日本の未来は?

Newsweek日本版』8・15/22号(CCCメディアハウス)では、「2050日本の未来予想図」を特集している。お盆中に、長男夫婦がショッピングとアニメ映画鑑賞のためということで、ほぼ一日孫二人(4歳の男の子と1歳5ヶ月女の子)を預かりその〈接待〉で悪戦苦闘しつつ大いに楽しんだこともあり、日本の未来について関心をもたざるを得ない。
 グレン・カール氏(元CIA諜報員)は、「日本を待ち受ける2つの未来」と題して、アヘン戦争敗戦(1842年)以降「中国が歴史上最も弱かった期間」「日本が一貫して優位に立つ特異な状況が続いた」が、今後は、「大陸中国こそが超大国で、日本は周辺に位置する中等国という千年来の力学が復活するだろう」と予測している。そして日本の今後の地位を決める3要素を挙げている。
1:地理的制約 中国は地理的大国で、この30年で「日本を昔ながらの中規模島国に押し戻した」。これから日本は、「インドに接近していくのは確実だ」。
2:人口動態 世界最低レベルの出生率の日本は、「縮みゆく大国」で、「自衛隊の維持強化に必要な人材の確保にも苦労するだろう。もちろん経済活動の担い手も、高齢者の介護に必要な人材も足りなくなる」。
3:人的要因「アメリカを頂点とする世界秩序がこのまま続くのか」、それとも「中国を世界の中心とする二国間の朝貢外交が主流となるのか」、「アジアと世界の秩序の在り方は、おおむねアメリカと中国の指導者が決めることになる」。
 デービッド・アトキンソン氏(小西美術工藝社社長、元ゴールドマン・サックス金融調査室長)は、「先進国陥落は間近・戦後幻想の終焉」において、人口減少社会にあって経済を維持するためには、先進国で最下位レベルの生産性の向上で乗り切るほかないのに、生産性向上への意識が低く、経済の変化に賢く対応できない経営者の意識改革が必要であることを訴えている。
……日本社会が改革に弱いのは、特に60代以上の世代を中心に、戦後の成功をベースにした日本経済優越主義者が多いからだ。改革の必要性を感じていないどころか、否定ばかりする。日本経済の現実を冷静に分析し、それに基づく改革を着実に実行することが急務だ。……

 アンキット・パンダ氏(ディプロマット誌シニアエディター)は、「高齢化に少子化・人口減少で社会はどうなる」と題し、人口減少の日本で、人口過密状態の大都市圏に移動する人口がさらに増えていき、出生率が下がると、「日本の力を維持する責任は高齢者にのしかかる」としている。未来の高齢者の方々、ごくろうさん!「社会制度を改革し、定年延長を奨励し、健康状態の改善のための研究開発に投資する必要がある」とのことである。
 辰巳由紀氏(キャノングローバル戦略研究所主任研究員)は、『「普通の国」日本の戦争できない未来』において、16年3月に施行された現行の平和安全法制は、14年7月閣議決定の「限定的範囲での集団的自衛権行使」を前提に立法されているので、憲法改正後でも法律で認められる自衛隊の活動範囲は限定されていて、そして自衛隊の活動範囲が劇的に拡大されているわけでもない、としている。しかし本当に重要な問題は憲法上の地位以外のところに潜んでいるのである。少子高齢化の加速が国防や自衛隊に与える影響のほうが深刻だということである。高齢化による社会保障予算の増大、少子化による自衛隊の「基礎体力」となる10代後半〜20代半ばの人口の減少にどう対処できるのかという問題である。
……2050年の国防を考えるときに議論すべきは「日本が戦争をできる国になっているのか」どうかよりも、むしろ、「必要な防衛力を維持できるだけの人口と国家財政が33年後の日本にあるか」かもしれない。……