その後のその後

iOSエンジニア 堤 修一のブログ github.com/shu223

マネージャーからエンジニアに戻ります

昨年4月、「研究開発部のマネージャー」という自分にとってまったく新しいキャリアにチャレンジする旨を本ブログにて報告させていただきました。

shu223.hatenablog.com

それから約1年越しでの続報となりますが、この5月末をもって、この新しいチャレンジからは降りさせていただきます。平たくいうと、マネージャーやめます。

普通はこういう記事ではそのキャリアの中で挙げた華々しい成果を並べ立てるものですが、正直なところ未だにマネージャーとしてめぼしい成果は挙げられていません。やっとスタートラインに立てたかな...というような状況です。

上長やメンバーにはマネジメント経験が一切ないところから多大にサポートいただき、その恩に報いるのはこれから、というところなので心苦しさもあり、そしてマネージャーとしての景色が見えてくるのもマネジメントのおもしろさがわかってくるのもまだまだこれからという中途半端感もあり、大いに悩みましたが、年始から上長に相談を始め、2月末に正式にやめることを決めました。

4月・5月と引き継ぎを行ってきて、6月からはエンジニアに戻ります。

またフリーランスエンジニアとしてお仕事をいただけるようイチから発信して・・・

・・・と当初は考えていたのですが、エンジニアとしてSansan社に残ることになりました 1。これからはまた手を動かすことに全振りしていきます。

youtu.be

(正式にエンジニアの仕事をスタートするのは6月からではあるが、現行業務の合間をぬってプロトを作ったりは既に開始している。このタッチ名刺交換のプロトはプロダクトに正式採用されることになった 2

マネージャーとして入ってきてわずか1年で辞めることになり、研究開発部のみなさんには徒に混乱を呼び非常に申し訳なかったです。外から来た初心者マネージャーを手取り足取りサポートいただき、ありがとうございました。そして、すみませんでした。これからはエンジニアとして少しでも恩返しができればと思います。

また、エンジニアの実績としてはここ数年停滞気味であると自覚しているので、また初心に帰ってコツコツと勉強と技術発信のサイクルをしっかり回していきたいと思っております。

以上、ご報告でした。


  1. 会社側からエンジニアとしてのおもしろいポジションを提案していただいたのと、僕の方でもせっかく1年間Sansan社の「中」に入れてもらって、いろんな人にサポートしてもらいながら組織や事業や保有技術についてキャッチアップしてきたので、何かまだ「中にいるからこそ貢献できること」があるならぜひ、という感じで残ることに決めました。
  2. プロト内で使用しているのはダミー名刺。また本動画は社内Slackに投稿したものですが、会社から許可を得て公開しています。

12年間iOSだけやってきたエンジニアのキャリアチェンジ

iOSだけを12年間もやってきたフリーランスiOSエンジニアです。ここに来てついに新しい挑戦をすることにしました。

4月からSansan社に就職して、研究開発部門のマネージャーをやります。

このキャリアチェンジには3つの点で新しいチャレンジがあります。

これぐらいギャップのある今回のキャリアチェンジですが、ここに至った経緯や考えを書いておこうと思います。

経緯

価値観の変化

プログラマーになって10年近く、とにかく自分の手でものを作れることが楽しく、ただひたすらに手を動かすことだけをやってきました。楽しくて、稼げて、自由度も高い。そこに一切の疑問を持つ余地はありませんでした。

少し状況が変わってきたのが2018年9月。第一子が誕生し、家庭の事情により私がメインで育児を行うことになりました。今まで好きなときに好きな場所で好きなだけ仕事ができていたのが、まず育児の都合があり、次点で仕事をしてもよい、という状況になりました。

これによりタフな仕事、移動を伴う仕事、時間の縛りが厳しい仕事etc.は受けることができなくなり 1、「興味のある技術を学び、発信して、おもしろい仕事を得る」という10年間回してきたサイクルが初めて揺らぐことになりました。

