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2016-02-04

『撃てない警官』(第4話=随監)感想 

『撃てない警官』(第4話=随監)感想 【ネタバレあり】

ネタバレ注意!これからドラマをご覧になる方はご注意下さい。

警察という組織はいったい何のために存在しているのか。
  ――国民の安全を守るために。
では「国民」とは誰なのか。
  ――この国に住む人々。
だけど…案外 誰の顔も思い浮かべることが出来ないことに気づく、
国民と言う言葉があまりにも漠然とし過ぎていて。

このドラマを観ていると、
警察という組織が守ろうとしているものが、
顔のない 実体のない 「国民」という言葉そのものでしかない
ように思えてきます。


暴行され傷つけられた女性も、わずかな金のために老婆を殺した女も、
客の嫌がらせで店に働きに行けなくなってしまった子も、その弟も…
街の片隅でひっそりと生きている彼らが関わった事件は、
ただ単純に 加害者と被害者として判別されるだけで、
事件の底に沈んでいる“本質”が、
警察の作る調書や被害届という紙切れの上に
文字によって正確に書かれることはないように思います。
より事件に近く、より関係者に近く 寄り添った者でなければ、
寄り添おうとした者でなければ、
見つけ出すことが難しい 事件の本質…

警官として一番大事なものは何か、
警察は誰をこそ守らなければならないのか…
今回は、広松巡査部長(菅田俊)の背中を観ながら、
そんなことを深く考えさせられました。


その広松は非常に魅力的な人間でしたね。
がさつでギャンブル好きで荒っぽくてどうしようもない奴だと思ったら、
実は面倒見が良くて街の人たちから信頼されているおまわりさんだった…
このあたりの二面性も、
このドラマの登場人物に共通する魅力的なところで、
初体面で広松の強烈な個性にあっけにとられた柴崎(田辺誠一)が
その人柄や言動に触れるたびに少しずつ彼を受け入れて行く様子が、
一片の言葉もないかすかな表情の変化だけなのに
ごく自然に伝わって来て、沁(し)みるものがありました。

なのに、助川(島田久作)との電話で「ああいう人間は嫌いです」なんて、
助川が自分に言ったことをそのままお返しするあたり、
こいつもなかなか自分を曲げない奴だな、と。w
この時の柴崎と助川の電話のやりとりがすごくいい空気感で、
お互いに 好きじゃないけど認めている、という関係がとても新鮮で、
私としては好きなシーンでした。

助川が、柴崎の能力を測るために「事件を調べてみろ」と けしかけ、
案外しっかり調べているのを知って、
広松に不利になってしまっては困るから「もう止めろ」と言い、
ところが「承服しかねます」と 自分の命に反して調べを続行しようとする、
その時の珍しく熱の入った様子にちょっと驚きながら、
こいつなかなかやるじゃないか、と見直してもいる助川の柴崎への評価が、
ラーメン屋で下されているw というあたりも、何だかすごく良かったです。


もうひとつ、非常に印象的なシーン。
中田(石黒賢)から
「山路(柴崎の義理の父/山本學)は私と君の共通の敵だ」
「本庁に戻ってこい」と言われた柴崎が、
川にUSBメモリーを捨てようとするが捨てきれない。
そんな柴崎の耳に、かぼそい仔猫の泣き声…
段ボールに入った仔猫が川を流されて行く、それをただ見つめる柴崎。
今 彼の手の中にあるものと、
他の誰にも気づかれることなく流されて行く あの小さな かよわい命と、
そのどちらが警官である彼にとって大切なものなのか――
これはすごく象徴的で、深く印象に残るシーンでもあり、
観ていて いろいろなことを考えさせられました。

