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★≪路地裏より愛を込めて≫全エントリー   ★カテゴリー別タイトル一覧【2014/11/16更新】    .          

2017-07-15

『ボク、運命の人です。』感想

『ボク、運命の人です。』感想

肩が凝ることもなく 変な力も入らずに
久しぶりに安心してラブコメディを楽しんだ気がします。
ラブコメってもともとそういうもんじゃないの?」
とおっしゃる方も多いかもしれませんが、
ラブコメって案外作るのが難しいようで、
安心して観られるものって なかなかないような気がするので。
(まぁ、もともと私がそういうドラマをあまり観ないせいかもしれませんが)

30年後の世界からやって来た
「神」と名乗る男(山下智久)に翻弄されつつも、
やがて運命の女性(木村文乃)と結ばれる男(亀梨和也)‥
‥と書くと、安っぽいSFか!?なんて つい勘繰りたくなるし、
私なんかは実際勘繰ったわけですがw
でも、このドラマはそのあたりのおとぎ話めいた空気を
うまくファンタジーとして見せることに成功している、
それはまず第一に、山Pの不思議と軽妙な雰囲気によるところが
大きかった気がします。
飄々としていながら何だかすごく可愛くて、
10cmぐらい浮いてるような空気感が好もしく微笑ましかった。
神(山下)と誠(亀梨)のやりとりが毎回すご〜く楽しかったです。

惜しまれるのはラスト。
それまでの流れのまま淡々と終わってしまった感がありました。
もうちょっと何かしら満たされた終わり方であって欲しかった。
たとえば、誠の中にある自分の記憶を消してしまった神が、
どこかでもう一度(たとえば息子が生まれた時に)誠の前に現れる瞬間‥
というのも観てみたかった気がします。

山下くんについてひとつ気になったのは‥というか、
彼を観ていてずっと感じていることなのですが、
声が前に出て来なくて もどかしく思う時があります。
(以前の亀梨くんもそうだった)
今回は、役柄として、それでもいいかも、とも思えたのですが、
もうちょっと声の通りが良くなって台詞にメリハリがつくと、
もっと押し出しが効くようになる気がします。
(いつもながら 上から目線ですみません)
とは言え、とてもチャーミングだったので、細かいことは まっいいかw

木村文乃さんのちょっと甘めな雰囲気も良かったなぁ。
ウエーブのかかった短めの髪も、
今までの木村さんのイメージとはちょっと違っていて、
新たな魅力発見、という気分になったし、
晴子という一人の女性の感情としても、素直に受け入れることが出来た。
見知らぬ男性に「僕はあなたの運命の男です」なんていきなり言われたら、
そりゃ気持ち悪いって思うのは当然なんだけど、
その最悪の出逢いから少しずつ晴子の心が溶けて行く、
そのゆるやかな変化が、すごく自然に感じられたから。
そのあたりは脚本のうまさでもあるなぁと思いました。

で、その「気持ち悪い男」という最悪のスタートから
徐々に晴子の鉄壁の心を崩していく男・正木誠が亀梨くん。
いや、ちょっとびっくりした、
彼がここまで滑らかに正木誠という役をこなしてくれるとは
思ってなかったから。
まず(いつも気になっていた)声がしっかり前に出ていることに驚いたし、
誠の表情にもリアクションにも本当に無理がなくて、
ほんのちょっとした表情がとても良くて、
(喧嘩別れした神が自分の部屋に戻っていたのを知った時の
平静を装いながらも嬉しさを隠し切れない目もと口もと とか)
久しぶりに亀梨くんを観て、おこがましいかもしれないけど
なんだかすごく成長したな、と思いました。

ワキでは菜々緒さんがすごく良かった。
こういう役を生き生きと演じている彼女を観ると、
今までのイメージ吹っ切って、
これからは もっといろんな役にチャレンジして欲しい、
制作側も、いろんな役を与えて欲しい、と思います。

そして満島真之介くん。彼のノリ具合もすごく楽しかったなぁ。
面白過ぎておいおい大丈夫かと思うこともあったけどw
決して「ボク運」のコメディとしての枠からはみ出さない、
そのサジ加減が絶妙でした。

