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2016-05-25

『最後のレストラン』(第2話/クレオパトラ)感想

最後のレストラン』(第2話/クレオパトラ)感想 

今回、初見では、
クレオパトラとハバネロを使った料理(+面津の作ったアイス)
という組み合わせの意味合いが読み取れなくて、
ちょっと話に乗り切れなかったのですが、
二度目に観た時に、
これは、歴史上の人物と料理の関係ではなくて、
園場が歴史上の人物の背景を学びながら料理を提供することによって、
彼自身がシェフとして大切なことを掴み取って行く、
そういう裏ストーリーがあるんじゃないか、と思うようになりました。

1話で、信長を通して 人に料理を振る舞うことの喜びを学んだ園場は、
今回、クレオパトラを通して、誰かと競い合いつつ、
それぞれの作ったものを組み合わせて一層良い料理にする、
その面白さを知った。
そうやって、1話ごとに、園場の内の欠けた一片が埋まって行く…
そう考えると、
他のヘブンズドアの面々が持ち味を少しずつ出し始めて来たのに比べ、
園場だけが今のところ無味無臭で味気ないことにも
意味があるように思えてくるのですよね。
園場がいったいどんな人間なのか観る側にほとんど伝わらない、
そのもどかしい感じは、
まだ彼の中身がからっぽに近い状態だからなのかもしれない、と。

第3話はジャンヌダルク
彼女が園場にどんな欠片(かけら)を与えるのか、
次回は、そんなところに注目して観てみたいと思います。


最後のレストラン     
放送日時:2016年4月26日 - 毎週火曜 23:15 - (NHKBSプレミアム)
原作:藤栄道彦最後のレストラン」 脚本:高山直也 演出:近藤俊明 音楽辻陽 
制作統括:磯智明(NHKコンテンツ開発センター)、櫻井美恵子(国際放映
制作:NHK 国際放映
キャスト:田辺誠一 木南晴夏 鈴木浩介 石黒英雄 福田麻由子 大和田獏 
小沢真珠(ゲスト) 他
公式サイト

2016-05-23

『最後のレストラン』(第1話/織田信長)感想

最後のレストラン』(第1話/織田信長)感想 

普通のドラマだと思って観てしまうと
あれやこれや物足りないところがあるのは確かなのですが、
私は、
『三代目明智小五郎』みたいな深夜枠コメディや、
『七人のコント侍』みたいなコントや、
『にっぽん!歴史鑑定』みたいな分かりやすい歴史ネタ などなど、
それらを全部ひっくるめたバラエティ のような感覚で観たので、
いくらか受け入れやすかった気がします。

残念だったのは、
登場人物も、設定も、全体的に平板に見えてしまったこと。
もうちょっと登場人物それぞれの掘り下げが必要な気がしたのですが、
30分じゃ難しかったかな。
歴史上の人物(今回は信長)の 最後の料理に向かう心情や姿勢、
ヘブンズドアの人たちの個性などに もう少しメリハリがついていれば、
もっとすんなりと気持ち良く
この世界に入り込めたんじゃないかと思うのですが‥
そのあたりは今後のお楽しみにしたいと思います。

竹中直人さんの敦盛はさすがでしたね。
こういうドラマだったら、
本当はもっとノリノリでふざけまくりたかったんじゃないかと思うのですがw
信長役ということでそれが出来なかったのは、
ご本人としても ちょっと残念だったのではないでしょうか。

ヘブンズドアのメンバーでは、
前田(木南晴夏さん)のキャラが良かった。
男性陣が頼りないので、
彼女がしっかり柱になってくれると面白くなる気がします。

田辺誠一さん出演のコメディは、
私としては馴染むのに時間がかかることが多いのですが、
今回は『デカ☆黒川鈴木』みたいなアブノーマルなドラマwじゃないし、
真面目なところもちゃんとあるので、
(竹中さんとの二人のシーンがとても良かった)
思いのほかすんなりと入り込めた気がします。
鈴木浩介さんとのやりとりは 徐々に練れて面白くなってくれることを期待。

園場が持つ屈折がどんなものか、
それをこの軽いタッチドラマ(バラエティ?)の中で
田辺さんがどう表現してくれるのか…
徐々にコクが出ておいしいお料理(番組)に化けてくれることを
願っています。


最後のレストラン     
放送日時:2016年4月26日 - 毎週火曜 23:15 - (BSプレミアム)
原作:藤栄道彦最後のレストラン」 脚本:高山直也 演出:近藤俊明 音楽辻陽 
制作統括:磯智明(NHKコンテンツ開発センター)、櫻井美恵子(国際放映
制作:NHK 国際放映
キャスト:田辺誠一 木南晴夏 鈴木浩介 石黒英雄 福田麻由子 大和田獏 
竹中直人ゲスト) 他
公式サイト

