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2015-04-01

『セカンド・ラブ』感想

『セカンド・ラブ』感想

クール、唯一 最初から最後まで観た連続ドラマ
メインが亀梨くんと深キョンで、大石静さん脚本で、ラブシーン満載で、
という興味ももちろんあったのですが、
生瀬勝久麻生祐未・秋山菜津子・片岡礼子寺島進といった
脇役好きの私には垂涎といっていいサイドメンバーに より惹かれた、
と言ってもいいかもしれない。

で、この人たちがまたものすごくいい仕事をしてくれて、
ドラマをいい感じに締めてくれていた気がします。


生瀬さんは、
リーガル・ハイ』等のリーゼントバシッときめた敵役のイメージから一転、
結唯(深田恭子)と同僚で不倫関係にありながら強引に前へ踏み出せない、
どうしても躊躇(ちゅうちょ)してしまう ごくごく普通の男の
戸惑いとか揺らぎとか物怖じとかが、
観ているこちら側にものすごく伝わって来て、
改めて惚れ直してしまいました。

麻生さんも素晴らしかったなぁ。
中盤、娘離れ出来ない母親の姿がリアルで、
ものすごくうっとうしくなって、観てるのがしんどい時もあったんですが、
そこから少しずつ巻き返して行く その変化に無理がなくて、
最後には、彼女が出て来るとホッとしました。

秋山さん。
年下の彼氏がいる、と分かってから、彼女がやたらキラキラして見えて、
何だかそのことにちょっと感動してしまった。
出番は少なかったんだけど、すごく存在感ありました。
生瀬さんや麻生さんにも通じることだけれど、
役への理解度‥というか、役の消化具合‥というか、が半端じゃない、
ってことなんでしょうね。

この3人に比べると、寺島さんや片岡さんは出番が少な過ぎて、
特に片岡さんは、
「え、もう出て来ないの?」と思わずつぶやいちゃったぐらい
もったいない使われ方だったように思いました。
でも、最終回、
高柳(生瀬)が「妻に好きな人が出来たらしい」みたいなことを
言ってたのを聞いて、私なりに妙に腑に落ちてしまったんですけどね、
そうかぁ、片岡さんが演じる時に放つバイタリティとか強さが
暗に役に投影されていたのだとしたら、
高柳の妻を片岡さんが演じている意味もあったのかもな、と。w

他に気になったのは、早見あかりさん。
若いのに、しっかり骨太な演じ方で良かったです。

小芝風花さんもなかなか印象的な雰囲気を持っていました。


さて、深田恭子さん。
間違いなくこのドラマの主人公は彼女でしたね。
深田さんには、彼女にしか出せない空気感というのがあって、
その最たるものは、
どんなに色っぽい役でも、ラブシーンが多くても、決していやらしくならない、
ナマっぽい感じがしない、ってところなんじゃないか、と。
綺麗な役、美しい場所でしかそうならないんじゃなくて、
どんなに泥にまみれても、穢(けが)れても、清純でいられる、というか。

慶(亀梨和也)が最初に結唯(深田)を観て女神だと思った、というのは、
深田さんのそういう魅力を考えれば、自然なことのように思います。

一方の亀梨くんがまた、独特の硬さがあって、
この二人のラブシーンは、全然いやらしい感じがしなかった。
大石さんの脚本で、この時間帯で、となれば、
もっと男と女の熱みたいなものがあっても良かったし、
物足りない、と思った人も多かったかもしれないけれど、
私は、深田さんと亀梨くんがそういう部分を持たないことが
むしろ興味深い、という気がしました。
そのあたりが、コンテンポラリーダンサーである慶の持ち味や、
コンテンポラリーダンスそのものの、
どこか人間味を削ぎ落としたような世界観あくまで私個人の捉え方ですが)
にも繋がっているようにも思えた・・というのは、
都合よく解釈し過ぎているでしょうか。w


最後に‥
慶が非常にドライにストレートにダンスに向かって行く姿を観ていて、
何年か前『君はペット』というドラマを観て感じた
トップを目指す人間の夢の重みやストイックさを軽く扱われた時の
何とも言えないやりきれない気持ちが、やっと少しだけ癒された、
個人的にそんな想いもあったことを付け加えておきます。



