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simmel20の日記

 pv(ページ訪問者)数は、2017年8/7(月)〜

2018-08-17

左翼〈尊王攘夷派〉の擡頭

15:28

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 アゴラ研究所社長で学術博士の池田信夫氏の近著『丸山眞男と戦後日本の国体』(白水社)では、まず「国体」の語をめぐって議論の足場を固めている。

 明治憲法は日本の「国体」を求めるものだといわれたが、その意味ははっきりしない。それが「万世一系天皇による支配」という含意をもったため、戦後は使われなくなったが、日本国憲法も別の意味で国体と呼ぶことができる。Constitution(憲法)の本来の意味は、司馬遼太郎のいう「国のかたち」であり、国体という訳語がふさわしい。その本質は法律の条文ではなく、それを取り巻く制度と解釈の体系にある。(p.52 )

 1958年結成された憲法問題研究会は、その焦点は「第九条ではなく、第一条の国民主権だった」。いっぽう同年憲法改正のために政府が発足させた憲法調査会も、結局憲法の三原則ー国民主権人権・平和を守るという方針を打ち出した。

 結果的には、この一九五八年が戦後政治の分水嶺だった。当時は自民党憲法改正を党是として掲げていたが、改正は不可能になった。その代わり保安隊は自衛隊になり、安保条約は改正されて、高度成長の中で憲法問題は風化した。その結果、表では平和憲法によって諸国民の公正と信義に信頼して国を守るが、裏では日米同盟という超越的な権力の支配する戦後日本の国体ができた。(p.85 )

 この最後のところの「表の国体・裏の国体」の認識は、篠田英朗東京外国語大学教授の『ほんとうの憲法―戦後日本憲法学批判』(ちくま新書)の見解と重なる。ところが現代の思想潮流として、この認識を共有しながらも、戦後燻り続けていたルサンチマンに訴えて、いわば〈尊王攘夷〉を志す主張が擡頭しているらしい。滑稽といえば滑稽である。

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20170717/1500294313(「篠田英朗『ほんとうの憲法―戦後日本憲法学批判』(ちくま新書)を読む:2017年7/17 」)

『週間読書人』8/10号の綿野恵太氏の「論潮」は、白井聡氏の『国体論』(未読)と対米従属論の流行について論じている。……白井聡国体論』(集英社新書4月)が売れているそうだ。対米従属論はもちろん昔からあったが、近年の「左」への浸透ぶりは目にあまるものがある……との書き出しに惹かれて、ふだんはベストセラー本などほとんど興味はないのだが、思わず全文を読んでしまった。この著者に関しては、左翼系の東京新聞が祀り上げた記事を書いていたので、その議論の大筋はわかっているつもりである。綿野氏は「当時一読して、加藤典洋敗戦後論』の焼き直しですらない、といった感想しか持たなかったが、驚いたことに多くの読者から新しい議論として支持され」、とくに反〈アベ〉寄りの読者から支持されたとしている。

……市民社会ヘゲモニーを獲得した(かにみえた)米軍基地問題や原発問題において敗北を喫したこと、その敗北の理由をアメリカに求めたことが、戦後民主主義はまやかしだとする対米従属論に「左」を向かわせたわけだ。対米従属論の流行と市民社会への絶望は表裏一体なのだ。

 野党共闘のような「市民社会の陣地戦(アントニオ・グラムシ)」でたとえ一時的に勝利しても、「軍隊原子力にかかわる政策が複数の国家の協力や対立のなかで決定される以上、一国の市民社会ヘゲモニーを獲得しただけでは大きな転換はできない」。

 【ビジネス解読】韓国、酷暑で崩れた「脱原発」政策 無節操な文在寅大統領に国民も首かしげ…(1/4ページ) - 産経ニュース

 韓国の教訓を福島に伝える――韓国における甲状腺がんの過剰診断と福島の甲状腺検査 / Ahn hyeong教授・Lee Yong教授インタビュー / 服部美咲 | SYNODOS -シノドス-

 

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20160330/1459322932(「小谷野敦『なんとなく、リベラル』(飛鳥新社)を読む:2016年3・30」)

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20160422/1461317835(「浅羽通明『「反戦脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』(ちくま新書)を読む:2016年4/22 」)

 