妻(中越典子)と一緒に歩いている時、
喧嘩を目撃するも「非番だから」と見過ごした柴崎。
最後にまた喧嘩を目撃した彼は、いったいどんな行動を取ったのか。
画面がカットアウトしてしまって分からない、
つまり、結果を 観る側に委(ゆだ)ねてくれた、
そのことが何だかちょっと嬉しかった。
このカットに象徴されるような 万事説明過多にならない画面作りも、
このドラマの大きな魅力なのではないか、と感じました。


さて、速いもので、もう次回が最終回。
柴崎の前には解決出来ていない案件が山積みですが、
果たしてそれらをどう収束させ、どういう終わり方をするのか、
ここまでクオリティの高い作品になっているんだから、
尻すぼみにはならないでくれ、
いや、そんなことにはならないはず、と勝手に心が揺れていますがw
なるべく心静かに最終回を待ちたいと思います。


連続ドラマW 『撃てない警官』     
放送日時:2016年1月10日- 毎週日曜 22:00-(WOWOW)
原作:安東能明 脚本:安倍照雄 監督:長崎俊一 音楽大友良英
制作:WOWOW オフィスシロウズ
キャスト:田辺誠一 石黒賢 中越典子 高橋和也 加部亜門 菅田俊
嶋田久作 山本學 他
公式サイト

2016-01-28

『撃てない警官』(第3話=第3室12号の囁き)感想 

『撃てない警官』(第3話=第3室12号の囁き) 感想 【ネタバレあり】

今回も、最後まで一瞬も見落とせない展開でした。
実直に手堅(てがた)く作られたものなので、
エンターティンメント的面白さには欠けるかもしれませんが、
こんなに緩(ゆる)みもツッコミどころもなく、
必死で画面に食らいつかなきゃいけないドラマ
私としては久しぶりです。


始まりは酒酔いによる些細な自損事故。
その処理に当たった警官がこちらに向けて放った印象的な視線…
その直後から怒涛のようにいろんな事件やら問題やらが
一気に柴崎(田辺誠一)に襲って来るので、
観る側はそんなシーンなんかすっかり忘れてしまってるわけですが、
最後の最後になって、すべての事件が繋がって、
初めてそれがどんな意味を持つものだったのかが分かって、
私は思わず「あーっ!」と声をあげてしまいました。

世界柔道選手権の「警備計画書の紛失」、
留置担当官による被留置者への「便宜供与」、等々、
縦横に複雑に絡み合っているプロットを、
柴崎と一緒に事件全体に繋げ、読み解いて行く面白さ。
さらに、柴崎の前には、
彼の本庁復帰へのキーマンである中田(石黒賢)の「収賄疑惑」、
さらには一人息子・克己(加部亜門)の「万引き」…と、
簡単には済まない問題がどんどん積み重ねられて行きます。

観る側がハラハラしながら画面に釘付けになる中、
あらゆる問題をすべて背負い込んだ柴崎が、
それでも解決に向けて淡々と一つ一つ丹念に推理し 動いて行く姿には、
決して天才肌ではない、彼なりの仕事への取り組み方が垣間見えて、
(ひ)かれるものがありました。

国家の一大事に繋がりかねない計画書を紛失した八木(駒木根隆介)が
責任感のカケラもなく子どもの水泳の記録会に行っていたり、
計画書がないと分かっていて、
あえて中田が警視総監(中丸新将)に足立署の視察を提案したり、
柴崎目線で観ると イラッとすること てんこもりなのですが、
この人は案外 へこたれないし 声高に騒がない、
ひたすら冷静に対処して、解決策を導く。
(八木がシュレッダーの紙屑に埋まりながら汗かいて書類を探している
姿には思わず笑ってしまいました。
柴崎が所轄の警官から嫌われているというのも むべなるかなw)

また、警視総監視察のタイムリミットが迫る中、切羽詰まった柴崎が、
キーパーソン・坂本(陽月華)に最後の切り札として使った手が、
「今までいろいろ面倒見て来ただろ、今度はそっちが俺を助けろ」という、
何とも人間臭い 脅しめいた言葉だったのも、
柴崎の人となりを示していたように思われて 非常に興味深かったです。