金曜ナイトドラマ『セカンド・ラブ』     
放送日時:2015年2月-3月 毎週金曜 23:15-0:15 (テレビ朝日系)
脚本大石静 演出:塚原あゆ子 片山修 ゼネラルプロデューサー内山聖子
プロデューサー中川慎子(テレビ朝日)中沢晋(オフィスクレッシェンド
音楽:得田真裕 主題歌KAT-TUNKISS KISS KISS」 挿入歌MISIA「白い季節」
制作著作 - テレビ朝日
キャスト:亀梨和也 深田恭子早見あかり 小芝風花 大貫勇輔
寺島進 片岡礼子 秋山菜津子/麻生祐未 生瀬勝久 他
公式サイト

2014-04-05

今さら『造花の蜜』感想

今さら『造花の蜜』感想 【ネタバレあり】

ネタバレ注意!事件の結末に言及しています。
これからドラマDVD等)をご覧になる方はご注意下さい。


2011年11月〜12月、WOWOW連続ドラマW)で放送されました。
全4話。

途中まで、かなり上質なミステリーになっていて、
意外性も緊迫感も十二分にあり、
町工場に息づく人たちの生活がリアルに描かれる中、
事件が思いがけない方向にスピーディに進展して行くあたり、
非常に惹かれるものがありました。


一つの誘拐事件の裏で、もう一つの誘拐が同時に起きていた、
その当事者は、自分が誘拐されたとは思っていない、
しかも、知らず知らずのうちに自分の誘拐を手伝わされている・・
表に出せない闇金が身代金に使われ、
身代金を払った人間は、
誘拐が公(おおやけ)になることで地位や名誉を失うが、
代わりに、もっと大事なものを手に入れる・・
結果的には誰も傷つかず、
そうして、犯人の言う「美しく潔白な犯罪」が成立する。

第一の事件については、
このプロセスが非常にうまく組み立てられていて、
うわ〜そう来たか!という驚きと面白さがあったのですが・・


肝心の、事件の首謀者である‘蘭’という女性については、
私としては、どうしても好きになれなかったです。
これだけの犯罪を企て、男たちを働き蜂として自在に動かし、
まんまと橋場以下の刑事たちを翻弄し、7億の闇金を奪い取る・・
その手口の鮮やかさに、蘭自身の魅力が追いついていないように、
私には思えてしまったのですよね。

蘭を演じたのは、檀れいさん。
とても美しくて、すてきな女優さんですが、
今回、彼女のその‘美しさ’を見せることに終始しすぎたことで、
写真集PVプロモーションビデオ)を見ているような、
着せ替え人形がただ立っているような、味気ない印象になってしまい、
蘭という女性にミステリアスな深みが感じられなかったのが、
すごく残念でした。

檀さんなら、もっと魅力的に演じられたのではないか、と思うのですが、
スタッフが、彼女に役を渡す以前に、
蘭という女性の魅力を徹底的に掘り下げることをしていなかったために、
結果的に、彼女を魅力的に撮ることが出来かったように、
私には感じられました。


蘭は、ただ見た目が美しいだけの女性ではない。
精神的な気高さ、孤高の美しさ みたいなものを
内在させていたんじゃないでしょうか。
そのあたり、彼女が持つ思想や背景がもっと掘り下げて描かれていたら、
違った形で魅力的に伝わって来るものもあっただろうし、
ラストシーン、スカッと心地良い爽快感が味わえていたのではないか、と。

そういう意味では、
蘭の高校時代エピソードを、もっとふくらませて欲しかった気がします。
彼女にとって「美しく潔白な犯罪」のきっかけとなる行為が、
ただ、クラスメイトが盗んだペンダントを盗むだけ、というのでは、
あまりにも物足りない。
蘭の生い立ち、性格、世間を見つめる視線 等々に、
「他人が盗んだものを盗む、結果的に誰も傷つかない、
その行為は‘美しく潔白な犯罪’である」、
という彼女の主張に正当性が感じられるような、
誰もが納得する理由付けが しっかり描かれていたら・・
あるいは、複雑な家庭ばかりを狙う意味が、どこかで描かれていたら・・
私は、もっともっと蘭に共感出来たように思うのですが、
そのあたりが明確に描かれていなかったために、
蘭が、あまり魅力的な人間に感じられなかったことが、
私がこの物語全体に心地良く乗り切れなかった大きな要因に
なってしまっていたような気がします。