Sansan取締役の方からのメッセージ

そんな折、Sansanの取締役でありEight事業部長 兼 技術本部長である塩見さんからFacebookでメッセージが届き、オンラインミーティングにてこのポジションについて打診をいただきました。2

数年前に同じ話をいただいていたらもしかしたらまったく興味を持たなかったかもしれません。

ただ今の私にはこれ以上なく面白いチャレンジに思えました。(後述します)

選考

最初のメッセージをいただいたのが2021年12月20日。興味ありますとお伝えし、年末年始休みを挟んで年明けから2度ほどの面接を経て、オファーをいただきました。最終的な返答をしたのが1月20日。ちょうど1ヶ月で浮上し、決まったキャリアチェンジでした。

ちなみに就職活動をしていたわけではないので、他社の選考を受けたり比較検討したりは一切していません。

面接内容で印象に残っているのは、最初に

自己紹介を10分〜15分ぐらいで話してください

と言われたことです。

いつも話が長くなりがちで短くしなきゃ短くしなきゃと思ってる自分としては「えっ、そんなに長々話していいの!?」と嬉しくなりました 3 。自分の考え方や仕事観を根掘り葉掘り聞いてくれて、非常に楽しかったのを覚えています。

興味を持った理由

冒頭で書いたとおり、私はマネジメント経験も研究開発部門がやっているような技術のバックグラウンドもないし、ずっとプレイヤー志向だった人間です。

なぜ今回のポジションをやりたいと思ったのか。また、門外漢の自分がどう貢献できそうと考えたのか。について書いておきます。

非線形な機会」だった

尊敬する先輩エンジニアの

勘違いした話しほど面白い案件はない

という言葉がとても印象に残っています。

フリーランスは何らかの既存の技術や実績を買われて仕事の依頼がくるもので、そこにももちろん新しい学びや経験は多くあるのですが、あくまで自分のこれまでの延長線上にある機会でしかありません。

しかし今回は、

  • iOSばかりやってきた人間に研究開発部門
  • フリーランスを好む一匹狼型プレイヤーにマネジメント

という「なにかの間違いでは?」と思えるようなオファー。明らかに僕がこのままフリーランスiOSエンジニアを続けていった延長線上にはない、「非線形な機会」です。

もともと、何をやるにもとにかく「時間がない」ことがボトルネックとなる状況が慢性的に続いていて 4 、今の自分にもっとも必要なのは「人に任せる」スキルでは、と何年も課題に思い続けていました。

ただ、「自分でやる」のが好きでエンジニア稼業をやっている身。なかなかそこに踏み出せずにいました。かつて「英語を話せるようになるには英語を話すことだ」と思い英語しか話せない環境に飛び込んだように、マネージャーという「人に任せることしかできない環境」に身を置く今回の機会は、自分にとって不意に舞い込んだ重要なチャンスのように思いました。

「裏方として人の人生を応援するのも良いものだ」と思えるようになった

ずっと「自分の」技術力を磨き、「自分の」手を動かしてつくることが楽しく、マネージャーやリーダーになることには1ミリも興味がありませんでした。

そんな価値観が変わってきたひとつのきっかけはコミュニティの運営です。

僕が運営するコミュニティは当初サロンとして立ち上げましたが、今では僕自身が直接提供する価値はほとんどなく、僕は空気のような存在です 5。僕より技術力の高いエンジニアの人たち、僕にはない経験をしたことある人たち 6、僕より教えるのが上手だったりコミュニケーションが上手だったりする人たちが多くいて、教え合ったり励まし合ったり雑談したり、またイベントが開催されたりと、僕の介在しないところで価値のやり取りが行われています。

そんな中で、「裏方として」立ち回って皆が楽しく過ごす場作りをするのも良いものだな、という新しい価値観が自分の中で芽生えるようになりました。

マネジメントもいろいろなスタイルがあるとは思いますが、裏方としてメンバーが働きやすい状況・環境を整えていく、というのもまたひとつの役割だと思います。そういう観点でみると、まったく畑違いの門外漢「だからこそ」裏方としてメンバーを支えることに徹することができそう、そして今の自分はそういう仕事を楽しめそう、と考えました。

