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中西理の下北沢通信(旧・大阪日記) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-01-20 地点「ロミオとジュリエット」@東京・早稲田大学大隈記念講堂

[]地点「ロミオとジュリエット」@東京早稲田大学大隈記念講堂大講堂

英・グローブ座からの依頼で制作された『コリオレイナス』に続く地点のシェイクスピア第2弾。

若い二人の恋は、政治宗教への挑戦だった!?

バンド空間現代」の音楽とともに送る、「愛」という名の政治劇!!


作:ウィリアム・シェイクスピア

翻訳中野好夫

演出三浦

音楽空間現代 

出演:安部聡子、石田大、小河原康二、窪田史恵、河野早紀小林洋平田中祐気

 地点「ロミオとジュリエット」@早稲田大隈講堂大ホール観劇。地点のような劇団をけなすには勇気がいるが、今回は評価できないなと思う。空間現代とのコラボライブとしてはカッコいいけどロミジュリでこれをやる意味が分からない。こういうことを書くと地点の前衛手法理解できない石頭の馬鹿みたいに見えかねないのだが、もちろんそういうことを批判しているのではない。

 今回の「ロミオとジュリエット」と類似手法、つまりテキスト断片化とその再構築だったがKAATで上演された「三人姉妹」は大傑作だった。それは断片化されたテキスト原作の順序を無視して並べ替え物語破壊しながらも「三人姉妹」という作品本質登場人物らが感じている時代の閉そく感に鋭く迫り、作品から純度の高い本質抽出した舞台に見えたからだ。

 残念ながら今回の「ロミオとジュリエット」にはそれがない。少なくとも私にはそうした何かは感じられなかった。そのためにシェイクスピアテキストの断片を音楽に乗せたライブ、あるいはボイスパフォーマンスのようにしか見えなかった。「ロミオとジュリエット」はおそらくバレエなども含めればシェイクスピア作品の中でもっとも多い本数を見てきた作品であり、しかも私にとっては大学入学後にシェイクスピアシアターによる上演を最初劇場で見たというこだわりも強い作品ということもあり、それゆえ個々の作品への評価は辛くなりがちだということはある。そうであるからこそ、地点ほどの劇団が上演した作品としてはどうだろうと思ってしまったのだ。

2017-01-18 木ノ下歌舞伎「娘道成寺」「隅田川」(2回目)

[]木ノ下歌舞伎娘道成寺」「隅田川」(2回目)@こまばアゴラ劇場

娘道成寺演出振付・出演|きたまり(KIKIKIKIKIKI)

隅田川]共同演出|白神ももこモモンガコンプレックス

隅田川]共同演出|杉原邦生(KUNIO)

隅田川]共同演出木ノ下裕一

隅田川振付・出演|白神ももこ

監修・補綴|木ノ下裕一

美術|杉原邦生

2017-01-16 青年団自主企画vol.68 ハチス企画「木に花咲く」@アトリエ春風舎

[]青年団自主企画vol.68 ハチ企画「木に花咲く」@アトリエ春風舎


作:別役実

演出:蜂巣もも

出演:串尾一輝山本雅幸、小寺悠介、南波圭、植浦菜保子、田中孝史、吉田美貴

 別役実戯曲青年団演出所属の蜂巣もも演出した。平田オリザ流の現代口語演劇ではないにしても別役のテキスト本来会話劇であって、これまで見た多くの舞台ではそういう演出ないし、演技体で上演されたものが、ほとんどだった。それゆえ、今回の「木に花咲く」は別役作品の上演としては相当に異色な部類に入るのではないかと思う。

 実際にあった朝倉少年祖母殺害事件(孫による祖母殺害事件)を基にした一種の家庭劇だ。室内を模したセットでの会話劇として上演されるのが普通だと思うが、ハチ企画版では下手に大きな桜の木、ほかにも舞台狭しと花の咲いた桜の枝が林立しており、どこか幻想的な架空空間を思わせる舞台装置

 俳優の演技もこごもったような作り声で祖母役を演じる串尾一輝をはじめ、リアルさはみじんもない台詞回し。会話劇では話し相手の方を向いて演技することが普通だが、どの俳優もほぼ正面を向いてしかも朗々と語るというのではなく、聞き取りにくいような発声法もごもごと話すこともあって最初の内は気になって仕方がなかったほどだ。

木に花咲く―別役実戯曲集

木に花咲く―別役実戯曲集

 そういうのは見ているうちに次第に慣れてきて気にならなくなってくるのだが、それでも別役実テキストをこういう怖い昔話のようにモノローグのような演技で表現するというのはどうも座りがよくない。実は同じ別役実戯曲の上演ながらハチ企画とまったく対照的スタイルで優れた舞台成果を上げていたのが昨年末横浜・STスポットで上演された中野成樹+フランケンズ短々とした仕事5「カラカラ天気と五人の紳士」だった。