他にも、誠の同僚役の大倉孝二さんや澤部佑さん、
晴子の会社の社長の渡辺江里子さん阿佐ヶ谷姉妹
(このキャスティングには脱帽!w)
晴子の両親、杉本哲太さんと石野真子さん、等々、
どの役も間違いない、という安定感があって、楽しかったです。
杉本さんは本当に幅広くいろんな役が出来る人なんだなぁ、
と、改めて思いました。

そうそう、晴子の会社の人たちの衣装がとっても良かったことや、
誠の部屋をはじめ、それぞれの居場所が心地良さそうな雰囲気だった
ことも付け加えておかないと。

さて、田辺誠一さん。
誠の上司で、ちょっと天然で物腰柔らかで‥というのは、
最近の田辺さんの鉄板でもあるし、
出番がそれほど多くなかったにしては、
なんだかんだで、ちゃんと誠の役に立ってたところもあって、
そのあたりは良かったかな、と思いました。
ただ、
亀梨くんと田辺さんというと
私はどうしても『神の雫』を思い出してしまうし、
あの時、二人がガッツリ組んで、
とんでもない世界にチャレンジしていたことを思うと、
今回の久しぶりの顔合わせを、ちょっと物足りなく、寂しく感じてしまった、
というのが正直な気持ちなのも確か。
もともと田辺さんのファンで、あの時から亀梨くんに興味を持ち始め、
神の雫で育まれた空気感に何度か胸震わされた人間としては、
こういう使われ方は何だかもったいないなぁ、
と思ってしまったのも事実なので。
‥でも、それはまぁ、贅沢というものなのかもしれません。(寂)

あ、そうそう、最後になりましたが、
飲み屋のマスター(村杉蝉之介)のTシャツ、
毎回なかなか味のある言葉がプリントされていて楽しかったのですが、
最終回近くから田辺画伯の作に変わっていて、
相変わらず脱力系の クスッと笑えるものになっていたのが
ご愛敬でしたw


『 ボク、運命の人です。 』     
演出:佐久間紀佳、小室直子、猪股隆一、高橋朋広  脚本金子茂樹
音楽林ゆうき 主題歌:亀と山P「背中越しのチャンス(ジェイ・ストーム
チーフプロデューサー:西憲彦 プロデューサー:福井雄太下山潤日活
制作協力:日活 製作著作 - 日本テレビ
出演:亀梨和也 木村文乃 満島真之介 菜々緒 澤部佑
渡辺江里子阿佐ヶ谷姉妹) 岡野真也 大倉孝二 村杉蝉之介 
石野真子 田辺誠一 杉本哲太 山下智久
ゲスト:あかつ HIRO安田大サーカス加藤諒 渡辺哲 吉井怜
公式サイト

2017-03-30

『君と100回目の恋』感想

『君と100回目の恋』感想

最近、タイムリープと言われるような、
時間移動を題材にした映画が多いような気がします。
この映画もそのひとつで、
そういう意味では、新鮮味がないかもしれないのですが‥
でも私は、この映画の、いい意味での少女まんが的空気感みたいなもの
(少女まんがが原作というわけではないのですが)
が、何だか心地良かったです。

他のドラマ映画の感想でも何度か書いたことがあるのですが、
たとえば、少女まんがとか、今回のタイムリープものとか、
あり得ない話だったり、ファンタジーだったり、を映像化する場合、
観る側に(ドラマ上の)リアルなものとして受け入れてもらい、
かつ共感してもらうのは とても難しいと思います。
でも、この映画では、
登場人物たちも、彼らを取り巻くすべてのものも、
出来る限り 嘘 を感じさせず、違和感なく画面の中に存在させる、
それを観る側に(ドラマ上の)リアルなものとして納得させるための
引き込み方というかアプローチというか、
そういうものが ほぼ成功しているように私には感じられました。

