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★≪路地裏より愛を込めて≫全エントリー   ★カテゴリー別タイトル一覧【2014/11/16更新】    .          

2014-12-19

『ディア・シスター』(第10話=最終回)感想

『ディア・シスター』(第10話=最終回)感想

ん〜、最後はちょっとバタバタでしたかね。
とんとん拍子に 美咲(石原さとみ)とハチ(岩田剛典)の結婚式
になって、ちょっと戸惑ってしまいました。
美咲のハチへの気持ちの積み重ねを、
もう少し丁寧に見てみたかったな、という気がしました。

さらに、美咲の出産に立ち会ったのが、
ハチじゃなくて葉月松下奈緒)だった、というところで、
そうか、このドラマの芯になるのは、美咲の恋の行方じゃなくて、
葉月と美咲の姉妹のつながりだったんだ、と改めて気づかされて。

美咲のノートにまだ「したいこと」が残ってる、と思ったのですが、
先週の「妹を絶対に死なせない」というのが最後だった、
ということなのかな・・

そのあたりも、
出来れば もうちょっと きめ細かく描いて欲しかった。


ハチのファンから石投げられそうですがw
実は、私は、最終的には美咲と宗一郎(田辺誠一)が
一緒になるんじゃないか、と予想していました。
私が田辺さんのファンだからってだけじゃなくて、
この展開なら、それが一番ドラマとして面白くなるんじゃないか
と思ったから。
ハチは美咲が好きだけど、美咲は宗一郎を想ってる、
過去にいろんなことがあって、
どうしても宗一郎のところに行けないでいる美咲の背中を
ハチが押してあげる・・

「エースをねらえ」「ベルサイユのばら」「ガラスの仮面」等々、
私は すごくドラマチックな少女マンガを見て育った世代なので、
どうなることが一番切ないのか、をつい考えてしまいます。
で、ハチが一番魅力的に見えるポジションって、
美咲と結婚することじゃなくて、
自分の気持ちを必死にこらえて美咲の背中を押してやる、
ってところじゃないか、と思っていたわけです。


宗一郎に関しても、
あれだけ ねちっこく美咲を追いかけて、
みんなから徹底的に総スカンくってる40過ぎの男が、
実は10年間ずっと今まで美咲が密かに好きだった相手で、
ただ、過去に彼の家庭をめちゃくちゃにしたという気持ちが、
彼女を素直に彼に向かわせない枷(かせ)になっていて・・
という展開になって行ったら、さぞドラマチックで面白いだろう、と、
私個人としてはそんなふうに想像していたんですよね。
なので、今まで書いた感想にも
そんなニュアンスが多分に出ていたかと。w

ただ、一方で、元妻・貴子(音月桂)が登場したことで、
ひょっとしたら今回のような終わり方もあるかもしれない、
とも思っていました。
宗一郎は、貴子との過去を乗り越えない限り 前へは進めないわけなので。
(貴子が最終回まで登場するようなら そうなるかな、と)

それにしても、最後の最後で
「あの子と子どもを守るために 私と行くんでしょ」なんて
貴子がかなり物騒なこと言ったのには、ちょっとゾクッとしてしまった。
このセリフが、美咲からあっさり身を引いたと思われた宗一郎に、
新しい明確なポジションを与えたように感じられて。
いや、宗一郎自身は貴子に対して気持ちが揺らがないとしても、
貴子が 穿(うが)ち過ぎた見方をしてしまう可能性がある、
もしかしたら、宗一郎は、美咲と子どものことで、
これからも不安定で難しい立ち位置に立たされ続けるんじゃないか、
そんなふうに考えると、結局 この夫婦の今後が
一番ドラマチックなんじゃないの・・なんて思ったりして。

――ほんと、私ったら打たれ強いから、すぐ立ち直ってしまうわ。ww


↑に書いたような、
私が思うドラマとしての面白さ、という部分も含め、
結局 田辺さんは またこういうポジションなんだな、という
残念な気持ちは正直ありますが、
たとえば『きみはペット』の最終回の時のように、
あまりにも落ち込んで、京都の河原に石投げに行こうか、
なんて むなしい気持ちになることは 今回はありませんでした。w