一方、計画書紛失の責任を柴崎になすりつけろ、という中田の提案に
迷う署長(諏訪太朗)と すんなり呑まない副署長(嶋田久作)、
このあたりの描き方もやっぱりいいなぁ、
二人とも、上司に従う、楽な方に逃げる、ということを
あっさり簡単にはしないから。
(署長は内心かなり揺らいでいたと思うけど、
少なくとも 彼なりの倫理に照らして躊躇(ちゅうちょ)はしていたわけだし)

助川副署長、柔道稽古で柴崎をさんざんいたぶっておいて、
肝心なところになると さりげなく擁護してくれる ツンデレ加減が素敵。w
いや、だけどそれは、柴崎に歩み寄る前兆 ってわけじゃなくて、
ただ中田の提案が、助川なりの信念やスジの通し方に合わなかっただけ
なんだろうな、とは思いますが。

あれも これも それも と仕事上とんでもなく緊迫した慌ただしい時に、
いじめに遭っているらしい息子・克己(加部亜門)が万引きをした、と、
妻・雪乃(中越典子)から柴崎に連絡が入ります。
しかし、妻のようには しっかりと息子に向き合わない様子に、
さすがに仕事であれだけ問題山積していたら
こちらは逃げ腰になっちゃうか、とちょっと残念に思っていたら、
親としての感情に流されず、冷静に息子を観察し推理していた柴崎。
いやいや、ひょっとしてこの人
なかなかの捜査能力を持っているんじゃないだろうか。

正しいところもそうでないところも、長所も短所も、
いろんなものが 柴崎の内には当たり前のものとして共存している、
彼がそういう人間である、ということが、
不自然でなく 許される(認められる)ものとして伝わって来た今回、
地味ではあるし 万人に愛されるなんてタイプでもないけれど、
その複雑さがキャラクターの魅力にもなりつつあるなぁ、と、
これは少しファンとしての欲目があるかもしれませんがw
そんなことを感じました。


それにしても…
1時間足らずの中に毎回こんなにぎっしり内容を詰め込んで、
このドラマ制作陣は 視聴者
スジを追い切れなくて置いてきぼりになる、とは思わないのでしょうか。
…いやいや、
おそらくは そうならないように作り上げる自信がある、ということだろうし、
多分、視聴者を信じてもくれているんですよね。

万事簡単に分かりやすく、という最近のドラマの風潮に満足出来ない、
自分の想像力をフルに使ってドラマを観たい、という人だって
絶対いるに違いないのに、そういう作品があまりにも少ない。

WOWOWのドラマが面白いのは、
放映前にすべて撮影し終わっていて、
視聴者の感想やら意見やらが反映されない、ということも
大きい気がします。
こんなふうに始めてみたけど、視聴者はどう思っただろうか、
どんな感想を持ったか、どんな展開を望んでいるか、
それを調べチェックした上で撮影中のドラマに反映させて行く
ということをしない(出来ない)から、
おのずと、自分たちはこういうものを作りたいんだ、という主張と
作っているものに対する責任をしっかりと担(にな)った作品が
出来上がって来るのではないか、と。


話が逸(そ)れてしまいましたが…
このドラマがいったいどんな収束の仕方をするのか、
それを 画面を通してどう表現してくれるのか、
特に、中田を今後どう描くか、柴崎が克己のいじめ問題にどう向かうのか、
というのは すごく興味があります。
あと2回、楽しみに観続けたいと思います。


連続ドラマW 『撃てない警官』     
放送日時:2016年1月10日- 毎週日曜 22:00-(WOWOW)
原作:安東能明 脚本:安倍照雄 監督:長崎俊一 音楽大友良英
制作:WOWOW オフィスシロウズ
キャスト:田辺誠一 石黒賢 中越典子 高橋和也 加部亜門 陽月華
嶋田久作 山本學 他
公式サイト

