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★≪路地裏より愛を込めて≫全エントリー   ★カテゴリー別タイトル一覧【2014/06/25更新】    .          

2014-10-20

『ディア・シスター』(第1話)感想

『ディア・シスター』(第1話)感想

ストーリーが非常にテンポ良くポップに展開して行くので、
観ていてとても楽しかったし、
登場人物各々の輪郭がしっかり出来ていて、
キャラの中身も ある程度重みがあって単純ではないので、
一人一人に対して、感情移入しやすかった。
まだ1回目なので今後どうなるかは分かりませんが、
今回観た限りでは、このドラマ、面白くなりそうな予感がします。

特に、松下奈緒さんと石原さとみさん姉妹が魅力的でした。
しっかり者の姉・葉月とちゃっかり者の妹・美咲、
というキャラ設定を目一杯生かして、
自由に伸び伸びと演じているのがいい。
それぞれに悩みもあるのですが、まだその兆しが見えたばかりなので、
今後そのあたりが深まって来ると、さらに魅力が増すんじゃないか、と。

クレジットの〆が片平なぎささんなのは、
母親の存在が今後この姉妹に少なからず影響を及ぼす、
ということなのだろうけれど、
それと姉妹の恋愛模様がどういうバランスで組み立てられ、
絡み合って行くのかも興味のあるところ。
どちらも中途半端にならないように、しっかり描いて欲しいものです。


メインの男性陣がまだほとんどちゃんと描かれていない中で、
美咲のBF・永人(岩田剛典)がすごく良かったです。
自分の兄のことが好きな美咲を密かに想い続けてる、
彼女に警戒心を抱かせないためにゲイのふりをしてる、という
何とも切ない役どころで、惹かれました。

私は、日頃から、
ラブロマンス系のドラマは、コメディであろうがシリアスであろうが、
切なくなくちゃいけない、と思ってる人間なので、
その雰囲気を掴んでいるように見える永人や、
いろんな想いが渦巻いてるような美咲の描き方には、
とても魅力を感じます。

そのあたりは 脚本(中谷まゆみ)のうまさだろうし、
その脚本と、俳優陣の持ち味を、
最大限生かそうとしている演出(田中亮)も好もしい。
どちらも無理のない作り方をしている、
だから、演じ手も、無理なく演じることが出来ている気がします。

今後 さらにしっかり描かれるようになるであろう
APPLESEED」の姉弟(堀内啓子・平山浩行)や、
キャラがすごく魅力的な 葉月の親友・和子(森カンナ)、
キーパーソンになりそうな永人の兄・宗一郎(田辺誠一)が、
これからこの姉妹にどう絡むか、
脚本・演出がこの人たちをどう動かそうとするのか、も楽しみ。

登場人物たちが、それぞれの立場で、
「切ない気持ち」をさらに深めて行って欲しい、
そんな脚本・演出であって欲しい、と願ってやみません。

そして、第1回にしてさんざんな扱いをされた(自業自得だけど)
吉村(平岡祐太)くんにも、
ぜひとも納得の行く落としどころを作って欲しい、
こういう身も蓋もない役を多く演じて来た俳優さんを観て来て、
さんざんイライラを募らせた経験者として、
そんなことも思いました。


ストーリーに散りばめられたいくつかの重要なポイント――
妊娠しているらしい美咲、妊娠しにくい体質だと分かった葉月
死ぬまでにしたい10のこと・・
初回にして貼られたこれらの伏線の終着点がどこか、
何となく想像出来なくもないんだけど、
それがフェイクなのかどうか・・はまだ何とも言えないところ。

想像通りのラストになるにしても、そうでないにしても、
そんなに単純ではない、ひねりを効かせた展開になって行きそうなので、
毎回、次が楽しみ、と思えるものになりそうで、期待大。

そんな彼らが息づく世界を、
見事に魅力的なものにしてくれた美術スタッフにも◎。
葉月の部屋、永人の住まい、APPLESEED空間、等々、
密度が濃くて嘘がない感じが、観ていてすごく心地良かったです。


さて、田辺誠一さん。
しっかり二枚目の役って感じがしますね〜。
柿崎(肩ごしの恋人)ほど正統派ではないにしろ、
あまり三枚目には逃げられない気がする。
(いろいろ背負ってるものがある大人だから)

いやいや、ここに来てそんな役が観られるなんて、なんて私得。
なかなかハードな過去があるようなのですが、
そのあたりも含め「大人」としてどう演じてくれるのか、
すごく楽しみにしてるんですけど、
で、予告のキスシーンで ほぼ半分満足してる自分がいるんですけど、
いくらなんでもちょっと気が早過ぎるでしょうか。w


・・・ところで、美咲のおなかの子の父親はいったい誰なの?


『ディア・シスター     
放送日時:2014年10月-毎週木曜 22:00-(フジテレビ系)
脚本:中谷まゆみ 演出:田中亮 プロデュース:中野利幸
音楽:Jhameel 橘麻美 白石めぐみ 大間々昂 
主題歌:「Happinessシャネル 挿入歌:「BF」moumoon
制作フジテレビドラマ制作センター
キャスト:石原さとみ 松下奈緒/岩田剛典 平山浩行 森カンナ
田辺誠一 堀内敬子 片平なぎさ 他
『ディア・シスター』公式サイト 

2014-10-03

≪翔夢15周年!≫

≪翔夢15周年!≫

2014年10月3日、
このブログの母体である≪翔夢≫が15周年を迎えました。
それに合わせ、今までこのブログに書いて来た
田辺誠一さん出演のドラマ映画舞台等の感想をすべてアップしました。

15周年記念だから、
この機会に何か目新しいことをやってみようか、とも思ったのですが、
あれやこれやいろんなことがあって、
それらをなんとか乗り越えての15年だったりするので、
まぁ、普段通りでいいのかな、と。w

≪翔夢≫は、これからも たぶん何も変わらない、
無理なくマイペースで続けて行けたらいいな、と思っています。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

HP≪翔夢≫はこちら


2014/10/3   翔

2014-09-18

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』感想まとめ(その2/第6-9話)

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』感想まとめ
(その2/第6-9話)
ネタバレあり】


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』     
放送日時:2014年4月-毎週水曜 21:00-(テレビ朝日系)
脚本吉本昌弘 大石哲也 真野勝成 徳永富彦 岡崎由紀子  
監督:猪崎宣昭 新村良二 
ゼネラルプロデューサー:松本基弘(テレビ朝日
プロデューサー:藤本一彦テレビ朝日 金丸哲也東映 和佐野健一東映 
音楽:吉川清之 主題歌加藤ミリヤ×清水将太「ESCAPE」 
制作テレビ朝日 東映
キャスト:小澤征悦 田辺誠一 塚本高史 
神尾祐 田中隆三 猪野学 篠田光亮 
渡辺いっけい 西田敏行    『TEAM』公式サイト 


★『TEAM』感想まとめ(その1/第1-5話)はこちら


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第6話)感想 

警備警察(本庁や所轄)と公正取引委員会と公安警察・・
ひとつの事件にそれぞれの管掌(かんしょう)が絡(から)んで来ると、
いろんな柵(しがらみ)も生まれるようで。


老舗デパート長志万屋で海外からの仕入を担当していた
花形社員の商品部課長・百瀬が自宅に放火され死亡。
西新宿署に捜査本部が立ちますが、
警察と公取では、事件に対するスタンスが当然ながら違います。
産地偽装問題を内偵する公取の中井(堀部圭亮)から、
詐欺の疑いで長志万屋を内偵中だからおまえたちは下手に動くな、
と押さえつけられる捜査員たち。
それでも、彼らは、偽装がらみやストーカーがらみ等々
百瀬と接点のある人間たちを丁寧に調べ上げて行きます。

毎回のことですが、
その、犯人に辿り着くまでの捜査過程が簡単ではなく、
まさに島野係長(田辺誠一)の言うとおり
「あらゆる可能性を考え ひとつひとつ確実に潰す」ために
捜査の基本に従って地道に調べを続けて行く、
観ているこちらも一緒に捜査しているような気持ちにさせられる、
地味ですが とてもいいシーンになっています。


八方手詰まりの中、誰かがマスコミに産地偽装の情報をリーク、
それを機に事件の全容が一気に表面化、
百瀬が亡くなる原因となった火事は、
彼の妻・真理子(宮地真緒)の放火と判明します。

結局、百瀬の死は、
長志万屋の産地偽装とは直接には関係なかったのですが、
それがなかったら、真理子は夫の不倫を疑うこともなかったし、
発作的に放火することもなかったわけで、
そのあたりの、‘いくつかの出来事’ と ‘事件’ との複雑な絡み具合が、
このドラマの面白いところでもあるなぁ、と思います。

所轄の森村巡査(近野成美)が調べた膨大な数の迷惑メールの中に、
事件の重要なヒントがあった、というところもいいですよね。
無駄と思われることを、地道に丁寧に積み重ねて行く、
それが捜査の大きな手掛かりに繋がる・・

13係の面々が外の喫煙所でタバコを喫ってるところに、
シャブ取引の現場を抑えた車が到着、
「芋づる式に行きそうだと 生活安全課は大盛り上がりだそうですよ」
・・なんていうちょっとした会話も、
後の、アリバイ証言者・前田の連行、というところに繋がって来たり、
どのシーンにもちゃんと意味があって、
ちょっとでも見逃したらもったいない、という気分になります。


ところで、捜査を大きく進展させたマスコミへのリークは
いったい誰がやったのか・・
島野(田辺)は屋敷(塚本高史)を疑っていたけれど、
実際にリークしたのは彼だとしても、
その指示を出したのは佐久管理官(小澤征悦)だったんじゃないか、
と思うのですよね。
ま、たぶん谷中刑事部長西田敏行)も
同じようなことを考えていたのかもしれないけれど。

佐久か谷中か、屋敷がどちらに付いているのか、誰の駒なのか。
「僕はただのメッセンジャーですよ」という彼の言葉には、
どちらとも取れるニュアンスがあって、
(この時の屋敷=塚本くんのチェシャ猫笑いが 何ともいい感じだった)
観ている側には確かなことは分からないんだけど、
そこが逆に、あれこれ想像して楽しめる部分にもなっていて、
その、画面の裏側でいろいろな人間が
さまざまな思惑や意図を持って動いているのが感じられる、というのも、
このドラマのすごく魅力的なところだと思います。


佐久管理官が、そのリークを利用して
公取・中井(堀部)の動きを封じ込め、自分たちの事案を解決、
最後には公取に花を持たせてやる余裕さえ見せたところも、
心地良かった。

また、自己嫌悪に陥った森村巡査(近野)に対して
「あなたは警察官としてとても大切なものを持っている。
私を含め多くの警察官が失くしてしまったものです」なんて励ましたり、
(大切なものって何でしょうね。ずっと考えてるんだけど分からない)
と、少しずつ人間味も感じられるようになって来ました。

彼のこの ‘優しさ’ は、相手が女性だからなのか、
あるいは、彼の性格や人柄を
こういう形でこれから少しずつ出して行こうという意図なのか・・
佐久は本当に ‘才で情を切り伏せた人間’ なのか、
あるいは、そこに何らかの理由があるのか・・

個人的な希望を言わせてもらえば、
相手が自分をどう思っているかなんてことに一切頓着しない、
器用に立ち回れないし、他者と相容れない性格だから友達もいない、
でも13係に対しては 信頼して委ねている部分がある・・
佐久がそういう人であって欲しいと思っていますけれども。


最終的に、産地偽装問題は、
長志万屋の知らぬ間にテロリストへの資金源にされていた、
なんていう国際的な話にまで発展しますが、
公安の捜査が入る前に、
佐久と13係は自分たちの事件を解決したらさっさと身を引いて
それ以上深入りしたりは しません。
自分たちの仕事の範囲をきっちりと見極めているところもいいですよね。
スーパーヒーローみたいに何でもかんでも佐久が解決、
なんてことにならなくて良かったです。


さて、今週の13係。
所轄と一緒になってずっと地道に捜査していたので、
突出した場面はなかったのですが、それでも興味深いシーンはあって。

佐久に「島野係長、中井捜査官の下でサポートをお願いします」
と言われて「何で公取の下に」とキレる太田(神尾佑)とか、
「13係の係長ともあろう人が随分と頭の悪いことを」と
島野に辛辣な言葉を吐く中井を 睨みつける太田と風間(篠田光亮)とか、
百瀬を強請(ゆす)っていた男のメール
悪党の言葉’ で翻訳する太田とか・・
(あれ、太田ばっかりだw)

署の外でタバコを喫っているシーンも好きでした。
加藤(田中隆二)・中藤(猪野学)・太田・風間が話してるところに
島野が入って来るんだけど、
(小菅はタバコを喫わないって設定でしたっけ?)
島野が上司っぽくなくて、みんな横並びに対等という感じがして。
本当に いつも いい雰囲気ですよね 13係。

小菅(渡辺いっけい)にちょっと突っ張った娘がいることも判明。
このドラマには、今のところ、
刑事たちの私的な部分が全然出て来ないのですが、
そのあたりは意図的に、なんでしょうか。
彼らの私生活が安易にクローズアップされ、
メインのネタに使われるのもどうかとは思いますが、
でも、こういうちょっとした小ネタを挟んでもらっただけでも
得した気分になるのも確かで、そういうところを見せられると、
何だか、もっと彼らを好きになってしまいそうな気がします。
  (私生活もだけど、本音言うと、13係好きの私としては、
  島野がどういう経緯でこのメンバーを集めたのか も知りたい)