宗一郎という人間を演じる上で、
ウザくてもキモくてもしつこく美咲にぶつかって行く、
そこに、こういう役だからこのぐらいの気持ちの出し方で、といったような、
演じる上での(ドラマ全体を考えた上での)遠慮が感じられなかったこと、
中盤〜終盤まで、他の人たちの明るさや健気さを引き立たせるための
ヒールとしての存在感を十分に示してくれたこと、
たったワンシーンで そのイメージをほぼ払拭(ふっしょく)してくれたこと、
そして最後に、不穏の種になりかねない貴子に対して、
「何を言ってるんだ」とさらりと返し流す
そんな大人な空気を作り出してくれたこと、etc etc・・

制作側が「クールな二枚目」なんて人物設定したところで、
この俳優さんは絶対に、
ただ単にかっこいいだけの人間として演じようとはしない、
複雑さ、めんどくささ、かっこ悪さ、なども平気で塗り重ねて来る。
これほどネット上で キモいウザいと言われ続けた役って、
田辺さん自身 初めてだったんじゃないでしょうか。

言い換えればそれは、
宗一郎という人間が持つ生々しい感情や 生来の生真面目さ・繊細さを、
それほど綿密に リアルに しっかりと表現して見せてくれた、
ということだと思うし、
美咲とのキスシーンや、酔っ払ってクダまくシーンや、
怪我して診察室を出て来た時の一瞬の表情や、その他いろんな場面で、
相手の石原さとみさんも、すごく丁寧にその感情を受け止めてくれた。
だから、結果として二人は離れ離れになってしまったけれど、
そのことがどうこうより、
二人の間に生まれた その空気感が味わえた、そのことだけでも、
私はこのドラマが面白いと思えたし、
非常に難しい役を与えられ演じ通した田辺さんも、そして石原さんも、
ますますリスペクトしたい俳優さんになった、
そんなふうに思いました。


――すごく偏(かたよ)った感想になってしまってすみません。


『ディア・シスター     
放送日時:2014年10月-毎週木曜 22:00-(フジテレビ系)
脚本:中谷まゆみ 演出:田中亮 プロデュース:中野利幸
音楽:Jhameel 橘麻美 白石めぐみ 大間々昂 
主題歌:「Happinessシャネル 挿入歌:「BF」moumoon
制作フジテレビドラマ制作センター
キャスト:石原さとみ 松下奈緒/岩田剛典 平山浩行 森カンナ 音月桂
田辺誠一 堀内敬子 片平なぎさ 他
『ディア・シスター』公式サイト 

2014-12-17

『ディア・シスター』(第9話)感想

『ディア・シスター』(第9話)感想

「宗一郎〜そこは美咲をかっこよくかばった上での階段落ちだろ〜っ。
自分で勝手に落っこちるだけなんてダサ過ぎるじゃないか〜」
・・私の心の叫び。w
どうも この人(宗一郎)は何やっても不器用なんだよなぁ。
まぁ、その後に 七重(片平なぎさ)に手酷く追っ払われる、
というシチュエーションがあるので、
宗一郎(田辺誠一)が美咲(石原さとみ)を身を挺して救う、
(→七重や葉月が宗一郎に感謝する)
という展開には出来なかった、ってことなんだろうけど。

でも、宗一郎が美咲と話す場面があった、というのは、
すごく良かったように思います。
二人が本当はどんなことを考えていたのか、
というのが やっと少し見えて来て、
お互いがお互いのことをちゃんと想っていたことが分かって、
ホッとしました。

10年前、美咲との外泊騒ぎがある前に、
宗一郎と貴子(音月桂)がすでに離婚を考えていたこと、
卒業式の日の宗一郎のメール葉月が削除してくれたことで、
それ以上の修羅場にならずに済んだこと・・
少しずつ、また 過去のパズルが埋まって行く。

「私が宗一郎さんの人生めちゃくちゃにしたの。
だからもう二度と迷惑かけないって決めたの」
「いろいろしつこくして悪かったな。すっかり嫌われちゃったな」
――もう、二人とも そんなに遠回りしないで本当の気持ちさらけ出せよ、
とも思うけど、それが出来ないほど重い、ということなんですよね。