まとめ

長くなりましたが、iOSばかり12年やってきたフリーランスエンジニアが研究開発部門のマネージャーをやることになった経緯と考えについて書かせていただきました。

入ったらどんなことをやるのか、どういう貢献ができそうなのか、というのはまた「後編」として別記事に書くか、追記したいと思います。

入社まで残り数日となった今、心境としては不安が5%、楽しみ95%という感じです。こういうチャンスをいただけたことに感謝し、楽しみつつがんばりたいと思います。


  1. リモートワークよりも「オフィスにいってお客さんの横で一緒に仕事をする」ことを好んでいましたが、育児の都合ですべての案件をリモートにせざるを得ませんでした。(その後コロナが来てみんなリモートになりましたが)

  2. 最初に声をかけてくれた塩見さんは、長らくEightの事業部長をされていて、フリーランスエンジニアとして何度かお仕事をさせていただいたことがありました。何かを気に入っていただけたようで、今回だけでなく、これまでも折に触れて声をかけていただいてました。

  3. もちろん僕のことをめちゃくちゃ知りたいというわけではなく、そのプロセスの中でどんな考え方をするのかを見る質問だったようです。

  4. これはもう子供が生まれるよりもずっと前から。とにかく何をやるにも時間がボトルネックとなっていた。 https://note.com/shu223/n/n46a4c4d49fc5

  5. サロンがコミュニティに変化していった経緯はこちらのYouTube にて詳しく話しています。

  6. たとえば土地を買って家を建てる経験があったり、起業・会社経営の経験だったり、車に詳しかったり、税務に詳しかったり、現役薬剤師さんだったり、自家発電して電力会社に電気を売っていたり、多くの有名なアニメで作画をしていたりと、基本的にみんなエンジニアではあるのですが本当にいろんなバックグラウンドの人がいます。

個人開発アプリのソースコード売れました

先日、個人開発アプリ「TOTOC」のソースコードの入ったGitHubリポジトリへのアクセス権を販売しますという記事を書いたのですが、

shu223.hatenablog.com

その翌日にクラスメソッドさんからお問い合わせいただき、なんとその日のうちに商談成立🎉

クラスメソッドさんがそのあたりの経緯について爆速で記事を書いてくれました。

dev.classmethod.jp

ほぼここにある通りなのですが、僕視点からも経緯や、今後の展望について書いておこうと思います。

経緯

時系列はクラスメソッドさんの記事にある通り。

  • 10/22 9:30 堤さんの記事を見て、面白そうなチャレンジということで、Slackのtimesチャンネルに放流
  • 10/22 10:00 エンジニアから反応あり、堤さんに連絡.16:00からZoomでMTGのアポを取る
  • 10/22 16:00 ざっくばらんに今回の件についてお互いの期待値を伝える
  • 10/22 16:30 商談成立

DMでのやり取りはこんな感じでした 1

f:id:shu223:20211024150925j:plain:w500

みんなご存知のクラスメソッドさん。僕側からの懸念は何もありません 2 。30分ほどですぐに話がまとまりました。

しかもこのあたりの話が早いw

所感

本当に全く需要がないかもと思っていたので、具体的にどの会社さんから問い合わせがくるとも予想していませんでした。

で、そこにクラスメソッドさんから連絡がきたとき、「なるほど〜!」とめちゃくちゃ腹落ち。

  • 決済権のある人(おおはしさん)はエンジニア出身で、僕の事も知ってくれている。一緒にお仕事をしたこともある。 → 最速で決断できる
  • クラスメソッドさんといえば技術ブログ。エンジニア文化、エンジニアの発信、マネタイズ手段etc.に非常に理解がある(なんせZennの運営会社だし)
    • 今回のコンセプト(エンジニアの新しいマネタイズ手段の可能性)に共感してくれている

意外だったのは、ミーティングで、 「コードの解説、サポート付きプランとかじゃなくても時給でやりますよ」と言ったら、

解説もないコードをみんなで読み解くのが新しい体験としておもしろい気がするから解説はいらないです

的な反応をいただいたことだった。(あとから答え合わせで解説してもらうのはありかもという話もあった)