今回は女性の出演者が多く、
雰囲気がいつもより少し派手めだな、と思ったら、
女性の脚本岡崎由紀子)だったんですね。
こういう1話完結のドラマでは、
何人かの脚本家が競合するように作品を作る、
だから、たまに こういった色味の作品が混じるのも面白いと思いました。
でも、ま、私はいつもの「中年のおっさんだらけ」の、
むさくるしい雰囲気の方が好きですが。w


撮影はすでに1週間ほど前にクランクアップしたんだとか。
視聴者の好みを探りつつ、途中から内容を変えて行くドラマも多い中、
この早さは、視聴率視聴者の呟き等々に縛られない、揺らがない、
自分たちが作りたいものを作る姿勢にも繋がっているようで、
気持ちがいい・・と思ったら、
え〜〜今夜入れてあと3回しかないんですか!?
それはあまりにも残念だ〜、
ようやくメインのキャラに血が通って来て、
これからますます面白くなりそうだと思ったのに、もったいない・・

よし、こうなりゃ最終回までずっと、
「ぜひ続編を!」とシュプレヒコールをあげ続けることにしよう。

★6話のコメントはこちら

ゲスト:堀部圭亮 宮地真緒 近野成美  
脚本岡崎由紀子  監督:新村良二




『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第7話)感想 

  八王子の開発地から白骨死体が発見され、
  投資ファンドの代表・仲正利樹(西村雅彦)が容疑者として浮上したが、
  仲正は事件直後に外国へ移住。
  現地で国籍とパギ・スカルナという新たな名前を取得し、
  伯爵の称号も手に入れていた・・  (公式サイトより)


ということは、佐久管理官(小澤征悦)がやり合う今度の相手は外務省か、
と期待したのですが、実際はそうではなかったですし、
今まで 所轄の刑事を演じることが多かったゲスト俳優の役回りも、
今回(ゲスト西村雅彦さん)は追われる側になっていて、
それを佐久が自ら駒になって捜査する、という、
いろいろなところがいつもと違う、捻(ひね)りが感じられる回でした。


佐久管理官×島野(田辺誠一)率いる13係×所轄の刑事
という定石のパターンを今回は使わず、
したがって13係が靴底減らして聞き込みするシーンがほとんどなく、
所轄の個性的な刑事が出てくることもなく、
毎回 そういう場面を楽しみにしていた私としては、
正直なところ、ちょっと物足りなさを感じつつ観始めたのですが・・


事件そのものについては、
仲正(西村)の、樹理(浅見れいな)の母親・真理に対する純愛、
仮想の国の伯爵、DNA鑑定に必要な涙の採取・・等々、
なかなか凝(こ)った内容で、独特の味わいがあって面白かったですし、
いつものパターンとは かなり違う展開でありながら、
このドラマが持つ空気感がほとんど崩れることはなかった、
というところも興味深かったです。
(全体的なイメージとして、何となく『相棒』っぽさを感じました)

ただ、
何度か差し挟まれる仲正の中学時代の回想シーンに、
彼が真理に対して抱いていた純粋で深い愛情が、
その心にしっかりと踏み込んだ形で表現されていなかったのではないか・・
  (最後に花火を使いたいなら、そのエピソードを重点的に描くべきでは?)
十字架や音楽などの宗教的な風味を
あまり深い意味もなく安易に使い過ぎたのではないか・・
等々の残念な印象が自分の中に残ってしまったこともあって、
私には、この作品が、惜しいところで
上質なメルヘン(おとぎ話)に仕上がり切っていなかったように感じられて、
仲正の号泣に存分に感情移入出来なかったのが
ちょっと寂しかったです。


一方で、非常に面白く感じたのは、
駒となって動く佐久管理官の、いつもと異なる佇(たたず)まい。
樹里の住むマンションの警備員になりすました佐久が、
彼女に近づき、すぐに彼女の信頼を得る、
その時の、柔和な表情や、ちょっと背を丸めた姿勢、
両手でカップを持つ仕草・・等々が、
いつもの管理官としての姿とはまったく違っていて、
佐久が何の違和感もなく警備員を‘演じている’ その姿が、
「駒になるというのはこういうことだ」という見本を
13係の面々に突き付けているように思えて。

そして、さらに惹かれたのは、
必要なものが手に入ると分かったら さっさと仮面をはずす、
冷血漢・佐久の本領発揮のシーン。
「ハンカチをお貸しいただけますか」と樹里に告げる彼には、
もう、あの柔和で穏やかな警備員の姿はカケラもなくて、
その‘非情さ’ に、彼の刑事としての凄みを感じて、
観ているこちらまで樹里と同じような気持ちになって、
ちょっと身震いしてしまいました。

いやいや、いいですね、佐久管理官。
今回は、彼の「この部分」を引き出すための回だったんだ、と思えば、
13係の出番が少なかったのも納得出来ます。


以前、八神刑事課長(佐藤浩市)は、佐久に対して
「才で情を切り伏せた」と言ったけれど、
佐久のあの表情を観ていて、
それって ちょっと違うんじゃないか、と思えて来ました。

仲正の純愛をもバッサリと切り伏せる 容赦のない強さ・確かさは、
佐久の「正義感」から生まれている・・
なんて言うと、いかにも安っぽく聞こえるかもしれないですが、
でも、何だかそういう言葉でしか表現出来ないものが、
佐久の内にはしっかりと根付いているような気がするのです。

「正義」は、人によって形を変えます。
仲正にしても、彼なりの正義があって、それに基づいて犯行に及んだ、
とも言えるわけで。

では、人それぞれの立場や事情に依(よ)らない、
誰にもあてはまる「不動の正義」というものはあるのか。

それは「法律」である――と、佐久は信じているのではないか・・
感情や心情に左右されずに、
法に照らし合わせて事件のすべてを判断すること、それこそが、
「不動の正義」を貫く唯一の道である、と。
‘才’ ではなく、 ‘正義’ で情を切り伏せる、
その 一貫して揺らがない確かな「物差し」を持っているから、
彼は、あんなにまっすぐでいられるんじゃないか、と。

もちろんこれは私個人の想像(妄想)でしかありませんが、
でも、そんなことを考えていたら、
何だか、佐久がなぜ捜査員たちを‘駒’ と呼ぶのか、
誰とも‘情’ を繋げようとしないのか、その理由が分かった気がして、
佐久という人間が、ものすごく深いものを抱えた存在に思えて来て・・

罪を認めた仲正に対して、ようやく彼は少しだけ表情を緩め、
仲正のおとぎ話に耳を傾ける・・
モノトーンの過去が鮮やかな色彩に染まる、
この時の仲正=西村さんの はにかんだような表情がまた素晴らしくて、
画面をグルグル回転させる なんて小手先なことしないで、
二人のいい表情をじっくり見せてくれよ、と思ってしまいました。


さて13係。
今回、あまり特筆するようなところはなかったですが、
普段は動き回っている13係が動かず、普段は動かない佐久が動く、
という反転の面白さがあって、
捜査本部の小さい部屋で談笑していたりとか、
車の中でひしめき合って画面を見つめていたりとか、
(佐久の急なアップに皆で「うへ〜」ってなってるところがかわいいw)
佐久に対する島野係長の、
「騙(だま)す・出し抜く…そういう分野においてこの人は天才だ」
という言葉に耳を傾けたり、だとか、
そんな 動かない13係を観るのも楽しかったです。


それから、捜査本部の雰囲気も、私の毎回の楽しみのひとつ。
今回、捜査本部もこじんまり、副署長ものんびり、
どこかのどかな雰囲気だったのは、
事件の性質のせいなのか、あるいはやはり土地柄を表現しているのか、
なんてことをあれこれ考えて、楽しませてもらいました。


小菅(渡辺いっけい)や谷中刑事部長西田敏行)が今回はお休み、
屋敷(塚本高史)は外回りで、佐久や13係とまったく絡まないのが
ちょっと寂しかった・・と思っていたら、
次回はいよいよ谷中と佐久がぶつかるらしい。
それもまた楽しみです。

★7話のコメントはこちら

ゲスト西村雅彦 浅見れいな  脚本:真野勝成  監督:猪崎宣昭



『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第8話)感想 

佐久管理官(小澤征悦)が谷中刑事部長西田敏行)のもとを訪ね、
半年前、未解決のまま捜査本部が解散となった
女性研究員殺害事件の再捜査をしたい、と申し出ます。
なぜ今さら、と訝(いぶか)谷中に、佐久は、
「ちゃんねるツー」というサイトに、
「半年前の目黒の研究員殺害事件はまだ終わっていない。
工学博士関田がすべてを知っている」という書き込みがあり、
しかもそれが1時間後には何者かによって削除されてしまう、という
不審な出来事があった、と。

しかし、その関田教授浅野和之)は、
実用化されれば7000兆円の国益をもたらすと言われる
メタンハイドレートの採掘方法を考え出した人物。
彼が犯人だったら、研究が止まってしまう可能性が出てくるし、
そのあいだに他国に先を越される恐れも出てくる。
そんなことになってしまわないように、
実は、経済産業省が 圧力をかけて捜査本部を解散させ、
ネットの書き込みを削除させていたのでした。


そんな裏事情を知ってもなお捜査を続行しようとする佐久管理官を、
陶久(すえひさ)経済産業省政局長(中村育二)は
「国益より瑣末なたった一人の女の事件を取る気ですか?」
と咎(とが)めます。しかし佐久は、
「その一人一人が集まって国家というものが成り立っています!」
と強い口調で突っぱね、
さらに、谷中から「うやむやにしろ」と言われて、
「管理官という職務は事件解決に向け全力で指揮を執るものと
心得ております。谷中部長、私はあなたにそう教わりました。
7000兆円などなんの関係もありません!」
と きっぱりと跳ね除(の)けます。
そして、事件の全貌が明らかになった時には、関田教授に対して、
「あなたは自分のした事を恥じるべきだ。
人に教える立場であるにもかかわらず体面にだけ目が行き
人を利用した。
国から援助を受ける研究者であるにもかかわらず
目先の私利私欲に走った。
布川麻奈美さんは彼(高橋)に殺されました。
だがその前に 彼女はあなたに殺されていたも同然だった!」と糾弾。

この三つの啖呵(たんか)が本当に歯切れが良くて、ゾクゾクしました。
佐久管理官の輪郭だけでなく、
内面も、かなりくっきりと見えて来たような気がします。
最初は、彼がどんな人間なのかまったく読めなかったのですが、
じわじわと、その人となりがにじんで来るにつれ、
魅力的な味わいが出て来て、
やっと佐久という人間の大きさや深さが分かって来た、
さぁこれからますます面白くなるぞ、と思ったら、
もう次回が最終回という・・ああもったいない!


小川(モロ師岡)ら所轄の刑事たちが捜査に本腰を入れた時と、
屋敷(塚本高史)が谷中から預かった盗聴器を、
わざと佐久の分かりやすいところに置いたのを見た時、
佐久が かすかに浮かべた笑みも良かった。
それって、彼らが佐久の策に乗ったから、じゃないと思うんですよね。
佐久には たどり着くべきゴールが見えている、
自分が目指すその同じゴールに向かって部下たちも動き始めた、
そのことを知って、少しだけ心を緩(ゆる)めたんじゃないか、と。

それは、13係に対してもそうで、
島野(田辺誠一)と加藤(田中隆三)に
小川(モロ師岡)と一緒に夕食を共にするよう指示する、
それは、捜査の糸口を見つけ出して欲しい、
やる気のない所轄の刑事たちへのカンフル剤となって欲しい、
という思いがあってのこと。
島野って、いつも佐久の指示に「なんで私が?」という顔をする、
ちょっと天然なところもありながら、
(何でリゾット注文しちゃうの?ってあたりも含めw)
ちゃんと事件解決の足掛かりになることを見つけて来るんですよね。

彼が率いる13係は、
いつもの小菅(渡辺いっけい)や太田(神尾佑)に加え、
今回は加藤(田中)がいい働きをしていました。
この人も、地味だけどしっかりした歯ごたえがありそうで好き。
13係のおとうさん、って感じがします。
(ちなみに私のイメージでは おかあさんは小菅さん)

屋敷(塚本高史)も事件に積極的に入り込んで来るようになって、
すっかり刑事らしくなって来ました。
けして佐久が彼に対して何か特別なことを言ったわけでも
やったわけでもないんだけど、
いつのまにかそうなってしまっている、佐久マジック
「どうして自分から壁を作るのか、あの人を見ていて不思議に思う」
という屋敷の言葉には、
すでにかなり佐久に傾倒している様子が伺えます。

その疑問に応える小菅。
「捨てるものがないのか 守りたいものがあるのか、どっちだろうな」
と なかなか意味深なことを言ってましたが、
私、画面の前で「そりゃ どっちもでしょ」と即答してました。w


高飛車だけどまっすぐな信念を持つ佐久と、
生真面目だけど天然な島野、
その下で働く13係(特に小菅)がしっかり二人を支え、
屋敷が 刑事という仕事に のめり込み始めた・・
そんなふうに、うまいこと各々のポジション取りが固まって来て、
これからそれぞれの個性や関係性がもっともっと深まって
面白くなって行きそうなのに・・
もう一度 声を大にして言おう、
ああ本当にもったいない、あと1回で終わりだなんて!