2016-04-30

『ジヌよさらば〜かむろば村へ』感想

『ジヌよさらば〜かむろば村へ』感想 

「何も買わない、何も売らない、ただ生きていく」―――
ある事情でお金に触(さわ)れなくなってしまった元銀行マンの青年が、
限界集落寸前の田舎の小さな村でお金をまったく使わないで生きて行こう
とする話。
荒唐無稽のようだけど、案外こんな田舎なら成立してしまうかもしれない、
と思わせるところが面白く、
やがて、これが、小さな村の話だけではなく、
日本やら世界のいろんな国やらの話にも思えて来るから不思議。

万事おおらかに大ざっぱに生きているかむろば村には、
お堅い法律や規律に縛られない自由があります。
ここに生きている人々は、
自分に対しても、人に対しても、赦し、認め、信じ、愛する…
その 人間としての根本のところが揺らいでいないような気がします。

犯罪者だろうが、やくざだろうが、奔放な女子高生だろうが、
お金に触れない男だろうが、神様だろうが、
みんな等しくそこに存在することが認められている、
その「縛り」のゆるさは かむろば村=田舎ならでは・・
というか、この村では、法律とか表面上の正しさとかよりも
自分の目や嗅覚を信じるようなところがあって、
不思議なものを不思議なまま受け入れてしまう良い意味の鈍感さもあって、
何かと決め事が多く 他人の視線が厳しい 都会の息苦しさや窮屈さとは
真逆の、ゆったりとした時間が流れているように感じます。

確かに田舎は不便で、面白い遊び場もなくて、
お金儲けの大チャンスが転がってるわけでもなく、刺激もなく、
つまらないところかもしれない。
だけど、そこで生きて行くことの(お金では買えない)豊かさを、美しさを、
都会の人は少し軽(かろ)んじているんじゃないか…
ちょこっと都会暮らしをしただけで、あとはずっと田舎に住んでいる
福島県在住の私は、そんなことを考えさせられました。

村長は言います、
「私は今朝留置所の中で美しいものを見ました。
それはお湯を注いだごはん茶碗の底に沈んでいる真っ白い飯粒でした。
私はかむろば村に似てると思いました」
村長選に出るよう隣町の町議に圧力を掛けられていた助役は、
町議に弾(たま)の入っていない猟銃を向けて言います、
「弾が入ってなくとも怖いもんは怖いでしょ。
あんたのやってる政治は、こういうことですよ」

――私たちは何か大切なものを失おうとしている。
お金をいっぱい持ってる人が偉くて、お金持ってない人は負け組で、
貧しいことは情けないことで、お金がなくちゃ幸せになれなくて、
だからお金のために頑張らなくちゃいけなくて、
それが唯一の価値観で…
大人も子供も目先にお金がぶらさがっていればすぐ飛びつく、
そんな世の中で、
子どもは親に殺され、嫉みや妬みはSNSで拡散され、いじめはなくならず、
政治家は金をばらまいて大事なことをうやむやにしようとし、
正義や道徳はただの紙切れの上の話でしかなくなりつつある…

誤解しないで欲しいのは、
「田舎はのんびりしてていいよ」「みんな田舎で暮らしましょう」
なんてことを言いたいのじゃない。
実は、田舎には、貧しいゆえ、金がないゆえのシビアな現実があるんです。
でも、だからこそ、何百万何千万ではなく、千円の価値を知っている、
そんな気がするのです。

  (ここまでの文中[田舎]と[都会]という言葉をあえて観念的に使いました
   気を悪くされた方ごめんなさい)


自分が持っていたお金を全部焼いて、タケが言う、
「これで正真正銘の無一文になりました。
俺が見せられるのはもう生き様しかありません。
無一文‥これが高見武晴の本当のスタートです」と。
そうして彼は村長になります。
彼の座右の銘は、なかぬっさん(神様)の言った
「必ず何とかなる、思った通りではないけども」という言葉。
それを聞いて、「普通だな」と返す元村長夫妻が、
何だかすごくかっこよかった。

タケが女子高生・青葉とヨリを戻した理由を村長に訊かれ、
「SEXが半端なく良くて」とあっけらかんと言い、
その言葉に、子どもも、大人も、年寄りも、みんながおおらかに笑う、
その屈託のなさに、元来人間の持つエネルギーみたいなものを感じて‥
人間って捨てたもんじゃないよね、なんてことを
ふんわりと思う自分がいました。