他の登場人物について。
小川印刷工場の人々(国仲涼子 鶴田忍 長谷川朝晴 白羽ゆり)の、
ちょっとくたびれたような空気感が、
蘭の華やかな美しさと対照的で、すごく良かったです。

蘭の魅力の虜となり、彼女の働き蜂となって、
結局は自らの誘拐に手を貸すことになる川田に、玉山鉄二さん。
正直なところ、蘭や父親(國村準)との関係においては、
この役は、もうちょっと若い俳優さんの方が
合っていたような気がしますが、
印刷工場でインクまみれになって働く青年の実直な雰囲気や、
父親との確執が解けて行くシーンなど、
さすが、と思わせる空気感を作り出していて、好感が持てました。


第一の事件が、思いがけない展開で惹き付けられたのに比べると、
3話終盤から4話にかけて描かれた第二の事件については、
小杉家の人々(金田明夫 伊藤裕子 谷村美月ら)の
人物描写もそれほど深くはなく、
事件そのものも、ミステリー好きには物足りなかった気がします。

ただ、康美(谷村美月)に関しては、
私は そのキャラクターにすごく惹かれました。
大学受験に失敗して軽い引きこもりになって・・ぐらいしか
背景として描かれていないのに、
谷村さん演じる康美には魅力的な陰影があって、
蘭のことを話す時、瞳はキラキラ輝いていて。
彼女に対する橋場刑事がまた、
蘭を介した共犯者めいた空気を醸し出していて、
この二人が一緒にいる時のほの昏い空気が、
私にはすごく魅力的に感じられました。
蘭にもこのぐらいの陰影があったら、もっとずっと素敵だったのに、
と、つい また残念な気持ちが・・(苦笑)


私は原作を読んでいないのですが、
おそらく、脚本の岡田惠和さんが原作と最も変えたのは、
橋場有一(田辺誠一)だったんじゃないか、と思います。
原作のあらすじを見ると、
橋場がクライマックスのキーパーソンになっているらしいのですが、
それが映像化しにくい展開になっているようで、
ドラマ化にあたっては、そこをどうしても変更せざるをえなかった。
で、岡田さんが橋場をどういう男に変更したか、というと、
「心ならずも蘭に手を貸すことになる共犯者」だったんですよね。

高校時代の蘭との約束に縛られた形で
嫌々ながら第二の誘拐につきあわされていた、
でも、いずれは形勢を逆転させ、彼女を逮捕しようと考えていた彼が、
康美との会話あたりから、
蘭の犯罪に対する考え方に興味を示し、徐々に蘭に傾倒して行く、
その流れが、私としてはすごく興味深かった。


橋場は、決して強い正義感から刑事になったわけではない、と思うのです。
刑事として悪い人間を捕まえる、というのは、
彼にとって、あまり大きな問題ではなかったのかもしれない。
天才的な頭脳を持てあましていた彼にとって、
自分に戦いを挑んで来る「手ごわい相手」を倒すこと、それこそが、
唯一、自分の飢餓感を埋めてくれる行為だったのかもしれません。

そんな橋場が、第一の事件で蘭に敗北した。
第二の事件で、約束どおり蘭の働き蜂となった彼は、
何とかして彼女に勝ちたいと願うが、
徐々に蘭の言う「美しく潔白な犯罪」に興味を示すようになる。
そして・・


おそらく岡田さんの意向としては、
最後は、蘭と橋場が手を組み、「怪盗」のような存在になるのを
ほのめかして終わりたかったんじゃないかと思うのですよね。
魅力的な大人の女と男が、
恋愛感情を表立たせることなくビジネスライクに手を組む
クールなチーム」と言えばいいか。