ソース売ります記事を書いた時点では、需要があるとすれば自社アプリに同様の機能を追加したい企業からだろうなと思っていて、サポート必須でセミ受託開発みたいになるのかなと想像していたので、この観点は目からウロコでした。

ソースコード共有に向けてやること

1件も売れない可能性もあったので、告知記事は書いたものの、売るための準備はとくに何もしていませんでした。

とりあえずやる必要があるのは以下:

  • 共有しないほうがいいトークン, APIキー, ID系が入ってないかチェック
  • 別のプライベートリポジトリで管理しているSwift Packageをどうにかする

コードやコミット履歴はあえてそのまま出そうかと。

この試みの先にある未来/今後の展望

ソースコード販売はじめましたツイートにもちょこっと書きましたが、

エンジニアの技術のマネタイズ手段、給与/受託/書籍/個人開発で一発当てる等々いろいろあると思いますが、こういうパターンももしかしたらあるのではと...

この試みが成立するとエンジニアの選択肢が増えると思っています。

一発当たらない個人開発でもマネタイズできたら、需要や収益性にとらわれずもっと好きなようにモノ作りできるんじゃないかと。3

とはいえ今回はクラスメソッドさんが応援の意味も込めてお買い上げいただいたというラッキーパンチの側面が強く、 現時点ではまだこのマネタイズ手段の再現性もサステナビリティも成立していないことは重々承知してます。

平たくいうとクラスメソッドさんに続く需要があるイメージがまだ持てていない。

ここらへんは引き続き模索していきたいと思います。


  1. こちらのスクショは掲載許可をいただいています。

  2. 不安があるとすれば、僕のソースコードに期待しすぎていてガッカリされないだろうか、という点だけでした。

  3. 技術情報発信でもこれをやろうとして(ニッチな技術の情報発信でもちゃんと収益が出るように試行錯誤した)、一定の成果は出た: ニッチな技術書を書いて #技術書典 に出展してみたら想像以上に需要があった話 , 技術書を速く書くためにやったこと

個人開発アプリのソースコード売ります

個人開発アプリ「TOTOC」のソースコードの入ったGitHubリポジトリへのアクセス権を販売します。

apps.apple.com

shu223.hatenablog.com

(本記事では詳細は省きますが、弊アプリのSomato・ChopperもTOTOCと同条件でOKです)

TOTOCのコードのポイント

iOSエンジニアには伝わると思いますが、)人の顔やペットを認識すること自体は非常に簡単で、そこらへんのコードには価値はないと思います。

以下のあたりは、似たような機能を実装したい場合、「実際に動いているリファレンスコード」として価値がある可能性があると思います。

  • 認識状況をトリガーに録画を開始・停止(ビデオ録画の制御)
  • 認識結果のキャッシュ
  • カメラの制御(録画とも関係してくる)
  • 認識結果をベースに動画からサムネやアイコンを自動切り出し
    • 実際にTOTOCで録画してライブラリ画面を見てみてください
  • 動画プレイヤーの制御

アプリ横断で使い回せる部分はSwift Packageとして切り出したりはしていますが、 設計等の面は自信がないのであまり期待しないでいただければと。

価格等

個人の勉強のため等の利用よりは、「似たような機能を開発したい」といった企業様での利用を想定しています。

私としても完全に手探りなので、まずは1社限定で、10万円で募集 1 します。

そこでトラブル等なさそうであれば、その後は20万円 2 での販売を考えています。 (需要次第では価格を変更する可能性はあります。)

アクセス権を付与する期間は1ヶ月で考えています。

サポート

上記の金額にサポートは含みません。コードの解説や、バグ修正対応も含みません。あくまでリポジトリアクセス権付与の価格です。

コードの解説等のサポート付きプランは、プラス10万円で申し受けます。

コードの解説以外のご相談やカスタマイズ実装、御社アプリへの組み込み実装等は、こちらのリソースの空き状況にもよりますが、通常のお仕事としてお受けできる可能性があります。お問い合わせください。(単価は有料ですが公開もしています。お問い合わせいただければお伝えします)