一方のハチ(岩田剛典)は、
そりゃあ、目の前で兄貴が七重にこっぴどいこと言われて
すごすご帰って行く姿を見たら、
ますます「美咲は俺が守ってやらなきゃ」って思うよね。
いつもの元気や明るさを失っている美咲に優勝メダルを見せて、
「結婚しよう。ずっとそばにいさせて欲しい」
とプロポーズ。
「大好きだよ」と言うハチに「大好きだよ」と応える美咲。
自分の「大好き」と彼女の「大好き」の意味は少し違うんじゃないかと
私は思うのですが・・、
それでもプロポーズせずにはいられなかった、
それほど美咲のことが好きなんでしょうね。
ほんとに健気(けなげ)だなハチは。


葉月松下奈緒)は、
Ryo(鈴木一真)からのダイレクトメールを受け取り、
陽平(平山浩行)と一緒にその展示会に出かけ、
そこで、自分がデザインしたドレス
葉月」という名で展示されていることを知ります。
で、また仕事を一緒にしよう、と誘われるのですが・・
う〜ん、このあたりがちょっと安易な展開だったのが
もったいなかったなぁ。

そして、美咲の病気を知った葉月は、陽平との結婚を決意します。

おいおい、妹のために自分の結婚決めちゃうのかい、
陽平の人の好さに甘え過ぎなんじゃないの、
と思った人も多かったと思いますが、
病気とか障害とか、そういうことが身近にある私としては、
何となく、そんな葉月の気持ちが分かるような気がしました。
自分が犠牲になる、ってことじゃなく、
美咲とおなかの子、二つの命の、
セーフティネットになることを決意する、ということ。
それを自分自身の生きがいにする、ということ。


・・にしても、
葉月の表情がイマイチ晴れないように見えるのはなぜだろう。
もちろん美咲の病気のことが気掛かり、
ということが大きいには違いないだろうけれど、
まだ何かありそうな気がするんだけど。

葉月は、おそらく
美咲のノートの最後のページに
何が書いてあるか知っていると思うのですが、
そのことと関係あるんでしょうか・・

あれやこれや気になることが まだまだたくさん。
最終回、美咲や葉月や宗一郎やハチがどんな選択をするのか、
どんなふうにこのドラマの幕が閉じるのか、楽しみです。


『ディア・シスター     
放送日時:2014年10月-毎週木曜 22:00-(フジテレビ系)
脚本:中谷まゆみ 演出:平野眞 プロデュース:中野利幸
音楽:Jhameel 橘麻美 白石めぐみ 大間々昂 
主題歌:「Happinessシャネル 挿入歌:「BF」moumoon
制作フジテレビドラマ制作センター
キャスト:石原さとみ 松下奈緒/岩田剛典 平山浩行 森カンナ
田辺誠一 堀内敬子 片平なぎさ 他
『ディア・シスター』公式サイト 

2014-12-15

『キレイ〜神様と待ち合わせした女』(2014)感想:2

注意! 一部ネタバレしています。
特にこれから舞台をご覧になる方はご注意下さい。

いつものように、限りなく上から目線の感想となっています。
読んで不愉快に思う方がいらっしゃったら ごめんなさい。



『キレイ神様と待ち合わせした女(2014)感想:2 【ネタバレあり】
≪感想その1≫はこちら

出演者について。

実は、2か月くらい前に2005年版の『キレイ』をDVDで観て、
そこで止めておけばいいものを、観劇2日前にも再見してしまいまして、
そのイメージが強烈に残っていたせいか、
最初は ほとんどの役に違和感があって、うわ〜やばい!と。

でも、じきに慣れて、
どの役も、逆に前回と違うところが興味深く感じられて来て。

松尾スズキ作・演出、という部分がとても重要な意味を持つ芝居なので、
キャストについては、松尾さんの眼鏡に適ったんなら間違いない、
としか言いようがないと思うんですが、
でも、何で松尾さんはこういうキャスティングにしたんだろう、
と考えながら観ているうちに、
私なりに今回独自の味わいがじわじわと感じられるようになり、
少しずつ納得させられて (自己満足の納得かもしれないけどw)
引き込まれて、満たされて、
あとはもう松尾ワールドに心地良く引き込まれて行きました。


ケガレ多部未華子さん
ラストホープ』の時にも感じたことだけれど、
ベビーフェイスで可愛らしい容姿に似ず、
彼女の中にはしっかりした芯があるような気がします。
その上、非常にピュアなところを持っていて、
今回のケガレは、その二面性がとても有効に働いていたように感じました。