そのあたりはやはり、
月川翔監督をはじめとするスタッフの力が大きいのかもしれないですね。
少女まんが風な映画の作り方を心得ている、というか。

葵海や陸たちの居場所‥大学構内であったり、自宅であったり、
海辺のライブ会場であったり‥がそれぞれにとても魅力的だったし、
小道具(葵海の目覚まし時計がかわいかった)
衣装(赤いワンピはちょっと気になったけど)にもセンスが感じられたし、
もちろん音楽も良かったし、
何よりもメイン5人のキャラが粒揃いで、
非常に良いバランス(それこそ少女まんが的な意味で)だったことに、
とても好感を持ちました。


葵海を演じたMIWAさんは、女優さんではないので、
確かに演技という点では少し物足りないところもありましたが、
彼女の独特の話し声がまるで声優さんのそれのようで、
とってもチャーミングで、かわいらしくて、
私としては思ったよりすんなりと受け入れられたような気がします。
何よりも、あの伸びやかな歌声には引き込まれました。

陸の坂口健太郎くんは、少女まんがに出て来る男の子の
ある種の堅さ(不器用さ)みたいなものを持っていて、
そのちょっと古風な雰囲気が、役と非常に合っていたように思います。
陸という青年が持つ味わいを自然にきちんと作り出せる人、
と言えばいいか。
伯父さん役の田辺誠一さんとどこか似ていて、
二人が一緒にいるシーンは 観ていて和(なご)みました。

直哉竜星涼くんは、つい最近『賢者の愛』(WOWOW)で知って興味を持った
俳優さんですが、今回のキャラはあの時とまったく違っていたのでびっくり。
少女まんが的二枚目の端正な雰囲気を持ちつつ、
出しゃばらない、目立ち過ぎないところが良かったです。

里奈の真野絵里奈さん。
彼女の美しさと強さと一種の透明感が、とても魅力的に感じられました。
でも、どんなに魅力的でも里奈は主人公ではなく、
天然で人なつっこい葵海を引き立てるキャラに終始する、という、
その立ち位置の破たんのなさにも納得。

葵海・陸・直哉・里奈という4人の繋がりは、
長年少女まんがを見続けて来た私みたいな人間からすると、
懐かしさの感じられる まさに定番、という感じで、
目新しさはなく、若干の物足りなさが感じられたのも確かなのですが、
一方で、心穏やかに物語に委(ゆだ)ねられるような安定感・安心感
あったようにも思います。

それと、5番目の見守り人・鉄太に泉澤祐希くんを持ってきたことも
とっても大きかった気がします。
他の4人とのバランスがすごく良いのですよね。
もっとおちゃらけたお笑い系の人が入ってもおかしくはないんでしょうが、
そうすると鉄太だけナマっぽくなってしまって、
せっかく4人が生み出したきれいな水彩画的空気感を
ぶち壊すことにもなりかねなかった。
キャスティングした方はよく分かってらっしゃる、と思いました。


ストーリーとしては、
正直、ずば抜けて面白い、というところまでは行かないし、
葵海の事故を絶対に止められないというのは無理があるだろう、等々、
ツッコミどころはいろいろあったのですが、
音楽と、それを残すアイテムとしてのレコードが、
葵海と陸の繋がりを示すものとして非常に重要な役割を果たしていて、
最後の葵海の「食べちゃっていいからね」という言葉の意味を考えると、
じんわりと温かい気持ちになりました。

また、死、というものを必要以上に哀しいものとして描かない、
お涙頂戴にしなかったところも好感が持てました。
過去を繰り返す(事故に直面する)ことで陸は傷つき続ける、
身体はそのままでも、心がどんどん疲れ果てて老いて行くような、
そんな陸をこれ以上見たくなかった葵海の選択

だけどそれは、決して哀しいだけの別れじゃない。
チョコレートレコードを食べる、というのは、
葵海との想い出を陸の体内に溶け込ませ 沁み込ませること。
だから、彼女との想い出は死なない、彼女は死なない、
陸の中でずっと生き続けることになるのかな、と。


そんな二人をそっと見守る大人たち。
葵海の母(堀内敬子)のふわんとした温かさだとか、
大学教授(大石吾朗)の学生の昼寝くらい大目に見てくれそうな感じwとか、
こちらも少女まんが的心地良いゆるふわ感で、
メイン5人の色味を壊さず邪魔しない、程良い立ち位置に終始していて、
好感が持てました。

