花見で問題行動は

 昨今、問題校長や問題医師あるいは問題僧侶などの行為が世間を騒がせているようであり、また異国では問題副操縦士が悲劇的事故を生んでいるとのことである。季節は春、花見のシーズンを迎えた。職場単位の花見は、準〈職務〉的行事なのかもしれない。こちら退職の身で切実性は皆無であるが、会社員の問題行動について知的(痴的?)関心から考察したい。
 花見での問題行動といえば、酒の勢いに任せた喧嘩と痴漢行為であろうか。この2月に上梓された、弁護士倉重公太朗編集代表『問題社員対応マニュアル上・下巻』(労働調査会発行)を参考書としよう。使用者側の立場で解説されているので、解決の道筋が掴みやすいといえるだろう。

【喧嘩について】
 同書では、職場内での社員同士の喧嘩の場合について解説している。「客観的に見て事業執行行為と評価できる行為と暴行との時間的場所的な密接関連性が認められるかどうか、暴行が生じた原因と事業執行行為との密接関連性が認められるかどうかを判断する必要」があり、「両者が充足すれば、会社は社員間の喧嘩について使用者責任を負う」ことになる。なお喧嘩の両者(おそらく複数の場合も)、日常の互いの態度から喧嘩発生の「予見可能性」がある場合は、使用者側は、配置転換、不可能の場合には注意・指導や懲戒処分などによって結果回避義務を尽くすことができる。さて社員の懲戒処分をめぐっては、「いかなる理由があっても暴力を許さない」との姿勢を示したうえで、一度目の喧嘩であれば「重くない懲戒処分を課し、それにもかかわらず再度喧嘩した場合には重い懲戒処分を課すのが適切」とある。「やむにやまれぬ大和魂」のひとも、一発のパンチぐらいで止めておくべきということになる。
【痴漢行為について】
 休日における痴漢行為について解説している。会社員は、職場単位以外に学校の同窓、友人たちとの花見に出かける機会もあるだろう。雑踏と混雑に乗じて、痴漢行為になど及ばないことが肝要である。さて同書によれば、痴漢行為とは、法的には都道府県の迷惑防止条例違反の場合と、刑法176条の強制わいせつ罪にあたる場合と二つあるとのことで、痴漢の程度としては、後者のほうが悪質であるといえる。この痴漢行為が懲戒処分の対象となるかどうかは、使用者は「それが企業秩序や職場規律にいかなる支障を与えたかについて検討した上で、懲戒処分の可否や程度について慎重に判断することが必要」としている。「初犯であって、常習性もなく、身柄を拘束された期間も短く、報道もなされておらず、示談が成立し、本人が深く反省しているというようなケースでは、懲戒処分の可否については慎重に考えるべきである」といえる。なお同書では触れていないが、刑法174条の公然わいせつ罪に相当するような振る舞いも、おそらく同じ扱いの対象となるのだろう。


⦅写真は、東京台東区下町民家の花海棠 (はなかいどう)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。コンパクトデジカメ使用。⦆