ですが、肝心な蘭が、そこまでの背景を背負えるほど
しっかりしたキャラになっていなかったので、
結果、ラストの橋場の行動もインパクトが弱くなってしまった気がして、
蘭と橋場がドラマ全体に及ぼす空気感が
もっともっと都会的でおしゃれでクールでかっこいいものに
なって欲しかった私としては、そこがすごく残念でした。


怪盗で男と女のコンビ・・というと、
私がまず思い出すのは『ルパン三世』なのですが(単純ですみませんw)
蘭と橋場は、峰不二子ルパンのような関係には
なれなかったんでしょうか。

不二子にとって、ルパンって働き蜂だと思うのですよね。
ルパンも、それを承知で不二子のいいように使われている。
あえて働き蜂に甘んじているのは、
彼に不二子をねじふせる力がないからじゃなくて、
そういう立場を余裕を持って楽しんでるからなんじゃないかと。

もちろん、キャラとしての味わいは全く違うけれども、
ルパン三世のような思い切りの良さ、洗練されたセンスの良さ、が、
蘭にも、橋場にも、このドラマ全体にも欲しかった気がする。
それが成功していたら、
康美も含めた3人で、今までのドラマではなかなか観られなかった、
とても魅力的な「実写版日本の怪盗」が出来上がったんじゃないか・・

・・いや、それはもちろん、
私の「そうだったらいいな」という妄想でしかないのだけれども、
何だかすごくもったいない気がしてしまいました。


脚本の岡田惠和さんと 田辺誠一さん。
夢のカリフォルニア』の中林にしても、『小公女セイラ』の亜蘭にしても、
とても印象深い役を与えられています。
今回は、中途半端じゃない「突き抜けたかっこよさ」を求められた、
それが成功していたら、
また一皮むけた田辺さんが見られたんじゃないかと思うのですが、
そこまでかっこよくなりきれなかった感じがあって、
(田辺さんばかりじゃなく衣装等の問題もあったと思うけれど)
蘭との関係性においても、
大人の色っぽさみたいなものがもっと出ても良かったのに、
脚本と田辺さんを結びつける役割を負った制作側が、
そこまで彼を追い詰めてくれなかったことが すごく残念でした。

・・なんだか‘残念’を連発しているような気がしますが(苦笑)
でも、それが私の正直な気持ちなので。
だから、私としては、観ている間 ずっと心の中で、
「もったいない・・もったいない・・」とつぶやく結果になってしまいました。
こんなおいしい役、もう二度と巡って来ないかもしれないのに・・ね。


造花の蜜     
放送日時:2011年11月-毎週日曜 22:00-(WOWOW)全4回
脚本:岡田惠和/演出:小林義則/原作:連城三紀彦
キャスト:檀れい 玉山鉄二 国仲涼子 谷村美月 國村準 田辺誠一
鶴田忍 長谷川朝晴 白羽ゆり 金田明夫 伊藤裕子   『造花の蜜』公式サイト 

2013-10-05

金曜プレステージ『淋しい狩人』感想

10月7日再褐
金曜プレステージ『淋しい狩人』感想 【ネタバレあり】
原作は宮部みゆきさんの短編小説ですが、
作品へのトリビュートを十分に感じさせつつも、かなり脚色してあり、
新しい作品、と言ってもいいようなものになっていて、
原作から大胆に引いたもの、そこに綿密に足して行ったもの、
それら両方のバランスが素晴らしく、
素直にスタッフに頭を下げたい気持ちになりました。


特に‘事件’に絡む人々の描き方については、
一人一人の人間性に根ざした言動が丁寧に積み重ねられ、
人の死の重み、罪の重み、が、しっかりとこちらの胸に響いて、
登場するすべての人たちの心の痛みがじんわりと伝わって来て・・
「面白い事件を作り出すための人の死」になりがちな
普段の2時間サスペンスでは なかなか描き切れないような、
味わい深い作品になっていたと思います。


脚本の浜田秀哉さん。
『ラストホープ』でも感じたことだけれど、とにかく密度が濃くて、
2時間の中に詰め込んだエピソードにボリュームがあって、
心地良い満足感を味わえました。