そしてもう一人、陸の伯父である俊太郎(田辺誠一)。
陸と葵海を子供の頃から見守り続け、
さらには、特別なレコード(時間を戻せる)を持っていた人。
この人が営む海辺の喫茶店「HASEGAWA COFFEE」が、
レトロな雰囲気でとても良かった。
ゆる〜い感じでのんびり商売しているふうなのも、
訳ありのレコードを隠し持っていたことも、
実は10年前、彼もまたそれを使って病気の妻を救おうとしたことも、
今日はカレーで次の日はカレーうどん食べるみたいなところもw
何だか妙に田辺さんの持ち味にフィットしていて、
観ていて微笑ましかったです。

亡くなった奥さんの写真が西田尚美さんで、
つい最近『とげ』(オトナの土ドラ)で二人は夫婦を演じていたばかりだったので、
思わず笑ってしまったのですが、
いやいや、それ以上に、
この映画を観始めた時から どこか空気感が似ているとずっと思っていた
ハチミツとクローバー』のこれはまさに逆バージョンではないか、
なんてことに気がついた時には、何だかほっこりしたりして。

で、スピンオフ小説『君と1回目の恋』を、
田辺さん以下の映画キャストに脳内変換して読み始めているワタシ。
脚本担当の大島さん、映画の俊太郎by田辺に触発されて
この小説書いたのかしらん、なんて、
思いっきりファン目線の都合のいい楽しい想像をしつつw
ゆっくり味わいながら読ませてもらおうと思っています。


『 君と100回目の恋 』     
監督:月川翔 脚本大島里美 音楽:伊藤ゴロー
エグゼクティブプロデューサー:豊島雅郎 プロデューサー:井出陽子
制作・配給:アスミック・エース
出演:miwa 坂口健太郎 竜星涼 真野恵里菜 泉澤祐希
太田莉菜 堀内敬子 大石吾朗 田辺誠一 他
カメオ出演 SUPER BEAVER
公式サイト

2017-01-21

『とげ〜小市民・倉永晴之の逆襲』感想

『とげ〜小市民・倉永晴之の逆襲』感想

昨年10〜11月に東海テレビフジテレビ系)の「オトナの土ドラ」枠で
放送されたドラマ。遅ればせの感想です。


これは私としては面白かったなぁ。

わにのくに市役所・市民相談室主査の
倉永晴之(田辺誠一)のもとには、
日々、市民から とんでもなくたくさんの苦情や要望が寄せられます。
さらには、奥さん(西田尚美)の不倫問題、
息子(五十嵐陽向)のいじめ問題、家への投石や落書き、等々、
職場でも家でも息つく暇なく これでもかこれでもかと災難が降りかかる。
もうその時点で観るのがしんどくなってしまって、
もうちょっと救いがあればいいのに〜‥と思うのですが、
でも、ひとつひとつは とてつもなく大きな問題というのではなく、
どれもこれも、私たちの身近で よくある話ではあるな、とも思う。

倉永が、市民の力になりたい、と いくら頑張っても、
市民の声は市役所内をたらい回しされてちっとも改善されない。
ぎりぎり追い詰められたところで、
役所内に彼と同じような考えを持った仲間達がいることが分かり、
観ているこちらもちょっとホッとします。
何とかこれからうまく行ってくれるといいな〜‥と思ったのもつかのま、
今度は市長(鹿賀丈史)という大きな壁が倉永の前に立ちはだかるのです。
はぁ〜しんど。

この市長が、徹底的に腹黒い悪役というわけではなく、
傲慢無礼なところはあるとしても、悪意がなくて、
彼の言い分にも一理ある、というところが面白い。

逆に、酔った勢いで倉永にケガを負わせたのに謝りもしない市長に対し、
思い余った倉永が策を練って陥れようとする、というのは、
主人公はいつも正しい(正しくなければならない)、というドラマの不文律に
慣らされて来た私としては、あまり後味がいいものではなくて、
そのあたりは観ていてちょっと辛かったです。
たとえば、『半沢直樹』や『花咲舞が黙ってない』あたりの
悪に果敢に立ち向かい 悪を裁く主人公、といった
単純明快な勧善懲悪としての爽快感は得られない、
なんとなく、おいおい主人公がそんなことやっちゃっていいのか、
という モヤモヤした気持ちになってしまって‥

