自縄自縛というか、我から宝物を手放すか というか

管理棟より







さぁ いよいよ本題です――――――――


と ぶちあげといて、今日から二・三回に分けてちょっと別のお話とします。


「さぁ、いよいよ決戦ですっ」
なんて ど素人の女子アナに云わせておいて、コマーシャルが開けたらまだ前座試合だった・・・・・・
K-1とかPRIDE、そう云えば 先だっての亀田(兄)の試合もそうだったな、


まぁ、そんなことにならないようにはしたいところですが・・・・・・






さて――――――――
以前、ここではない某所に、
“18ホールのゴルフコースを維持管理するのに必要な人間とお金ってのは、いったいどのくらいなのか”
なんて事にまつわる どたばた
を書いたことがあります。


まぁ、結論は、
そんなものは、コースと遣り様で 幾らだって掛けられるし、幾らでも安くできる、
と云うことでありました。






で、そこで書ききれなかったことは、
じゃぁ、いったい どのレベルでコースを維持管理しようか、あるいは どのレベルを目標にしようか、という議論や検討も成されないまま、キーパーにあれこれと注文をつけたりしちゃぁいませんか、
と云うメッセージを送ることだったんです。


実はこの話題、これだけで何日分のエントリーになるのか知れない話題かとは思いますが、非常に重要な事でして、いわば、そのコースなりの基準を作ろうという話です。
コースの仕事を、目標 ― 戦略 ― 戦術 ― 各個の戦闘 ― 各個の戦闘行為 と云う様に色分けすると分かり易い、とちょっと前に書いた話とは、ちょと趣が違います。


まともに話を進めようとすると、何日もかかりますので とてもやってられません。
とりあえず今日の所は ものすごく大雑把に話を進めてしまいます。
まぁ、そぉんなことかいなぁ、と読み進めていただければと思います。






以前 sibakuroがまだ勉強熱心で、某社の芝草セミナーに参加していた頃。
講師として招聘された アメリカのスーパーインテンデント氏が公開してくれた、“コース改善プログラム”なるものがありまして、sibakuro非常に感銘を受けました。
実は この講義に勝るものはないのではないかと、今でも思っているくらい 当時のsibakuroにとってはセンセーショナルでした。
スーパーインテンデント氏による資料によれば、このプログラムは以下のようなメニューから出来ています。
ちょっと引用させていただきますが、


  • 目標
  • メンテナンス基準
  • 他のゴルフ倶楽部の状況
  • 使用可能な人員・機材
  • コースの改善に必要なコスト
  • コース改善をした場合の運営プログラム



東洋グリーン芝草セミナー 第11回大会
ケン・マンガム氏の講演の資料より




この各個の項目について 非常に現実的な目標を設定し 基準を設けた、コース改善のための緻密なプログラムとなっています。
で、この中の、



メンテナンス基準

を、Bゴルフ倶楽部で考えてみようと、sibakuro流にアレンジして作っていたのが、以下の引用部分。
ちなみに、毎年修正を加えていて、掲載分が十六年度版。十七年度版はHDDのクラッシュで霧散霧消。十八年度版に至っては、怠けて作ってありません。
――――――――別ページにしてリンクを張っても どうせ読んで貰えませんから、ちょと長めですが一部手を入れて全文掲載の暴挙にでます。面倒くさかったら流してください







平成16年度 コース管理作業指針



管理コストの削減

  • 管理原価 ××××円を目標とする。
    • 肥料・薬剤費のさらなる圧縮
    • 安かろう悪かろう・・・、からの脱却





グリーンの品質向上

  • 管理者の個人的な嗜好を排除し、来場者の求める状態を維持管理する。
    • グリーンスピード
    • 色調、芽数など





フェアウエイの品質改善

  • 芝密度の向上を目指す。
    • 平成15年夏のダメージの回復
    • 雑草防除




  • コースの美化・品質向上


  • 現状よりも、さらなる品質向上を図る。
    • ティグラウンド周辺
    • カート道・進入路など
    • 備品・看板類の整備
    • 林帯・OBライン等の整備