2016-01-21

『撃てない警官』(第2話=孤独の帯)感想 

『撃てない警官』(第2話=孤独の帯)感想 【ネタバレあり】

ネタバレ注意!これからドラマをご覧になる方はご注意下さい。

うわ〜、何だか正座して観なきゃ申し訳ない気分になって来た!
とにかく 登場人物一人一人の描写から その場の空気、匂いに至るまで、
画面の隅から隅まで どこにも嘘がないように感じられるのが凄いです。

どんなにシリアスで丁寧に作られた作品でも、
人物や背景の描き方に どうしても「あ〜これは“作り物”なんだよなぁ」と
感じてしまうことがあって、
観ている側としては「しょうがないね、だってドラマなんだし」と
内心あきらめてしまうのが常なのですが、
このドラマは、いわゆる観る側がそそられるような
視聴者の多くがそれを求めている と作り手が勘違いしているような)
ドラマチック(劇的)な盛り上げ方を放棄しているにもかかわらず、
非常に緊迫した空気感を作り上げていて、
映画ならいざ知らず、
TVドラマでそういう作品に出逢えるとは思っていなかったので、
観ている間中、嬉しくてたまらなかったと共に、
全身に力が入ってしまって、緊張感が半端なかったです。

なぜそんなことが出来るのか。
多分、人間の描き方(脚本・演出)と演じ方(俳優)に
共通の意識が綿密に出来上がっているせいなのかな、と。
どう作りたいのか、と、どう演じたいのか、が、見事に融合している、
と言ったらいいか。 (偉そうな言い方ですみません)

人間は、そんなに単純じゃない、薄っぺらじゃない、
いい人間か悪い人間か、なんて線引きは、そう簡単に出来るもんじゃない。
ここでは、登場人物それぞれが、どういう生き方・考え方であれ
作り手(演じ手も含めて)から認められ、許されている気がします。
登場人物に対する白か黒かのジャッジを視聴者に委(ゆだ)ねる前に
作り手側が先に いい人間か悪い人間かを安易に決めつけてしまう、
という、あさはかな作り方をしてないんですよね。
だから、一人一人が深くて魅力的なのかな、という気がしました。

第一、 柴崎(田辺誠一)からして、ヒーローでもアンチヒーローでもない、
「ヒーロー」という言葉そのものから遠い存在で、
主人公らしからぬ清濁併せ持った複雑な設定になっているし、
普段の刑事ドラマなら単純な役どころになりやすい所轄の署長(諏訪太朗
にしたって、ちゃんと真面目に仕事しているし、
(確かに それなりに仕事が出来なきゃ署長にはなれないはずですものね)
助川副署長(嶋田久作)に至っては、言うことなすこと得心、
おとなしいようで芯があり なかなか従順にならない柴崎とのシーンは
どの場面も味わい深くて面白くて、
内心わくわくしながら喜んで観ていました、
こりゃ なかなか二人の間の溝は埋まらないぞ、と。w

そんな見どころ満載の1時間の中で、今回私が一番惹かれたのは、
助川副署長による被害者の娘(水島かおり)の取り調べシーン。
助川の後ろで調書を書いている柴崎も含め、
緊迫した駆け引きの中で三人がそれぞれ醸す空気感が絶妙で、
見ごたえがありました。
水島さんのまったく何の飾り気もない言葉がリアルで重くて、
失礼ながら うっすら名前しか知らなかった私は、
うわ〜こんな女優さんがいたのか、と ちょっとびっくり。
母親に生命保険をかけていた、その意味が
最後の助川と柴崎の会話から浮かび上がって来た時、
犯人以上の(身内だからこその)慈悲のなさがつらかった、
改めて水島さんの演技に裏打ちされた怖さが伝わって来ました。

