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2017-04-05

絵文字がMoMAに収蔵されるまで。

僕が手がけた絵文字がニューヨーク近代美術館MoMA)に収蔵されるというニュースが、2016年10月26日、世界を駆け巡った。

第一報はニューヨークタイムズ。その前週にMoMAから10月24日週にアナウンスがあると連絡を受けていたので、僕は深夜にほぼリアルタイムでそのニュースを見つけた。
The New Times(2016/10/26)
MoMA Acquires Original Emoji

ついでロサンゼルスタイムスの見出しに興奮する。「絵文字が近代美術館でゴッホピカソの仲間入り」というのは最大級の賛辞だと思う。
Los Angels Times(2016/10/26)
Emojis join Van Gogh and Picasso at Museum of Modern Art

日本では27日の朝、NHKニュースを皮切りに各媒体で紹介された。それから国内外から取材の申し込みがあった。絵文字がMoMAに収蔵されたことを報じるニュースや僕が絵文字について受けた取材について、以下にまとめておこう。

MoMAオフィシャルリリース (2016/10/27)
The Original Emoji Set Has Been Added to The Museum of Modern Art’s Collection

ケータイWatch (2016/10/27)
絵文字、ニューヨークMoMAのコレクションに

IT Media(2016/10/27)
NTTドコモの初期の絵文字がニューヨーク近代美術館のコレクションに

iPhone Mania(2016/10/27)
ドコモが開発した絵文字、ニューヨークMoMAの永久収蔵品に!

garape (2016/10/28)
ドコモの絵文字→世界の『emoji』に ニューヨーク近代美術館に収蔵される快挙!

BuzzFeed(2016/11/8)
ドコモの絵文字、MoMAに収蔵 「すごいことすぎて現実感が…」生みの親の思い

毎日新聞(2016/11/29)
「絵文字」こと始め

i-D Japan(2016/12/9)
MoMA永久所蔵品「絵文字(emoji)」を作った男

日テレNEWS24(2016/12/13)
ニューヨーク近代美術館に「絵文字」展示

ケータイWatch(2016/12/22)
MoMAに収蔵された「絵文字」の“父”、栗田氏が語った開発当時のエピソード

AFP通信(2017/1/3)
絵文字がMoMAに、生みの親「歴史に残った栄誉」を喜ぶ

note 古川健介『TOKYO INTERNET』(2017/1/18)
なぜ日本が世界共通語「Emoji」を生み出したのか、そしてその影響とは

Difa(2017/1/20)
“The Original Emoji”生みの親・栗田穣崇さんに訊くモバイルコミュニケーションの未来 &「今年の絵文字」描いてもらいました!

ABC(2017/2/11)
Emoji inventor Shigetaka Kurita says MoMA New York acquisition ’feels like a dream’

産経ニュース(2017/2/17)
世界に広がった「emoji」 未知のサービス「行ける」と確信


絵文字がMoMAに収蔵されるきっかけは、2015年4月28日に僕のFacebookメッセンジャーに届いた一通のメッセージだ。奇しくもその日、日米首脳会談に先立つホワイトハウスの歓迎式典で、オバマ大統領が「カラテカラオケ、マンガ、アニメ、エモジ」といった日本語を披露米国の若者らは日本のポップカルチャーが大好きで、それに感謝する良い機会でもあるとスピーチをしたばかりだった。
オバマ大統領が日本の”マンガ、アニメ”に感謝の意を表明!?  欧米のオタクからは歓喜の声

僕はちょうど連休で京都に旅行に出かけており、旅先でそのニュースの知らせが友人から届くとともに、TV局からも電話取材が入る慌ただしい日だったのだが、" From The Museum of Modern Art, New York_Tentative acquisition_First set of 176 Emojis" という書き出しではじまるメッセージが届いたとき、「えっ!?MoMAから?」と目を疑った。海外で絵文字熱が高まり、FacebookTwitter一般の方から「ホットドッグの絵文字を追加して欲しい」と言ったリクエストめいたメッセージや、海外メディアからの取材申し込みは頻繁に来ていたものの、まさか美術館からお呼びがかかるとは絵文字の仕事をしてこの方、予想だにしていなかったことである。

メッセージはMoMA学芸員Ms.Michelle Millar Fisherからで、「シニアデザインキュレーターMs.Paola Antonelliが176のオリジナルの絵文字をMoMAのコレクションとすることについて、6月の理事会に提案したいと考えている。ついてはあなたとそれについて議論したい」というものであった。僕は旅行中であることを取り急ぎ告げ、東京に戻り次第改めて連絡を取り合うことを返信した。

僕が絵文字を開発した当時、もちろん意匠登録をはじめとした権利取得の可能性にについてはドコモ知財部に相談したのだが、1998年時点で、12ドット×12ドットで作られたデザインについて権利を取得することは難しいという判断がなされ、少なくとも僕が担当していた間は権利を取得しなかった。知財部の見解として、12ドット×12ドットは表現力が乏しく、この環境下でデザインされたものについて、それがユニークだと判断されることは難しいだろう、つまり12ドット×12ドットで太陽をデザインしても、それにさほどのバリエーションが生まれないだろう、ということだった。結果論ではあるが、初期に権利で縛らなかったことは絵文字の普及においてプラスに働いたと思っている。ただその後、液晶のドット数が増えたどこかのタイミングでドコモが権利を取得している。

MoMAから連絡を受けた僕は、ドコモで絵文字周りを担当していた山口朋朗さんに2015年5月11日にメールを送り、本件について協力をお願いした。知財部にも確認を取ってもらい、MoMAに展示するだけであれば特に何の問題もない、との回答をいただき、MoMA学芸員との交渉についても引き継ぎをお願いした。

のだが...そこからドコモMoMAの交渉は1年半の長きにわたる。聞いたところによると展示ではなく収蔵ということ、絵画や彫刻のような形のあるモノではなく、デジタルデザインということであまり前例がなく、両者のやりとりにかなりの時間を要したとのこと。ドコモとの交渉を行った学芸員のMr.Paul Gallowayにニューヨークでこの件について話したら、かなりハードなネゴシエーションだったそうで、本人曰くもう2度としたくないなあ(笑)とのことだった。「MoMAのデザインショップに絵文字グッズを置いたりしないのですか?」という僕の質問に、彼は「それはまたドコモと別の契約をしないといけないからなあ。ぜひ誰か他の人がやって欲しいな。」と答えていたので、本当に大変だったのだろう。。。

こうして絵文字がMoMAに収蔵された。なお現在、別の美術館にも絵文字を収蔵すべくネゴシエーションが続いている。そちらは僕のスケッチなども収蔵されるようだ。

次は、実際に僕がニューヨークMoMAに絵文字の展示を見に行った話について書きたいと思う。

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