だけど、あの時 自分の顔を何度も殴った倉永の
切羽詰まった想い、というものを考えた時、
何だかすごく切ない気持ちになってしまったのも確かで。
そうでもしなければ大きな歯車を動かすことが出来ない、
権力を持たない小市民ゆえの
窮鼠猫を噛む行動だったんじゃないか、という気がして。

よく考えたら、倉永は、あの行為によって強烈な しっぺ返しをされる。
最も相性の良くない部署に移動になってしまい、
結局は市役所を退職させられるはめになる。
悪いことをすればむくいが来る、
それは、主人公だろうが敵役だろうが平等なんだ、ということ。
そもそも悪いことをしないことが前提の主人公のドラマでは、
そこのところをちゃんと描くことが出来ない、
このドラマの主人公だから描くことが出来た部分だという気がするし、
そういう意味で、倉永は、
私が時折ドラマを観ていて感じるモヤモヤしたものを
晴らしてくれた主人公でもあった気がします。

1年前に 田辺さんが演じた『撃てない警官』(WOWOW)の主人公・柴崎も
出世欲にとりつかれた男でしたが、惹かれるところも多々ありました。
人間が正しいことをし続け、正しいまま生きていく、ということは
そんなに簡単な事じゃない、という気がするし、
潔白な人間が、人間として魅力的かというと、
必ずしもそうは言い切れないのではないか、という気がします。

ドラマの中で、
正論には逃げ道がない、まっすぐな正義はつまづくと後戻りできない、
というセリフがあったけれど、
人間は、清廉潔白なだけではやっていけない、
自分なりの正義を貫くため、家族や自分を守るためには、
時に ずるくもなるし、抜け目なく立ち回りもする、
倉永の、ある意味人間らしいそんな小市民なりの少しとげのある
視線や姿勢というものに、何だかちょっとホッとしたのも
事実だったりします。

偶然なのかどうか、
田辺さんが今年演じた役の多くが、
そういった、単純明快ではない甘みも苦みもある風味を持つものだった
というのも、なかなか興味深いことではありました。


キャストは、田辺誠一さんをはじめ、
西田尚美さん、木の実ナナさん、山口良一さん、
遊井亮子さん、大河内浩さん、西村和彦さん、鹿賀丈史さん、といった
メインの顔ぶれそれぞれに個性の強い味わいがあって面白かったです。

脇を固めた人たちでは、
同僚役の内田滋さんや原扶貴子さんが私は好きでした。
内田さんの倉永への大阪的ツッコミが毎回ものすごく効いていて、
倉永のダークな部分にぶつかってちょっと落ち込んだ時など
観ているこちらの気分を上げてもらって、嬉しかったし楽しかった。

また、明瞭な悪役に終始した村杉蝉之介さんや、
宍戸美和公さん、ふせえりさん、まいど豊さん、梨本謙次郎さん等々
ところどころにピリッと辛みの効いた俳優さんが出ていて、
彼らが出て来るたびに、心の中で、
オ〜ッ!とひそかに盛り上がってた脇役好きな私でありました。


ドラマを観終わった後に思ったこと。
私も わにのくに市ぐらいの人口の市民のひとりとして、
市に何かをやってもらいたいと要求するばかりじゃなくて、
「見直すべきは私たち自身の当事者意識です」という倉永の言葉を
噛みしめつつ日々の生活を送る人でありたい、と思いました。