原作には なかった部分・・
イワさんの息子であり、稔の父親であり、 梨沙子の夫である雅史が、
自殺か事故か分からない死に方をしている・・
刑事の樺野は雅史の親友である・・
安達明子は目が見えず、父・和郎はひっそりと別な家庭を持つ・・
犯人には、世の中を変えたい切実な想いがあり、
そのために‘傍観者’が狙われ、その掌に38の数字が刻まれる・・
といった、ドラマ向けに新たに組み込まれた設定が、
物語に複雑な厚みを加え、事件を読み解く面白さを生み、
登場人物を、より魅力的にしてくれていたように思います。


このドラマには、絶対的な加害者がいないのですよね。
善人と悪人の境界線があいまいで、
誰もが被害者にも加害者にもなり得る・・
犯人が言うように、‘傍観者’もまた加害者であるとすれば、
私たちだって、無意識のうちに そうなってしまっている可能性がある。
悪意はどこにだって転がっている・・
もちろん、決して犯人の行動を容認するわけではないけれども、
そんな無意識下の悪意・悪趣味がはびこる世の中だからこそ、
登場人物たちに(そして観ている私たちにも)
この犯人に対する共鳴や受容が生まれたのではないか・・


さまざまな事情を抱えた人々が、事件に近づくことによって、
それぞれの心の奥に抱えていた痛みを露呈させ、
その、痛みを抱えているがゆえの視点で事件を見つめ直して行く・・
だからこそ、明子は父親を見つけ出すことが出来たのだろうし、
イワさんは優人を説得することが出来たのだろうし、
事件に関わったすべての人間が、少しだけ痛みを乗り越えて行けそうな、
そんな余韻を感じさせるエンディングになったのではないか、
という気がします。


演出は麻生学さん。
『空飛ぶタイヤ』同様、ドラマ全体の空気感が素晴らしかったです。
セット撮影がまったくなかったと思うのですが、そのせいか、
特に、書店やイワさんの家の茶の間の、生活感というか生息感というか、
そういう本物の空気がしっかりと伝わって来るなど、
1カット1カットが、とても丁寧に作られていて、
画面全体が、まるで映画のような肌触りで、
何だかそれだけで、じんわりと嬉しくなってしまいました。


クレジットが流れた後のエンディング、
明子によって明かされる過去の雅史とのエピソードと、
そこに流れるナットキングコールの「スマイル」が、
陰惨な殺人事件のほろ苦い後味を静かに溶かしてくれて、
何だか優しい気持ちになりました。
(『空飛ぶタイヤ』の「テネシーワルツ」を思い出しました)



登場人物について。
どの俳優さんも、作り物の感じがしなくて、役にうまくはまっていたし、
それぞれの心の動きや言葉に 無理をしているところがないので、
素直に感情移入出来ました。


★北大路欣也さん(岩永幸吉)
本が雑多に並んだ背景にしっくり溶け込んで座っていて、
控えめで落ち着いた古書店の店主=イワさんになりきっていたのが、
すごく好もしかった。
無理やり事件に首を突っ込むこともなく、
明子や樺野を介して事件と関わる、その距離感が良かったです。
もっと押し出しの強い俳優さんだと思っていたのですが、
全体的に突出せず、抑制が効いていて、
しかも普通のおじいちゃんで、名探偵という感じではないのに、
ちゃんとかっこいいところもあって、魅力的でした。


★加藤あいさん(安達明子)
盲目でありながら、強くて清らかでまっすぐな心を持った女性・・
この役を加藤さんが演じたことは、ドラマにとって大きかった気がします。
目が見えない演技、というのは、難しくて、
相手や対象物に焦点を合わせてしまうと嘘くさくなってしまうのですが、
加藤さんは完全に焦点をしぼらずに、視線をうまくはずして、
言葉を発している人に、まず耳から近づいて行く感じなど、
演じ方としても素晴らしかったと思います。


★窪田正孝くん(野呂優人)
難しい役でしたが、ラストのイワさんとの対峙シーン、
気持ちを吐き出す場面でも、感情過多にならないようにセーブしていて、
だからこそ、より伝わるものがあったように思います。
主人公ではないので、
殺人犯の、外に発散出来ない 重く蓄積された感情の行き場を、
十二分に描いてもらっていたとは言えないけれど、
イワさんとの短い会話の中に、
優人の心が、静かに浄化されて行くさまが見て取れて、
なんだかジーンと来てしまいました。