ところで、ひとつ気になったのですが、
佐久は なぜ ちゃんねるツーの書き込みを知ったのでしょうか。
膨大な量のネットの書き込みを
いちいち全部チェックしているとは到底考えられないので、
たぶん、彼のバックには、
BORDER』の古田新太さんや滝藤賢一さんや野間口さんや浜野さん
みたいな、影の協力者がいるんじゃないか、と推測。
そう考えると、捜査本部が立ち上がる前に、
すでに彼には相当量の情報が入っているようにも思えて、
だからいつも、思い切った最初の一歩を踏み出すことが出来るのかな、
なんて・・はい、いつもの妄想ですけどね。w


佐久(=小澤)の魅力が前面に出てくるようになって、
なんとなく島野(=田辺)がその陰に隠れてしまった感は否めませんが、
だけど私は、突出せず、佐久を頂点とした『TEAM』の中に
(う)もれている島野も、けっこう好きだったりします。

今回、彼に対して私が感じた‘天然’ 疑惑は、
回をさかのぼって考えてみると、案外 的を得ていたりするのかな、
田辺さんならそういう島野もありだな、なんて思ったりもして。
ま、ファンの正直な気持ちとしては、
ものすごく多彩で豊かな表情を作れる人なのに、
島野という役に対して、その2割ぐらいしか使っていないのが
非常にもったいない気がしないではありませんが。


このドラマロケが多くて、それも毎回の楽しみのひとつなんですが、
今回の目黒東署は、継続捜査ということもあり、
空気の淀んだ倉庫みたいな部屋が捜査本部ということになっていて、
これはさすがにセットだろうと思ったのですが、
全方向から撮影しているので、ひょっとしたらセットじゃないのかも・・
だとしたら、よくあんなピッタリな場所を探して来たなぁ・・
なんて、あれこれ考えるのも楽しかったりして。

谷中部長の部屋、捜査一課、小菅が屋敷を呼び出した喫煙室等々の
ブラインド越しの外の風景リアルで、
木の葉が少し風に揺らめいたり、ライトが瞬いたり、
そんなほんのちょっとのことを観るだけで嬉しくなってしまいました。
 (この私の「ロケ好き体質」は、たぶん
 『空飛ぶタイヤ』あたりから育まれて来たものだと思う)


佐久が言った
「誰もが真実を見る事が出来るとは言えない。
しかし真実である事は出来る」という言葉、
谷中が佐久に向かって言った「君はこの先仕事をする気はあるか?」
という言葉にも、非常に深い意味があるように感じます。
これらの言葉の意味を考えながら、
最終回を楽しみに待つことにしたいと思います。

★8話のコメントはこちら

ゲスト浅野和之 モロ師岡  脚本吉本昌弘  監督:新村良二



『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第9話=最終回)感想

すみません、最終回を観てから、
私の勝手な妄想があっちへ飛び、こっちへ飛びしていて、
なかなか感想がまとめられなくて、遅くなってしまいました。
毎回のことですが、一度観ただけでは、
物語の襞(ひだ)に隠された面白さを掴み切ることが出来ない、
3回ぐらい観て、やっと全体から伝わって来るものを捕まえられる、
そんなドラマなんだと改めて思います。

で、今回の感想は、いつにも増して
私の妄想がふんだんに入ったものとなっています。
最近は単純明快なドラマが多いので、
こんなふうに妄想を働かすことが出来るドラマに出逢えたのが
すごく嬉しいんですが、
読んで下さる方の中には、違和感を覚える人も多いかもしれません。
すみません、とまず謝っておきます。

    *   *   *

今回は、まず最初に、
谷中刑事部長西田敏行)がいったい何を考えているのか、
彼が登場する場面ごとにそれを推察するのが楽しかったです。

中村法務大臣(石橋蓮司)との電話でのやりとりで、
佐久管理官(小澤征悦)を本人の前で「しょせん駒ですから」と言い切る、
ああそうか、谷中にしてみれば 佐久も‘駒’ なんだ、と妙に納得して、
でも、少しそのことを意識から遠ざけていたら、
ふいに浮き上がって来たのですよね、
谷中が佐久に、「4日間何もするな」と言い渡した時に。

谷中は、佐久が10年前の事件を掘り返して、
犯人とされる寺山の冤罪の可能性を探っていることに危機感を覚えます。
寺山に対しては、当時検事だった現・中村法務大臣が死刑を求刑、
それまでに2件の強盗殺人事件を起こしていた男なので、
10年前の事件が冤罪だとしても死刑判決は変わらないかもしれない、
それでも、当時、寺山に対して死刑を求刑した中村への
ミスジャッジの責任追求は免(まぬが)れない。
法務大臣という立場上、スキャンダルになるのは目に見えている。

佐久が昔の事件を探り始めたことを知った中村が、
急ぎ 寺山の死刑執行命令を下した、その情報を得た谷中は、
独断専行で捜査本部をかく乱する佐久に対し、
死刑執行まで4日間何もするな、と命令を下すのですが・・

佐久が「それでは警察は人殺しになってしまいます!」
と言い返して背を向けた時、
谷中の気持ちはどんなものだったのでしょうか。
厄介なやつが首を突っ込んで来た、おとなしくしていろ、と思ったのか、
あるいは・・

私は何だか、谷中が佐久に無言のうちに託したものが
あるような気がするのですよね、
‘駒’ である佐久が それに気づいていたかどうかは分からないけれど。
(たぶんうっすら感づいていたような気もする)

穿(うが)った見方をすれば、
中村が辞任することで、また一つ上の地位が空く、
それが自分の出世に繋がる、谷中は内心それを望んでいた、
 (彼は警視総監→法務大臣になる野望を持っているので)
なんてことも考えられなくはないんだけど、
その出世欲は、もしかしたらただの‘欲’ ではなく、、
彼が思う‘理想の警察’ を作り上げたいがため、
彼なりの正義を守り抜きたいがため、なのかもしれないし。

そんなことを考えながら、
「4日間何もするな」と谷中が佐久に言い渡す、
あのシーンを改めて観返してみたら、
佐久以上に何事も腹を割って話そうとしない‘大人’な谷中が、
佐久に仕掛けた、ものすごく奥深い「策」だったようにも思えて来て。


「刑事部長としての命令だ」と谷中から言われた後に、
ホテルに戻って佐久が言った「やるべきことが分かりました」の意味、
谷中と通じている屋敷(塚本高史)にだけ見せた弱み、
その後の佐久の行動・・
湖玉署への移動願いを出し、ひとりで捜査本部を立ち上げ、
小原(団時朗)の立てこもり事件を利用して13係に出動要請、
彼らと共に稲葉(菅原大吉)や吉崎(三浦浩一)を追い詰めて行く、
その思い切った「策」に、いったい誰の意図が含まれていたのか、
ぼんやりと見えて来たようにも思えて。
・・いや、もちろんそれは私の想像でしかないんだけれども。


そんな谷中と佐久を観ていてふと思い出したのが、
7年前の大河ドラマ風林火山』。
初回に、谷中が、島野(田辺誠一)に武田二十四将の話をする中で、
「君はさしずめ山本勘助といったところだ」と言うシーンがあって、
その時、島野が山本勘助なら、佐久は武田信玄ということか、
じぁあ 谷中は板垣信方あたりかなぁ、なんて漠然と思ったのですが、
いやいや違うんですよね、きっと。

信玄と相容れず、何度も衝突し、
彼を廃嫡しようとして、ついには家臣団によって駿河に追放される、
親子なのに常にやるかやられるか真剣勝負の丁々発止、
しかし心の底では
彼の武将としての力量を誰よりも最も認めていた、という信玄の父・・
谷中は武田信虎なんじゃないか、と。


まぁ、いずれにしても、
谷中は単純な人間じゃないですよね。
保身もある、出世欲もある 正義感もある、その複雑な人間の深さを、
西田さんが、時にユーモアを交えつつも実に味わい深く演じていて、
本当に面白くて魅力的なキャラだったなぁ、と思います。


演じる、と言えば、
8係長・稲葉を演じた菅原大吉さんも素晴らしかった。
終盤、佐久と13係に追い詰められる稲葉の姿には、
胸にグッと迫るものがありました。

10年前の殺人事件、目撃者の証言を強引に引き出して、
同じ手口で強盗殺人を犯していた寺山が犯人であると決めつけた、
そのことを糾弾された稲葉は、
「お前たちだってやってるだろ!きれい事だけで全てがうまくいくほど
世の中甘くないんだ!」と声を荒げる、
そんな彼に佐久は、
「一番の問題は、その不正を不正とも感じない感覚、
そしてそれが当たり前のように蔓延しているこの社会です!
曲げていい真実などあるはずがない!」
と一刀両断、あいかわらず彼の言葉には濁(にご)りがありません。

寺山への死刑という判決は覆(くつがえ)らないかもしれない、
今さら10年前の事件を穿(ほじく)り返しても、
意味のないことなのかもしれない、それでも・・
正しいことは正しい、間違っていることは間違っている、と筋を通す、
真実を曲げてはならない、という真っ直ぐで正当な姿勢こそ、
警察や司法が持たなければならない、もっとも基本的で重要なもの。

「捻じ曲げた事実は悲劇しか生まない、それが真実です」
という佐久の言葉が、とても重く響きました。
 (ふと『地の塩』を思い出しました)


10年前に妻と娘を殺された小原(団)を使って一芝居打った佐久(小澤)。
その策略に乗って、彼と共に稲葉(菅原)を糾弾した13係でしたが、
でもなぁ、この策、きっと島野係長(田辺)は、
あまり気のりはしなかっただろうなぁ。
たとえそれが、事件解決のもっとも有効な方法だろうと、
誰かを騙したり、欺(あざむ)いたりすることを受け入れるなんて、
この人には出来ないんじゃないか、と。

そこが、どんな狡(ずる)い手を使っても犯人を捕まえる(真実を通す)、
という意識をきっちりと持っている佐久とは相容れないところで、
だからこそ、二人の間には、決して越えられない深い河が、
あるいは高い壁が、横たわっているような気がする。

最終回、私は、二人の心・・というか精神が、
もっと近づくのかな、と思ったのですが、
佐久に最も近く寄ることが出来たのは屋敷(塚本)で、
島野はやはり最後まで「あなた(佐久)という人が分からない」ままで・・
そのことが、何だか私はちょっと寂しい気がしたのですよね、
正直なところ。


・・だけど、前回 佐久が言った、
「誰もが真実を見る事が出来るとは言えない。
しかし真実である事は出来る」
という言葉をずっと考えていて、ふと思ったのですが。

たとえ泥まみれになろうと絶対に揺らがない、
(まぎ)れもない‘真実’ を自分の芯に持ち続けようとする人間には、
泥に沈む芥(あくた)中から
本当の‘真実’ を見つけ出してくれる人間が必要なんじゃないか、
佐久にとって島野は、そういう存在だったんじゃないのか、と。

真実であろうとする人間と、
     真実を見定めようとする人間・・

島野が佐久をホテルに訪ね、
「10年前の事件に関連があるなら私の耳にも入れて頂きたい」
と詰め寄った時、
屋敷は「水くさい って言えばいいのに」とつぶやいたけれど、
佐久と島野は、お互いに、
‘水くさい’ 距離より近くには歩み寄れないんだと思う。
友人と呼べるような親しい間柄になってはいけない、
仕事上の距離を保たなければいけない、
真逆の二人は、それ以上近づいちゃいけないんだ、と・・
「真実」を曇らせないために。

島野はともかく、佐久はそのことを知っている,、
だから、彼は、必ず相手を役職名で呼ぶし、
島野に対しても、13係に対しても、
必要以上に親密には ならない、なれない・・
距離を置くことで守ろうとしているものがあるんじゃないでしょうか。


最後に、佐久に対して、
「私にはあなたという人が分からない。
何を考えどこへ向かうのか。その先に何があるというのか・・」
という島野のモノローグがありますが、
分からないのは、何とかして理解しようとしている証(あかし)でもある。

すべてのしがらみや欲を捨てて常に‘真実’ になろうとする佐久、
そんな彼のかたくなな姿勢を忌み嫌うことなく、
反対に、(屋敷のように)彼のやり方に染まってしまうこともなく、
ただ彼を理解するために、自然体のまま、
「なぜ?」「どうして?」と疑問符を投げ続ける島野。

ん〜、だとすると、やはり 二人の距離が縮まることはないのかも。


そのあたりから もうちょっと考え(妄想)を進めて行くと、
谷中・佐久・屋敷と、島野の立ち位置は違う、ということになります。
策略をめぐらせ人を陥れることも厭(いと)わないダークな佐久、
彼と同じ側に立つ谷中や屋敷、
そんな彼らの真逆にいて、たとえ事件解決のためとはいえ、
人を駒扱いするとか、策をろうするとか、罠に嵌(は)めるなどとは
まったく考えもつかない島野・・

ダークサイドに立つ佐久とブライトサイドに立つ島野、
この二人の間にいるのが小菅(渡辺いっけい)で、
彼は、相容れない佐久と島野各々の考えや性格を理解し、
どちらのやり方も認めている。
特に佐久に対する理解度というのは、
ひょっとしたら谷中や屋敷などよりずっと深いかもしれない。
ブライトな島野の傍にいるからこそ、
ダークな佐久に引き寄せられてしまうのかもしれない・・とか。


査問委員会で、佐久副署長は何を話したのでしょうか。
いや、そもそも何の査問だったのか。
10年前の事件まで穿(ほじくり)り出して捜査を混乱させた、
事件解決のためとはいえ一般人を囮(おとり)芝居に巻き込んだ、
その責任追及でしょうか。