地下室でのいまわしい出来事をすべて忘れて出て来たケガレの、
生まれたての赤ちゃんのような無垢な感じ、
そこからいろんなことを経験して行っても その無垢さが失われない、
もう何やっても可愛くて愛おしくて、でもまっすぐで、という、
でもそれだけじゃない、かすかに陰影もある、という、
そういうところがケガレにぴったりだったように思います。


★ミソギ:松雪泰子さん
ガラスのような透明感とか芯の硬さみたいなものは、
多部ケガレ〜松雪ミソギにうまく繋がっていたんじゃないでしょうか。

後半、マジシャンにいたぶられるミソギがあまりにも儚げで哀れで、
可哀想になって来て、
あれ、これはちょっとケガレっぽくないな、と思ったのですが、
たぶんケガレがミソギ(大人)になってからは、
表だけで生きて行くためにいろんなものを削ぎ落とさなければならなくて、
削って削ってぎりぎりのところまで来ていたところに、
カスミの死を本当に悲しむことが出来ない、という決定的なことがあって、
地下室に戻らなきゃならないことに気づくようになるのかな、と、
そんなふうに、いつも精一杯の引き算で自分の‘表’ を保とうとしてる、
だから「禊(ミソギ)」なのかな、と、
松雪さんを観ていて、そんなふうに感じました。


★ハリコナA:小池徹平さん
阿部サダヲさんの当たり役なので、
徹平くんにはまだちょっと荷が重いかな、
かなりハードルが高かったんじゃないかな、と思ったのですが、
想像していたよりずっと役に溶け込んでいてびっくりしました。
ハリコナみたいな役で この芝居全体の空気に馴染めるというのは、
なかなかすごいことなんじゃないか、と。

ただ、惜しむらくは、
まだどこかに少しだけ小池徹平が残ってる感じがするんですよね。
阿部さんの場合は、どんな役も自分のものにしてしまう
ものすごい適応力を持っていて、
阿部サダヲだったら万事OK」という絶対的な安心感があるのですが、
徹平くんはまだそこまで行ってない、そこがちょっと残念でした。
でもまぁ 相手は 天才・阿部サダヲですからねぇ、
比べちゃ可哀想かな、という気もしますが。

なるべく一所懸命にならないで、役を楽しむことが大事かと。
周りにそういう人がいっぱいいますので(大人計画のメンバーとか)
ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
――すみません、めちゃくちゃ偉そうな言い方してるわ。


★ハリコナB:尾美としのりさん
2005年版の岡本健一さんのイメージが強過ぎたせいか、
実はこの役が、最初のうち、私としては一番違和感がありました。
要するに、私が個人的に岡本さんのハリコナが好みだった、
ってことなんですけどね。w

でも、ハリコナAの徹平くんとハリコナBの尾美さんって、
温かさとか、柔らかさとか、何となく共通するものがあって、
なるほどね〜と思うようになって、
そこからは もうどんどん興味が増して行きました。

IQ160になって、何でも来いの天才になって、
たまに失敗することもあるけど、いつも自信満々で、
ゲイだけどそれがどうしたって開き直って、
ところが、自分のパーフェクトなはずの計画が
母親・キネコの命を危険にさらすことになって思いっきり動揺する、
それから すったもんだあったあげく宇宙をめざす、
このめちゃくちゃな揺れ幅の真ん中に思い切ってドンと乗っかってしまえば、
もっと安心して「面白い」と思えるようになる気がするんですけど。

尾美さん、まだ役に対して少し照れがあるように見受けられるのですが。
そこが可愛いらしくもあるんですけどね。
でも、そういうのを取っ払った尾美さんが観てみたいです。


ダイズ丸:阿部サダヲさん
何をやっても、この人にはほとんど裏切られたことがないので、
ダイズ丸と聞いて、すごく楽しみにしていました。
で、やっぱり阿部サダヲ阿部サダヲでした。

2005年版、橋本じゅんさんのダイズ丸には、
生き永らえていることへの恥じらいとか、
ミソギに対する包容力みたいなものが感じられたのですが、
阿部ダイズ丸には、そういう、前に出て来るものがあまり感じられない。
すごく控えめで、自分の生きる場所を懸命に模索するというよりも、
ただ与えられた場所に 少し遠慮しつつ馴染んで行く感じ。