★須賀健太くん(岩永稔)
原作では、事件と平行して、
稔と年上の女性の恋愛問題が絡んで来るのだけれど、
今回はその部分がばっさり切られています。
しかし、父親の不審死、という、
より 犯人に近い痛みを持った設定になっていることで、
事件との距離感がすごく近くなって、かえって良かった気がします。
稔が素直に育っていることが、亡き父・雅史への慰めにも
繋がっているんじゃないか、なんてことを思いました。
須賀くんの、イマドキの子という感じじゃない、
アクがなくてさっぱりとした佇まい(たたずまい)は、稔役にぴったり。
イワさん役の北大路さんとの相性も良かったです。


田辺誠一さん(樺野俊明)
この人の刑事役はずいぶん観ていますが、
刑事としての顔と、私生活の顔とを
ここまでバランスよく見せてもらえたことは、あまりなかった気がします。


実質的に犯人を追い詰めて行くのは刑事たちなのですが、
その中心となる樺野自身には、
刑事としての能力が突出している感じはなくて、
むしろ地道にコツコツ積み重ねて行くタイプに見えることで、
市井(しせい)の一刑事、という立ち位置からはみ出さないところが、
かえってこのドラマには合っていたように思います。
 (そんな‘普通さ’の中に、
 犯人を追って機敏に動く姿とか、上司(中村育二さん)とのやりとりとか、
 個人的に好みのシーンがあちこちにちりばめられていて、
 私としては十分満足させてもらいました)


一方、かけがえのない親友を失った喪失感を抱え、
イワさんの家に家族同様に出入りする樺野には、
相手を警戒させないような一種の天真さがあるように思えて、
そこがいかにも(最近の)田辺さんらしい、という気がしました。
ここ数年、コメディ作品を多くやって来た賜物でしょうか、
あるいは、もともと持っていた独特のやわらかな空気感を、
より自在に出せるようになった、ということなのでしょうか。


ともあれ、思っていたよりも事件やイワさん一家にからみ、
人柄や仕事ぶりがしっかり書き込まれて、
見応えのある役になっていたのが嬉しかったです。


前出の藤田朋子さん(岩永梨沙子)、中村育二さん(樺野の上司)の他、
森本レオさん(安達和郎)、中田喜子さん(安達侑子)、
中島ひろ子さん(和郎の同居人)、増沢望さん(岩永雅史)、
おかやまはじめさん(野呂巡査)、螢雪次朗さん(出版編集者)等々、
キャスティングは地味めですが適材適所、持ち味がいい感じに出ていて、
私のようなワキ役好きにはたまらないドラマでもありました。


全体的に、キャスト・スタッフのアンサンブルの良さを感じました。
プロデューサー(ホリプロの菅井敦さん、井上竜太さん)の手腕でしょうか。
ぜひ、シリーズ化して欲しいです。



『淋しい狩人』
放送日時:2013年9月20日(金)21:00-22:52 (フジテレビ系)
脚本:浜田秀哉/演出:麻生学/プロデュース:菅井敦 井上竜太
原作:宮部みゆき『淋しい狩人』
キャスト:北大路欣也 加藤あい 須賀健太 窪田正孝
中島ひろ子 中村育二 増沢望 おかやまはじめ 螢雪次朗
藤田朋子 中田喜子 森本レオ 田辺誠一   

2013-07-26

今さら『11人もいる!』感想

今さら『11人もいる!』感想
2011年10月〜12月テレビ朝日系で放送。
NHK朝ドラ『あまちゃん』の脚本を担当している宮藤官九郎さんが、
2年前に描いた 大家族のホームドラマ


夜11時台の放送だったせいか、
脚本も、演出も、出演者も、自由に作っている感じがあり、
大雑把なところもゆる〜いところもあったのですが、
クドカンのキャラ設定がしっかりしていて、
出演者が皆、そのしっかりキャラ設定された上に、
自分の持ち味を存分に重ねて伸び伸びと演じていたので、
安心して楽しく観ることが出来ました。
(クドカンのキャラ設定の確かさは、
『あまちゃん』にも通じる大きな魅力のような気がします)


