奨学金を自己責任の問題にすると日本が滅ぶ

 もう若者にホームレスになれと言っているとしか思えないのでまとめてみたよ。

「雇用情勢の悪化」「賃金の目減り」…長引く不況で我が子の学費を出す親の収入は少なくなる一方だ。当然、子ども(学生)はアルバイト収入や奨学金を頼りにせざるを得なくなる。
 日本学生支援機構の調べによると奨学金を受給している大学生の割合はうなぎのぼりで増える一方だ。1996年には21・2%だったのが2010年には50・7%となった。2人に1人以上が奨学金を受けていることになる。
 ところが日本の奨学金は、前途ある若者の学業を援助するためのお金ではない。前途ある若者に多大な借金を負わせる、とんでもない制度なのだ。
 景気のよい時代なら働いてなんとか返せた。ところが不況で就職難の時代にあっては、とてもじゃないが返せる金額ではない。1千万円を超える現・元奨学生もザラにいる。返せなければ金融機関のブラックリストにあがり、クレジットカードも作れなくなる。
 もう我慢できない。奨学生(現役の学生)と奨学金の返済に追われる社会人がきょう、「教育の機会均等」を訴えて文科省財務省に向けてデモ行進した。(主催:全国学奨学金問題対策委員会)

田中龍作ジャーナル | 「奨学金」という名の学生ローン 1,000万円超す借金抱える若者も

 このデモの記事もいくつか事実誤認や誇張表現がある様子で、彼らは全員が奨学金給付者であるわけではなく、あくまで「教育の機会均等」を訴えているという。
 しかし奨学金を返したくないって訴えだと読み違えた人達から自己責任論が広がっている

わかってて借りたものをなぜ返さないのか・・・

大学いかなかったらよかったんじゃないかな

奨学金未返済者がデモ行進 「これは奨学金ではなく学生ローンだ」「バイトなんてしたくない」「勉強させてくれ」 : はちま起稿

2: ターキッシュアンゴラ(チベット自治区):2013/07/15(月) 21:18:52.41 ID:cG/eW2QK0

返せないじゃなくて返したくないだろ・・・やる気見せろよ

3: ハバナブラウン(やわらか銀行):2013/07/15(月) 21:19:04.43 id:irzBqYh+P

ちゃんと返せや
俺なんて頼み込んでバーチャンに500万返してもらったぞ

4: ジャガー(東京都):2013/07/15(月) 21:19:36.64 id:crK8pgvW0

銀行の学資ローンを使わないのはバカ

6: アメリカンワイヤーヘア(埼玉県):2013/07/15(月) 21:19:55.63 id:mjbL/aUW0

教育は投資ですから

http://www.tokuteishimasuta.com/archives/7222699.html

このデモに参加する人たちに共通するのは
「知らない、調べない」という事じゃないでしょうか。
ちょっと調べれば、経済的に困難な学生に対する、
授業料免除制度がある大学を見つける事はできます。
奨学金の返済が困難であれば、猶予期間を設ける事もできます。
画面に向かってキーボードを数回叩くぐらいの手間だけれど、彼らはしない。
「面倒臭い」「後回しにしよう」
そんな考えが彼らの根底にはあり、ズルズルと大学まで来てしまった。
楽な方に、楽な方に逃げた結果が、これ。
Aさんも(25歳・女性)も、こんなデモに参加するぐらいだったら、転職先を探せばいいのに。
結局彼らは「私達、こんなに頑張ってるのに世間は厳しい」という、
可哀想な自分たちを認め合うための居心地の良い共同体を作りたいだけなんでしょうね。

http://bayaread.hatenablog.com/entry/2013/07/16/170605

偉そうに書きましたが、僕は生活保護ギリギリの貧困世帯出身です。
親の援助は受けられないため、大学における生活費と学費は全て自分でまかなっています。
そして、奨学金も頂いていますし、授業料免除も受けています。
僕みたいな貧乏人が大学に行けるのは、この2つの制度のおかげですから、
本当に感謝しています。
お金が無くても大学で勉強したいんだったら、
「借金」というそれなりのリスクを覚悟するべきじゃないのかなぁ。