あまりにもこちらにガツンとぶつかって来るものがないので、
最初はちょっと物足りなくも思ったのですが、
だってしょうがないじゃん こういうふうに生まれついちゃったんだから、
という、諦めとは違う達観みたいなものが感じられるようになって、
ミソギに対しても、
「俺にくれ」という一言がぜんぜんガツガツしてなくて、
だからこそ、最期にミソギに花を咲かせてみせるところが、
ぎゅっと胸が締め付けられるような切なさになったんじゃないかな、と。

余談ですが、このダイズ丸とミソギの間に生まれたアイダくんが、
すごくけなげで、純粋で、まっすぐで、
両親のいいところ全部もらって育っているように感じられたし、
この世界の一縷の希望にも繋がっているように思えて、
私はすごく好きでした。


カスミ田畑智子さん
2005年版の秋山奈津子さんは、
カスミをすごく面倒くさい女として演じていたように思うのですが、
田畑さんは、あまり重いものを引きずっていない感じ。
可愛らしくて無邪気なお嬢様の部分を前に出して、
その裏にある屈折を少しだけ見せていたように思います。

徹平くんや尾美さんもそうだけれど、
田畑さんも、ギスギスしたところがなくてまろやか。
そのまろやかさが、田畑・カスミの場合は、
母性みたいなものに繋がっているように私には感じられて、
(ジュッテンとの絡みなどは特に)
松雪・ミソギとのバランスとしても良かったように思いました。

ただ、そのおかげで、
カスミの自虐性みたいなものが薄れてしまったのが、
個人的にはちょっと残念ではありましたが。


★ジュッテン:オクイシュージさん
何だかすごく良かったなぁ。
私、オクイさんが醸し出す空気感って好きかもしれない。
一途に不器用にカスミお嬢様を想い続けるジュッテン、
カネコ家の家族愛の一翼を担うジュッテン、が
じわじわと観てる私に染み込んで来て、何とも心地良かったです。


★カネコキネコ:皆川猿時さん
うわ〜これはやられたなぁ!っていうぐらい、
ものすごくぴったり、って感じがしました。
キネコの、すべてをなぎ倒して進むようなあくなきバイタリティって、
あのぐらい押し出しの効く人のほうが表現しやすいのかも。
最後に大統領になっても、何ら不思議じゃなかったものね。w
それだけ存在感あるのに、主要メンバーが何やかやと
ややこしく動いたり話したりしてるのをまったく邪魔していなくて、
それもまた凄いなと思いました。

そのあたりは、
荒川良々さんら他の大人計画メンバーにも感じたこと。
そもそも脚本の段階で、彼らは表裏があるようには描かれていない、
(松尾さんはそういうふうに人物設定してる)
だからなおさらそんなふうに感じたのかもしれないですが。


★ジョージ:松尾スズキさん
松尾さんの自作での役のイメージって、
いつもこういう いいかげん野郎のような気がするんですけど。w
ほんといいですよね、めちゃくちゃ自由で。
笑いは掻っさらって行くし、引っ掻き回してさっさと消えちゃうし。

考えてみると、
父ちゃんチャランポランで 母ちゃんしっかり者、っていうのは、
クドカン宮藤官九郎)にも継承されてるような気がする、
忠兵衛さん@あまちゃんとか、実とうちゃん@11人もいる!とか。


★カミ:伊藤ヨタロウさん
2005年版で初めて観た時、
全身から醸し出される雰囲気といい、独特の声といい、
摩訶不思議な空気感があってすごく惹き付けられたのですが、
今回は あの時より もうちょっと人間臭さみたいなものを感じました。
そのせいか、
マジシャンとの共犯者的空気が少し濃くなった気がして、
二人の物語を勝手に考えて楽しんでしまいました。w


★マジシャン:田辺誠一さん
舞台に出演した時の田辺さんに対しては、
(自分でも 何様のつもりだよ って思いながらも)
すごくきついダメ出しするのが当たり前になってる私ですが、
今回はちょっとやられちゃった、って感じがします。
とにかく、歌っても、踊っても、コケコッコ―なんて言っても、
ミソギを縛りつけても、カミとつるんでても、
違和感とか引っ掛かりが ほとんどないんですよね。
松尾さんによって作られたマジシャンという濃いキャラ
しっかり乗っかって、余裕しゃくしゃくで演じているように見える。
押し出しもある、スケールも大きい、見た目もかっこいい、
あれ この感じ誰かに似てる、と思ったら、
TOKIOの長瀬くんだった。w