真田家の長男・一男は神木隆之介くん。
ゲイバーで働いたり、でき婚して子持ちになったり、
それまでの彼のイメージをとことんぶっ壊すような役を、体当たりで熱演、
子役からのイメージをすっかり払拭してしまった感がありました。
マンガみたいな展開にきっちり入り込んで、
テンション高めの演技もほとんど違和感なくこなしていたのは、さすが。


後妻・恵は光浦靖子さん。
この役に彼女を起用した、というのが、とても大きかった気がします。
彼女が持つ真面目さ・優しさ・清潔感が、
大家族をしっかりと包み込んで、揺らがなかったので、
どんなに家族がすったもんだしても最後には納まるところに納まっていた。
真田家を支えていたのは、間違いなく彼女だったんじゃないか、と。


唯一 恵の実の子供である才悟に加藤清史郎くん。
おっぱいが大好きな小学1年生。w
清史郎くんはクセがなくて素直なので、
メグミのおっぱい狙って両手モミモミ、なんてことをしても、
本当におっぱいさわっちゃって童貞喪失したと思い込んだりする
かなりきわどい設定でも、可愛さが失われることがなかったです。


他の子供たち(有村架純・金井美樹・平岡拓真・赤石那奈
福島北斗・福島海斗)もそれぞれに存在感をしっかり発揮していて、
個性があって魅力的で楽しかった。


実の先妻で、すでに死んでいるのに、
才悟だけに見えるメグミは、広末涼子さん。
ゆうれいのはずなのに、ものすごくワガママで、しかもチャーミング。
彼女に振り回されつつおっぱいを狙う才悟が可愛かった。w


そんな真田一家(+ゆうれい)の中で、
お父さんの実と その弟ヒロユキが、見事に重みがないわけですが。w


ヒロユキは、星野源さん。
役を演じる上での拠り所となる芯みたいなものが、彼には見事になくて、
自信のカケラもなさそうなブレブレ感が半端なくて、
そこがまた何とも言えない面白みがあって。
田辺さん以外に、こんなふうに芯のない役を演じられる人がいるんだ・・
と、ちょっと驚いたりもして。


その田辺誠一さんは、この大所帯の家長・・であるはずなんですが、
彼がまた、いい加減でフワフワ浮いてる感じとか、
存在感の軽さとかが絶妙で、頼りがいのないこと この上ない。w
それでも、みんなを見守る視線はやんわりと穏やかで、
愛情を持っていることがじんわりと伝わって来るし、
みんな彼を慕っている。
どこに飛んで行くか分からない テキトーさと無責任さを持ちながら、
それでも、ちゃんと家族から父親として認められている。
・・それって誰かに似ている、と思ったら、フーテンの寅さんだった。w
しっかり者の光浦さんとの組み合わせが絶妙でした。


実って、ほとんどふざけてばかりいるような父親だったけど、
その時その時の表情が本当に豊かで、
たとえばソアラのお父さんのところに挨拶に行った時、
お父さんの言葉に対する反応がものすごく細かくて端的で、
それが、実が持つ独特の浮遊感の中に違和感なく息づいていたことが、
何だかすごく嬉しかったし、楽しかったです、
ああ、田辺さんらしいなぁ、と・・


真田一家はもちろん、彼らの周囲にいる人たち・・
サム(RED RICE)や先生(小松和重)やうさぎちゃん(きたろう)や
ソアラパパ(柳沢慎吾)やダイナミック一家(皆川猿時・川村エミコ等)が、
大家族の家に自由に出入りして、
人数がどんどん増えて行く、それを自然に受け入れて行く、
やがて、真田家の「家」というワクが感じられなくなる、ボーダーレス感・・
まったく、これほど風通しのいい家も珍しい。w