『とげ〜小市民・倉永晴之の逆襲』     
放送日時:2016年10月8日 - 毎週土曜 23:40- <連続8回>(東海テレビフジテレビ
原作:山本甲士『とげ』(小学館文庫刊)
監督:本橋圭太、岡嶋純一 脚本:三國月々子、大林利江子、小川眞住枝
主題歌BEGIN「網にも掛からん別れ話」
プロデューサー:西本淳一(東海テレビ)、岩�啗文(ユニオン映画
制作著作:ユニオン映画 制作東海テレビ
キャスト:田辺誠一西田尚美、五十嵐陽向、
大河内浩、西村和彦、山口良一、内田滋、原扶貴子、遊井亮子
村杉蝉之介、宍戸美和公、ふせえりまいど豊、梨本謙次郎
木の実ナナ鹿賀丈史 他
公式サイト

2016-11-25

『太陽の蓋』感想

太陽の蓋』 感想

映画として面白いかどうか、というより、
ひたすら やるせなくて、切なくて、苦しかったです。

この映画は、
東日本大震災による福島第一原発事故当時の数日間
官邸で一体何が起きていたのか、を、
菅直人元首相(三田村邦彦)をはじめ、当時の政治家たちの
実名を使って描いています。
新聞記者・鍋島(北村有起哉)の目を通す、という形ではあっても、
実在の政治家たちが登場する、というインパクトは大きく、
映画というフィクションであっても、
当時私たちが知らされることのなかった「原発事故の真相」に
限りなく近づくものになるのではないか、という期待を抱かせてくれたし、
ある意味、その期待を裏切らない内容になっていたと思います。

当時、東京電力(映画では東日電力)の隠蔽によって、
福島第一原発の様子をまったく知らされていなかった官邸。
未曽有の危機がぱっくりと大きな口を開けて彼らの前に立ちはだかる中、
短い時間の中で次々と新たな問題が噴出し、大きな決断を迫られる、
その苛立ちと もどかしさが 対策本部内で交錯するシーンは、
まるで『シン・ゴジラ』のシリアス版リメイクを観ているようで、
かたずを呑んで画面に見入ってしまいました。

一方で、鍋島の妻・麻奈美(中村ゆり)や息子の存在が、
当時の市井の人々の不安や動揺を丁寧にすくい上げてくれていて、
地震直後の「大丈夫?」という麻奈美のメール
福島原発の危うい実情を知った鍋島が
「大丈夫だ」と返信するのをためらうシーンや、
原発の爆発をニュースで知った麻奈美が
あわててベランダで遊んでいた子を部屋に引き入れるシーン、
麻奈美の妹がアメリカ人の夫に日本退去命令が出たことを知らせに来て
「肝心なことを知らされていないのは日本人だけじゃないの?」
と言うシーン、
鍋島に「逃げろ」と言われた麻奈美が
「どこに逃げればいいの、日本中どこにも原発はあるわ」と言うシーン等々、
「突然日常に入り込んで来た放射能という得体のしれないモノ」への
言いしれない不安や怯えが ひしひしと伝わって来ました。

また、イチF(福島第一原発)で働く若者・修一(郭智博)とその家族の、
原発を抱えた土地に住む人々のリアルな生きざまにも、
つまされるものがありました。
彼らにとって、就職先としての原発は、決して特別な場所ではなかった。
自分の職場で事故があれば何とかしたいと思うのが当たり前で、
そこで働く人たちは実直に事故対応に当たっていたのだ、と。
だからこそ、数年後、鍋島に向かって淡々と言った、
「あの時テレビを観てた人たちは、今何を考えてるんですかね」
という修一の言葉は、胸が痛かったです。


当事の官邸の人々が実名で出ている以上、
しかも彼らのほとんどがまだ政治家であり続けている以上、
彼らを厳しく追及する、という形にはならないんじゃないか、という
若干の気掛かりが ないではなかったし、
実際、保安委員会や東電の人間を
分かりやすく悪者にしてしまっている、という気がして、
正直、少し残念な気持ちを抱きつつ観ていたところもあったのですが‥
終盤、鍋島の一言で、その思いは完全に覆ります。

数年後、鍋島は、
書くことが新聞記者の使命であると信じ、
事故の検証をするため、当時の関係者にインタビューします。
元内閣副官房長官だった福山(神尾佑)は言います、
情報が官邸にまったく上がって来なかったんだ」と。
それに対して、鍋島は尋ねるのです、
情報が上がっていたら 何とかなったんですか」
その言葉に、福山は一言も返せず沈黙してしまいます。