その「長瀬的 空気感」を田辺誠一が不足なく表現している、って、
実は、長年田辺ファンやってる身からすると ‘ものすごいこと’ なわけで。

強さとか、自信とか、欲望とか、自分のストレートな感情とか、
そういうものをほとんど表に出さないような役が多い俳優さんなので、
ねじ曲がった昏(くら)い執着 みたいなものを今回観られたというのは、
ファンとしてはすごく興味深かったし、嬉しいことでもありました。

だから、素直に降参、白旗揚げます・・と言いたいところですが、
そこはそれ、ひねくれ者の私ですから、
せめて遠吠えぐらいは残しておかないと。w

この芝居は、マジシャンが自殺するところから始まります。
マジックが下手な自分に絶望してこめかみに銃を当て引き金を引く、
しかし弾は彼の頭の中に残り、そこからカミが生まれる。
死に切れなかった彼の頭の傷口から生まれたカミは、
絶望に支配されやすいマジシャンが底辺に持つ はかない危うさや、
母親の呪縛から逃れられない気弱さ、情けなさ、といった、
彼の‘負’ の部分をねじ伏せる力を彼に与え、
彼は、その力によって、
やがてマジシャンとしての名声を得ることになるのですが。

他の主要メンバーと同じように、
マジシャンにも‘負’ の部分があるんですよね。
どんなに隠しおおせようとしても、いきがって強気に出ようとしても、
どこかで、ずるさや、弱さや、卑屈さや、
ひねくれたりねじくれたりしてる部分が、ひょいと突き出て来る。
その時に、もう一色 二色、
田辺さんらしい色味をつけることは出来ないだろうか・・
特有の がなり声は マジシャンとして継承されたものだとしても、
(2005年版のクドカンも同じような声の出し方だったので)
そういう縛りの中でも、田辺色を役の上に刷くことは可能だと思うのですが。
マジシャンの裏、マジシャンの負、
その部分を 表マジシャンにどう注入して深めて行くか、
それこそ、俳優田辺誠一の本当の腕の見せどころじゃないのか、と。

・・はい、かなり欲張りなことを言ってるのは承知の上です。
でも、決して「ないものねだり」してるわけではない、と思っています。


≪感想その1≫はこちら

2014-12-12

『キレイ〜神様と待ち合わせした女』(2014)感想:1

注意! 一部ネタバレしています。
特にこれから舞台をご覧になる方はご注意下さい。
また、文中に一部差別用語が含まれています。ご了承の上お読み下さい。



『キレイ神様と待ち合わせした女(2014)感想:1 【ネタバレあり】

大人計画松尾スズキさん作・演出『キレイ』9年ぶりの再々演。
「どうだった?」って誰かに訊かれたら、
とりあえず「ほんとにすごかったよ!」と言う、
そのあと「どこが?」って訊かれたら 「・・全部!」って答えるしかない、
だって、そう答えるしかないでしょ、これはもう。

いつも思うのだけど、松尾さんの芝居は感想を書くのがものすごく難しい。
芯を貫くような明確なストーリーはないし、
何か意味のあることを考えかけると
次の瞬間には それを粉々にされてしまってるし、
そもそも、そんなことをウダウダ考える間(ま)を与えられないほど、
次から次へと場面は変わって行くし、時系列は混ぜこぜだし、
主要人物はみんなめんどくさいし、
そんな彼らが背負ってたり抱えてたりするものを
こっちにどんどんぶつけて来られて、
痛いし、切ないし、面白いし、馬鹿だし、
ただただ舞台の彼らに惹きつけられて3時間半、
終わってみたら「松尾スズキすごい!」という感想が真っ先に浮かぶ、
そういう舞台でござんした。チャンチャン。

・・・いやいやいや。
そこで終わっちゃいけない、なんか負けた気分になる。頑張ろう。

    **

《宇宙は見える所までしかない》という曲の中に
物語で私を飾らないで」というフレーズがあるのだけれど、
松尾さんは、見た目や言葉のかっこよさとか美しさから
‘飾り’を捨て去ったところに、
醜さとか、残酷さとか、いやらしさとか、
奇形とか、異質なものとか、そういうものを普通に・・
そう‘普通に’そこに同じように並べて来る。