普通の刑事ドラマのように、
このドラマも1回につき一つの事件を取り上げて行くことになりそうですが、
事件自体の描き方は決して突飛なものではなく、
日常の中でこういうことも十分にありうる、
地方版のニュースで取り上げられるようなもので、
何だか人間の内側が透けて見えるようで、
観る側の心にじわりと沁みて来るものがあるんですよね。
もちろん犯人は悪いのだけれども、そうなってしまった世の中の仕組み
そのものに原因があるんじゃないか、というような、
どこにもぶつけられない息苦しさというか切なさというか。
1時間の中に、事件そのものの占める割合はそんなに多くない、
犯人もすぐに見つかる、
なのにすごく密度が濃くて、メッセージ性もあって、
ズシンと伝わって来るものがありました。
初回を観た時に、これだけ登場人物を綿密に描いていたら、
事件の内容まで丁寧に描くのは1時間じゃ厳しいかな、と思ったのですが、
無用な心配だったようです。


さて、柴崎令司(田辺誠一)。
主人公という設定なのに いけ好かない奴ですよね、柴崎って。
だけどちゃんと物語の中で魅力的な中心人物として成立している。
どんな部署の仕事もそつなくこなし、
腹の中では深謀遠慮を巡らせるも 感情過多にならずに冷静に対処。
ガンガン自分のやり方を押し付けてくる助川とは水と油で、
嫌な奴だと思いながらもやるべきことはやり、最小限言いたいことは言う。
この人の本質はひょっとしたら今後も変わらないかもしれない。
だけど、いろいろな経験をし、いろいろなものを受け入れて行くにつれ、
彼自身のキャパシティが大きくなって行く…そんな予感がします。


連続ドラマW 『撃てない警官』     
放送日時:2016年1月10日 毎週日曜 22:00-(WOWOW)
原作:安東能明 脚本:安倍照雄 監督:長崎俊一 音楽大友良英
制作:WOWOW オフィスシロウズ
キャスト:田辺誠一 石黒賢 中越典子 高橋和也 加部亜門
嶋田久作 山本學 他
公式サイト

2016-01-14

『撃てない警官』(第1話=敗走)感想 

『撃てない警官』(第1話=敗走)感想 【ネタバレあり】

ネタバレ注意!これからドラマをご覧になる方はご注意下さい。

今まで数多く作られて来た“刑事”ドラマとは一線を画す、
辛味の効いた“警官”ドラマ
主人公・柴崎令司(田辺誠一)は警視庁勤務、
しかし、刑事(刑事課)ではなく事務畑(総務部企画課)の警官で、
一度も犯人を捕まえたことがない、
キャリアになって ひたすら出世だけを願って来た男。

警視庁(警察)に勤めている人が
全員 刑事(直接犯人を捕まえる人間)なわけではない
というのは頭では分かっていたんですが、
警察事情に詳しくない(というかほとんど無知)人間なので、
捜査を経験したことがなくても偉くなれる、という事実に、
ちょっと驚いてしまいました。
 (そう言えば、『TEAM』の時、ノンキャリアの人間が刑事課長になるんだ、って教えてもらったっけ)

いずれにせよ、そんな(総務部の)柴崎が主人公なので、
刑事ドラマの醍醐味と言える
事件の真相を探り当てるためにあれこれ推理を巡らすとか、
事件自体の奥深さとか味わいとか、犯人との心理戦とか、
その犯人を追い詰めて説得するとか、あるいは派手に立ち回るとか、
そういったシーンは(少なくとも初回では)ほとんど皆無。
うーん、それで面白いドラマになるの?と多少疑いの目で観始まったら、
まぁこれが面白くて1時間があっという間でした。

まず、柴崎という男が、取り立てて正義感の強い人間でないところが
非常に興味深かった。
「警察という就職先」で出世を願う、というのは、
普通の会社のサラリーマンと変わらない感覚なのかもしれない。
柴崎には、警官として高みの地位を目指すと同時に
家族を養っていく夫・父親としての姿が自然な形で混在していて、
そのバランスがとても滑(なめ)らかで良かったし、
仕事も家庭も両肩に背負って生きている普通の人間である彼に、
何だかすごく親近感が湧きました。

