけ取り出しても、ここ15年で個人メディアが爆発的に普及し、SNSで僕がマイルール宣言と呼んでいるような「ありえない」「面白かった」「これが好き」「本当にひどい」といった言葉が発せられるたびに「あなたはどうですか?」というメッセージが飛んでくる。

 通り魔のような、もしくは原発事故のようなイレギュラーが発生し、<信頼性>の高かったはずの専門家たちがつくってきたシステムが揺らぎ、常に監視と警告を必要とし再帰性が高まると、結果として若者は再帰性に苦しめられ、どの場所にいれば安全か、どの行動をすれば安心かを考えコクーニング(さなぎのように閉じたものに)する。

 これらの話をギデンズの脱埋め込み化やエリクソンのアイデンティティの話、リキッドモダニティなどを引用しながら説明する。地域や国を超えて標準化が進むと共に目的論的な世界が出来上がり、目的にそぐわないものが排除される。目的を見つけることが目的だった「モラトリアム」はいつしか消えていき、目的もあいまいなまま、プレゼンテーション能力や資格や飛びぬけた経験が求められるポストモラトリアムがそこに聳え立っている。

 第2部は、1章の再帰性の高まりと社会の変化から、若者の心理モデルがトラウマ化、スティグマ化していくというものである。トラウマとは、過去の失敗や環境に問題の原因をおき、そのせいで現在の自分は理想とはかけ離れた状態になってしまった、という心理状態を指す。スティグマ化とは、ここではもともとの社会からの汚名やレッテルという意味合いとは違い、自分の内面に「その行動をすると他者から異常とみなされてしまう」というモデルを内面化してしまうことをいう。

 この二つは理想どおりに振舞えない原因を外部に求め、過度に行動や発言を恐れ脅迫化、不自由化するという共通点を持つ。いわゆる世間体のように、変に思われてしまうと排除されてしまうのではないか、と自分で自己を過度に監視し、徐々に自身を失っていくのである。もともとひきこもりなどに見られる特徴的なメンタリティが、強弱はあれど若者に浸透しつつあると筆者たちは指摘する。何度開き直っても再帰性は頻繁に襲ってくる。ビジネス書ではかっこよくメタ認知として扱われ、ひとつ上の視点を持ち分析することで仕事を効率的に活性化しようと書いてあったはずだが、一部の若者たちは過剰にメタであることを求められ、結果的には逆に去勢されてしまったということであろう。

 その後は著者たちがやっている若者ミーティングの事例や腐女子のコミュニティの話がつづく。若者ミーティングでは、若者たちが心地よい距離をとりながら自主的に関われる場を提供することでひきこもりなど社会不適応から徐々に回復していく事例を解説。社会からの孤立は過剰にかかわりを求めない共同体で直していくのだという。

 また腐女子と呼ばれるメンタリティも、消費するコンテンツとしてそこにあった親殺しや思想としての男装や男殺しの物語から、徐々に自分なりに創作をして楽しむという消費に変わっていく。オタク趣味であると後ろめたいものというスティグマを抱えながらも自己を強化しオタクコミュニティという共同体の中で同じ趣味を共有しあいながらも差異化しながら自分なりの楽しみを見つけていく

 

 第3章は、第6部で急にテンポが悪くなりびっくりしてしまうことは指摘しておきたい。事実をよりわかりやすく説明するために喩えを使うが、6部だけはなぜかその喩えを使いたいがために関係ない話を引っ張り出して、今までの話で十分わかりやすかった喩えをもう一度別の喩えにおきなおすという作業を延々と繰り返す。

 話の整理自体は非常にわかりやすい。生きづらさ、息苦しさを感じている若者(別に若者に限らないのだが)は内部と排除された外部との間をさまよっているのだという。社会的に見ると若者にとって過剰に市場に適応することが現代の自分探しの行き着く先であり経済活動に取り込まれることが内部である。例えばイケメンだの巨乳だので人の価値を語るようになったり、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力など、パーソナリティと関係なく優劣の曖昧なもので合格不合格が決められてしまう。そこに適応できない若者は内部からすこし距離を置くのであるが、一方で不登校やホームレスやニート、貧困など、社会から排除された外部に行きたくはないため、内部と外部の間で葛藤が起きるのである。