カラカラ天気と五人の紳士―別役実戯曲集

カラカラ天気と五人の紳士―別役実戯曲集

 別役実の芝居は時として「不条理演劇」などと呼ばれることがある。この2つの芝居は同じ別役戯曲といってもそれぞれが表題作である戯曲集の発売時期を見ると十数年のタイムラグがあることからもともと戯曲の持っていたテイストが大きく異なるのかもしれないという問題はあるが、両者の舞台観劇後の印象も大きく違っていた。

2017-01-15 木ノ下歌舞伎「娘道成寺」「隅田川」

[]木ノ下歌舞伎娘道成寺」「隅田川」@こまばアゴラ劇場

f:id:simokitazawa:20170120085909j:image

娘道成寺演出振付・出演|きたまり(KIKIKIKIKIKI)

隅田川]共同演出|白神ももこモモンガコンプレックス

隅田川]共同演出|杉原邦生(KUNIO)

隅田川]共同演出木ノ下裕一

隅田川振付・出演|白神ももこ

監修・補綴|木ノ下裕一

美術|杉原邦生

 きたまり演出振付・出演による「娘道成寺」がソロダンスとしてはまれな完成度の高さ、コンテンポラリーダンスという表現の奥深さを見せつけた。「娘道成寺」は2008年の初演。木ノ下歌舞伎舞踊作品代表的演目としてこれまで上演ごとに演出振付を変えて繰り返し上演してきた。4回目の再演となるが、今回は歌舞伎に使われた音楽(長唄)をほぼ全曲まるごと使用し、上演時間もそれまでの30分から倍の60分に延ばし、「決定版」的な位置づけでの上演となった。

 実は初演の「娘道成寺*1はきたまりソロダンスとしてはそれなりの見所のある作品ではあったが、音楽ジャズ系の演奏家演奏を使った。そのために以下のような劇評を書いた。

 きたまりの「娘道成寺」はいきなり天井から吊った縄につかまってブランコのようにブラブラと揺れるところからスタートする冒頭がまず印象的。度肝を抜くインパクトがあった。その後も身体の柔軟性を十分に生かした振付まりダンサーとしての魅力を存分に感じさせるものであった。もっともこれはダンス作品としては面白いが、きたまりキャラ安珍への嫉妬に狂った清姫とは見えない。あえていえば場末の曲馬団の少女を思わせる。音楽亀田真司 伊藤栄治らによるフリージャズ風の生演奏であり、オリジナル長唄による伴奏面影はほとんどなく、こちらも「三番叟」以上に原作との関連性を考えはじめるとどこが「娘道成寺なのだろうと途方にくれる。きたまりによれば動きのいくつかのモチーフ歌舞伎の「娘道成寺から取られたらしいが、きたまり流に変えられて分からない。共通点はどちらも女の情念の強さを感じさせるものだということぐらいで、いつ舞台に出てくるだろうかと待ち構えていた女の嫉妬心象徴としての蛇身はついに具象的な事物としては登場しなかった。

 2012年の再演は音楽歌舞伎音源長唄)に変えたが、その分ダンス作品として上演することの困難さは増加し、次のような感想となった。

きたまり道成寺」は振り付け音楽一新のほぼ新作。歌舞伎音源をそのまま使ったことで「京鹿子娘道成寺本来の姿に近付いた。ただその分ハードルも高くまだ発展途上か。

 そして今回の上演では基本的にはコンテンポラリーダンス技法を使ったダンスでありながら、原作歌舞伎京鹿子娘道成寺」を単にイメージを借りてダンス作品とするだけではなく原典と正面から対峙して現代の「娘道成寺」を体現してみせたという意味で以前に記した高い壁を見事に越えてみせた。

歌舞伎である京鹿子娘道成寺*2の「あらすじと見どころ」はウィキペディアによれば以下のようだ。

道成寺舞台とした、安珍清姫伝説の後日譚。

桜満開の紀州道成寺清姫化身だった大蛇に鐘を焼かれた道成寺は長らく女人禁制となっていた。以来鐘がなかったが、ようやく鐘が奉納されることとなり、その供養が行われることになった。そこに、花子という美しい女がやってきた。聞けば白拍子だという。鐘の供養があると聞いたので拝ませてほしいという。所化(修行中の若い僧)は白拍子の美しさに、舞を舞うことを条件として烏帽子を渡し入山を許してしまう。花子は舞いながら次第に鐘に近づく。所化たちは花子が実は清姫化身だったことに気づくが時遅く、とうとう清姫は鐘の中に飛び込む。と、鐘の上に大蛇が現れる。