笑って笑って人生を考える、
『キレイ』に続き、私の中に大きくて確かな何かを落としてくれた
松尾スズキ監督に感謝。
松田龍平さん、二階堂ふみさん、松たか子さん、
片桐はいりさん、オクイシュージさん、モロ師岡さん、中村優子さんらが
キャラの立った役を自然に演じてくれたことも、
阿部サダヲさん、松尾スズキさん、荒川良々さん、皆川猿時さん、
村杉蝉之介さん、伊勢志摩さんら大人計画メンバーの大挙出演も、
西田敏行さんの本物の福島弁に じんわりと温かいものを感じられたのも
とても嬉しかったです。


『ジヌよさらば〜かむろば村へ』     
監督・脚本松尾スズキ 原作:いがらしみきお『かむろば村へ』
音楽佐橋佳幸 主題歌:OKAMOTO'S「ZEROMAN」
プロデューサー:武部由実子、中田由佳里 製作代表:木下直哉、奥村健、長坂まき子、都築伸一郎
企画製作:キノフィルムズ、グリオ 制作:シネグリーオ
製作:『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』製作委員会 配給:キノフィルム
出演者松田龍平 阿部サダヲ 松たか子 二階堂ふみ 片桐はいり 中村優子 
村杉蝉之介 伊勢志摩 オクイシュージ モロ師岡 荒川良々 皆川猿時 
松尾スズキ 田中仁人 宍戸美和公 近藤公園 顔田顔彦 堀田眞三
三谷幸喜(写真のみ) 西田敏行 他
公式サイト

2016-04-04

『家族ノカタチ』感想

『家族ノカタチ』感想 

人と深く関わることで自分のペースを乱されるのが嫌、
自分の好きなものに囲まれて この先もずっと一人で生きて行く、
と考えている39歳の大介(香取慎吾)が、
父親(西田敏行)や 階下の住人(上野樹里風吹ジュン)、
会社の同僚(荒川良々千葉雄大)、
自分との結婚を望む女の子(水原希子)、
父親が連れて来た義理の息子(高田彪我)・その母(水野美紀
といった人たちと深く関わらざるをえなくなり、
自分のテリトリーを否応(いやおう)なく崩されて行くことによって、
少しずつ大切な何かを見つけ出すようになる、というお話。

人間関係が希薄になりつつある今、タイムリーな内容でもあり、
考えさせられることも多くて、面白かったです。
とにかく、セリフ(脚本・後藤法子)が抜群にうまいんですよね。
ライトコメディという外見の中にしっかりと伝えるべきことを持っていて、
軽いタッチの言葉の中身に重みがあって、
毎回うんうんうんとうなづきながら観ていました。

まず、香取くんが嵌(はま)ってました。
大介は、クール‥と言うより、万事に 醒(さ)めた男という感じなんだけど、
その空気感はちゃんと残しつつも、
彼がまとっている殻(カラ)が徐々に壊されて行く様子が
きっちりと伝わって来た、
それは、香取くんが作る一瞬の間(ま)だとか微妙な表情とかが
とても自然だったからだと思います。

お相手の葉菜子は上野樹里さん。
いかにも女の子 って感じじゃなく どこかサバサバしてる、
だけど内面にナイーブなものを持っている、
おそらくそのあたりは上野さんの持ち味なんだろうと思うのですが、
それが役にとてもフィットしていて、観ていて心地良かったです。

主人公二人も とても良かったのですが、
周囲の人たちも魅力的でした。
大介の生活に土足で踏み込んで来て荒らしまくる迷惑千万な父親は、
誇張され過ぎてマンガチックになってしまったところもあるけれど、
西田さんのキャラだから許されていたような気がします。

その陽三(西田)の再婚相手・恵は水野美紀さん、
その連れ子・浩太に高田彪我くん。
この親子のサイドストーリーが 私にはすごく響くものがありました。
「おかしいと思わねえか。
恵ちゃんには兄弟も親戚もいる。
なのになんで恵ちゃん一人だけで生きて来なけりゃなんないんだよ。
誰かちょっと力を貸してやれりゃ、
恵ちゃんも浩太ももう少し楽に生きて来れたんだ」
という陽三のセリフには、
このドラマの最も大切な芯の部分が語られていたような気がします。

荒川さんとか千葉くんとか、大介の同僚も、
ちゃんとそれぞれの生活や生き方みたいなものが見えて、
いいキャラだったなぁ。

葉菜子の後輩で、いかにも女の子〜って感じの莉奈水原希子さん。
まったく空気読めなくて、時に暴走したりもするけど、
ちょっとあざといほどの可愛らしさの陰から、
どんどん魅力的なところが見えて来て、
最後には「素敵な女性になって良かったなぁ」と思えた。