ソースコードの利用範囲

リポジトリにあるソースコードは商用・非商用に限らず利用していただいてOKです。

ソースコードをまるっと公開したり、他者/他社に提供したりはご遠慮ください。 デザインのパクリもご遠慮ください。

アプリの譲渡ではありません

私は引き続き同アプリをAppStoreに公開し続けます。

収益が出ているアプリではないので、同じ/ほぼ似ているアプリを出すメリットはそんなにないと思いますが、デザインさえ変えていただければそれもありです。

少しでもご興味あればぜひお問い合わせください

超特殊技術を使っているわけでも、収益が出ているわけでもないアプリなので、需要が1件もない可能性も全然あると思っています。

ただ、似たような機能を開発しようとしていて、リファレンスコードがあることで工数が数日でも短縮できる見込みがあるのであれば、検討していただける余地はあるのかなぁと。

繰り返しになりますが、私にとって初めての試みで完全に手探り状態です。上に書いたことはどれも私が勝手に考えていることなので、価格や条件等で期待と食い違う点があっても、興味があればまずはお問い合わせいただけると幸いです。

お問い合わせ先

GitHubアカウントにメールアドレスを記載しています。

github.com

(おまけ)

なぜこんなことをやろうとしているのか、 この動画の1:00:16あたりで話しています。

www.youtube.com


  1. 本記事公開の翌日にさっそく最初の1社が決まりました! https://twitter.com/shu223/status/1451453183595737088

  2. 本記事内の価格はすべて税抜です。

【個人開発】AIで人やペットを自動で撮影するアプリ「TOTOC」をリリースしました

AIで人やペットを認識して自動で動画を撮影開始/停止するアプリ「TOTOC」をリリースしました🎉

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置いておくだけで動画を「撮っとく」ことができるという意味で、TOTOC(トットク)という名前にしました。

子供が突然やる仕草やおしゃべり、撮りたいと思ってカメラをかまえても大抵もう遅いので、いっそのことカメラを置きっぱなしにして全部撮っておきたいな〜と思ったのが着想のきっかけです。

アプリのポイント

撮影中にもどんな動画が撮れたか確認できる

撮れた動画が画面内にポンポンと出てきて、録画中にもそのままプレビューできます(下の方の丸アイコン群がそれ)

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20倍速再生でサクサク管理

撮れた動画は撮影ごとにまとめられてライブラリに格納されます。

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1回の撮影で数十の動画が撮れることもあります。この画面では、撮れた動画を最大20倍速で連続再生でき、削除・保存・共有といった管理をサクサク行えます。

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オンデバイス処理/オフライン利用

処理はすべて「オンデバイス」で(iPhone上で)行っています。撮れた動画はどこにも送られないのでご安心を。当然オフラインで利用可能です。

無料

無料で使用できます。ダウンロードはこちらからどうぞ:

AIビデオカメラ TOTOC (トットク/撮っとく)

AIビデオカメラ TOTOC (トットク/撮っとく)

  • Shuichi Tsutsumi
  • 写真/ビデオ
  • 無料
apps.apple.com

何であって、何でないのか?

上記のようなアプリですというと、「監視」「見守り」用途を思い浮かべる方は多いと思います。

実際のところ、監視・見守り分野において、なにかを認識して、それに応じて通知やアラートを発するという発想はめちゃくちゃ普通です。そういうアプリや製品は山程あります。

しかし、

子供が突然やる仕草やおしゃべり、撮りたいと思ってカメラをかまえても大抵もう遅いので、いっそのことカメラを置きっぱなしにして全部撮っておきたいな〜と思ったのが着想のきっかけ

この用途で使えるアプリや製品で探すと、見当たらなかった。

・・・ので、作りました。

監視・見守り用ではなく、思い出としての動画撮影用です。

そういうわけで、通知やモニタリング機能は実装していません。

そういうわけで、こういうUIを実装しました。

撮れた動画が画面内にポンポンと出てきて、録画中にもそのままプレビューできます(下の方の丸アイコン群がそれ)