2018-08-15

『ミス・シャーロック』(Hulu配信)は、シーズン2を待望

17:54

 Hulu×HBO Asia共同製作ドラマ「ミス・シャーロック/Miss Sherlock」公式サイト|フールー

 『ミス・シャーロック』(Hulu配信)は、Episode1~8構成の連続ドラマ。多くの視聴者が感想として抱いたであろう、荒唐無稽さに目を瞑るとすれば、なかなか面白かった。コナン・ドイルの原作を基に、場所を現代の東京に設定している点で、シーズン5までWOWOW放送のアメリカCBS連続ドラマ『エレメンタリー ホームズワトソン in NY』と比べられよう。『エレメンタリー』では、元外科医のワトソンジョーン・ワトソンで女性(ルーシー・リュー)、『ミス・シャーロック』では、(橘)和都さん(貫地谷しほり)、同じく女性。名探偵シャーロックは、『エレメンタリー』では原作通り男性(ジョニー・リー・ミラー)で麻薬中毒に陥っているところは原作のシャーロック・ホームズに近い。『ミス・シャーロック』の名探偵シャーロックは、女性(竹内結子)で、孤独と無聊を癒すべくヴァイオリンではなくチェロを弾く。シャーロックの徹底した合理主義者ぶりは、かつて日本テレビで放送した、竹内結子主演の連続ドラマダンダリン・労働基準監督官』のヒロインの延長線上にあるキャラ設定である。ハマっている。

 https://dramanavi.net/news/2017/12/201868.php(「2018年放送開始の『エレメンタリー』シーズン6、8エピソードの追加が決定」)

 ダンダリン 労働基準監督官|日本テレビ

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20131008/1381215970(「浅草ジンタのミーカチント(6月脱退)讃:2013年10/8 」)

 貫地谷しほりは娘役、竹内結子は男役と考えれば、これは宝塚なのである。和都さんは、拷問に耐えたり、洗脳により魂を喪失して彷徨したり、ジョン・ケアード演出の『ハムレット』の舞台で狂気のオーフィリアを演じた貫地谷しほりの見せ場も多い。

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20170413/1492094854(「ジョン・ケアード演出ハムレット』:2017年4/13」)

 シャーロックの宿敵モリアーティ教授は、『エレメンタリー』では何とホームズが愛した女性画家だったが、『ミス・シャーロック』では心理カウンセラー入川真理子(モリワキアキラ:斉藤由貴)、この正体はすぐにわかった。WOWOWで現在放送中の連続ドラマブラインドスポット タトゥーの女』でも、心理カウンセラーの男がテロリスト一味のリーダーの一人であった。シャーロックが劇中弾いたバッハ無伴奏チェロ組曲1番:プレリュード」は、物語の多層的な構成を暗示しているのだろうか。

 謎多きチェロの聖典  バッハ「無伴奏チェロ組曲1番」よりプレリュード | 『?鏡花水月 ?』

 ともあれシーズン2のHulu配信を待望したい。

 「ミス・シャーロック」竹内結子ら朝ドラ女優3人の大熱演が日本の配信ドラマの未来を切り拓いて完結 - エキレビ!(1/3)

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         (『ミス・シャーロック』公式サイトより拝借

 

 

 

文士と伝統文化

12:26

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 「特集・三島由紀夫澁澤龍彦」巻頭の三島由紀夫文学館レイクサロン講演記録が面白い。講師は、若き三島由紀夫の恋人であった後藤貞子さんと、亡き中村歌右衛門を通じて今も交流の続いているとの、ハコちゃん=岩下尚文(ひさふみ)國學院大学客員教授で、演題は「三島由紀夫の観た梨園花街」。「はっきり申し上げますと、客席で見ているだけでは、たとえ何十年のあいだ見続けたとしても、芸の理解は深まりません。見る側の身体の中に、芸を受け取る基準がありませんからね」との認識が基底にある。それはそうだろう。サッカーボールを蹴ったこともなく、とうぜんゴールを狙った体験もない人がサッカーについていくら薀蓄を傾けても、説得力はあるまい。もっとも解説となると、己の修練に裏打ちされた身体的直感を表現することばをもたないと、野球長嶋茂雄とか村田兆治サッカー木村和司とかのように、視聴者には何が言いたいのか伝わらないことも事実である。さらにしつこく、ピアノヴァイオリンも弾けない人が音楽の批評をしても、愉しさと苦渋は十全には感じられない。納得できる。

 三島由紀夫は、その育ちの上からも、長唄浄瑠璃に舞踊などの遊芸に身をやつすことは許されませんでしたから、何の稽古もせぬまゝにひたすら劇場の椅子に坐ることで、いたずらに目ばかり肥えてしまったようです。

 花柳界文士についての指摘も初めて知った。むろん作品の価値とは関係ないが、参考にはなった。

 まあ、三島由紀夫に限らず、明治大正の頃から、新橋や赤坂の一流どころには文士の立ち入りは許されなかったわけで、中では金を使った形跡のある荷風でさえ、その『腕くらべ』を読んでも、妻にした芸者の格を見ても、小待合専門の遊びであったことがわかります。これが敗戦後になりますと、いっそう縁が離れまして、赤坂や祇園で自前で遊んだのは里見弴や吉井勇くらいなもので、それでも大茶屋で宴会をするという形での上客ではなく、芸者から見ればお友だちという扱いでした。まして谷崎潤一郎舟橋聖一になると、出版社の御馳走や賞の選考などで偶に出入りをするくらいだったと、新橋の老妓から聞いておりますし、貞子さんも同じ意見でした。

