shuueiのメモ



2013-07-02

核のごみ、毒性消す「錬金術」 実用化には高い壁

核のごみ、毒性消す「錬金術」 実用化には高い壁

2013年7月1日 朝日新聞



実現できる?核変換

 【小池竜太原発の使用済み核燃料から出る「高レベル放射性廃棄物」が、たまり続けている。国は地下深くに埋めて捨てる方針だが場所は未定。処分場を造っても、放射能が強く、数万年は社会から隔離する必要がある。この「核のごみ」の寿命を短くしたり量を減らしたりする「核変換」という技術がある。実現できるのか。

     ◇

 「核変換はある意味、現代の『錬金術』です」。京都原子炉実験所の三澤毅教授(原子炉物理学)はいう。中世錬金術師たちは卑金属から金を作り出そうと試みたが、かなわなかった。だが、今は中性子を使って物質を変えられる。

 実は核変換は珍しいことではない。原発で起きている核分裂反応もその一つ。ウラン中性子を取り込んで分裂、ヨウ素セシウムなどに変わる。

 核変換技術を原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」対策に役立てる研究がある。毒性が長く続く放射性核種の寿命を短くしたり、毒性を消したりするのが目的。使用済み核燃料をそのまま捨てると、放射線の強さが天然ウランと同じレベルに下がるまで約10万年、高レベル放射性廃棄物は数千年かかる。核変換ができれば数百年に短縮できるとされる。

 核変換の主な対象は、ネプツニウム237(半減期214万年)やアメリシウム241(同432年)といったマイナーアクチノイド(MA)という核種だ。ネプツニウム237が理想的に核分裂すれば、放射能のないルテニウム102とセシウム133になる。三澤教授は「昔は価値が低い物から高い物を作ろうとした。今は毒性の高い物を低い物に変えようとしています」と話す。

■国「もんじゅで研究」

 MAは中性子のうち、エネルギーが高い高速中性子がぶつかると核分裂しやすい。国は日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅで核変換の研究計画を進める。もんじゅは冷却に液体のナトリウムを使うが、ナトリウムは水に比べて中性子の速度を落とさないからだ。

 もんじゅでは核分裂しにくい種類のウラン原子炉に入れておくと、豊富な中性子を取り込み、核分裂しやすい種類のプルトニウムに変わるため、使った以上の燃料を生む増殖炉としてつくられた。

 だが、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムが大量にあり、増殖の必要性は薄い。増殖炉実現の見通しも立っておらず、文部科学省はごみ対策に重点を置いた研究計画作りを進めている。

 計画の中間まとめによると、アメリシウム241を含む燃料を核分裂させ、燃料の状態や安全性のデータを収集・分析する。MA燃焼試験は高速実験炉「常陽」(茨城県)でも実績があるが、文科省の西條正明・核燃料サイクル室長は「もんじゅなら実用規模の燃料を使った試験でデータを集められる」と話す。

 だが、ナトリウムは燃えやすく、扱いが難しい。もんじゅナトリウム漏れ事故などのトラブルが相次ぎ、現在も停止中だ。機器の点検漏れも発覚し、当面は再開準備ができない。文科省は研究計画を今夏まとめるが、先行きは不透明だ。

 一方、核変換は「加速器駆動未臨界炉」(ADS)を使う方法も研究されている。加速器で作った陽子ビームを重金属にあてて原子核を破砕。その時に発生する高速中性子を、MAを混ぜ込んだ燃料にあてて核変換する。炉心は臨界に達しておらず、陽子ビームを止めれば核分裂も止まるため、比較的安全とされる。

 三澤教授は京大原子炉実験所の加速器原子炉を組み合わせた国内唯一のミニADSで2009年から実験をしている。ただ、出力が最大100ワットと小さく、核変換も微量。基礎研究の段階だ。茨城県東海村加速器実験施設「J−PARC」でもADSによる核変換実験施設の整備計画がある。ベルギーでは20年代半ばからADSの運転を始める計画があり、うまく進めば実用化に一歩近づくという。

■技術的・社会的に課題

 いずれの方法も、実用化には高い壁がある。さまざまな核種が混じった廃棄物の中から実用規模でMAなどだけを取り出す方法は未確立。MA入りの核燃料を加工する新たなシステムが必要だ。技術開発には時間がかかる。

 東京電力福島第一原発事故原子力への信頼が落ちる中、新しい原子炉や使用済み燃料の新たな再処理システムを社会が受け入れるかも未知数だ。

 核変換に詳しい原子力機構大井川宏之研究推進室長は「実現に20年以上はかかる」とみるが、「各国の放射性廃棄物問題の解決に日本の科学技術力を生かせる可能性がある。挑戦する意義は高いのではないか」と話す。

投稿したコメントは管理者が承認するまで公開されません。

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/shuuei/20130702/1372709268
リンク元