自分は奨学金もらったけどがんばってるからお前らもへらへらせずにがんばれよ、というエントリ。若いながらに老害感があって素晴らしい。

被差別階級作って叩き合いさせてたら矛先が体制に向かないしマジでチョロすぎワロタwwwという日本の伝統的分断統治に忠実な馬鹿であります。

もう少し大きい枠から物事を見ようか。
今の環境は適切なのかについて、知らない・調べないのは例の大学生と君は大差ない。
奨学金制度を利用する以前に奨学金制度そのものがおかしい。
つーか大学教育がクソ過ぎですね。
(以下目次抜粋)
費やした教育費と学歴は比例する
費やせる教育費は所得に依拠し、所得は居住地域と職業に依拠する
他の国では自動車を買うよりも遥かに少ない価格で提供されている大学教育について、いかに大金を突っ込んで搾取される事を美化するマゾの国が東アジアにあるそうですね?
苦労したから質の高い大学教育を受けられて上記の国々よりも経済的に豊かになったニダ!・・・と思ったら

http://anond.hatelabo.jp/20130717154434





 もう問題はある程度出ているが、id:bayareadの「デモしてる暇があるなら勉強しろ」という意見もわからんではないのだけれど、それは第三者効果というのだけれども、そこを取り出すなら二つの問題がある。
一つは就職活動の採用基準が真面目に勉強すれば採用されると言うものではないと言うこと。もう一つは俺が苦労してんだからお前らも苦労しろやというメッセージは他者の権利を奪い既存の権力構造を強化してしまう性質のものであると言うことだ。

誰が「自分が正規雇用されない」なんて気づくんだよ

日本の就職と教育が乖離してると指摘されて久しく、いまや親が就職活動にしゃしゃり出てくる時代になったと指摘されている。
「親活」の非ススメ “親というキャリア"の危うさ (徳間ポケット)
によると、いかに示すように1984年と2012年の大学を巡る状況を比べて大学に進学する者がエリートだけではなくなったこと、その裏で高卒での求人が10分の1に減り就職が困難になったことを指摘している。

1984 2012年
18歳人口 約168万人 約120万人
大学の学校数 460校 783校
大学進学率 24.8% 53.5%
大学の学生数 約184万人 約288万人
就職率 76.7% 63.9%

 背景には求人に大卒資格が書かれるようになったことが大きい。つまり、就職するためには大学に行かないと行けない状態で大学に行くには金が必要で、学費も高騰し、しかも大学に行っても3割強の人が就職できず進学か非正規雇用を選択しなければならない。
正規雇用から正規雇用に上がることもまれであるし、正規雇用の採用基準も曖昧で学歴や心象によるところが大きく、勉強するくらいならサークル活動に力を入れてチャラチャラしながら体育会系に気に入られるようコミュニケーション能力をあげた方が採用されやすい制度になっている。
大学に行ってしっかり勉強してまで自分が非正規雇用奨学金を返すのが困難な状況になると誰が予想できるか、こそが問題であり、その不安定を前提とするのであれば国がセーフティネットをもっと用意すべきだし、そもそも努力すれば報われる(この場合は完全雇用)が確保されてない状態で努力や個人の判断ミスに帰着させるのはいずれ人に迷惑かけるし死ぬんだから産むな、くらいのばかばかしい議論であるこには気づいておきたい。このトラウマ思考からぬけださないと大変なことになる。
教育と労働を取り巻く環境を勉強すれば「貧困の中苦労して大学に入学し奨学金をもらって大学卒業させてもらったから、これから社会に貢献するために働きたい」という物語すら夢見ることができないものが4割くらいいる社会、と言うのが日本の現実だ。
なお平均仕送り額もガッツリ減っており、ココ数年で家賃込み月10万円を切ったと言う話も聞いた。奨学金を学費に充てずに生活費に充てる学生も増えている様子だ。お金がない学生は資本が少なくてすむ教育業界に流れ込んでくるので教育関連サークルがけっこうな盛況である。

