チキン南蛮

トップページの「好きなもの」の欄に「チキン南蛮」という記述をしている。これは、宮崎県民かampmの大ファンでないと知らないだろう。説明が必要である。
チキン南蛮とは宮崎県発祥の料理である。肉厚な鶏肉にころもをつけてさくさくに揚げる。ここで、ころもが少なすぎてはいけない。後述のたれを染み込ませるためには、ある程度の厚さが必要なのだ。チキンカツとは少し違う感じだ。こまかくツノがでた揚げ方ではなく、大きくころもがたつように揚げてもらうのが一番好きだ。ampmのチキン南蛮は小さな鶏のから揚げを使っているが、宮崎本場のやつは大きいかたまりを揚げて切っていくという、とんかつ方式を採る。
揚げあがった肉は、タレに一度通す。このタレが完成時のうまみに大きなウエイトを占める。店や家庭によってさまざまなバリエーションがあるが、ここでは私が一番好んで口にしたタレを紹介する。といっても、私は専門的な料理や隠し味には疎いので細かいことはわからない。とにかく、甘酸っぱい味なのである。少し、すっぱすぎるくらいでもいい。あまり染み込みすぎず、だからといって、単調なころもの味で飽きさせるようではいけない。いい具合にここで下味をつけてもらいたい。
次は、肉の上にかけるソースだ。基本的にはタルタルソースがかけられる。これもいろいろな種類があるが、だいたいはタマネギのみじん切りの歯触りが残る程度がよい。もちろん、タマネギが苦手な人でもタマネギの臭みは完全に消えているので大丈夫だ。これが多すぎてはいけない。もともと鶏肉は味が強い方ではないので、タルタルソースはあくまでも引き立て役に徹してもらう。でしゃばりすぎてはいけないのは人間の世界同じだ、私も心がけなければ干される。
キャベツの千切りか、野菜の千切りを添えて盛り付ければできあがりだ。タレの甘酸っぱい香りが食卓に漂う。タルタルソースの甘い匂いの鼻をくすぐる。切り込みを箸で開いてやると、もわもわと肉の蒸れた湯気が立ち上る。タルタルソースを薄く広げて肉をつかみ揚げる。切り口からはうっすらと鶏肉の少ないながら肉汁が滴り落ちる。ああ、いけない。うまみを逃してはいけないといったのは私自身ではないか。理屈はもう口に出さずに代わりに肉を押し込んでやる。いや、そんなに義務的な響きは似合わないし、そぐわない。口の方が肉へと向かう。必然であるとは言いすぎにはならない。
……、御飯はすっぱいものに合うと思う。逆に甘いものとは一緒に食べたくはない。しかし、その両方の性質をもつチキン南蛮はどうかというと、それはそれは、御飯に合うのである。あまりに勢いよく食べ過ぎて、口の中を火傷したことはもう何回か。それは私がはやりやすい性格をしているからである。上京してからチキン南蛮を食べていない。ampmのやつは食べてみたが、宮崎の味がなおさら恋しくなっただけである。新宿の宮崎館には置いてないようだ。仕方がないから、鶏のから揚げを買ってきて、タレもソースも作って、自作のチキン南蛮を食べてやろうと思う。ampmには負けないように。

追記(2003・11・28)
今はampmでチキン南蛮は扱ってない模様。ほっかほっか亭にはまだあるんだっけな。