あの時、正確な情報が逐一上がっていたら、
これほどの被害にならずに済んだんだろうか‥
あの時、東電の人間が、保安委員会が、的確な判断をしていたら、
何とかなったんだろうか‥
あの時、現政権の首相があの立場にいたら、
少しでもいい方向に進むことが出来たんだろうか‥
そう考えた時、
すべてに首を振らざるを得ない暗澹(あんたん)たる思いに
心塞がれる自分がいました。

あの事故の真相はどうだったのか、結局誰が悪かったのか、
この映画で、真犯人探しをしようとしていた私は、
それが間違いだったことを思い知らされた気がします。

自然の驚異は、人間の想定を軽々と超えて突然やって来る‥
人間は万能じゃない、どこかでミスをする‥
「原発」という太陽モドキの怪物は、
不完全な人間なんかには到底歯が立たないし、手に負えない。
そんな人間が 安易に太陽を手に入れようと考えること自体、
不遜だったのではないか――
この映画は、暗に、そのことを伝えようとしているのではないか、
と、私にはそんなふうに感じられました。


映画は、福島では、公開数か月経ってようやく、
しかも、1日1回だけ、数日しか上映されませんでした。
私が観た時は、他に50人ほど、
普段の映画にはあまり足を運ばないような50代以上の人がほとんど。
映画が終わって明るくなった館内を、
彼らは、ただ言葉もなく黙々と歩き、階段を下りて行きました。
その中には、ひょっとしたら原発の事故のせいで、
福島市やその近辺に生活を移さなければならなかった人も、
いたかもしれない。

わずか数十キロ先に、かろうじて蓋をされつつある壊れた太陽がある‥
福島は、これから先何十年も、
原発の廃炉に向けた危うい作業に付き合って行かなければならない‥
一方で、日本の人々のフクシマへの記憶は、
おそらく ゆっくりと薄れて風化して行くのだろう‥

そう思うと、
映画を観終わって家路に向かった人たちのやるせない沈黙が、
一層重く 心に響いてくるような気がしました。


                             11月2日 福島フォーラム


    *公式サイトスピンオフ映画と同じくらい見ごたえがあります。
     興味のある方はぜひ。《公式サイト》

    *福島民報コラムです。(この映画を取り上げています)
     《あぶくま抄/11月4日「何も終わっていない」》



太陽の蓋』
監督:佐藤太 脚本:長谷川隆 音楽ミッキー吉野
プロデューサー:大塚馨 製作:橘民義 
制作プロダクション:アイコニック 配給:太秦
キャスト:北村有起哉 袴田吉彦 中村ゆり 郭智博 神尾佑 
三田村邦彦 菅原大吉 青山草太 大西満信 
菅田俊 井之上隆志 宮地雅子 菜葉菜 阿南健治 伊吹剛 他
公式サイト

2016-11-07

シネマ歌舞伎『ワンピース』感想

シネマ歌舞伎スーパー歌舞伎 ワンピース』感想

一部ネタバレしています。
これから映画をご覧になる方はご注意下さい。


わははは〜楽しかった!
すごいなぁ、歌舞伎って半端ない跳躍が出来てしまうんだなぁ!
ONE PIECE』という国民的大人気マンガ歌舞伎で、と聞いた時、
奇想天外なストーリーといい、奇抜なキャラ群といい、
なんて無謀なことを!生半可な出来じゃお客は満足してくれないぞ!
と内心思ったけれど、
でも 市川猿之助さんだからなぁ、きっと何とかなっちゃうのかもなぁ‥
なんて 信じたい気持ちがどこかにあったのも事実で。

で、フタを開けてみたら、まぁ思い切りよく 小気味よく
舞台上に見事に違和感なく「ONE PIECE世界」を作ってくれて、
そこに、大量の水滝での立ち廻りやら、紙吹雪の中での空中戦やら、
天井まで届くほどの宙乗りやら、早替わりやら、
歌舞伎だからこそ出来るケレン味たっぷりの見せ場をふんだん加える
という、エンターテインメントとしての魅力満載の舞台になっていて、
楽しく笑って、ほろっと泣けて、また笑って、
心地良く楽しめたことに、本当にびっくりしてしまった。