今回、1本の電話を引き金に左遷の憂き目に遭(あ)った彼が、
どうやって中田(石黒賢)の弱みを握り本庁への復帰を目指すのか、
一方で 現場を経験したことも犯人を捕まえたこともない彼が、
所轄でどういった動きを見せるのか、
さらに、子供のいじめ等 家族とその周囲の問題も浮上して来そうで、
次回も密な内容になること間違いなさそう。
久しぶりに次の回が楽しみな歯ごたえのある連続ドラマに出会えたのが
とても嬉しいです。


キャストについて。
渋めの配役設定がそれぞれ非常に魅力的でした。
中でも私が一番惹かれたのは、柴崎の義理の父・山路(山本學)。
いやいや、この人はタダもんじゃない、どこかダークな部分を持っていて、
清廉潔白なだけの人間とは一味も二味も違っている。
そんな彼が、柴崎にどんなアドバイスをし、どんな手助けをするのか、
また逆に この人自身に穴はないのか、というのも興味深いところ。
山本さんがこういう色味の役をやるのは珍しいと思うのですが、
枯れた風情の中にヒューマンな部分をあまり入れ込まない
(孫には優しいのに)というところが、すごく新鮮な感じがしました。

柴崎の上司で総務課長の中田(石黒賢)。
今回、柴崎が左遷させられる事件に直接関与していなかったのが
私には驚きだったのですが、
(てっきり 中田が柴崎に電話したのに しなかったと嘘を言った と思った)
でもまぁ何かしら裏で関(かか)わっていたのは間違いないようで、
柴崎に電話をして木戸の自殺を画策した石岡(高橋和也)をはさんだ
中田と柴崎の腹の探り合いと駆け引きも、
今後の見どころとなってきそう。
こういうところに石黒さんやら高橋さんやらがキャスティング
されているのが嬉しい。

柴崎の妻・雪乃(中越典子)。
もと警官ではあるけれど、今はもうすっかり妻・母の顔になっていて、
いちいち柴崎にライン送って来て、
上司との話し中に柴崎の胸ポケットスマホが光るシーンでは、
仕事中に送るなよぉ、と ついハラハラ。
でも、きっとこの人には芯の強さが備わっている、
だからこの先の苦難にもきっと立ち向かっていける、
そんな凛とした風情が中越さんには備わっている気がしました。

柴崎の一人息子・克己(加部亜門)。
まぁここはよくあるいじめの構図なのかな、
官舎に生活する上で上司の子には逆らえない、ってことなのかな、
と思ったら、終盤の不可解な行動。
えっなんで?とすごく気になっちゃいました。
今後の亜門くんの演技に期待。

主人公・柴崎令司(田辺誠一)。
田辺さんが主人公を演じたドラマ映画は何本かあるのですが、
主人公として突出した立場にあるものはほとんどなく、
他の登場人物たちとのアンサンブルで全体の空気感を作って行く、
というのが、言わば 主役としての田辺スタイル。
しかし今回は、すべてが柴崎に通ず、俺が主人公だ文句あっか、
という ど真ん中キャラなので、
そういう役をどう消化して魅せてくれるのか、というのは、
ファンとしてはとても楽しみです。
けっしてかっこよくはなく、
主役としては正の魅力があまり感じられない役なのですが、
だからこそ田辺誠一が演じる意味もある、
等身大の警官を、夫を、父親を、自然にリアルに演じてくれるに違いない、
その自然でリアルな中に、
正と負が混じり合った柴崎の妙味(公式サイトトップの表情のごとく)が
徐々に息づいて来るに違いないし、
おそらくこれはある意味 柴崎の成長譚(人間としても警官としても)
でもあると思うので、
今後そのあたりを存分に味わわせてもらえることも
期待したいところです。


