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2016-09-25

『レッドタートル ある島の物語』を観た感想

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  ジブリが製作面で関わっている『レッドタートル ある島の物語』を観てきた。


■あらすじ

  嵐の海に放り出された男が、ひとり、無人島に漂着する。彼は島から何度も脱出しようと試みるが、なぞの力によって無念におわる。絶望に暮れる男の前に、ひとりの女が現れる。


  マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットが監督。キャラクターが発する声はあるけど言葉になっているセリフは一切ない。


  フレデリック・バックが監督してジブリからDVDが発売された『木を植えた男』もたしかセリフがすくなくて、アート風の絵柄ということもあって、『レッドタートル』を観ていて思い出すアニメ。



  『レッドタートル』は絵とか海の動き、動物の動きがジブリらしくもあり、アニメーションとして見応えがあった。効果音も、素朴なキャラクターなどに合ってる。音楽はちょっとうるさめに感じたが。


  ストーリーはかなりシンプルで、ありふれている。その捻りのないストーリーでありながらも、ある程度は集中して見るに値する作品になっているのは映像とか音響効果の出来のよさによるものかとおもう。


■ファンタジーとリアリズム

  終わってみて不満だったのは、ファンタジーとリアリズムのどっちつかずの作品という印象が残ってしまうという点。一応結末で決着はついているけど、登場人物の内面性の描き方が雑だなとおもってしまう。

  (これを「ジブリアニメ」と言っていいのかわからないけど)ジブリアニメなんだからファンタジー全開でいいじゃんっておもうんだけど、監督はリアリズムにこだわってしまったのか。夢と現実が中途半端になっている。しつこく挟まれる主人公の夢、そして夢オチのシーンは伏線でもあるんだけど、やっぱしつこい。


  うろ覚えだけど、『思い出のマーニー』は夢と現実の描写のバランスが理想的だったような。


  純文学とか、文芸誌上でファンタジックな物語なんだけど、ジブリやディズニーみたいになってしまったら文学でなくなりすぎるので、語り手や主人公の妄想だった的なオチや設定が多々使われることがある。文学ならそこらへんは仕方なくもおもえる。あまり面白い解決方法ではないけど。


  でも、一応ジブリアニメならもう振り切ってファンタジーアニメ作ればいいじゃん、と心からおもう。



■『レッドタートル』と『オデッセイ』

  男が一人きりで無人の土地に残される、という点では映画『オデッセイ』(原作小説のタイトルは「火星の人」)を思い出させる。



  『オデッセイ』のマット・デイモンの場合は、地球上や宇宙船内の仲間たちと連絡を取れた、という点で『レッドタートル』とは違うんだけど。それにしても、マット・デイモン演じるキャラの精神的にもサバイバル能力にしてもタフ過ぎて感服する。


  一方『レッドタートル』の無人島に漂着した男は、人間界と連絡する手段が一切ない。唯一他の人間たちと繋がりを感じられるものといったら、漂着してくる樽や空き瓶くらい……。


  そういう状態なら精神的に消耗していって、現実の自分の立場から離れて浮遊していってもしかたがなくおもえるけど。それにしても、幻想と現実の描き方はやっぱもうちょっとなんとかならなかったのか。


■『レッドタートル』と3.11

  物語の中盤くらいか、唐突に津波のシーンがあって驚いた。地震の予兆さえなかったな、そういえば。それまで、災害なんて起こりそうな季節の変化もないスコールが時々降るくらいの島だったのに。


  男たちを襲う津波の映像とその音。現実はどうか体験していないけど、こういう恐怖に近いのかな、と慄く体験になった。また、津波が去ったあとの無残な島の姿。流される家族。


  日本人として、3.11(東北地方太平洋沖地震)の記憶が自ずと喚起される。津波自体はテレビや新聞などのメディアでしか目にしていないが。


■おわりに

  ストーリー面では不満はあるものの、凄いアニメを見た、という実感を得ることになる作品だった。行ったの新宿の映画館で小さめのスクリーンで、意外に満席に近い客入りだった。従来のジブリアニメとはやっぱ毛色がちがうけど、アニメーションが好きならなにか感じるところはありそう。


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老ヴォールの惑星

老ヴォールの惑星

  収録されている「漂った男」もまた漂着もの。


  絵本バージョン。

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