この芝居全体が
物語」という綺麗事(きれいごと)にキチッと収まってしまうことを嫌いつつ、
普通でないと思われている者が 普通(あたりまえ)に存在する空間を、
あたりまえのように(普通に)表現してみせる。

頭は弱いけど花を咲かすことが出来るハリコナ、
最期まで純粋さを貫く異形のダイズ丸、
美しく何不自由ない暮らしをしていながら偽善に走るカスミ
目を閉じることで見たくないものを見ないことにしたジュッテン、
10年間地下室に閉じ込めた女を探し追いつめて
屈折した感情をぶつけるマジシャン・・

ここに登場する彼らは、皆、表(正)と裏(負)を併せ持っている。
肉体的な正と精神的な負、あるいは、精神的な正と肉体的な負・・
どちらにしても 何か欠けたものを抱えた・・
言わば 片端(かたわ)なヒトたちなんだと思う。

   (片端という言葉が差別用語なのはもちろん知っていますが、
   ここでは自分にとってとても意味のある言葉になっているので
   あえて使わせてもらってます。不快に思った方がいたらごめんなさい)


そんな片端の彼らが 普通 に生きている世界に、
観ている者はぐいぐい引きずり込まれ
じきに その‘普通’に慣れて、
この物語の、物語という形にならない複雑さも猥雑さも受け入れて、
舞台全体から発せられる熱にズキズキしながら、
ありえない世界のありそうな現実に引き込まれて行く・・

もしかしたら、舞台上のすべては、マジシャンがかけた催眠術で、
ケガレはもちろん、宇宙に行き損ねたハリコナにしたって、
実は「ソト」に出たわけじゃなくて、
彼らが見える宇宙の遥かその先にソレはあって、
登場人物全員、
何層かに分かれた空間に閉じ込められているに過ぎなくて、
それは当のマジシャンや神にしても同じことで・・


芝居が終わって、マジシャンの催眠術が解けて、
不思議な夢から醒めたように、私は少しホッとして、
それから 何だかとても淋しくなる――

自分の半分(裏)を地下室に置き忘れ、表だけで生きて来たミソギは、
やがて、その もう半分の自分と一つになるために地下室に戻る。
ミソギと少女ミソギは とりとめなく話し合う、
よろしくケガレるために、よろしく生まれ直すために・・

そうして新しく生まれケガレは、
花火になったハリコナを見て叫ぶ――「花!・・キレイ」と。
そして歌う「裸で間抜けで私はキレイ ケガレケガレて私はキレイ」と。

――何だかとても淋しくなる、
まだくっきりと耳に残るそのケガレの歌を思い返して、
これは、マジシャンの煙幕で出来た白い繭玉(コクーン)が私に見せた、
‘特別な普通’ の世界のお話なのだ、と思い知らされて。

そうして、私はソトに出て ‘本当の普通’ に帰る、
健全で、正常で、ささいな間違いをも認めず、
ケガレたもの(片端なもの)に蓋をして見ないふりをする、
偽物の「キレイ」が幅を利かす、シアワセな世界に。


・・・・何だかふわふわと
身体も心も「あるべき場所」に着地しないまま2日が過ぎて、
自分の内にも間違いなく存在するケガレ(片端な部分)を、
愛おしく思うことを許されたような気がする今・・

まぁ、松尾さんは、
こんな安易で中途半端な共感など、
断固として拒(こば)むんじゃないかとは思うけれど。w


≪感想その2≫(出演者について)はこちら


12月10日(水)13:30開演 Bunkamuraシアターコクーン 1階BR

Bunkamura25周年記念
『キレイ〜神様と待ち合わせした女』     
公演日程:2014年12月5日-30日/Bunkamuraシアターコクーン
2015年1月8日-18日/シアターBRAVA!
作・演出:松尾スズキ 音楽:伊藤ヨタロウ 音楽監督:門司肇 振付:振付稼業air:man 
演出助手:大堀光威、佐藤涼子 舞台監督:二瓶剛雄
チーフ・プロデューサー:加藤真規(Bunkamura)、長坂まき子(大人計画
出演:多部未華子阿部サダヲ小池徹平尾美としのり田畑智子
皆川猿時村杉蝉之介荒川良々、伊勢志摩、猫背椿、
宮崎吐夢、顔田顔彦、少路勇介、町田水城、伊藤ヨタロウ、
家納ジュンコ、オクイシュージ、松尾スズキ田辺誠一松雪泰子 他
『キレイ』Bunkamura公式サイト 
『キレイ』大人計画サイト 