 却って流行作家のほうが、一時的にせよ、お茶屋のお客にはなり得たようですが、それも政財界のお馴染みさんから見れば、やくざで、頼りにはなりません。文学者の書くものに、一流の料亭を描いた場面の無いことからも分かります。『追儺』を読むと、世間的な地位のある鷗外でさえ、新喜楽に招待されて、ものめずらしそうに、あたりの様子をうかがっているのですから。

 

 

2018-08-14

蒟蒻の軍事的利用

12:09

f:id:simmel20:20180814114558j:image(『しほりのおしゃべり工房』から勝手に拝借

 スタッフブログ「NHKオーディオドラマ 73年前の紙風船」 | 貫地谷しほり オフィシャルブログ『しほりのおしゃべり工房』 powered by アメブロ

 昨日8/13(月)は、『NHKらじる★らじる』でオーディオドラマ「73年前の紙風船」(8/11放送番組)を聴いた。

 73年前の紙風船 | NHK オーディオドラマ

 貫地谷しほり瀬戸康史とのW主演のドラマなので、「聞き逃し」配信で聴いた次第。8月における日本メディアの風物詩ともいうべき戦争の残虐さを訴え、平和の中での静かな生活と〈小さな夢の美しさ〉を対比的に描いた物語。貫地谷しほりCA役というのもラジオドラマならではだろう。

 風船爆弾=気球爆弾の材料が和紙と蒟蒻(糊)であったとの話には驚いた。よくアメリカ大陸まで飛行できたものだ。

 【珍兵器】和紙と蒟蒻が兵器に?米軍を恐怖させた驚異の秘密兵器 - NAVER まとめ

『置文』41号掲載の中川三郎氏の口述生活史風の創作「寒天のお話―母のオーラルヒストリー」では、細菌兵器製造のため、寒天ペスト菌コレラ菌を植えつけるための培養基として利用された話が書かれていた。蒟蒻とか寒天とか、まるでおもちゃの兵隊のようである。反戦ステレオタイプのように描くのではなく、日本的組織の決定過程を社会科学的に分析することのほうが重要であろう。

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20180603/1527997355

             (「『置文』第41号発刊:2018年6/3 」) 

2018-08-12

ビブリオマニア

18:57

f:id:simmel20:20180812181109j:image(『東京新聞』「大波小波」6/16)

 さっそく(?)『三島由紀夫研究18』(鼎書房)をamazon経由で注文、新品にしてすでに希少本、価格5600円であった。

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 責任編集の一人、山中剛史氏は三島由紀夫研究家として知られた研究者であるが、かつてビブリオマニアとしての、そのネットでの蒐集の日録に驚嘆したものである。わがPCを買い換えてからHP訪問が叶わなくなり、以降久しく消息を知ることはなかった。昔わがHPに公開した所蔵の江戸川乱歩の限定署名本『犯罪幻想』について、「羨ましい」と氏のHPコメント欄に書かれたことがあり、また三島由紀夫晩年の弟子の鴻みのるさんのエッセイ「主なき書斎の中で」(『父と母の昔話―96年版ベスト・エッセイ集』(文春文庫)所収)について紹介したところ、喜ばれたことも思い起こす。

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110421/1303352272(「競馬の友を偲ぶ:2011年4/21 」)

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 新妻聖子がルネを演じた、東京国立博物館講堂を会場にした『サド侯爵夫人』(2005年11月)の観劇で、最前列に坐っていた氏をお見かけしたことがある。

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 さて「三島由紀夫澁澤龍彦」特集を読んで見ることにしよう。8/5(日)は、澁澤龍彦祥月命日であった。鎌倉浄智寺には展墓の麗人が訪れたであろうか。


 

2018-08-08

俳優津川雅彦の逝去を悼む

17:09

 俳優の津川雅彦さん死去 「狂った果実」「マルサの女」:朝日新聞デジタル

 「死はもう怖くない」津川雅彦が車椅子、鼻チューブ姿で語った覚悟 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

 わが贔屓の貫地谷しほりと、次男と同じ自動車教習所運転修行した嵐・相葉雅紀共演の連続テレビドラマ『バーテンダー』で、ホテル王を演じたときの津川御大は魅力的であった。

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110319/1300527430

    (「『バーテンダー』というカクテル2011年3/19 」)

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110402/1301740981

    (「『バーテンダー〜Bartender〜』というカクテル(2):2011年4/2 」)

 津川雅彦の叔父で、『昭和残侠伝』のマキノ雅弘監督の墓があり、その父牧野(マキノ)省三の銅像が建つ京都等持院は好きなお寺である。ご冥福を祈りたい。

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20161029/1477743657(「マキノ雅弘等持院足利尊氏2016年10/29 」)