結局、佐久は管理官として本庁に戻ることなく、
13係も配属替えでバラバラになってしまった。
本庁に残ったのは、島野と屋敷で、
警視総監の甥(島野)と 谷中の息がかかった刑事(屋敷)だから残れた、
と考えるのが妥当なんだろうけれど・・

何だか私は、島野や屋敷を本庁に残すことを条件に、
佐久は湖玉署の副署長のまま管理官に戻らず、
13係の連中は配置換えさせられたんじゃないかと思えてならなくて。
もちろん自分勝手な妄想だけど、
裏でそんな駆け引きがあった、と考えるのも面白いんじゃないかと。w


・・いやいや、楽しかった。
こんなに妄想まみれの感想を書いたのは久しぶりです。
 (読みにくかった人ごめんなさい。再度低頭)

このドラマの一番面白かったところは、
人間も、組織も、単純明快に描かなかったこと。
その分 事件そのものの描き方が弱かった時もありましたが、
事件を起こした人間なりの犯行の理由づけはちゃんと描かれていて、
どこかしら共感出来る部分を持っているところが良かった。

あと、捜査本部で本庁も所轄もなく意見をぶつけ合って捜査をした結果、
というのが、ちゃんと犯人逮捕に繋がっている。
ひとつひとつ可能性を潰して行く、と島野は言っていたけれど、
事件の核心に迫るまでの無駄な捜査、という部分もちゃんと描かれて、
せっかく苦労して調べたことが関係ないと分かったりして、
そこがとてもリアリティがあったと思います。

最近は、警察や銀行などの企業を描いても、
その中にいる一人一人の人間の個性を単純に見せることが多くて、
「組織」としての魅力を重層的に表現してくれるドラマが少ないのですが、
このドラマは、組織の中でうごめく刑事たちを望遠で追っている感じで、
全体の空気感が素晴らしく、また潔(いさぎよ)くて、
登場する刑事たちも、警察も、すべてを好きになってしまうような
雰囲気があって、そんなところも とても好もしかったです。

また、テレビ朝日のこの時間帯の刑事ものは、
とにかく出てくる人たち皆、スーツをピシッと着こなしていて、
ワイシャツにきちんとアイロンがかかっていたり、
 (中藤(猪野学)がみんなの分もアイロンかけてくれてたのかなw)
ネクタイの締め方にもゆるみがなくて、気持ちがいいです。
以前、そのあたりがちゃんとしてなくて がっかりしたドラマもあったので、
そういうところまで手を抜かない作りに、嬉しくなりました。


回を追うごとに、
佐久管理官を演じる小澤征悦さんが役にぴったりとはまって来て、
今度はどんな策をめぐらすのか、と、毎回すごく楽しみでした。
佐久が持つ、動じない揺らがない強さを、
小澤さんがしっかり演じ切って見せてくれたから、
13係や所轄の刑事たちとのぶつかり合いが迫力あるものになったし、
逆に、佐久が抱く孤高性みたいなものもうまく浮き立って、
非常に奥の深い魅力的な人間に仕上がった、
それらは ひとえに、
小澤さんの まっすぐに役に向かう姿勢のたまものだと思いました。


田辺誠一さん演じる島野は、佐久の策に翻弄(ほんろう)される役で、
小澤さんと対等、というわけにはいかなかったけれど、
その、ちょっと控えめなところでしっかり仕事をしている島野も
私は好きでした。
何より13係のメンバーに愛されているのがいい。
島野って、基本、守られキャラですよね。
小菅が気を使って、時々露払いしていたのが面白かった。
ミズタクエンケンにヒントを得たという(田辺tweet情報
眼鏡にも楽しませてもらったし、
佐久の出動要請を受けてマルイラクチン走りで行っちゃうところも
微笑ましかった。
13係の皆と一緒にいる時の柔らかい雰囲気の島野も、
佐久と一緒の時の緊張した島野も興味深く、
田辺さんの新しい一面を観ることが出来たような気がしました。


佐久や島野ばかりじゃない、
小菅(渡辺)も、太田(神尾佑)も、加藤(田中隆二)も、
中藤(猪野)も、風間(篠田光亮)も、屋敷(塚本)も、谷中(西田)も、
回ごとに登場した所轄の刑事たちも、みんな好きだったなぁ。
彼ら全員で醸し出した あの空気感がたまらなかったです。

終わって1週間、明らかに『TEAM』ロス。
ぜひとも続編を!無理ならスペシャルドラマを、ぜひ!

★9話のコメントはこちら

ゲスト:菅原大吉 石橋蓮司 団時朗 三浦浩一  
脚本吉本昌弘  監督:猪崎宣昭

2014-09-17

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』感想まとめ(その1/第1-5話)

本日9月17日は
『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』のDVD-BOXとサントラ盤の発売日、
ということで、感想をまとめました。
TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部 DVD-BOX 「TEAM ~警視庁特別犯罪捜査本部」 オリジナル・サウンドトラック

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』感想まとめ
(その1/第1-5話)
ネタバレあり】


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』     
放送日時:2014年4月-毎週水曜 21:00-(テレビ朝日系)
脚本吉本昌弘 大石哲也 真野勝成 徳永富彦 岡崎由紀子  
監督:猪崎宣昭 新村良二 
ゼネラルプロデューサー:松本基弘(テレビ朝日
プロデューサー:藤本一彦テレビ朝日 金丸哲也東映 和佐野健一東映 
音楽:吉川清之 主題歌加藤ミリヤ×清水将太「ESCAPE」 
制作テレビ朝日 東映
キャスト:小澤征悦 田辺誠一 塚本高史 
神尾祐 田中隆三 猪野学 篠田光亮 
渡辺いっけい 西田敏行    『TEAM』公式サイト 


★『TEAM』感想まとめ(その2/第6-9話)はこちら


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第1話)感想 

『相棒12』終了後に始まった新ドラマ
1時間の中にかなりの情報量を詰め込んであるので、
一度観ただけでは なかなか全体の流れが掴めなかったのですが、
二度観て、登場人物の立場やそれぞれの関係性、
それが事件とどう関わっているのか等々が呑み込めるようになって、
このドラマの面白さが見えて来た(私流の解釈ですが)ように思います。

分かりやす過ぎてサラサラッと流れてしまうドラマも多い中、
この「かなりの情報量」というのは、私にとってとても嬉しいこと。
とっつきにくいかもしれないけれど、
それだけ 見ごたえがある、ということでもあると思うので。

実際、テレビ朝日のこの時間帯の刑事ドラマに共通する実直な作り方が
この作品にも息づいていて、それが私にはとても心地よく感じられたし、
登場人物が男だらけの中、
初回から非常に緊張感のある空気が出来上がっていたのも、
すごく嬉しかったです。


密度の濃い脚本で、
レギュラーメンバーの設定からして単純ではなく、
なかなかのクセモノ揃いなのですが、
そんな中で 今回 私が一番魅力を感じたのは、
谷中刑事部長西田敏行)でした。

「佐久(小澤征悦)が佐久が」と責任をなすりつけるような言い方にしても、
島野(田辺誠一)に対する物腰やわらかな態度にしても、
一筋縄じゃ行かないタヌキぶりが、いっそ心地良いw

西田さんが実に味のある演技をしていて、
憎たらしいには違いないんだけど、
何かもう一捻り(ひとひねり)あるんじゃないかという気もして、
だからなおのこと、無性に、その腹の中を探りたくなる。
ただの出世欲の塊(かたまり)なのか、
あるいは、もっと大きなことを考えているのか・・
佐久と島野を組ませたのは、
自分の言うことを素直に聞きそうにない目障りな二人を潰すためなのか、
あるいは、今までにない画期的なチームを作ろうとしているのか・・と。


所轄の新津(古谷一行)も良かったです。
佐久に自分と同じ一匹狼の匂いを感じて、
「あんた友達いないだろ」なんてグサリと言ってのけたり、
捜査に加わろうとしない屋敷(塚本高史)をさりげなく引き入れたり、
人の性格を読むのが巧みで、全体のバランスをしっかり見ている・・
古谷さんが持つ温和な雰囲気が、
たたき上げの刑事役にうまく染み込んでいるように思いました。


13係の中では、小菅(渡辺いっけい)が出色。
男だらけの刑事たちの中で、
彼が持つ 生活感のある感覚ってすごく大事な気がする。
佐久にも島野にも足りないものがある、
佐久は素直な物言いが出来ないし、島野は生真面目過ぎる・・
そのあたりの弱点を小菅は見抜いている気がするし、
彼自身が只者ではない空気を備えているのもいい感じです。


機動隊上がりの太田(神尾祐)の直情的な性格は
私にはまだちょっと馴染めないけれど、
加藤(田中隆三)や中藤(猪野学)や風間(篠田光亮)ともども、
人間性がもっと描かれれば、さらに面白さが増す気がするし、
そこにチームに溶け込もうとしない屋敷(塚本高史)が加わることで、
どんな不協和音が生まれ、それをどう克服して行くか、も楽しみ。


さて、肝心の佐久管理官と島野係長について、ですが。
正直なところ、谷中や小菅に比べると、
どうも いまひとつストレートに魅力が伝わって来ない気がしました。
視聴者の気持ちをグッと惹き付けるような派手さがなく、
メインとしての明確な個性をまだ存分に発揮出来ていないような、
ちょっと物足りない感じ、と言ったらいいか。

しかし、制作側は そんなことは承知の上なんじゃないか、
とも思うのですよね。
あえて二人を傑出した人物として描かず、
チームの一員として描くことで、
個々の魅力を結集した形で 「TEAM」としての魅力を見せよう、
群像劇としての面白さを見せよう、と考えているんじゃないか、と。

そう考えると、メインキャラとしてはあまり馴染のない
小澤征悦田辺誠一という落ち着いた俳優のチョイスも、
なるほど、と うなづける気がします。


佐久管理官。
これだけクセのある主人公というのも なかなかないと思うのですが、
民放初主演の小澤征悦さんが演じる、ということで、
観る側に先入観や特定のイメージを抱かせることがなく、
佐久の人間性や能力を想像させにくくする、と言う意味でも、
なかなか興味深いキャスティングだし、
これから魅力的なキャラクターに育って行くんじゃないか、
という気がしました。

小澤さんは、カチッとした硬さを持つ俳優さん。
その硬さが、佐久の ‘他者と相容れない性格’ を、
うまく表現してくれそうな気がします。


対する捜査一課13係の係長・島野誠は、
これまでの刑事ものにも たびたび主人公として登場しているような
‘いかにもまっすぐ’ なキャラクター。
「あなたたちは駒です」と言い切り 上司にへつらう佐久とは 衝突必至、
案の定、「あなたのやり方は間違ってる」と、
最初から喧嘩上等の不穏な空気。

演じている田辺さんは、
ここまではっきりした物言いをする役というのは
今まであまりなかったと思うのですが、
今回はかなり思い切って熱い人間を演じています。


誰も寄せつけようとしない佐久と、
検挙率ナンバー1の13係を作り上げた島野。
今のところ水と油のこの二人が、
どういうふうに事件を解決し、どう心を通わせて行くか、
つまり、佐久管理官と島野率いる13係が
いかにチームとしての力を最大限発揮出来るようになるか・・

興味深いのが、二人に共通する現場主義。
出世に興味のない二人は共にノンキャリアだそうで、
あえてキャリアコースに乗らず、現場で指揮を執ることに専念、
というところに、今後二人が歩み寄るきっかけがあるような気もします。


佐久も島野も、
たとえば前クールの『隠蔽捜査』の竜崎と伊丹のような
単純明快な性格ではないし、いろいろ背負っているものもあるせいか、
小澤さんも田辺さんも、まだ自分の役を確実に掴んでいる感じがしなくて、
少しもどかしいところもあるのは確かですが、
ドラマはまだ始まったばかり。
今後、二人が、
どんなふうに それぞれの役に入り込み、馴染んで、光を放って行くか、が
佐久と島野が作り上げる「TEAM」の色味にも繋がって行きそうで、
その過程を観るのも とても楽しみです。


事件解決までの流れについて。
そんなふうに「最強のTEAM」が出来上がるまでをメインにして、
そこを掘り下げて描こうとすると、
事件そのものの密度が薄くなってしまう可能性もあるのですが
今回、捜査本部立ち上げ時の所轄の立ち位置や、
警視庁と検察庁の縄張り争い、天下り等々の「なるほどネタ」も含めて、
テンポよくまとめていて、なかなか興味深かったですし、
見ごたえもあったように思います。

チームの成長と事件の解決・・
二つのバランスをうまく取りながら、
見ごたえ・噛みごたえのあるドラマを作って行って欲しいですし、
検挙率ナンバー1という13係の底力がまだ見えていないので、
いずれそのあたりを魅力的に描いてくれることも、
期待したいところです。


追記。
公式サイト、キャストの人物設定がなかなか面白いです。
この設定がうまく生かされたドラマになって欲しい。
倉科孝靖さんのインタビュー「管理官とは」も読みごたえがありました。
管理官側から事件を見ると、またちょっと違って見えるのかな、
なんてことを思いました。