そうやって、多くの人が繋がって行く・・
面倒くさそうではあるけれど、でも、何だか羨ましくもあり、
その一方で、すべてを「ま、いっか・・」と受け流せる
彼らの強さ・たくましさ・いい意味での鈍感さに、
(当時の)現実の自分との距離を感じてしまったのも事実で・・
初見の時は、なかなか笑って受け流せない偏屈な自分に嫌気がさして、
同時期に放送された『家政婦のミタ』の方に感情移入してしまい、
『11人・・』はなかなか素直に観られなかった、なんてこともありました。
(再見した時は十分楽しめましたけれども)


放送されたのは、東日本大震災から半年後。
宮城出身のクドカンには、
そのことに対するいろんな想いがあったと思うのですが、
あえてこのドラマで真正面から切り込んで描こうとはしなかった。
でも、最終回、火事ですべてを失った真田一家が、
ワゴン車で旅を続け、多くの人に歌を届ける合唱団になる、という結末は、
音楽の力を信じているであろう、クドカンらしい、という気がしました。
(TVで観た『風とロック』のクドカンを思い出しました。
"音楽の力"は『あまちゃん』の今後にも繋がって行く気がします)


家を失い、ワゴン生活になってもへこたれない真田一家、
最後に、穏やかで美しい海をバックに全員で写真を撮るのですが、
そこにはメグミの姿もちゃんと写っていて・・
「あなたが忘れなければ、彼は、彼女は、あなたの傍にいるよ」と、
その写真は、そう 囁(ささや)きかけているようにも思え・・


そのあたりは、
『木更津キャッツアイ』等でも描かれたクドカンのいつもの視点でもあるし、
わざわざ結び付けて考える必要はないのかもしれないけれど、
それでも私には、それが、震災で亡くなった人たちと、その遺族への、
クドカンからの控えめで奥ゆかしいメッセージだったような気がしました。


放送日時:2011年10月21日より毎週金曜 23:15-(テレビ朝日系)
脚本:宮藤官九郎/演出:片山修 唐木希浩
プロデューサー中川慎子 中込卓也 小池唯一
キャスト
神木隆之介 光浦靖子 加藤清史郎 星野源
有村架純 金井美樹 平岡拓真 赤石那奈 福島北斗 福島海斗
野村麻純 RED RICE 柳沢慎吾 小松和重 きたろう
皆川猿時 川村エミコ 高橋一生 佐藤二朗
広末涼子 田辺誠一  他

2013-02-26

『純と愛』を観て思ったこと。

『純と愛』を観て思ったこと。
どんなに明るく笑顔で懸命に頑張っても、どうにもならないこともある・・
理不尽なことは、どこにでも転がっている・・
先週末の『純と愛』を観ていて、そんなことを考えた。
「魔法の国(のようなホテル)を作りたい」という純の夢は、
あと一歩のところで、また挫折する。
(いとし)が、「神様は、乗り越えられる試練しか与えない」
と言いかけてその言葉を呑み込んだシーンに、胸が詰まった。
そして、ふと、同じ遊川和彦さん脚本の『家政婦のミタ』を観た時の、
ヒリヒリした痛みを思い出した。


どちらのドラマにも登場するのは、生きることに不器用な人間たちだ。
彼らの、自分ではどうしようも出来ない もどかしい気持ちは、
私自身の中の身近な感覚とも繋がっている。


『ミタ』と同時期に放送していた『11人もいる!』を、
すごく面白いと思って観ていながら、
あの大家族の、底抜けの明るさ、たくましさ、強さ、したたかさ、に、
正直、少し気後れしたのは、そんな私の臆病な性格ゆえか。w



この数年、私の周りでも、いろいろなことが起きた。
災害、病気、怪我、障がい・・
逃げ出したくても逃げられない、
それでも、何とか生きていかなければならない。
一人だったら、耐えるのは大変だったかもしれない。
家族「と」私、周囲の人たち「と」私、誰か「と」私・・
そうやって繋がっていたから、
何とか乗り越えようとする気持ちになれたんだ、と改めて思う。


「不幸がやってこないと、分からないことがいっぱいある」
森下愛子さん(純の母親役)の言葉に、大きくうなづく自分。
だけど、だからこそ、それを、
「苦労」ではあっても、「不幸」とは呼びたくない自分がいるのも、
また事実なのだ。



遊川さんがこのドラマをどう終わらせるのか、
興味深く観て行きたいと思います。