『撃てない警官』(第1話=敗走)     
放送日時:2016年1月10日(日) 22:00-(WOWOW)
原作:安東能明 脚本:安倍照雄 監督:長崎俊一 音楽大友良英
制作:WOWOW オフィスシロウズ
キャスト:田辺誠一 石黒賢 中越典子 高橋和也 加部亜門
嶋田久作 山本學 他
公式サイト

2016-01-04

『鬼平犯科帳スペシャル〜浅草 御厩河岸』感想

鬼平犯科帳スペシャル〜浅草 御厩河岸』感想

中村吉右衛門さんの『鬼平犯科帳』は
時代劇の中でも群を抜いて空気感の作り方が素晴らしく、
いつも安心して観ていられます。

話としては特段大きな事件が起こるわけでもなく、
平板と言えば平板ではあるのですが、
わずかな さざ波の立つ中に、
市井に生きる江戸の人たちの人となりや生き方を丁寧に描き込んで、
今回も見ごたえのある作品になっていました。

吉右衛門さんを始め、
多岐川裕美さん、中村又五郎さん、綿引勝彦さん、梶芽衣子さん、
尾美としのりさん、三浦浩一さん、勝野洋さん、沼田爆さん
といったレギュラーメンバーは それぞれ揺るぎなく盤石。
時代劇の所作も申し分なくて惚れ惚れ。

田村亮さん、田辺誠一さん、左とん平さん、小林綾子さんらゲスト陣も
鬼平の世界観を崩すことなく
その空気に違和感なく溶け込んでいたように思いますし、
個人的には、田中隆三さんや仁科貴さんが
いいポイントで使われていたのが嬉しかったです。

全体を通して、
演じ手の過度にならない演技に委(ゆだ)ねられたものも とても大きく、
そのあたりは出演者全員に共通していたところでもあり、
非常に見ごたえがありました。

中でも、
平蔵・吉右衛門さんと海老坂の与兵衛・田村亮さんの最後のやりとりは
捕えた者と捕えられた者という関係より もっと厚みのある余韻…というか、
鬼の面をはずした平蔵と大盗賊の面をはずした与兵衛という
「老い」に足を掛けた二人の男の
お互いに対する敬意や共感のようなものが感じられて、
そんな大人同士の一言一言の言葉から醸し出される空気感に
落ち着いた心地良さを味わわせてもらいました。

盗賊という生業ではありますが、
与兵衛は、トップに立つ者としてすごく魅力的な人物。
腕だけじゃなく人柄をも見込んで岩五郎(田辺誠一)に大仕事を任せたり、
その父親・卯三郎(左とん平)に対しても何くれとなく気に掛けたり、
子分たちを信じて任せることで厚い信頼を得ていたり…
見込んだ相手の良さを丁寧に引き出して、最高の場を与えようとする、
それって詰まるところ「情の深さ」といったものなのかもしれない。
最後と知って潔く平蔵の前にひざまずきお縄になるところまで、
彼には盗賊としての美学みたいなものを感じる。
鬼平もそれを感じ取ったのでしょうね、
だからこそ、与兵衛が仕事を終わらせた後に彼を捕えたではないか、
という気がしました。


田辺誠一さんは久しぶりの時代劇
居酒屋でてきぱき働く奥さん(小林綾子)の隣でわらじを売っているものの
暇で居眠りばかりしている。
だからろくでもない男なのかと思うと、
五郎蔵(綿引勝彦)に見込まれて密偵に加わっていたり、
超一流の錠前はずしの腕を持っていたり、
かと思うと 奥さんやお母さんを大切にしたり、
まさに「掴みどころのねぇ人」と言った鬼平の言葉がぴったりで、
   (何だかそれは、田辺誠一という俳優の個性にも繋がっているようで、
   そのセリフを聞いて思わずにんまりしてしまいましたがw)
その掴みどころのなさを ごく自然に持ち合わせた者として演じていて、
以前はその捉えどころのなさゆえに
役からフワンと浮いてしまうこともあったのだけど、
今回は一切そんなふうに浮く感じはなくて、
あいかわらず前に出て来る強さがなくて慎ましやかではあるけれど、
だからこそと言えばいいか、
岩五郎の飄々とした空気感が、魅力的な持ち味として
役の中に無理なくじんわりと しみ込んでいたように思います。
この役を田辺さんに、と思ってくれた人の慧眼に
感謝したい気持ちになりました。