ゲスト古谷一行 脚本吉本昌弘 監督:猪崎宣昭



『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第2話)感想

ドラマ全体が練れて来たせいか、
初回以上に面白かったです。

今回もまた、警視庁・刑事部長谷中西田敏行)が、
所轄の署長が必要ないと言っているのにゴリ押しで捜査本部を設置、
佐久(小澤征悦)と13係が向かうけれども、所轄の猛反発を食らう、
といった、初回とほぼ同じパターンで話は進むのですが、
佐久以下のメインキャストのキャラクターが前回より掴めている分、
観ている側としてもすんなりと入って行けたし、
何と言っても、登場する刑事たちのキャラがみんな立っていて、
彼らの熱やプライドや男臭さが捜査本部の中でぶつかり合い、
ぶつかり合ううちに捜査の方向性が構築され、
冷静沈着な管理官のもと、
本庁も所轄も一緒くたになって事件解決に向けて突き進んで行く、
その流れが非常に魅力的にテンポ良く描かれているので、
観ているこちらまで、その熱に取り込まれてしまったような気分で、
画面に見入ってしまいました。

「うちのみんな 向いてる方向が違うと思う」
と言っていた所轄署の事務方の小松(少路勇介)が
本庁も所轄もなく全刑事が一丸となって事件を追う熱気に
目をキラキラさせるようになる・・
「捜査本部」のあるべき姿が、そこにあるような気がしました。


一方、本筋の事件の方も単純ではなく、
被害者周辺の人間たちの思惑が複雑に絡まっていて、
犯人と断定した男が死体で発見された場面では、
刑事たちの落胆がこちらにも伝わって来るようでした。

犯人が親友を陥(おとしい)れて犯行に及んだ理由を聞かれ、
「ただゆかりが憎かった」と答えたその言葉が、
高校時代からの犯人の感情を掘り起こして読み返したくなるような
意味深いものになっていて、とても良かったと思います。

ただ・・
なにせ、事件そのものよりも、刑事たちの人間的魅力が満載なので、
今回も、ついそちらの方に気を取られてしまったのも事実で。


佐久の「あなた方は駒です」という横柄なセリフは、
今回も、初っ端(しょっぱな)から挑発的に使われているのですが、
観て行くうちに、何となく理解出来そうな気がして来ました。

「捜査の基本など考える必要はない」
「すべての情報は私にあげて下さい。
誰が何をするかなどあなたたちが考える必要はない」
「そういう主観的な感情は捜査の邪魔になる」
「主観的な推測は捜査に必要ない」etc・・
刑事たちに向かって放たれたこれらの断定的な言葉も、
「あなたは警察官としてもっとも大切なことを忘れている」
と署長に向かって言った言葉も、
捜査に支障をきたすような私的判断や感情や
無駄な意地や雑念を一切振り払い、
クリアな眼と頭で捜査に全力を注ごうとする佐久の、
一途な姿勢のあらわれなんだろう、と。

そしてもうひとつ、
各々の役割を明確にする、ということ。
管理官が刑事たちの適性を把握して班割をし、
刑事たちがそれにそって班ごとに足を使って情報や証拠を集める、
集めたものを管理官が分析、精査、犯人を絞り込む、
係長が適切な指示を出し、刑事たちが犯人を逮捕する・・
この一連の流れが、カチカチッと気持ちよく嵌(はま)って、
事件解決に向けて何十人もの刑事たちが一斉に動き出す姿には、
思わずワクワクしました。

小菅(渡辺いっけい)は 佐久を
身体のほとんどが脳みそで出来ているクモに例えたけれど、
どんな優秀な脳みそを持っていても、
手足を自在に動かせなければ獲物は捕まえられない。
「あなたたちは駒です」というのは、要するに、
佐久(管理官)という脳みそを持ったクモの手足になって、
余計なことを考えずに捜査に打ち込んで犯人を捕まえてくれ、
という意味なのではないか、と。


島野係長(田辺誠一)にデスクを命じた佐久の本当の狙いを、
島野本人は気づいていなかったかもしれないけれど、
捜査が進むにつれ、島野が自然と佐久の意図をくみ取って、
「適切な指示」をどんどん出して行くようになり、
やることがなくなった佐久がそれを黙って満足げに見ている、
その表情を観た時、
彼が島野に求めたものと、その先にある理想の「TEAM」の姿が
何となく見えたような気がしました。


さらに私が感じた このドラマの魅力の一端・・

こんなに、スマートでもない、かっこよくもない、
だけど、生き生きとした息遣いの感じられる
人間らしい汗の感じられるドラマは、久しぶりのような気がします。

太田(神尾佑)が歯を磨いている横で、
小菅(渡辺)がモーニングコーヒーを飲んでいたり、
目覚ましの音に驚いて止める風間(篠田光亮)の向こうで
中藤(猪野学)がアイロンをかけていたり、
という 捜査本部の朝の描写には和(なご)まされたし、
公衆トイレで 加藤(田中隆三)が所轄の刑事に「あと何件だ」と尋ね、
「80件ですね」と言われて渋い顔をする、など、
期限までの10日間、刑事たちが靴底を減らして調べ尽くす様子も
とても丁寧に描かれていて、好感が持てました。


そんな中で、佐久の抜け目ない策士の一面もちゃんと描かれていて。
小松を使って一芝居打った、というのもそうですが、
私が一番興味深かったのは、岩瀬に指輪の調査を依頼したこと。
「これは島野係長に・・」と言う岩瀬に
「質の良い経験を積んだあなたのほうが適任」と、
島野が聞いたら目くじら立てそうなことをシレッと言うあたり、
人をうまく策に乗せて使う手練れぶりは相当なもの。

屋敷(塚本高史)が DVDを所轄に向かって放り投げ、
その生意気な態度が所轄の刑事の怒りをかってボコボコにされた後、
ホテルでスカイツリーを見て「きれいだなぁ」とポツリと呟く彼に、
りんごを持って行くように言うところも良かったです。
‘策’ というより、むしろ、捜査本部の空気に馴染めない屋敷に、
佐久がほんの少し手を差し伸べたようにも見えたけれど。


一方の島野も、
ただひたすら佐久に反発して激昂するだけだった前回に比べ、
捜査の中でどんどん佐久のやり方を吸収して行く
その呑み込みの速さや、過去の資料に関する優れた記憶力など、
秘めた力を丁寧に引き出されていて、
キャラに深みが出てきたように思います。
13係を使って別捜査に動く、
メンバーとその密談をする窓枠の中の島野の表情が魅力的でしたし、
ラスト、「(佐久を)人間としては好きになれねぇな」
ともらす岩瀬(ダンカン)に同調するように口元を緩める島野も良かった。

田辺さん、このドラマではものすごく良い姿勢を保っています。
何となく時代劇で武士を演じている時と似ている気がして、
それもまた嬉しかったです。


佐久と島野の阿吽(あうん)の呼吸が感じられるようになり、
チームとして前進したかのように思える「管理官×13係」ですが、
一方で、谷中のタヌキぶりはあいかわらずで。
    ただの出世欲の塊(かたまり)なのか、
    あるいは、もっと大きなことを考えているのか・・
    佐久と島野を組ませたのは、
    自分の言うことを素直に聞きそうにない
    目障りな二人を潰すためなのか、
    あるいは、今までにない画期的なチームを
    作ろうとしているのか・・
なんて前回書いたけれど、ここで謹んで訂正させていただきます。
谷中は佐久と島野の能力を見抜いたうえで、
自分の出世のために
二人を最大限利用しようとしていただけなんですね。

だとすると、いずれ、
‘佐久+島野’ vs `谷中’ なんてことにもなって来るんでしょうか。
いやいや、潰すか潰されるか、じゃなくて、
『相棒』の杉下と小野田官房長みたいな関係になって欲しいです、
個人的には。


ゲストダンカン 少路勇介  脚本吉本昌弘  監督:猪崎宣昭



『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第3話)感想

3話になっても、1時間ぎっしりの満腹感は削(そ)がれませんね。
毎回登場人物が多くて、一人一人追いかけて行くのが大変なのですが、
その一人一人の仕事への熱い気持ちがいろんな形になって現れ、
それが事件と絡み合って行くことで、
事件の真相とともに 彼らの人間性が見えてくる・・
刑事たちの事件に立ち向かって行く気持ちが雑味なく描かれて、
今回も密度が濃かったです。


佐久(小澤征悦)が、刑事たちを「駒」と言い切る、
それが刑事たちの反発心に火をつける、
その火は、やがて刑事としての矜持や、良心や、
一直線に事件に向かう気持ちとなって佐久にぶつけられる、
そうなることを見越して、あえて憎まれ役を演じている・・
今回の佐久を観ていて、そんなふうに感じるようになりました。

田村(矢島健一)が抱えた秘密が何であるか知るために、
朝比奈(橋爪遼)を追い詰め、島野(田辺誠一)を策に使う・・
時に感情を逆なでし、傷つけてまでも、
刑事たちが持つ情報や能力を残らず全部引き出そうとする、
自分はどう思われようと構ったこっちゃない、
どんな手を使っても彼らの力を最大限引き出し使い尽くす、
それが、佐久が心に抱く「理想の管理官の姿」なのかもしれません。


一方の所轄・千代田西署の田村刑事課長(矢島)。 
小菅(渡辺いっけい)は彼を「お山の大将、独断専行」と言ったけれど、
冤罪を訴えて自殺した大野遺書を隠し通せと言う署長と、
その秘密を暴こうとする佐久のあいだで揺れ動く、
中間管理職の切なさみたいなものがにじみ出ていて、つい感情移入。

自分がすべての責任を負う覚悟で
「部下を捜査に加わらせて欲しい」と島野に頭を下げ、
「刑事は犯人捕まえてなんぼだ、絶対捕まえてこい!」と
部下たちにハッパを掛ける、
田村の心情の流れが滑らかに描かれていたせいもあって、
(部下が家族と撮ったプリクラ なんていう小道具の使い方がまた憎い)
今までの所轄の刑事の中で一番好きになりました。


事件がらみでは、東都新聞の長部デスク(渡辺憲吉)も良かった。
スクープを掴んだ高木(青柳尊哉)に、
「きちんとウラ取ったのか、ダブルチェックは」と念を押す、
その記事が人の人生を狂わせる可能性がある、ということを、
経験の浅い高木に諭(さと)す、
しかし、やっと取ったスクープに舞い上がり、
クライマーズ・ハイ状態に陥ってる高木は耳を貸さず、記事にし、
それが結果的に大野自殺につながってしまう・・

大野が冤罪かもしれないと知って恐ろしくなった高木は、
河合部長(大河内浩)に相談するのですが、
「このことは誰にも言うな。大野を容疑者と名指ししたのはうちだ、
もし無実なら東都新聞の権威が地に落ちる。
騒ぎが大きくなれば死活問題だ」と言われ、新聞社に辞表を提出。

大野自殺と高木の退職に疑問を持った長部は、
多忙な時間を縫って、一人で地道な取材を1年近く続けるんですね。
  (そのあたりは画面には出て来ないのですが、
  観ている側が十分想像来る組み立て方になっていました)
そしてついに真犯人にたどり着くんですが、
この人の新聞記事に対する誠実でひたむきな責任感に、
何だかちょっと胸が熱くなってしまいました。


そして、またも 佐久の策略に乗せられた島野係長(田辺)、
そのことを小菅(渡辺)に指摘された時の表情にゾクッとしました。
百戦錬磨の小菅や加藤(田中隆二)をビビらせるほどの硬い視線・・
見た目は優男(やさおとこ)風のこいつも、
自分の中に絶対に譲れないものを持ってるんだ、
強い信念や理想を抱きながら刑事として生きているんだ、と。
いやいや、こんな田辺さんを観られるなんて、もう嬉しくて仕方ない。


今回は、
実際に前線のトップに立つ佐久や島野や田村や長部と、
もっと上の立場の谷中刑事部長西田敏行)や千代田西署長、
東都新聞の社主や河合部長らの、
立場や役割の違いがきちんと描かれていたのも興味深かったです。

事件に真っ向からぶつかって行く佐久たち、
その一方で、谷中たちには守らなければならないものがある。
警察の不祥事も、新聞社の信用失墜も、
そこで働く人たち(とその家族)を路頭に迷わせることになりかねないし
社会全体を大きな不安に陥(おとしい)れかねない。
偉い人たちは、自分自身の名誉や欲ばかりでなく、
そういう 大きくて切実なものを背負っている責任もあるんですよね。
そのあたり、今後もっと描かれて来ると面白いんじゃないか、
と思いました。


余談ですが・・
登場する刑事や事件関係者が非常に多い作品ですが、
それほど重要でない役にまでしっかりフルネームがついているのを
ラストクレジットで観た時は、何だか嬉しかったです、
一人一人を丁寧に描こうとしてくれているように感じられて。

最後まで抜かりなし、ですね。 次回も楽しみです。


ゲスト矢島健一  脚本大石哲也  監督:新村良二



『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第4話)感想

今回の舞台は北品川署。
佐久管理官(小澤征悦)の面目をつぶして
谷中刑事部長西田敏行)の鼻を明かしてやろうと目論(もくろ)
狩野署長(山田明郷)の思惑で捜査本部が立ちます。

ジンソクと異名を取る陣内副署長(山田純大)の
迅速でぬかりない初動捜査に、島野係長(田辺誠一)も呼応、
所轄と13係が良好な関係を築いて捜査を進める中、
一人だけカヤの外の佐久管理官。
もっとも、佐久にとっちゃ、誰が捜査の中心になろうが、
事件が解決すればそれでいいんだろうけれど。