従業員の意識向上

    • 特に若手従業員の意識改革







平成16年度 コース管理作業基準



グリーン

  • 管理基準:ボールの滑らかな転がりを維持出来る表面品質の維持(継続)
    • 刈込:シーズン中は4.0〜4.3㎜の刈高を維持し、毎朝の刈込を行う(修正)
      • 必要に応じてグルーマーを使用して表面を仕上げる(継続)
      • グリーンモアは、薄刃を採用する(新規)
      • グリーンスピードは概ね8.5〜9ftを目標とする(修正)
      • 目土:2週間に1回の割合で、薄目土(0.1〜0.4㎜)を施す計算で12〜15回の施用を  目標とする(修正)
      • 表面の仕上げのため(硬度含む)0.1㎜程度の目土なども行う(新規)
      • 春秋のコアリング時に1〜2㎜程度の比較的厚めの目土も行う(修正)
    • 施肥:グリーンスピード、転がりを損なわない程度の少量・頻回の施肥を行う(継続)
      • N=15〜20g/㎡(修正)
      • NPKについては、200〜500㏄/㎡の溶液散布を行う(修正)
      • Ca・Mgを主体とした微量要素は80㏄/㎡の葉面散布とする(修正)
      • 夏季の施肥についてはアミノ酸・糖分を加用して80〜200㏄/㎡の葉面散布とする(修正)
      • 尿素・硫酸カリ・第一リン酸カリなどの安価な資材と糖分・アミノ酸系肥料との混合施用をさらに試験・施工 する(継続)
      • 肥料については農業資材の中で安価良質なものを、常に試験採用の意を持って調査・検討する(継続)
      • 微生物資材は、以下の資材を採用す流が、なお代替品の試験・採用に常に留意する(修正)
        • 採用する資材:×××× (それぞれ春秋の施用)
        • 保留する資材:××××
      • 施薬:観察・検鏡・同定を密に行い必要最小限の施用にとどめる(継続)
      • 梅雨季・夏季の予防散布は時期を逃さない(修正) 
      • 化学薬品による防除と合わせ、微生物資材との併用をさらに検討する(継続)
    • 更新作業:適期を逃さずに施工する(継続)
      • コアリング 3回 : 春(5月) 初夏(7月) 初秋(9月) (継続)
      • ディープサッチング 1〜2回 : 4〜5月 秋施工も念頭に置く(修正)
      • シャタリング 1〜2回 : 春(4月) (継続)
      • サッチング・グルーミング 適宜実施 (継続)
    • スズメノカタビラ対策:改修済みグリーンへの侵入防止のみでなく、未改修グリーンにおける、専有面積の縮小への試みを続ける(継続)
      • 土壌処理剤:×××× : 春秋 (継続)
      • 茎葉処理剤:×××× : 適宜 (継続)
      • 改修済みグリーンについては、グリーンモアを、他のホールと分ける。またカラーの刈込、目土の順番なども未改修グリーンに先んじて行う。時期を見て手取り除草を実施する(継続)
      • アプローチの防除の徹底(継続)
      • 新剤の試験・導入を念頭に置く(継続)





ティグラウンド

  • 管理基準:清潔感の演出・冬季以外の人工芝の使用日の減少(修正)
    • 刈込:使用するティグラウンドの刈込の優先など、効率的な作業を目指す(継続)
      • 野芝・高麗芝ティと洋芝ティの刈込に使用するティモアを分け、野芝・高麗芝ティへのスズメノカタビラなどの雑草に侵入を抑止する(継続)
    • 目砂:全面施工の回数を年間3〜4回とする(修正)
      • 全面施工の他、部分施工も状態により行いたい(継続)
    • 施肥:病害防除・徒長防止と、通年使用との兼ね合いを念頭に実施する(修正)
      • 尿素・硫安・硫カリなどの安価な資材の使用をさらに進める(継続)
    • 施薬:観察・検鏡.同定を密に行い必要最小限の施用にとどめる(継続)
      • 梅雨季・夏季の予防散布は時期を逃さない(修正) 
    • 更新作業:病害防除・徒長防止と、通年使用との兼ね合いを念頭に実施する(修正)
      • 洋芝ティ:状態により部分的な施工・播種など、頻回に行う(新規)
      • 野芝・高麗芝ティ:梅雨明け頃16㎜コアリングを実施する(継続)




 
アプローチ・フェアウエイ・ラフ  

  • 管理基準:18ホール全体で均一な厚いターフとすること(継続)
    • 刈込:来場者に与える美観に限らず、病害・雑草抑制等も念頭に置いて、週二回程度の刈込回数は確保する(継続)
      • 刈高は時期を見てこまめに設定する。春先・盛夏は例年より若干低めの設定とし、梅雨時期は若干高め、初秋より徐々に上げてゆく(修正)
      • プレーヤーの技量などに鑑み、全ホールの刈込の形状を再度検討、変更を行う(継続)
    • 施肥:有機系の肥料を主体に、病害防除、徒長防止を念頭に行う。(継続)
    • 施薬:殺菌剤に関しては、観察を密に行い、病原体などの診断を的確に行い、防除のための全面予防散布を減らし、薬量、回数共に軽減を計る。(継続)
      • ラージパッチの防除については、3〜4月に1回目の全面散布を行う(修正)
      • 硫安の施用によるラージパッチの発生についての試験を実施(継続) 
    • 更新作業:病害防除の観点から、芝の生育期に更新作業を実施する(修正)
      • アプローチ:梅雨明け時期(16㎜コアリング) (継続) 
      • フェアウエイ・ラフ:梅雨明け時期(スライシング) (修正)
    • 目土:特に芝の薄いホール(№10.12.15.18.等)に混合土による目土を更新作業と合わせて行えればよいのだが・・・(継続)
    • その他:ラフとカート道との境で痛みが激しい部分については、その都度補修を行う(継続)
    • 法面・OB線外への生長抑制剤の散布:春2回(5.7月)殺虫剤を混用する(継続)
    • !法面への生長抑制剤の撒布に付いては、施肥との兼ね合いをもう一度検討する必要がある(検討)