2014-12-06

『ディア・シスター』(第8話)感想

『ディア・シスター』(第8話)感想

葉月松下奈緒)と美咲(石原さとみ)がタイムカプセルを埋めたのは
11年前(2003年)、葉月が19歳、美咲が16歳の時。
その時はまだ、宗一郎(田辺誠一)は 葉月の憧れの人でしかなく、
美咲と問題を起こしてもいなかった。
母・七重(片平なぎさ)が働きづめであまり家にいなくて、
ずっと二人きりだった姉妹は、とても仲良しだったんでしょうね。

映画をまねて書きっこした「死ぬまでにしたい10のこと」、
美咲の10番目のしたいことは「お姉ちゃんを幸せにする」だった。
今までさんざん妹のいいように振り回されて来たと思っていた葉月は、
それを見て、やっと美咲の本心を知ることになります。

美咲に対する葉月の気持ちの変化を、
ずっと傍にいて優しく見守ってくれた陽平(平山浩行)の存在が、
少しずつじんわりと葉月の中で大きくなって行く、
その流れがとても自然で、二人のことをますます応援したくなったし、
本当にこの二人には幸せになって欲しい、と思いました。


一方の美咲は・・
宗一郎と会い、おなかの子の父親は彼であることを告白
しかし、認知してもらうつもりも一緒に育てるつもりもない、
と、きっぱりと宣言。
今までウザいほど彼女につきまとって来た宗一郎にしては、
やけにあっさりと、彼女の言葉を受け入れます。
う〜ん、ここはもっと食い下がってもいいんじゃないの、とも思うけれど、
自分を嫌ってる(と宗一郎は思ってる)彼女をこれ以上傷つけたくない、
だから身を引く、ということなんでしょうか。

案の定、酔っ払ってる宗一郎のもとに 永人(岩田剛典)が来て、
美咲が宗一郎を好きなこと、迷惑かけたくなくて突っぱねていることを伝え、
子供が誰の子かなんて関係ない、
美咲が好きならこの先何があっても美咲を守って行く覚悟をしてくれ、
と詰め寄ります。(永人かっこいい)

いやいや、宗一郎は、最初から
美咲に子供を一緒に育てようと言ってるし、
宗一郎の子供じゃないと言い張る美咲に対して、
DNA鑑定を持ち出すほど、子どもに対する責任感もおそらく愛情もある、
永人にも(美咲のことを)あきらめるなんて出来ない、って言ってるし、
ちゃんと意思表示してるんですよね。
それを頑として受け入れないのは、美咲のほうなんだけどな。

でも、確かに、宗一郎には、
どこか、何か、一歩踏み出せないでいる感じがありますよね。
その辺のカギを握っていそうな宗一郎の元妻・貴子(音月桂)が
二人の話を偶然聞いていた、というのも気になります。


宗一郎が、美咲に対してストレートにぶつかって行けないのは、
貴子と美咲と自分との関係において、
10年前の出来事がいまだに深く影を落としていて、
本当の意味でそれを乗り越えることが出来ていないからなんじゃないか、
と私には感じられるのですが。
美咲が宗一郎を頑(かたく)なに拒むのも、
何かしら贖罪(しょくざい)のようにも思えるのですよね。
・・まぁ、あいかわらず私の勝手な深読みではありますが。


次回の予告を観ると、
そのあたりにも大きな動きがあるようですし、
何となく、そこから先のラストもぼんやりと見えて来た気がするので、
あまり先走らずに次週を待ちたいと思います。



『ディア・シスター     
放送日時:2014年10月-毎週木曜 22:00-(フジテレビ系)
脚本:中谷まゆみ 演出:関野宗紀 プロデュース:中野利幸
音楽:Jhameel 橘麻美 白石めぐみ 大間々昂 
主題歌:「Happinessシャネル 挿入歌:「BF」moumoon
制作フジテレビドラマ制作センター
キャスト:石原さとみ 松下奈緒/岩田剛典 平山浩行 森カンナ
田辺誠一 堀内敬子 片平なぎさ 他
『ディア・シスター』公式サイト