長年歌舞伎を愛して来た方々が、
これを邪道だと思わないでくれるといいなぁ、なんて、
余計な心配までしたりして。
だって、歌舞伎舞台とは到底思えない
大勢のおかまさんたちのダンスまであるんだもん!(爆)

多分これは歌舞伎じゃなくても出来る脚本
だけど、歌舞伎だから一層面白くなった、とも言える。
衣装も、メイクも、歌舞伎の風味をうまく加えつつ違和感を持たせない、
ゆずの北川さん提供の耳馴染みよい主題歌とか
プロジェクションマッピング等々新しい手法も取り入れながら、
ちゃんと「歌舞伎」という世界観の中の『ワンピース』になっている‥
歌舞伎が持つ「突き抜けた自由さ」に、改めて驚く。

異種格闘技みたいなこの舞台を、
強引に馴染ませ、細やかに消化させ、見事に結実させたのは、
横内謙介さん(劇団扉座)の脚本・演出、猿之助さんの演出をはじめ、
製作陣の力が非常に大きかっただろうし、
白ひげの市川右近さんやサンジ中村隼人さん、
ボン・クレー坂東巳之助さん等
それぞれの役に見事にはまった演者たちの
MAXまで振り切った役つくりもすごく大きかったように思います。

ゲストの人たちも とっても良かったなぁ。
浅野和之さんのイワンコフは最高だったし、
(最初誰がやってるか全然分からなくて、後で浅野さんと知って驚いた!)
現代版メイクで出演の福士誠治さん(エース役)は
めちゃくちゃかっこよかったし、
井之上チャルさんのウソップ観て一気にワンピース世界に入って行けたし、
嘉島典俊さんはすっかり馴染んでて歌舞伎の人だと思って観てたしw
そしてそして、私のお気に入りチョッパー
ぬいぐるみと変身後だけかと思ったら‥
く〜あんな可愛い姿で出て来るなんて、ずるいよ、
思わずウルウルしちゃったじゃないか。


今回も、他のシネマ歌舞伎同様、
映画ならではの面白さがあちこちにちりばめられていました。
CGやらスローモーションやら、
舞台の面白さを増幅させてくれる仕掛けも豊富で、
それぞれのキャラの表情もはっきり分かって、
特にボン・クレーの顔芸(って言っちゃっていいのか?w)は
もうほんとにマンガアニメそのもので、
あの表情をアップで観れただけでも映画観に行って良かったな、と思えた。

3時間半の舞台を2時間にぎゅ〜っと絞って映画にした
それには賛否があるだろうけれど、
ストーリ―を知っている原作ファン(歌舞伎に馴染みのない人)にも
かなり観やすくなっていたと思うし、
歌舞伎ファンに対しては、本物(生の舞台)を観たいと思わせる魅力が
詰まっていた、ということで、私はすごく楽しみました。
(個人的には猿之助さんの早変わりをもっとじっくり観たかったけど)

舞台とはまた違った魅力満載で、本当に面白かったです。
チケットの手配までしておきながら舞台を観に行けなかった無念を
かなり晴らしてもらった映画でした。


で‥来年秋のワンピース再演、すでに行く気満々になってる
私なのであった。w


                          10月28日 福島フォーラム

シネマ歌舞伎スーパー歌舞伎ワンピース     
原作:尾田栄一郎 脚本・演出:横内謙介 演出:市川猿之助 スーパーバイザー:市川猿翁
主題歌『TETOTE』楽曲提供:北川悠仁ゆず
出演:市川猿之助 市川右近 坂東巳之助 中村隼人
市川春猿 市川弘太郎 市川寿猿 坂東竹三郎 市川笑三郎 市川猿弥 市川笑也 
市川男女蔵 市川門之助 市川段四郎
福士誠治 井之上チャル 嘉島典俊 浅野和之  他
公式サイト