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2012-03-11(Sun) 「結婚しない、子供を作らない」でいいのなら、気持ちは楽

[]伝えたいこと Ver. 2 "sincerity to science" その6

http://d.hatena.ne.jp/sib1977/20120310/p1 の続き

先生の部屋の壁には周期表エッシャーの絵が飾ってある。さらに、SI基本単位、SI組立単位素粒子表、核種の質量と存在比表、結晶構造の分類表もある。そして基礎定数表も貼ってある。光速プランク定数アボガドロ定数万有引力定数、真空の透磁率、真空の誘電率、電気疎量、ボーア磁子、核磁子、電子の静止質量、電子の比電荷、陽子の静止質量、中性子の静止質量、微細構造定数、ボーア半径、気体定数、ボルツマン定数などが書いてある。「基礎定数は、一見関係ないもの同士を結びつける働きがあるからとっても大事なんだ」と、先生が以前言っていた。「研究する上での指標みたいな物かも」とも。他に、ちょっと変わった図としては、生物の系統樹が載っている。


天井にはいろいろな図が貼ってある。この建物の地図、大学のキャンパスの地図、この街の地図。この国の地図。世界地図。太陽系をモデル化した図。銀河系や宇宙をモデル化した図。ビックバンからの宇宙の歴史を図示したもの。最後のもの以外は2次元の空間に落とし込んだもので、最後のものは空間1次元と時間1次元をモデル化したものだと思った。水を取り去った時の世界地図とかは面白い。海嶺や海溝などがどこにあるかわかる。


これらの図を見ていると、「科学における理論は地図みたいなもの」って先生が以前に言ったことを思い出す。


あれはハイキングに行った時だった。そして道に迷った。その時の言葉だと思う。


「地図(map)は、現実そのものじゃない」

そういいながら、先生は周りの風景をのんびりと見回し、手元の地図に目を落とした。


ハイキングには、先生と助教(29歳、女性)、そして先輩7人(女4名、男3名)とあたしで来た。


助教の人はハーモニカで悲しげなメロディを奏でている。先輩達は双眼鏡で遠くの景色を見たり、虫を捕まえたり、花の写真を撮ったり、風景のスケッチをしたり、木に登ったり、フリスビーを投げたりしている。水たまりに笹舟を浮かべてぼんやりと眺めている先輩もいる。彼・彼女らは、この状況を全く心配しているようには見えない。楽しそうである。


先生は、迷子集団であるあたしたちの状況をまったく棚にあげたような話を続ける。

「現実そのものじゃない。でも、ある種の真実・事実とされるものを表現する」


日が暮れるまではには十分な時間がある。でも、道がわからないままというのはあんまり気持ちが良い物ではない。不安なのはあたしだけだろうか。


GPSで場所が簡単にわかる時代に、誰一人そのようなデバイスを持っていないのもどうかと思う。一枚しか地図がないのもよくない。それを先生に預けっぱなしだったというのも大きな問題だ。・・・などと、自分を棚にあげた愚痴があたしの頭の中で展開されている。自分を棚に上げるのは大得意だ。自分のブーツ(boot)についているツマミ(strap)を掴んで空中に浮かぶことだってできるし。

ブーツに関しては冗談だ。だいたいあたしはブーツはかないし。あたしの冗談はわかりにくいとよく言われる。ここでは冗談であることは言っておこう。でも、冗談の内容に関して説明するのは野暮なので説明はしない。「自明である」とか「読者の問題に取っておく」などとも言わない。「"自明"ってどういうことだろう?」というのはなかなか面白い話だと思う。それは自明ではない。



先生は地図を見たり、目を瞑ったりを繰り返しながら何かを思い出そうとしているみたい。そして、あたしの方を見てこんなことを言う。

「地図の書き方は無限にあり得るかもしれないけど、慣習で一応の形式が決まっている。そして地図においては、事実を抽象化して、分類して、単純化してある」


先生は、「どうしたら帰ることができるか?」「どうしたら今の場所を把握できるか?」を考えていたのではないらしい。いや考えてはいるのかもしれないけど。


そして、

「今、『地図』って言ったことを『科学の理論』に置き換えてみようか」

と言った。


迷子状態の時に地図というか科学に関しての講義(?)がされるとは、ハイキングを始める前には思っていなかった。この先生はただ者ではない。よく、失態の理由を聞くとごまかす人がいるが、先生は別にごまかそうと思っているわけじゃない。素直に今考えている事を話しているだけなのだ。だから余計困るというのはあるかもしれないが。あたしにはまだ修行が足りないのだろうか。


先生は続ける。

「科学の理論って、自然に存在する物ではない。でも、ある種の真実・事実とされるものを表現する。科学の理論の表現の仕方無限にあり得るかもしれないけど、慣習で一応の形式が決まっている。そして科学の理論においては、事実を抽象化して、分類して、単純化してある」


普段なら先生の言っていることを、もうすこし面白がれる気がするが、今は気持ちがちょっと乗り切れない。そわそわしているあたしの不安に気がついたのか、「今の居場所は"だいたい"把握したから安心していいよ」と言って、先生は地図の一点をさした。今まで歩いてきた経緯からなんとなく辻褄があっているように思う。この種の先生の気遣いは珍しいかもしれない。


「辻褄があっている」というのは良いことだ。本当に良いことだ。矛盾がないと言う事も良いことだ。そういえば、「言葉・理論には矛盾があっても、現象・現実には矛盾がない」「事実ではなく解釈に矛盾がある」というようなことを先生に聞いたことがある。矛盾はあたしたちの心の中にあるのかもしれない。



「地図・科学の理論の特徴とか性質っていろいろあるよね。まず、とっても機能的。つまり使いやすい。ある目的を達成する上で役に立つ。でも・・・」と先生は地図について言いたいことがいろいろあるようだ。


先生は近くの岩に腰をおろし、あたしも隣に座るようなジェスチャーを見せた。あたしは先生に近づいてちょこんと隣に座る。


「それを読み取る(解釈する)ためにはある程度の訓練が必要だね。例えば、山登りをよくする人は、山の地図を見て、いろいろなことを把握できると思う。初心者だと、地図をどうみれば良いのかよくわからない。"地図と科学の理論とはとっても似ている"。地図には科学の理論の性質が凝縮されているね」

と先生はあたしの方を向いて言った。

「その7」http://d.hatena.ne.jp/sib1977/20120312/p1 に続く

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