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カメラを仕掛けてる間、どんなのが撮れてるかな〜と気になる → 撮影は止めずに確認できたら嬉しい

という発想です。

(このあたりのUIデザインの進め方についてはこちらの記事にも書きました)

note.com

あと、これも、

1回の撮影で数十の動画が撮れることもあります。この画面では、撮れた動画を最大20倍速で連続再生でき、削除・保存・共有といった管理をサクサク行えます。

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撮れた動画の中には嬉しいものも、いらないものもある。たとえば自宅のリビングでTOTOCを仕掛けておくと、上述のような三輪車のシーンを撮れることもあれば、自分がTシャツ+パンツでうろつく姿も混じってきます。前者の動画は保存したいし、後者の動画は要りません。

そういう選別をするために、このような20倍速+連続再生が必要になりました。逆に、監視・見守り用途であればこういうUI/UXにはならないでしょう。

具体的にどんなときに嬉しいのか?

自分でドッグフーディングしていて、こういうときに「作ってよかった〜」となりました。

  • 子供が3歳の誕生日におばあちゃんから三輪車をもらった。その三輪車に乗って家の中を初めて走る姿が撮れた。後ろの棒を僕が押してあげてるので、これはカメラを構えていたら撮れなかった動画。

  • 朝、子供がなかなか起きないのでTOTOCをしかけておいたら、目が覚めてぐずってパパ〜と呼ぶまでの貴重なシーンが撮れた。

子供がいるとTOTOC仕掛けるたびに良いシーンが撮れます。

ダウンロードはこちらから

あらためて、気になった方はこちらからどうぞ!

AIビデオカメラ TOTOC (トットク/撮っとく)

AIビデオカメラ TOTOC (トットク/撮っとく)

  • Shuichi Tsutsumi
  • 写真/ビデオ
  • 無料
apps.apple.com

過去5年の #iOSDC 登壇の見どころ

iOSDC Japan 2021、非常に楽しませていただきました。多くのセッションとスライドで勉強させていただいたので、いずれまたnoteにでもまとめていきたいと思います。

ところで、私も(幸運にも)2006〜2020まで毎年登壇させていただいておりました。先日ひさびさに動画を見返してみたところ、これが2021年の今見てもなかなか良く、過去のものだからと二度と誰の目にも触れないのは寂しいと思ったので、自分的ベストプレゼン順にご紹介したいと思います。

第1位:飛び道具ではないMetal(2017)

www.youtube.com

みなさんのお時間をなるべく取らないよう、いきなり1位からいきます。自分的ベストプレゼンです。

最初のつかみもよく、最後のQ&Aまで良い

  • 当時ほとんどの人が興味がなかったであろうMetalをテーマにしつつも、ちょっとでも多くの人に興味を持ってもらえるように、という姿勢が感じられるつかみ
  • 難しい内容を独自の切り口で噛み砕いてわかりやすくしている
  • それでいてふんわりとした話ではなくしっかり中身がある
  • 今見ても古くない内容

第2位:Depth in Depth(2018)

www.youtube.com

  • デモが豊富で、「プレゼンならでは」
  • デプスとは、から始まり、視差やToFのしくみの解説、そして応用まで網羅
  • 静止画・動画・ARKitも網羅
  • 今見ても古くない
  • 登壇当日の朝に子供が生まれるというライブ感のあるドラマ

第3位:海外カンファレンスに登壇する(2016)

www.youtube.com

  • 「自分ならでは」の経験をベースにしたテーマ
  • 実際の英会話の録音や、Q&Aで固まった話は勇気づけられる人が多いのでは。
  • 今は時勢が悪いが、またカンファレンスがオフライン開催されるようになったら、海外で働くことや海外案件獲得に興味ある人には参考になる知見があると思う。