教育の二つの機能

 学校教育には二つの相反する機能がある。一つはトラッキング機能、もう一つは階層逆転機能である。
ラッキングとは、最終学歴が就職、年収等に直接結びつくという考え方で、中卒、高卒、大卒ごとに求人条件が違うし生涯賃金等も大きく変わってくる。
逆転機能というのは、そもそも学力は家庭の年収と相関することが指摘されており、義務教育はその家庭の教育力の格差を埋めることに意義があった。

教育の原理は市場原理とは違い、競争からはみ出そうな者をうまく社会化していくことに意義がある。そこに気づかなければいつまでたっても失敗を繰り返すだけである。

校長の役割って何なの?経営と運営の違い - 技術教師ブログ

センター試験はその象徴のようなもので、教科書の範囲をしっかり勉強すれば(国立)大学に行ける、わからない選択肢が出て来てもマークしておけば数分の1の確率で得点し、ランクの高い大学に行き年収の高い仕事に就ける可能性がある。
これらをまとめてパイプラインシステムと呼ばれていたが、2000年代から実はパイプに穴が開いており、その穴からパイプの外に排除された者達がニートや引きこもりとして社会復帰できないままくすぶっていることが問題になった。
このニート引きこもり問題は面白くて、彼らの9割は仕事をしたいと望んでいたり、親が裕福だから引きこもれるが、海外ではそこまで裕福ではないので若年ホームレスが増えたりと、世界的に社会の歪みとして噴出している。
詳しいことは以下のエントリに書いてあるが、結局今の日本は誰かの犠牲の上に生産性を維持している、世界的にも異常な状態である。
キャリア教育で若者は就職で苦労しないようになるの?-書評-若者はなぜ「就職」できなくなったのか? - 技術教師ブログ

若者に襲いかかる無限のリスク管理

 今回の騒動でわかるように、結局大人達は若者達に賢く生きなさいというダブルバインドをひたすら投げつける。
 中卒高卒で成功できるのは高く見積もっても1割くらいだ。就職できるのも2割位。10人に1人しか成功できない道と、借金が必要だけれど10人に9人(大学が公表している内定率)が成功している道があるなら、後者を選んだ方が賢い。
 そのため若者の多くは進学を選択する。最近は進学すれば就職できる訳ではないことも共有されて来たので、大学の卒業要件の単位とともに教員免許や簿記など資格を取ることに奔走し、もはやモラトリアムが亡くなりつつある。これが世の中の歪み更にひどくしているのではないかと個人的には考えている。少なくとも自己責任で叩いてる層はこのモラトリアムの時期にちゃんと考えてこなかった層だ。ろくに最後まで記事をよむ習慣もなく条件反射のようにコメントをする。
 それでいて大学では真面目に勉強しても、内定が先に出るのはコミュニケーション能力がある若者だったりする。就職できなかったのは決して勉強をまじめにしてこなかったせいではないのだ。起業と言う選択肢もあるが、起業はさらに借金が増える。
 くじけなければどこかに内定がもらえるかもしれないが、そこは日本の7社に1社と言われるブラック企業かもしれない。くじければ非正規雇用に落ち着かなくてはいけないかもしれない。ベーシックインカムワークシェアリングやもう少し働かなくても生きていける社会とかそう言う選択肢があってもいいはずなのにそう言った議論は起こらない。
 そんな状態で奨学金を借りなければいい、無理して大学進学するな、とまで言われると、ほぼ選択肢は全滅である。別に貸与型の奨学金を返さなくてよいといっているわけではない。なお、転職を1回するごとに生涯賃金が8割になると言われている。
 若者が欲を持てないというのは、偏にこうしたもっとリスク管理をしろ、という声からだ。責任を追及されることを恐れてテンプレ化された行動しかとれなくなってゆく。さらには自己啓発や根回しなどリスク管理のためにばかり時間を使わねばならず、結局勉強や研究等<これからの生産>に必要な時間を確保できないことになる。もうすこし若者にモラトリアムかそれに代替するような経験を用意してあげたいし、若者の首を絞めることは日本全体の足を引っ張ることになることも踏まえて皆で解決策を考えていきたい。

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