陣内主導で捜査は進み、やがて犯人が逮捕されるのですが・・
佐久は、陣内が見落とした小さな綻び(ほころび)を、
屋敷(塚本高史)や13係を使って丁寧に掬(すく)い取り、
ほどなく2つの事件が同一犯でないことを探知、
2つめの事件の真犯人を突き止め、
逆に、狩野署長に谷中刑事部長への借りを作らせる結果に。


これ(谷中への借り)には伏線があって、
捜査本部が立つ前に、
谷中が島野に「下策、中策、上策」という話をしているのですね。
「被疑者逮捕を目的とするのは下策、
本庁が手柄をたてて解決するのが中策、
手柄を立てたうえで所轄に貸しを作れれば上策」と。
もちろんそれは、猪野署長側も同じことで、
事件捜査の水面下で互いに上策を獲ろうとする
タヌキ同士の駆け引きが面白かったです。

二人の間に入って冷や汗をかく細川庶務担当管理官(飯田基祐)、
定番のポストですが、こういうところに飯田さんが入ると
ドンピシャに嵌(はま)りますね。


そんな偉い人たちの思惑とは裏腹に、
佐久×島野×陣内が、
それぞれに「捜査バカ」を貫く場面が非常に魅力的に描かれる中で、
彼らの三角関係(違w)が緩みのない拮抗したものになっていて、
それもまたとても興味深かったです。

特に、犯人・武藤(今野浩喜)の取り調べを陣内(山田)がやる段に、
佐久(小澤)にうながされて心得たように島野(田辺)が付き添う、
「武藤くん」と呼ぶ陣内に心を許し 自供が嘘だったと語る武藤に、
「武藤、情状酌量の余地はない!」と突っぱねる島野・・
という3人の(おそらく陣内にとっては無意識のうちの)連携プレーには、
ちょっとやられてしまいました。

いや〜陣内も 谷中の言う「武田二十四将」の一人になって欲しいなぁ。
佐久・陣内・島野、この3人が揃ったら、怖いものはない、
どんなに複雑な難事件も、解決してくれそうな気がします。


それと、前にも書いたと思うのですが、
このドラマは、本当に「人」の描き方がうまいです。

陣内についても、
なぜ迅速な捜査をモットーとするようになったのか、
事件や犯人に対してどういうスタンスで向き合っているのか、が
きっちりと伝わって来て、しかもそれが非常に魅力的で、
繰り返すようですが、
これはもう、ぜひとも再登場してもらうしかないな、と。w

犯人の武藤にしても、橋本(猫背椿)にしても、
その人となりに、けっして十分な時間を使っているわけではないのに、
ちゃんと事件を起こすだけの納得出来る理由づけが出来ている。
特に武藤役の今野さんのキャラは素晴らしかったです。

13係の小菅(渡辺いっけい)が橋本を見る時の斜め目線にも、
どんな小さな嘘も見逃さない刑事としての厳しさ
みたいなものを感じて、しびれましたし・・

そうやって、一人一人挙げて行ったらキリがありません。
脚本の緻密さにキャスティングの的確さが加わると、
役としての人間性までしっかり伝わって来る、
そのお手本を見せてもらった気がします。


捜査バカたちの下で働く13係のメンバーの描き方も良いですよね。
陣内だろうが、佐久だろうが、
その意図するところを即座に読み取って行動する13係は、
相手が誰であれ、非常に柔軟で馴染みやすく反応が速い、
とても使い勝手のいいチーム。
だから、佐久みたいな面倒くさい人間相手でも、
うまく順応するのかもしれません。

彼らの仲の良さも 好もしいです。
「おまえも島野さんに抱きしめてもらえよ」なんて
手に怪我をした太田(神尾佑)をからかう小菅(渡辺)、
若い風間(篠田光亮)を突き飛ばして
太田を島野(田辺)にくっつけようとする加藤(田中隆三)、
それを見て笑っている中藤(猪野学)、
意味が分からずにキョトンとしてる島野、の件(くだり)なんて、
もう彼らが可愛くて可愛くてw
観ていて楽しくて嬉しくて仕方なかったです。

その13係につかず離れず、の屋敷(塚本高史)、
塚本さんが表情だけで雄弁にいろんな感情を伝えてくれて、
この役もすごく魅力的で惹かれます。

唐突な例え話で周囲をケムに巻く佐久も、
あいかわらず取っ付きにくいけれど、
そこが面白く、不思議な魅力にも感じられるようになって、
レギュラー陣のキャラもかなりいい感じに出来上がって来た様子。

彼らが今度はどんな所轄に行き、
どんな刑事たちと組むのか、と共に、
どんな場所(部屋)に捜査本部が立ち上がるのか、も
楽しみだったりする私なんであります。
(ちなみに今までで一番好きだった捜査本部(の部屋)は、
第2話の浅草中央署)


ゲスト山田純大  脚本:真野勝成  監督:新村良二



『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第5話)感想 

久々に観る、昭和の香り漂う正統派刑事ドラマ、という感じがしました。
拡大版で10分ほど放送時間が長かったとはいえ、
レギュラー枠で普通に放送されるのがもったいないぐらい
いい内容だったように思います。
スペシャルで2時間ドラマにしても良かったような・・
いやいや、それほど濃い内容を1時間ちょっとで放送してしまうのが、
このドラマスタッフの心意気、と言えるのかもしれません。


事件そのものも、動機も、目新しいものではないんですが、
所轄の人情派刑事・師岡(でんでん)のキャラがすごく良く出来ていて、
長年その土地に住んでいるからこその地元民との親密感だったり、
情報通だったり、またそれゆえのしがらみだったり、弱みだったり、
いつのまにかそういうものにどっぷりと浸かってしまい、
結局は‘情けに引きずられて近づき過ぎた’ために追い詰められて行き、
事件にどんどん深入りせざるを得なくなってしまう・・
そんな彼の姿には、自業自得とはいえ 哀れなものがあって、
悪いことをしたには違いないんだけど、憎み切れなくて、
ラストシーンは何だかすごく切なかったです。


ずっと彼の傍にいた小菅(渡辺いっけい)が
佐久(小澤征悦)の策によって彼を追い詰める側に回る、
師岡とのあいだに通い始めた情まで利用される辛(つら)い役回りを、
顔色変えずに淡々とこなす(ように見える)その姿にも、
観ていて心に沁(し)みるものがありました、
彼の中でいったいどれだけの葛藤があったのだろうか、と。

しかし結局は、情よりも刑事としての本分が勝っている、
小菅のそのぎりぎりのところでの揺らぎなさが、
頼もしいやら切ないやら。
(そこが師岡との対比にもなっているのが興味深い)

そのあたりの小菅の気持ちというのは、
具体的に説明されているわけではないんだけど、
ついあれこれと想像したくなってしまうのは、
やはり、‘人間’が深く描かれているからのように思います。
いっけいさん、本当に‘いい役’をやってます
・・というか、
彼が演じることで、より‘いい役’になっているんだと思いますが。


佐久は3つ目の策を「苦肉の策」と屋敷(塚本高史)に言いますが、
最初 私はその意味を、普通に、
「苦し紛れに考え出した手段」という意味だと思っていました。
でも、本来の意味は、
「自分の身や味方を苦しめてまで行う
敵をあざむくための はかりごと」なんだとか。

八神が、呉の周瑜とその部下の話をしていましたが、
それってつまり、味方を100%信頼していなければ使えない手、
ということになるんですよね。
佐久は、それだけ小菅を信じて彼に賭けたんだ、と思うと、
なんだかそのことにも、ちょっと じわっと来てしまいました。


師岡を追い詰めていながら みすみす自殺させてしまった13係、
島野係長(田辺誠一)はその責任を取るために、
また 小菅(渡辺いっけい)も師岡に盾にされたことに責任を感じて、
それぞれ佐久管理官(小澤征悦)に退職願を提出、
佐久はそれを受け取り、上の指示を待つように伝えるのですが・・

この後、その退職願を上に見せることなく破り捨て、
13係が責任を負うことがないよう、
師岡の死を、汚職による懲戒免職の後 とする策を刑事部長に提案、
その進言が通って、13係はお咎(とが)めなし、ということに。

いやいや、そう来たか。
小菅を苦肉の策に使ったこともそうだけれど、
佐久管理官にようやくじんわりと人の温もりが感じられるようになって、
何だか、今回、すごく彼が好きになってしまいました。
終始無表情で、何考えてるか分からない冷血漢だと思ってたけど、
ちゃんと血が通った人だったんだ、と。


今回、そういう佐久の人間味を引き出すことが出来たのは、
八神刑事課長(佐藤浩市)の存在が大きい気がします。
彼と佐久の距離感が、谷中刑事部長西田敏行)よりずっと近くて、
佐久もこの人には少しだけ心を許しているように感じられて、
二人の会話はどのシーンもちょっと頬笑ましかったです。

今回初出演の八神、すごく魅力的でした。
彼もノンキャリなんだろうか、佐久の何を知ってるんだろうか、
上司の谷中とはどういうつき合い方をしてるんだろうか、なんて、
ついついあれこれ深読みしたくなるほど興味深い人物。
佐藤浩市さん、今回限りなんてことなく、
ぜひまた出演して欲しいものです。


さて、ごひいきの島野係長(田辺誠一)ですが。
幇間(ほうかん)・・彼(師岡)はそう呼ばれているそうですよ」
「太鼓持ちですか」
「管理官の嫌いなタイプじゃないですか」
「捜査員に好きも嫌いもありません」
階段を下りながら佐久と話すこのシーンが、
何気ないんだけど私は好きでした、
以前よりちょっと二人の距離が近くなったような気がして。

それと、大友企画に乗り込む時に、
車の中でメガネを薄い色の入ったものに変えるシーンにワクワク。
相手によってTPOを考えている島野、
サングラスの奥の眼が鋭くて凄みがあって、すっかりヤクザ対応仕様
きっと彼、現場に出るのが好きで仕方ないんじゃないでしょうか。


・・で、何となく私の中で、
島野の「やんちゃ疑惑」が浮上して来てしまったんですけどね、
ええ、ええ、もちろん私の勝手な妄想ですけど。

警視総監の甥とはいえ、案外おぼっちゃん育ちなんかじゃなく、
やんちゃな少年青年時代を送ったんじゃないか、と。

もしかしたら、森下(@37歳で医者になった僕)が
ミラクルドクター治子』というドラマを観て医者を志したように、
島野は、小〜中学生の頃『西部警察』の大門(@渡哲也)が好きで、
彼に憧れて刑事を志すようになったんじゃないか、とか、
だから退職願の字も、普段の彼のイメージにそぐわないような
はっちゃけぶりだったんじゃないか、とか。
・・いや、だからそれはまったくの私の妄想なんだけど。w

何だかそんなこと考えてたら止まらなくなってしまって、
島野の子どもの頃ってどんなだったんだろうと、
あれこれ想像して楽しんでしまいました。


話が逸れてしまいましたが・・
ともかく、そんなこんな いろんなこと含め、
本筋も、脇筋も、いつもに増して面白いと感じた第5話でした。
このハイレベルなクオリティがいつまで続くか、
引き続き、楽しみにしたいと思います。


ところで・・
聞き取れなかったセリフがあって気になっています。
最初の頃、トイレで八神が佐久に言った、
「だがお前は苦労するかもしれない。
中流ってのは・・・・・がねえ、人望ってやつがないとな」
それと、終盤やはり八神が佐久に言った、
「話聞かせてくれよサクシン、あえて・・・・・を切り捨てたって評判だぜ」
この二つの「・・・・・」部分。
特に二つ目は、佐久の人柄に繋がる一言なんじゃないかと思うので、
聞き取れた方、教えていただけるとありがたいです。

     追記:コメント欄よりお知らせ下さった方がいらっしゃいました。
       「才だけじゃ動かねぇ」「才で情を切り伏せた」だそうです。
       ありがとうございました。

★5話コメントはこちら


ゲスト佐藤浩市 でんでん  脚本:徳永富彦  監督:猪崎宣昭

2014-09-07

『地の塩』感想まとめ

『地の塩』感想まとめ

9月2日に『地の塩』のブルーレイ&DVD-BOXが発売になりました。
連続ドラマW 地の塩 Blu-ray BOX 連続ドラマW 地の塩 DVD BOX
感想をまとめておきます。

『地の塩』
放送日時:2014年2月16日-毎週日曜 22:00-(WOWOW)
脚本井上由美子/演出:鈴木浩介 演出補:権野元/音楽村松崇継
プロデュース:青木泰憲 河角直樹 制作協力:国際放映
キャスト:大泉洋 松雪泰子 田辺誠一 田中圭 板尾創路 陣内孝則
袴田吉彦 岩崎ひろみ 勝部演之 朝加真由美 大野百花 河原崎健三 きたろう 津嘉山正種   『地の塩』公式サイト 



『地の塩』(第1話)感想 【ネタバレあり】

久しぶりに観ごたえのあるドラマに出会いました。
脚本も、出演者も、演出も、音楽も、すべてが上出来、
人物描写が巧みな上に、先の読めない展開がテンポ良く密度濃く流れ、
画面から目を離すことが出来ないほどの吸引力があって、
ドキドキしながらあっという間に1時間が過ぎてしまいました。