バンカー

  • 管理基準:プレーしやすいよう適度な堅さと、適当な砂の量を維持する(継続)
    • 砂均し:状態を観察し、こまめに行う。基本は手均しとする(継続)
    • エッジ切り・耕耘:過度の繁茂、固結状態を呈する前に実施し、年間を通じて、バンカーの縁や表面の状態にばらつきのない用にする(継続)





植裁・林帯

  • 管理基準:「管理上の手抜き」を感じさせないこと(継続)
    • 日照・修景・戦略性を考慮して管理(主に冬季)する。(継続案件)
    • 花木などの施肥・剪定を行い、季節ごとの花を咲かせ「見た目に楽しい」演出を行う(継続)
    • サツキ・ツツジアジサイの花後の剪定はなるべく早く行いたい(継続)
    • インバウンズでは樹木の下からでも打てるように枝打ちなどを行う。特に林帯(№2.2-16.9-18.)の整備を実施したい。(継続)
    • OB線と併設された防球ネット周辺は下刈りなどが行き届かず見苦しくなっているので、下刈り、伐採・枝打ちなどを実施して整備(主に冬季:№1.4.12)する(継続)
    • OB線外の伐採・枝打ち、下刈りを実施したい箇所(№1.13.14.18)についても管理費用--人員を考慮して経費・手間の増加にならない方法を検討してゆきたい(継続)
    • 長期的な計画として、コース内の樹種の変更をあげる。具体的には、檜、杉などの常緑針葉樹から、各種落葉広葉樹への変更となる。両種の、配置や季節毎の趣などを勘案して、漸次実施してゆきたい。(継続)





その他

  • 進入路:穴埋め、清掃などをこまめに実施する(継続)
    • カート道:穴埋め、枕木・縁石埋め込みなどの補修、清掃を随時行う(継続)
    • 排水側溝・横断排水溝等を整備・増設し、雨水の排水を徹底する(継続)
    • 花壇:PG(箱根).№4.6.17.の4箇所については、多年生の植物を植え込んで管理コストの削減を計ってゆきたい(修正)  










なんて事なんですが、いやぁ 改めて読み返して、
あの頃は なんて真面目だったんだって、思わず遠い目になっちゃうよ。


まぁ 当時こういうものを拵えて、いったい どのレベルでコースを維持管理出来るのだろうか、あるいは どのレベルを目標にしようか、の基準を自分なりに考えてみていたわけです。
貧乏で ろくに手も入れて貰えないで、可哀想に がたがたになっちゃったコースだけど、何とかしたいよね、
現状から少しでも 上へと行きたいよねぇ、
なんて一人で悶々としていたんです。


でも これ、真面目に考えるほど、ある一点がクローズアップされてきて、やればやるほど虚しくなってくる。
だって これ、本来キーパー一人で行う作業ではない と思いませんか。






話を 戻しましょう。


いったい どのレベルでコースを維持管理しようか、あるいは どのレベルを目標にしようか、
と云うこと。
それを考えるには、


管理予算(資材費・人件費)
キーパーのレベル
現場作業員のレベル
現状のコースのレベル
コースの所在地の気象的・地理的な特性
営業の体制(メンバーシップ・パブリックの別の他、来場者のニーズやレベル)
営業の方針


そんなものを全部ひっくるめた上で 落とし所を決めてゆかなければならないはずです。
キーパーが一人で、



目標



戦略

  • 眺望と景観を重視したコース造り。アスリート系のゴルファーよりは むしろ散歩や散策を楽しむ感覚でのプレーヤー向けとなるように意識する。
  • 基本的なターフメンテの充実。競技仕様のセッティングではなく、コースの相対的なライン取りやシルエットを重視する。




なんて決めて 勝手に動いていいはずのものではありませんでしょ。
まぁ、当時はそれを勝手にやらせてもらっていたんですがね。
そう云う意味では、国内に 二人と居ないほど恵まれていましたよ。本当に。
だって、いままでそこいら中に書き散らしてきましたが 本当にやりたい放題だったもん。


でも、それは本当の姿じゃぁ ないんじゃぁないの。
と云うことです。
――――――――今これを書きながら、こんな事 自分から云わないでおいて、ずっと好き勝手をやらせてもらっていた方が楽だし 楽しかろうなぁ、なんて 少し後悔もしておりますが、何時までも今のままで良いわけもないのも事実ですし・・・・・・






独り勝手に Bゴルフ倶楽部と云うコースの“あるべきよう”を拵え、現場に反映させながら、
コースの“あるべきよう”は、倶楽部として検討し作り上げるのが本筋ではないのか、
何せ、18ホールを好き勝手に弄くれる楽しさ。
やればやっただけの成果が自分の眼には見えるし、その先のことも見えてくるようになってきます。日々の仕事に没頭しながら 実はしかし、そんなジレンマも抱えていたのは事実です。






そも――――――――


と続けたいところですが、今日はこのくらいで勘弁して下さい。












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