そしてもう一人、莉奈と同じくらい・・いやそれ以上に
いい役だなぁ、好きだなぁ、と思うようになったのが、葉菜子の元夫・和弥。
お互い嫌いになって別れたんじゃない、
葉菜子とよりを戻すということも十分にありうる、という立場で、
一種の当て馬的存在ではあるんだけど、
この人は本当に葉菜子のことを心配している、
自分の気持ちより先に 葉菜子の気持ちを尊重しようとする、
葉菜子を励まし、何とか前へ進ませようとする、
それが彼なりの愛情表現になっている、
アタックして振られてさようなら、といった、単純な当て馬になってない、
というところが、すごく良かった。
田中圭くんが演じてるからなおさら和弥の良さが伝わった気がします。

最後には大介と葉菜子が結婚するんだろう、というのは、
初回から簡単に見通せる。
にもかかわらず、単純でありきたりなラブコメディになっていないのは、
そこに至るまでの二人の心の動きを丁寧に描き、
かつ、彼らの周囲にいる人々の人間性や成長をきめ細やかに描いた、
その賜物であったような気がしました。
良い脚本の上にキャストがうまく嵌ったドラマは、やはり面白いです。


『家族ノカタチ』     
放送日時:2016年1月17日 - 毎週日曜 21:00 - (TBS系)
脚本:後藤法子 演出:平野俊一 酒井聖博 松田礼人 音楽:大間々昂 兼松衆
音楽プロデューサー志田博英 編成・プロデューサー:韓哲(TBSテレビ
プロデューサー佐藤敦司(ドリマックス・テレビジョン
製作:ドリマックス・テレビジョン TBS 
キャスト:香取慎吾 上野樹里 水原希子 荒川良々 千葉雄大 柳原可奈子
高田彪我 観月ありさ(友情出演) 田中 圭 浅茅陽子 森本レオ
水野美紀 風吹ジュン 西田敏行 他
公式サイト

2016-03-10

『ちかえもん』感想

『ちかえもん』感想 【一部ネタバレあり】

とても面白いドラマでした!
テンポ良く進むストーリーの巧みさ、セリフの面白さ、
演じ手の表現力の確かさ、画面から伝わる空気感の心地良さ‥
毎回毎回 泣くやら 笑うやら 考えさせられるやら、
登場するすべての人にいろんな感情移入しながら、
終わったらすぐに続きが待ち遠しくなる、
8回が本当にあっと言う間で、終わってしまうのがすごく残念で。


どの登場人物もすごくすご〜く魅力的だったのですが、
ここはやはり ちかえもん(近松門左衛門)役の松尾スズキさんを
一番に挙げたい。
この人の、情けないやら切ないやら辛いやら‥みたいな表情は、
本当に絶品。
そこに「あか〜ん」やら「ええ〜〜っ」やらの
力の入らないフワ〜ンとした空気みたいなセリフが乗ると、
何だかもうそれだけで、観ているこっちは肩の力がぜ〜んぶ抜けてしまう、
そしてその後に、いつも、“物書き(戯作者)の哀感”みたいなものが
ゆっくりと立ち上って来るのを感じる。
それは、松尾さん自身が脚本家であり作家であることと無縁ではない
ようにも思えます。

NHKと松尾さんというと、
私は 断然『TAROの塔』を一番に思い出してしまうのだけれど、
あの時の岡本太郎といい、今回の近松門左衛門といい、
この人は 物を一から作り出す人間の悩みや苦しみを、
一定の距離を保ちつつ ペーソスを持って表現することに
とても長けているように思います。
加えて、自由自在の顔芸といい、セリフの言い回しの味わい深さといい、
今回は本当に俳優松尾スズキを堪能し尽くした感で、
何だかすごく嬉しくもあり 得した気分にもさせてもらいました。


不幸糖売りの万吉に青木崇高さん。
大人の事情や迷惑を顧みずどんどん突き進んで行く、
童話はだかの王様』で「王様は裸だ」と正直に声を上げた子みたいな
シンプルな子ども目線を持っているなぁ、と思って観ていたら、 
最後の最後で、なるほど!と納得行きました。
だから、近松門左衛門を「ちかえもん」としか言えなかったんだね。
(ネタバレ自粛w)
万吉もまたちかえもん同様フワリと地につかないような空気感があり、
青木さんがそのあたりを実に自然に表現してくれていました。
タイトルの一番最初に名前が出て来る、つまり主役ということなのですが、
どう見ても主役はちかえもんじゃないの?とずっと思っていて。
でも、最後まで観た後、
万吉のまっすぐな視線や心根こころねが、
いつもこのドラマのど真ん中を貫いていたことを考えた時、
やはり主人公は万吉なんだな、と納得行きました。