たとえば同じwowowの『空飛ぶタイヤ』などは、
社会派ドラマとしての生真面目な一面を持ちつつ‘人間'を丁寧に描き、
ドラマとして非常に面白い作品に仕上げていたと思うのですが、
この『地の塩』は、
考古学という一見地味な研究分野に
捏造(ねつぞう)というスキャンダルを絡ませ、
さらには、未解決殺人事件というサスペンス要素まで盛り込んで、
大衆向けのエンターテインメントとして より興味深く観せよう、という、
いい意味で 非常に欲張りで意欲的な作品になっているように思います。
(最終回までこの姿勢が崩れないよう薄まらないよう祈りたいです)


メインとなる考古学の分野の人々については、
神村を筆頭に 真摯に一心に研究に打ち込んでいる という印象ですが、
肝心の神村は、高潔な学者とばかりは言えない、
人を魅了するカリスマ性の裏に、
人間臭い俗っぽさや彼なりの欲を持ち合わせているようにも思えて、
そこに大事な何かが潜んでいるような いないような・・
その曖昧さが何を意味しているのか、気になるところ。

考古学の大発見の陰でうごめく政治家・官僚・出版社等の利権。
教科書の内容や新聞紙面が、
こういった‘大人の事情'で作られることもある、というあたり、
お定まりのサイドストーリーとしてではなく、
主筋に深く関わってくるかもしれない、といった含みも感じられて、
なかなか興味深かったです。

一方の殺人事件も、早々に犯人のキャラが明確に示されて、
それがどうやらシリアルキラーの様相を呈しているようにも見え、
殺された少女の骨が発見されたことにより、
さらに次の事件に発展して行くような匂いを感じさせて、
これからどうなって行くのか、今後の展開が非常に気になります。

予告を観ると、かなり重要な言動がちりばめられているようですが、
はたしてそれが視聴者へのトラップ(罠)なのかどうか・・
次回もさらに楽しみです。


■ 登場人物について。

短い時間の中に、主な登場人物の思想や生活空間まで描き、
それも一人一人が単純な味付けになっていないので、
皆 非常に魅力的です。
それぞれの役に 明確な存在理由(その人を通じて伝えたいもの)が
あるからなのかもしれません。


何と言っても、
神の手」を持つと言われながら何か秘密を抱えているらしい
考古学者・神村に、大泉洋さんを配したことが大きかった。
この人の 人好きのする柔らかさと 全てを読ませない掴みどころのなさが
役にとてもマッチして、
それが、このドラマの先に横たわる不安定で魅力的な揺らぎに、
うまくシンクロしていたように思います。

神村が思わせぶりな行動を取ると、
それが本気なのか 引っ掛けなのか まったく読めなくて、
もどかしいんだけど、そこがまたドキドキ感に繋がっていて、
ドラマの世界観にどんどん惹き込まれてしまう・・
演出としてわざとそういうふうに描いているんだろうけれど、
何となく大泉さん本人の持ち味にも繋がるような気がして、
まるで あて書きされたんじゃないかと思うほど。


神村が発掘した前期旧石器時代の塩名遺跡を
他に先駆けて載せる決断をした
出版社の教科書担当者・佐久間里奈に松雪泰子さん。
真摯に仕事に向かう姿勢に濁りがなく、
それゆえにこれから苦しみが始まって行くことになるのでしょうが、
周囲に翻弄されるこういう役は松雪さんの雰囲気にぴったりで、
この人だけは最後には笑顔になって欲しいなぁ、と
つい肩入れしてしまいます。


文部科学省資料保存庁次長・沢渡に陣内孝則さん。
神村に力を貸しているようでいて、
彼をうまく利用してのし上がってやろうという野心が潜んでいるようで
なかなか油断ならない。


神村に心酔する後輩・馬場田中圭さん。
次回予告に「えっ!?」という場面があって楽しみ。


他に、新聞記者で里奈の元夫でもある新谷に袴田吉彦さん、
神村と手話でやりとりする母親・悦子に朝加真由美さん、
13年前に殺された少女の姉・米松小枝子に岩崎ひろみさん、
人骨発掘を偽造だと訴える男・国松にきたろうさん、
神村の恩師で日本考古学連盟名誉会長・桧山に津嘉山正種さん等々、
派手さはないものの 味わい深い面々。


その中でも、私が一番興味を惹かれたのが、
13年前の未解決殺人事件にからむ柏田を演じる板尾創路さん。
柏田が持つ‘闇'を ゆるゆるとなめらかに演じていて、
だからこそ怖さが浮き上がって来るような作り。
「考古学上の大発見と捏造」という硬派の社会派ドラマに、
一気に、しかもまったく違和感なく、サスペンス要素を吹き込んでくれた。
柏田が今後どんな行動を取るのか、神村とどう絡むのか、も
楽しみなところです。


13年前の殺人事件を警視庁捜査一課として担当、
迷宮入りになったことで奥多摩北署に配属転換され、
やる気をなくしている刑事・行永に田辺誠一さん。
神村が遺跡発掘現場でその被害者の骨を発見したことから、
もう一度調査に乗り出すことになります。

刑事役を数多く演じている(特にこの半年は4本も!)田辺さんですが、
この行永という男は、その中でも非常に魅力的な人間に私には思えました。
登場人物の多いドラマなのにもかかわらず、
人となりをきちんと描いてもらっているので、
彼が抱き続けて来た13年間にわたる慙愧(ざんき)の念と、
被害者への悼(いた)みとが無理なく伝わって来る。

そんなふうに 脚本における人物造形がしっかりしている上に、
田辺さんがその上に塗り重ねた色味が魅力的で、
彼のファンとしては、行永を観るのが本当に楽しかった。
しょっぱなのキャパ嬢との絡み、「ヤクザだもん」という言い方、
鼻つまみ者の屈折、上司への直談判、
神村へのタメ口、遺骨となって帰って来た被害者の霊前で見せた表情・・

この先、神村の手を借りて柏田を追うことになる、ということは、
田辺さんが洋ちゃんと力を合わせて板尾さんを追う、ってことなわけで、
大好きな俳優さん3人がこういう位置関係で並ぶなんて、
何て私得!と密かにほくそ笑む私なのでありましたw


地の塩=聖書に出てくることば。イエス=キリストの教え。
腐敗を防ぐ塩のように、世の中の模範的な人であれとの意
                             (番組公式サイトより)




『地の塩』(第2話)感想 【ネタバレあり】

【地の塩・・神は人をそう呼ばれた。
それは闇の中でも信頼と誠を尊ぶ唯一無二の存在だから。
だがその心が失われた時、美しい塩は悪魔の砂と化すであろう----】


『地の塩』第2話は、このナレーションからゆっくりと動き出します。

全4話のうちの第2話というのは、
物語の流れから行くと「起・承・転・結」の「承」の部分。
目立って大きな変化はないものの、じんわりと‘闇’が広がって来て、
初回でまったく繋がりのなかった遺跡発掘と殺人事件が、
徐々に渾然と混じり合って来たように感じます。

特に、柏田(板尾創路)が
ひたひたと神村(大泉洋)たちのテリトリーに入り込んで来る、
その不気味さというのは、何とも堪(たま)らないものがありました。

柏田の動きが呼び水となったかのように、
神村も 沢渡(陣内孝則)も 桧山(津嘉山正種)も
互いが顔を合わせて何か話すたびに
観ているこちらがダークな方向に引きずられて行くような気がして、
いったい誰が正しいのか、誰の言うことを信じたらいいのか、
まったく分からなくなって来る・・

中でも、神村と沢渡の会話には不穏な色合いがどんどん蓄積されて、
「おいおい神村〜あんたがそんなことサラッと言ちゃいけないだろう」と
ちょっと切ない気持ちになったり、
「余計なことは言わない」という二人の言葉に
共有する秘密がありそうで、ついつい勘ぐってしまったり。


一方、犯人の手掛かりになる腕時計が神村によって発見されたことで、
殺人事件の方もようやく進展を見せはじめます。
死体を埋めた時になくした時計を密かに探しに来た柏田は、
神村の捏造の証拠を見つけようと発掘現場にやって来た
国松(きたろう)をめった打ちにして殺害、
二つの糸が完全に絡(から)まって、思わぬ展開になりそうな気配・・

次回第3話は「転」の部。
ドラマがどう転がって行くのか、ますます興味は深まります。



さて、今回は、
細かいところなんだけど、人間描写という点で
興味を惹かれたシーンをいくつかランダムに挙げてみたいと思います。


被害者の見つかった場所で柏手を打ち「なんまいだぶ」と唱える柏田。
これはもちろん本当に信心深い人なら絶対にやらないことで、
(柏手かしわでと南無阿弥陀仏は宗旨違い)
柏田に対して馬場田中圭)が疑いを持つ伏線になるのではないか、
という気がします。


「自分を曲げるってことがどういうことかお前に分かるのかね、
研究者を全うしているお前に・・」
直後の回想シーンで沢渡の屈折を見せられるだけに、
この神村に対する一言が
どれほど複雑な心境の上に成り立っているのかを考えると、
ちょっと沢渡に同情してしまった。


妹の遺骨が発見されたことで世間の好奇の目にさらされる
小枝子(岩崎ひろみ)に 行永(田辺誠一)が言った
「似合わないこと言いますが、俺を・・私を信じて下さい」
発見した腕時計を持って来た神村に言う
「虫がいいけど、どんどん掘って何でも持って来て」
この自分を一歩引かせた言い方に、
行永の人間性が伝わって来るような気がしました。


人間性、と言えば、神村が講演会で話した
「小学校の友達が鎌倉幕府の成立を[よいくにつくろう]と覚えていて、
テストの答案に4192年と書き、周囲から‘未来人’と言われた」
という笑い話は、神村という人間の振り幅の広さを伝えるのに
非常に役立っているように思えます。
この話の流れの最後に、
「2014年春には、鎌倉幕府成立の時期を6学説紹介する教科書が出る。
いずれの学説にも軍配を上げない、それも正しい歴史の捉え方だと思う。
なぜなら、歴史は常に変化するから」
と話す神村の言葉にも深い意味が込められているのではないかと。

神の手」と呼ばれる神村が、
母親(朝加真由美)とのコミュニケーションツールとして
その手を使って手話をする、というのも、興味深いところ。
このシーンがあるから、彼が沢渡とどんな物騒な会話をしても、
芯から悪い人間には思えないのだけれど・・
はたしてそれらは脚本の井上さんが周到に張った罠なのかどうか。


国松の調査を依頼しながら、娘(大野百花)には会わせない、と言い、
コーヒー代を置いて行く里奈(松雪泰子)と
元夫・新谷(袴田吉彦)の、絶妙な距離感。

そして何より、今回私が すごい!と思ったのが、
リビングで寝過ごした里奈が、娘・亜子を学校に送り出す時に、
玄関先で傘を渡そうとして、ふと外を見ると明るい・・というシーン。
本当に何気ない一瞬の出来事なのだけれど、
このワンシーンに込められたものを想像すると、何だかドキドキして。
傘というアイテムひとつで、伝わって来るものがあるんですよね。

おそらく里奈が寝過ごしたのは、夢を見ていたから。
その夢は、おそらく、雨の日に発掘現場を掘っている男の姿・・
つまり彼女の夢は、
そのひとつ前のカット(柏田が雨の中で掘ってる)の情景と同じもので、
しかし掘っているのは神村だったのではないか・・
そんな 何とも重苦しい雨の夢を見ていたのではないか、と。
里奈は、そんな夢を見てしまうぐらい、自分の仕事に責任を感じている
非常に真面目でストイックな人なんじゃないか・・
そんな彼女の性格まで伝わって来るような、
意味のあるカットだったように私には思われました。


そういう何気ない、でもいくらでも深読み出来そうな
シーンやカットが他にもあちこちにあって、
だからこそ人間描写が平板にならず、厚みや深みが出て、
ドラマとしての面白さに上乗せされた
独特のコクを醸し出してるんじゃないか、という気がしました。

そういうシーンが、今後もたくさん見られることを期待したいです。


追伸
ドラマの中で非常に有効に使われている雨のシーンですが、
ラストクレジットの後、何もない画面に雨の音だけが続く・・
この余韻の残る終わり方も好きです。


新約聖書マタイによる福音書」(第5章13節)
 汝らは地の塩なり,塩もし効力を失はば,何をもてか之に塩すべき。
 後は用なし,外にすてられて人に踏まるるのみ。

   (あなたがたは、地の塩です。
    もし塩が塩けをなくしたら、何によって塩けをつけるのでしょう。
    もう何の役にも立たず、外に捨てられて人々に踏みつけられるだけです)




『地の塩』(第3話)感想 【ネタバレあり】

終盤、発掘再開を祝う塩名遺跡前での
神村(大泉洋)と里奈(松雪泰子)との静かで熱い応酬は、
非常に見応えがありました。
3話は、神村が本当に捏造したのかどうかをミステリータッチで追う、
というような展開になるのかと思ったのですが、
神村は、里奈の前であっさりと捏造したことを告白
しかしそこからの神村の言葉には、非常に惹き付けられるものがあり、
この捏造を犯罪と言い切ることを躊躇(ためら)わせるほどの
説得力がありました。

罪を犯したはずの神村の言葉が一種神聖なものに聞こえるのは、
それでもなお、考古学者としての純粋な誇りや夢が、
彼の中に息づいていると感じられるからなのかもしれない。
私利私欲のためでなく、周囲の誰かのためでもなく、
遺跡の下から古代人の声を聴く、そのためだけに土を掘る・・

「嘘じゃないんだ。桧山先生と私の学説は疑う余地もなく正しいんです。
日本にも前期旧石器時代は存在したんですよ。
でも あの時 私が捏造しなかったら、
それが正しいと立証するための研究は出来なかった。
それは考古学において大きな損失です
だから私は石器を埋めて・・今ここにいるんです」