 軍国主義時代は軍国青年が良しとされたように、高度資本主義経済時代には市場青年とでも呼べる若者が良しとされ、一方で学生運動のような反抗ができない若者は、ひきこもるか無理やり市場に適応するか、「<新しい世界>を産み出す存在」としての<自分>を構築する。すなわち意識高い学生のように自分たちが「未来(という名の自分を中心とした世界)を切り開く!」存在として振舞おうとし、感情を中心に世界を語り共感してくれる人たちを巻き込みながら<新しい世界>を産み出す<自分>という自己を強化する。過剰に市場原理や資本主義経済に巻き込まれながらも、「評価経済が大事」「ルールに囚われない面白いことをしよう!」などと叫び内部の世界観に囚われない自己の世界観を演出しようとする。

 終章では自然状態=隷属からの自由として社会契約があったはずなのにまた自然状態に戻ったよねという辛らつな話をして終わる。教育も労働も再帰性と排除されないためのルーティーンで満たされ心理的スティグマと現実的排除の間で身動きが取れない若者はこれからも再生産され続ける。

 個人的にはこれらの圧力や自己に対する無限の監視であるスティグマに対抗するスマートな反抗をどうにかデザインできないかとこの半年間試行錯誤し続けている。ようやく数値的に景気が上向いてきているとはいえ、社会の排除のシステムはどんどん強化され続けている。うんたら再生会議が一応耳障りのいい言葉を使いながら、経済団体と組んでさらに強者の理論排除の理論隷属のための教育を強化しようとしている。教育現場は混乱と監視が続き平静を装いながらパノプティコン化を進める。混乱した現場から逃げてきた若者たちはモラトリアムをすごすこともできず労働の現場に投げ出され、去勢されながら市場に適応していくか、意識高くあり続けようとありもしない自己を演じ続ける、ある日燃え尽きて排除の対象になり消えていくのである。

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2013-04-09

[][][]アウトサイダーコミュニティとの付き合い方-メディア評-漫画「荒川アンダーザブリッジ」

 連載が再開して今月新刊が出るらしいので紹介。ナルシストで会社経営者の主人公がある日突然ホームレス達と川の下に住むという破天荒漫画。

 ガンガン漫画のくせに登場人物達のキャラ付けがファンタジーの領域を越えない、絶妙なギャグ漫画。カッパの背中にはチャックがあるし天狗は催眠術を使う。

no title

 本書は並行して連載している聖☆お兄さんが海外でも話題になっている中村光氏によるギャグ漫画。イケメンで御曹司だけれど少し不思議な育て方をされた主人公が、ある日、自称「金星からきた」美女に命を助けられ、その恩返しのために恋人として橋の下に住むことになる。

 橋の下にはカッパだの星だの鉄仮面だの鳥だの侍だのが住み、毎日がマジキチだらけの大運動会でとうぜん主人公リクは訳の分からんイベントに巻き込まれては被害被る、王道的ギャグ漫画である。

 一方で金星ヒロインは、金星に帰る期日が決まっていて、別れが近づいてくるに従ってリクはヒロインに惚れていく、現代のかぐや姫なのであるが、なにか現実離れした大きな財力が働いていたり、橋の下へ続く階段が出来たりできなかったり、いつ夢オチになるのかと思わせながらもそんな臭いを吹き飛ばす位に東條キャラクターたちは生命力に溢れている。

 年末年始にかけて原作、アニメ、ドラマ、映画と全て見たのだけれど、特にアニメ版は最強だった。原作の設定をあまり壊さずちゃんと描いた上、毎回巻頭で行われていた意味不明なポエムをちゃんと昇華しマジキチなキャラクター達との対比によるロマンチックさを鮮やかに表現している。ところどころ絶望しそうだったり怪異に殺されそうな声だった主人公の声も主題歌も背景の描き方も、すべてが荒川の世界を原作以上に演出していた。このキャラクター達が愛おしく、別れたくないと思わせるのには十分だった。本当に出会いに感謝できる作品で、連載休止していた原作が再開され、また読めるのが楽しみだ。

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