青木さんと脚本藤本有紀さんといえば『ちりとてちん』。
その絡みなのかどうか、
桂吉弥さんとか茂山一門とか さりげなく出ていたのが嬉しかったです。


徳兵衛(小池徹平)とお初(早見あかり)。
二人の恋が純粋に心中へと昇華して行く過程というのは、
舞台ではなくテレビのような画面を通してしまうと、
観ている側が照れくさくなったりしてしまうのですが、
この二人に関しては、役の上での感情移入がしっかり出来ていた上、
観ているこちらの気持ちもしっかりと惹き込んでくれて、
本当に凄いなぁと思いました。

徹平くんも早見さんも良かったけれど、
そういう空気感が無理なく醸し出されるように盛り上げてくれた
周囲の人たちの力も大きかった。
徳兵衛の父(岸部一徳)、番頭(徳井優)、
天満屋夫婦(佐川満男・高岡早紀)、お袖(優香)。
お初徳兵衛との絡みはなかったけれど、
ちかえもんの母(富司純子)や竹本義太夫(北村有紀哉)も良かったなぁ。

そんなベストマッチな配役の中でも、
若い二人を心中まで追いつめた黒田屋(山崎銀之丞)の存在は、
この物語に 心地良いまでの仇役の色味を差し込んでくれた。
何故この男は平野屋を憎み、徳兵衛を陥れたのか、
そこのところがきちんと描かれないまま最終回になって、
あれれと思い始めたら、ちかえもんとのサシの勝負の場面になって‥
そこから先の黒田屋とちかえもんとの一騎打ち
それまでの空気とは一変、重厚なものに練り上げられて行って、
ドラマのクライマックスとして本当に見応えがありました。

「お初徳兵衛が死んだのを幸いと、面白おかしく浄瑠璃に仕立て上げ、
金と名声を得ようという、あさましい腐れ戯作者!」
と黒田屋にののしられるちかえもん、
彼は それまでのどこか浮遊感のあるものとはまったく違う
真剣な眼差しを黒田屋に向けて こう言い返します、
「死んで もの言えん二人の想いを浄瑠璃にして何が悪いんや!
わしかて金も名声も欲しい、腐れ戯作者や。
けど、この ほかの誰にも出来んあさましい仕事するのが わしの務めや、
作家に生まれた者の背負うた業(ごう)や!」

戯作者として ちかえもんが必死で守ろうとするものに、
この作品の脚本家・藤本さんの心情がぎゅっと詰まっているようで‥
そして、黒田屋のように心無く容赦ない刃を、
自分も「視聴者」という立場で 今まで観たいろんなドラマ
向けていたのではないか、という気もして‥
だけど こっちだって真剣に観て感想書いてるんだよ、
と言い訳したくなったりして‥
何だかいろんな感情がこみ上げて来て、ちょっと胸が痛みました。
‥だから(ドラマの感想を自分目線で書いているから)なのか、
あんなに真剣に刃を振るってちかえもんに挑む黒田屋を、
私はどうしても憎めませんでした。

ということで、私は 松尾さんと共に あの緊張感に満ちた空気を
画面いっぱいに作り出した山崎銀之丞さんにも拍手を送りたいと思います。
すっかりファンになってしまいました。


ちかえもんを取り巻く人々の描写には、
全体に、私には「落語」の空気と似たものが感じられたのだけど、
それは私が 同じ藤本有紀さん脚本の『ちりとてちん』が
大好きだったからでしょうか。

漢字尽くしの絶妙なサブタイトル名、
毎回ちかえもんが歌う昭和歌謡フォークソング
お初徳兵衛が抱き合うシーンの 蜷川版の舞台みたいなBGMや照明、
「おしまい」という文字と共にイラストで登場するキャストの
大団円的エンディングの楽しさ、等々、
そこかしこにちりばめられたお遊びもすご〜く楽しかった!
いい作品に出逢えて本当に幸せでした。見逃さないで良かったです。


『ちかえもん』     
放送日時:2016年1月14日 - 毎週木曜 20:00 - (NHK
原作:近松門左衛門 脚本藤本有紀 演出:梶原登城、川野秀昭 音楽宮川彬良
制作統括:櫻井賢 プロデューサー木村明広 劇中アニメーション:岡江真一郎
制作NHK大阪放送局
キャスト:青木崇高 優香 小池徹平 早見あかり 山崎銀之丞 徳井優
佐川満男 高岡早紀 岸部一徳 富司純子 松尾スズキ 他
公式サイト