第4位:機械学習ブルーオーシャン Core ML(2020)

www.youtube.com

  • 内容としては、Core MLの一歩深いところを解説しようとしている点は良い。が、後半の解説は誰にも伝わってないと思う...(わかってる人だけがわかる系の解説)
  • オンライン開催&事前収録の特性を活かし、録画したものを編集してテンポよくしたのは良いと思う。
  • 自分のYouTubeチャンネルを持っていることを活かし、発表当日に字幕付きのものを公開した点は良かった。

第5位:今こそwatchOS(2019)

www.youtube.com

・・・が、

  • 結局自分でwatchOSアプリ開発をやってないので、散漫だし浅い
  • Metalもデプスも発表・執筆ドリブンで勉強してその後多くの仕事につながったが、watchOSに関してはこれっきり触れる機会がなかった...

余談(iOSDCと人生)

もともとは「過去の登壇も見てほしい!」と思って書き始めた本記事ですが、書いてるうちにいろいろと考えさせられました。

以下記事のテーマとは関係のない余談(内省):

直近の2年のプレゼンが自分の中で下位にあり、このへんで登壇者としては心が折れてしまったような気がします。自分の期待値と、要する努力量と、実際に出せるアウトプット品質のバランスが取れなくなってしまったような感じ。

人生ステージが変わったのもあると思うし、それによって仕事への関わり方が変わったのもあるし、世の中も動くことで相対位置が変わったのもあるし、発信スタイルが変わったのもあるし、それら諸々によってマインドが変化したというのもあるんだろうなぁと。

弊コミュニティ のSlackにiOSDC直後に以下のような投稿をしていたのですが、

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大規模カンファレンスに出ると、なんか毎度自分の今後の身の振り方について見直したくなる 何を強みにして、どういうあたりに時間を割り振っていくのか、どういう世界に対してプレゼンスを出していって、何をあきらめていくのか、とか。

多くの人の専門性とか、各社における活動とかそこで積んでいる経験とか、発表に対しての反応(≒その人のプレゼンス)とか、 そういういろんな人の生き様を一気にたくさん浴びるからだろうなぁ

僕が登壇者としては心折れてしまった一方で、昔も今も素晴らしい発表をされ続けている方もいて、刺激を受けるし、さて自分はどうしていこうかと人生を考えさせられもしました。

結論はないですが、引き続きどう楽しくエンジニア人生をやっていくか、模索し続けたいと思います。

2020年のふりかえり:技術への全振りを緩めて新領域に挑戦

2019年は「技術発信のマネタイズ」を目指した1年だった。有料note → 技術書の個人出版 → 案件と全フェーズをマネタイズするしくみができ、これのおかげで2020年はベーシックインカム的に一定の収益があり、新しいことに挑戦できた1年だった。

(2020年は書籍の利益が約200万、noteが約90万)

以下その振り返り。

2020年、成長サイクルモデルの限界

「成長サイクルモデル」というのを書いてみたことがある。

note.com

興味のある技術を勉強する 
→ 発信する 
→ おもしろい仕事をもらう 
→ スキルと実績ゲット 
→ 発信する 
→ おもしろい仕事をもらう
→ ...

というインプットとアウトプットを両輪として循環するサイクルとなっている。

10年間これで楽しくやってこれたのだが、慢性的に2つの問題を抱えていた。

  • サイクルをまわすすべての動力の源泉が「時間」となっている
  • サイクルが「技術」だけに特化している

前者の問題は根深くて、まぁもうこのサイクルは終わってるよねと先の記事では結論づけている。

まさに現在のモデルは自分の時間というリソースが尽きたところで成長が終わる。時間は慢性的に尽きているのでつまりこの成長サイクルは既に終了している。(時間でお金を買うといっても限界がある)

後者の話は、たとえば僕が友人と飲みに行くとか、読書するとか、そういう活動は全部(このサイクルにあてはめてみれば)時間という源泉を奪うマイナス要因となってしまうということだ。いや行けばいいじゃんと思うかもしれないが、実際のところ、高時給がもらえて、つくるプロダクト/サービスも良くて、勉強したい技術が使えて、クライアントも良い人で仕事がしやすくて、っていう仕事がたくさんあるので、どうしても持ち時間を仕事で埋め尽くしてしまうという事態になっていた。