背が高いとどうしても腰高になってしまうので、
着物姿(特に町人姿)がサマにならないと感じる事も間々あるのですが、
今回の田辺さんに関してはあまり気にならなかったです。
座った時に背筋がいつもピンと張っていて、ああ田辺さんらしいな、と。
礼儀知らずのぐうたら亭主には見えないのですよね。
そのあたりも、与兵衛や五郎蔵の心に適うような
岩五郎の魅力に繋がっている気がしました。

とん平さんと親子ってどうなんだろうと思ったけど、
どこかお調子者で浮ついてるところが妙に似ていて微笑ましかった。
宿に入る時の二人の間合いなど惹かれたところもあって、
もうちょっと二人の掛け合いを観たかったな、と
贅沢なことを考えてしまいました。

それから、五郎蔵と岩五郎の関係もすごく好きでした。
目をかけてやっていたからこその五郎蔵の激怒、
指を折ろうとする五郎蔵と 覚悟して腕を噛んで堪えようとする岩五郎、
そこに、二人にしか分からない互いへの気持ちがうかがえたようで…

だけど、鬼平は岩五郎の別の顔を知っている、
奥さんやお母さんを大切にし、父親を見捨てられないその心根の良さに、
鬼平が下した断は…
岩五郎はどうしようもない男じゃない、
そのことを鬼平もちゃんと見通していた、
だからこその裁(さば)きだったんじゃないでしょうか。
鬼平もまた情に厚い人であり、
裁くことの真の意味を知っている人でもあったように感じられました。


撮影もすごく良かったです。
風景描写がまるで映画のように美しく、見惚れることも多くて、
(ラストクレジットの江戸の四季が特に素晴らしかった)
灯篭越しの鬼平、葭簀(よしず)越しの与兵衛、鍵穴越しの岩五郎、等々
本格時代劇とはこう作るものだ、というお手本のようなカットもあって、
ドラマの筋立てとは別に画面に惹かれるところも多かったです。


長く続いたこのシリーズも、次回で終了とのこと。
公式サイト中村吉右衛門さんのご挨拶がUPされていますが、
これが鬼平ドラマの魅力を端的に伝えてくれていて、
さすが、と言うほかありません。
残念ではありますが、この潔い引き際も鬼平らしいと言えるのかも。

ただ、この「時代劇の真摯で丁寧な作り方」を
ここで終わらせてしまうにはあまりにももったいないです。
どんな形であれぜひ次世代にも引き継いでもらいたい、
スタッフも含めて育てて行って欲しい、と切にお願いしたいところです。


金曜プレミアム『鬼平犯科帳スペシャル〜浅草 御厩河岸』     
放送日時:2015年12月18日(金) 21:00-22:52(フジテレビ系)
原作:池波正太郎 脚本:田村惠 監督:吉田啓一郎 音楽津島利章
企画:能村庸一、武田功 プロデューサー成河広明、羽鳥健一、佐生哲雄、足立弘平
制作フジテレビ 松竹株式会社
キャスト:中村吉右衛門、多岐川裕美、中村又五郎、勝野 洋
尾美としのり、沼田爆、三浦浩一、綿引勝彦、梶 芽衣子
仁科貴、田中隆三、鶴田忍
小林綾子、左とん平田辺誠一田村亮 他
公式サイト