しかし、その学説にどれほどの信憑性があったとしても、
違った立場の人間から見れば、
神村の正しさは、正しいものではなくなるのですよね。
たとえば、塩名遺跡を教科書に載せようとしている編集者(松雪)や、
神村を‘神の手’と信じて慕う後輩(田中圭)、
真偽を糺(ただ)そうとする新聞記者袴田吉彦)にとっては・・

一方で、一番動きそうだった警察が、
そのことにあまり興味を示さなかったのも意外だった。
行永(田辺誠一)には、事件性がなければ動けない、という建前の他に、
自分が関わったふたつの殺人事件の犯人捜査に神村の力を借り、
彼に信頼を寄せているという事情がある。
「捜査のために見て見ないふりをするとおっしゃるのですか」
と言う里奈のまっすぐな視線を受けて
「そうしてでも、私には貫きたいものがあるんです」
複雑な色を孕(はら)みながらも しっかりと視線を返す行永・・
このやりとりも、観ていて非常に惹かれるものがありました。
   (余談ですが、私が田辺さんのファンを長く続けているのは、
    こういう繊細な表情を見せてくれる俳優さんだから ・・のような気がします)



自分の学説が正しいと立証する研究を進めるために捏造した考古学者、
それを教科書に載せていいものか悩む編集者
「本当のこと」より強いものはないと言う新聞記者
考古学者に憧れ、だからこそ彼のやったことを受け入れられない後輩、
事件性がなければ動こうとしない警察・・
それぞれの立場の違いが その言動によって浮き上がって来て、
「捏造問題」に対する距離感の違いが明確になって行く・・
そこが、今回、私には 非常に興味深く感じられました。


一方、
13年前の殺人事件と今回の国松殺しの関連性を調べ始めた警察に
神村が協力するらしい、と知った柏田(板尾創路)は、
殺意の矛先を神村に向けて来ます。
しかし、そのことで逆に時計(証拠品)との繋がりを知られ、
追い詰められて行くことになります。

そのあたりの流れは 正直少し拵(こしら)え過ぎたような気がしますが、
柏田を演じる板尾さんには 薄っぺらな嘘っぽさが感じられず、
アブノーマルな空気をしっかりと作っていて、
どんな場面でどんな行動をとっても怖いところが凄いです。


次回はいよいよ最終回、
この柏田の神村への理不尽な恨みがどういう形で決着するのか、
捏造問題の成り行きと共に、おおいに興味を惹かれるところです。



『地の塩』(第4話=最終回)感想 【ネタバレあり】

塩名遺跡の発掘を再開してほどなく、
神村(大泉洋)は、
今度こそ本物の前期旧石器時代の人骨と石器を発見します。
最初、私には、そのあたりの流れが
いかにもご都合主義に感じられたのですが、
でも、本当に神村の言うとおり 「あと少し」の時間があれば、
前期旧石器時代 日本に人類が存在した、という
桧山(津嘉山正種)の学説が正しいと証明されたはずだったんだ、
この「あと少し」の時間が欲しくて神村は捏造したんだ、と考えると、
何だかちょっと切ない気持ちにもなりました。

この発見により、
塩名遺跡は間違いなく前期旧石器時代に人類が存在した地として
歴史に名を刻むことになり、
里奈が手掛けた教科書も、どこよりも先んじて「正しい歴史」を載せた、
ということになったわけですが・・

その大偉業に比べれば、
神村のやったことは、本当に微々たる嘘でしかないのかもしれない。
「本物」を見つけ出すまでのほんのわずかな時間、
その時間を‘作り出さなければ’遺物は発見出来なかった、
そこに間違いなくある「真実」を掘り出すために、
あとほんの少しの時間が必要だった・・
それは、長い長い歴史から見ればほんの一瞬の出来事、
わずかな時間差・・
そこに潜むほんのかすかな嘘なんて、
未来の人たちは気づくはずもない。 それでも・・


大きな真実を認めさせるためについた小さな嘘。
この「嘘」の切ないところは、
神村に、一切の欲がなかったところだと思います。
沢渡(陣内孝則)は言うに及ばず、
桧山(津嘉山)でさえ名誉欲があった、
里奈(松雪泰子)でさえ塩名の人たちのことを思って心が揺れた。
しかし、神村の考古学への姿勢には、
そんな人間らしい俗っぽさや しがらみが まったく感じられない。

純粋に考古学を愛し、土の下から「正しい歴史」を掘り起こす、
ただそれだけをひたすら追求していた。
他に欲しいものなど彼には何もなかったんですよね。
だからこそ、捏造してでも、正しいものを正しいと認めさせたかった・・

そして、そのわずかな嘘のおかげで、彼の正しさは証明された。
正しい歴史が拓けた――

だけど、もしかしたら、
そのわずかな嘘を もっとも赦(ゆる)せなかったのも、
神村その人だったんじゃないでしょうか。
塩名遺跡で神村が里奈に言った「真実は作るものです」という言葉。
その裏にある‘まやかし’に一番心を痛めていたのは、
実は、彼自身であったような気がしてならない。

神に愛された人間は、
たとえ己(おのれ)の正しさを証明するためであっても
嘘をついてはいけない・・
そう信じ、そう生きようとし、そう生きられず、
葛藤し一番苦しんでいたのは、彼だったのではないか、と。


神村の嘘は、柏田(板尾創路)という悪魔を目覚めさせた。
大事な弟子田中圭)を人質に取られたのは、
彼にとって、自分を傷つけられるより辛かったはずです。

国松(きたろう)を殺した柏田が、
馬場田中)を連れ去り 暴行したと知った時、
神村は、改めて
自分の嘘が招いた罪の深さを思い知らされたのではないか・・
そして、柏田が自分を襲って来た時、
それが、自分のやったことに対する罰にも思えたのじゃないか・・
(柏田に二度‘手’を傷つけられたのは象徴的な気がします)

最初、私は、エンターテインメントとして視聴者の興味をひくために
柏田という殺人鬼を登場させたと思っていたのですが、
最終回を観終わって改めて考えると、
柏田という「異物」がこのドラマに放たれた理由は、
そこ(‘神村の嘘’に対する‘神の罰’)にあるような気がしてなりません。


一年後、
いずこか知らぬ土地を歩く神村が、
なぜあんなに穏やかな顔でいられたのか――

彼は、神の子として「地の塩」になることは出来なかったけれども、
罪を懺悔することで、考古学者として正しく生きる道を拓くことが出来た、
だからなのかな、という気がしました。
そういう目で見たせいか、
彼の後ろ姿が、インディージョーンズのようにも感じられました。

     **

『地の塩』4話全編を通して、非常に面白く観ました。
脚本(井上由美子)のうまさ、演出(鈴木浩介・権野元)のうまさが、
随所に感じられた作品でした。
音楽(村松崇継)も素晴らしかったです。

特に最終回は、宗教色が濃く感じられ、
神村の心の底を覗き込まされているような気持ちになりました。


その神村を演じた大泉洋さん。
以前から好きな俳優さんだったのですが、
今回はもう決定的に惚れ込んでしまいました、
この複雑な役を、よくもまあ最後まで全(まっと)うしたものだな、と。
人間的な温かみや人馴れしたところがありつつ、
一切の驕(おご)りも欲も業(ごう)も歪(ゆが)みも感じさせない、
捏造という嘘さえも、一種崇高なものとして伝えられる、
神村の研究者としての奥行の深さを、
ここまで徹底的に演じてくれるとは思わなかった。
3話の里奈との会話や4話のスピーチには濁(にご)りがなくて、
すーっと心に入って来て、驚きました。

リーガルハイ』や『半沢直樹』の時の堺雅人さんに似た、
虚構のドラマを 力づくでリアルに変えることが出来る貴重な俳優さん。
いやはや脱帽です。次の作品が楽しみです。


松雪泰子さん。
「誰も幸せにならない真実を暴く必要なんてあるのかな」という言葉に、
少しの嘘も赦さない里奈が内面に持つ‘やわらかい心’が
ふわりと浮き立って来て、
いかにも松雪さんらしい清らかさがにじみ出ていたように感じました。

里奈は、もっとも「地の塩」に近い存在だったのかもしれません。
そんな人だから、ひょっとしたら神村は、心の奥底では
彼女に自分の罪を暴いて欲しかったのかもしれない・・
なんてことを私が考えてしまったのは、
里奈を演じた松雪さんの持つ 清涼な空気感によるところが
大きかった気がします。

父親(勝部演之)や元夫(袴田吉彦)との
べったりにならない距離感も良かったです。
新谷(袴田)が自分の近くにいることを徐々に許すようになるあたりは、
里奈が、神村の嘘の意味を深く考え続けたことから繋がっている、
そのなめらかな受容もまた心地良かったです。

でもね〜、
今回や『ガリレオ容疑者Xの献身』みたいな役も良いですが、
この人のはっちゃけた役もたまには観てみたいんですよね、
いまだに『DRIVE』(SABU監督)の松雪さんが忘れられない身としては。


板尾創路さん。
正直なところ、ドラマの流れとしては、
神村と殺人犯・柏田(板尾)を絡ませる、というのは、
最後まで、どこか少し無理があったかな、という気もしますし、
この役は、神村を演じた大泉さんとは別の意味で、
心の動きを違和感なく作り上げるのが
非常に難しかったんじゃないか、とも思います。

でも、↑で書いたように、柏田が神村の罪を罰する神からの使い
のような存在だったら・・と想像してみた時、
私としては、大泉さんと対立する位置に板尾さんが配されたことが、
非常に興味深く感じられたのですよね。

俳優としての板尾さんって、
何となく観る側に単純な読み方をさせないような空気感があって、
得体が知れない雰囲気を持っている。
そのあたりが、今回の役にうまくはまった気がします。


田中圭さん。
神村への疑念をもちながらも、
柏田の暴行に屈しないことで神村を裏切らない姿勢を貫く、
その彼のまっすぐさが‘嘘’を背負った神村と対照的で、
神村の屈折を浮かび上がらせる効果があったような気がします。
くせのある役も多い田中さんですが、
今回のようなまっすぐな役も、前に出過ぎず嫌味なく演じられる、
ワキで光るいい俳優さんだな、と思いました。


陣内孝則さん。
この人のアクの強さが私はちょっと苦手だったのですが、
今回は、抑え気味に裏工作に長けた人間の昏(くら)さを表現していて、
興味深かったです。
桧山の絶大な信頼を得ている神村に対する密かな嫉妬や、
養母に育てられ、自分がどこから来たのか興味を持つようになった、
という里奈へのさりげない語りかけの中に、
沢渡の芯になる部分が浮き出て来て、
そこに陣内さんの独特の色味が加わることによって、
役としても魅力的になった気がします。


袴田吉彦さん。
里奈の元夫で毎朝新聞社記者・新谷。
このあたりの役に袴田さんクラス俳優さんが入ると
ドラマがグッと締まります。
里奈や娘・亜子との距離が徐々に縮まって行く様子に無理がなくて、
いつポキンと気持ちが折れてしまうか心配だった里奈の今後も、
この人がいれば大丈夫、という気がして、何だかホッとしました。


大野百花さん。
新谷と里奈のひとり娘。
大野さんのセリフがものすごく自然でびっくりしました。
里奈の娘とは思えない明るさやズバッと切り込むような物言いは、
父親似なのかな、なんて、あれこれ想像したくなるような
いい役に育っていたように思います。


朝加真由美さん。
神村の母・悦子。この役も、非常に印象的でした。
いつもの手話ではなく、たどたどしい言葉で
「母ちゃんはおまえを信じてる」と息子の手をさすりながら話す、
その姿にホロッとさせられました。
シャキッとした役も、こういったすこし陰影のある役も自在にこなす、
朝加さん、もうすっかり魅力的なお母さん女優ですね。


他に、津嘉山正種さん、きたろうさん、岩崎ひろみさん、勝部演之さん、
河原崎健三さん、並樹史朗さん、増澤ノゾムさん、おかやまはじめさん
等々、それぞれにしっかりした役作りで、頼もしかったです。


田辺誠一さん。
捏造問題には直接関係ないポジションだったのですが、
脚本や演出に揺れやブレがなく、キャラ設定がきちんと出来ていたので、
安心して観続けることが出来ました。

最初の出(キャパ嬢とベッドの上でのやりとり)のインパクトに比べると、
徐々におとなしくなってしまった感は否めませんが、
それでも、13年間背負って来た雪辱を果たそうとする刑事としての姿、
特に、3話の里奈との会話や 最終回の神村を語る姿には、
行永という人間が蓄積してきた想いや感情が無理なく詰まっていたし、
酸いも甘いも噛み分けた大人としての自然な深さが
言葉の端々ににじみ出ていて、
観ていてすごく惹かれるものがありました。

もう15年以上この俳優さんを観続けていますが、
若い頃に感じられた 演じる上での痛々しさみたいなものが
いつのまにかゆるやかに払拭(ふっしょく)されて、
豊かで細やかな感情を表現出来る頼もしい俳優さんになったなぁ、
と、嬉しくもあり、感慨深くもあり。

でもきっと、彼の中には、ちゃんと棘がある、
求められれば、いつでも牙をむく用意が出来ている・・
そういう危うくて鋭利な俳優田辺誠一がまたいつか観られることを、
ちょっと期待したりもしている私です。