ホリエモン氏のモデル(上述の成長サイクルモデルの記事に書いた)はこのへん非常にうまい具合になっていて、

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  • 基本的に持ち時間をすべて「おもしろいこと」に全振りしておけば勝手にサイクルがまわっていく

  • 本を書くにしても1冊1冊をすべて自身で書き下ろしていく必要はなくて、誰かが過去の文章や講演を再編集したりインタビューしたりしてまとめてくれるので、プロダクト生産の時間コストが限りなくゼロに近づく(ので、おもしろい仕事に全振りできる)。

自分の技術だけに特化したモデルから脱却できないものかなーと考え始めたのが2020年だった。

しかし「持ち時間をすべておもしろいことに全振りしておけば勝手にまわっていく」というサイクルは理想的ではあるけど、僕が仮に全振りしても同じようにはまわらないわけで、自分なりの自分に向いたやり方で理想に近づけていくしかない。そこは考え中。

YouTubeとオンラインサロン

このへんの課題感が、2020年に始めたYouTubeとオンラインサロン(その後コミュニティになった)によりちょっと前進した。

まず1月から開始したYouTubeチャンネル1

www.youtube.com

これのおかげで、会いたい人に会って聞きたい話を聞く、という旧サイクル下ではコスト/機会損失だった行為を自分のサイクルに組み込むことができた。

ほとんど「撮って出し」なので収録以外の時間コストはほぼゼロだし、視聴者のことはほぼ考えず(コンテキストの説明等もほとんどしない)僕が聞きたい話を聞いているので、飲みに行くのと同じような気楽さ・楽しさで運営できている。つまり、マネタイズできなくてもサステナブル。(僕が話したい人がいる限り飲みに行く感覚で続けられる)

さらに、このYouTubeはゲストインタビュー中心だが、その中で僕の「価値観」を発信できていると思う。これは今までのテキストベースのメディアではあまり発信できていなかった部分。さらにもうちょっとチャンネルが大きくなれば、オンラインコミュニティへの送客も期待できる。いい事だらけだ。

5月から始めたオンラインサロン(8月からコミュニティに名実ともに変わった)もまた成り行きで始めたものだけど、これもまた自分の技術「以外」の部分をサイクルに組み込むための重要なチャンネルになっている。

community.camp-fire.jp

そんな感じで、YouTubeとオンラインサロン(コミュニティ)によって、「技術以外の人間活動全般をビジネスサイクルに組み込みたい」というところが前進した2020年だった。

2021年

そんなわけで2020年は今まで技術面に全振りしていた力を少し緩め、 YouTube、コミュニティという新しい領域に挑戦できた。

しかしその反動で技術面は(相対的に)弱くなった2、 YouTube、コミュニティもまだまだ自分の柱と呼ぶには弱い。

そもそも「サイクル」といったものの実はサイクルなんて構築できておらず、 断絶した点と点があるだけでそれらはあまりつながっていない。

この状況、下手したらすべてが中途半端のまま終わってしまいそうな危うさがある。 今は10年間で積み上げたiOSキャリアの余韻で食えてるようなものなので、 下手したら来年あたりは就職活動してるかもしれない。

というわけで、もうちょっとこれらの活動を育てて、ビジネスとして軌道に載せて、サイクルを構築していくのが2021年にやるべきことかなぁと漠然と考えている。(考え中)


  1. このYouTubeチャンネルは最初はVoicyというクローズドな場で展開していた音声コンテンツをもっとオープンなプラットフォームで出したいなと思ったところからスタート。KBOY氏が遊びに来てくれた際にせっかくだから動画を撮ってみますかーというので初めて撮影してみて、あーこんなに簡単にできるんだというのでなし崩し的に以降のエンジニアインタビューも音声じゃなくて動画でやることになった。

  2. 技術面で開拓したところもあるのだけど、話が逸れるのでこれはまた別の記事で。