…と、一応上のような「あらすじ」ではあるが、実際にはその内容のほとんどが、構成の項で解説した主役による娘踊りで占められている。つまり、本作のあらすじは舞踊を展開するための動機舞台を用意するための設定で、劇的な展開を期待すると作品方向性を見失ってしまう。まずは演者の踊りそのものを鑑賞するのが、この作品の要点である

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坂東玉三郎京鹿子娘道成寺

 歌舞伎の「京鹿子娘道成寺」は舞台で何度か見ているのだが、全体として演劇的な主題というよりは女形役者それぞれの華やかさと芸を見せるレビュー的な要素の強い演目になっているのではないかと思う。特に最近は人気演目とあって「シネマ歌舞伎」にもなった坂東玉三郎尾上菊之助による「京鹿子娘二人道成寺」など複数役者が競演することが多く、ショー的な要素、スペクタクル性が強調されるとともにその分、下敷きにして謡曲の「道成寺」が持っていた蛇身にも成り果てるという女の怨念のような要素は背景に退いているきらいがある。

 きたまりの「娘道成寺」は舞台紅白の幕こそ敷かれているが舞台装置小道具のようなものはいっさい使わずにそれこそ「身一つ」で長唄娘道成寺」に立ち向かっている。きたまりの動きは前半は非常にゆっくりとした抑えた動きで、顔の表情も基本的能面のように無表情であったり、手で隠したり下を向いたりとあまり見えないように工夫されている。面白いのはそういう抑えた動きのところどころで主として腕から手そして指先でちょっとした「蛇身」の尻尾(というのはあくまで例えだが)を垣間見せていく。

 抑制された動きと書いたがきたまり基本的舞踏出身ではあるのだが、誰か単独師匠の元に入門して修行したのではなく、 土方巽直系の大谷燠(アートシアターdb主宰)、どちらも京都造形芸術大学教授(当時)だった山田せつ子(笠井叡門下)、岩下徹(山海塾)らに学ぶというきわめて珍しい経歴を持っている。それゆえ、ダンサーとしてのその身体技法舞踏の色彩が色濃いものではあるのだが、逆にいえば誰に似ているということもなくて、舞踏の流れを受け継ぎながらも、きたまり独自のものとなっている。

 この「娘道成寺」では過去の上演では即興性の強いものであったり、歌舞伎ないし日本舞踊振付引用などを試みたりもして、ついに行き着いた境地として振付のもの歌舞伎舞踊の動きとは異なるのではあるが、日本舞踊の踊り手が見てさえ、長唄と一緒にその動きをみていると全然「振り」が違うのにそれぞれの踊りの色合いが感じられるものとなっているということのようだ。しかも、そもそも歌舞伎舞踊では鞠や扇など小道具を使うことでそれぞれの踊りの個性の違いを見せているのが、そういうものをいっさい使わず、それを見せているのが素晴らしい。

 とはいえ、本当の意味で圧倒されるのは後半部分で見せる「睨み」というか目つきひとつ舞台空気を豹変させる場に対する支配である。これは本当に稀有ものであって、舞台上で屹立する力というのはH・アール・カオスの白河直子が持っていたと記憶しているが、きたまりが「娘道成寺」で見せたそれとは少し方向性が違う気がする。演劇でこれを感じたのはSPACなどに出演している美加理、それから早稲田小劇場時代白石加代子。少しおおげさな物言いをしていると思う人がほとんどだと思うが、そういう人はぜひきたまりの「娘道成寺」を実際に見てみてほしい*3

2017-01-13 風邪で木ノ下歌舞伎キャンセル このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

木ノ下歌舞伎娘道成寺」「隅田川」@こまばアゴラ劇場 (キャンセル)

咳が止まらず微熱があるので観劇は断念。日曜日までにはなんとか治したい。

2017-01-12 勅使川原三郎 KARASアップデイトダンスNo.42「シェラザード」

[]勅使川原三郎 KARASアップデイトダンス No.42「シェラザード」@荻窪アパラタス

アップデイトダンスNo.42「シェラザード

2017年アップデートダンス最新作、バレエ音楽「シェラザード」を基調にした孤独と愛の超絶ファンタジー伝説ダンサーニジンスキーと、イダルービンシュタインの激しくも甘美なデュエット(20世紀初頭に世界初演)が、アパラタスでテシガーラ サトーのデュエットにより無限変形する歪んだ美に変わり果てる。

音楽 リムスキー・コルサコフ

振付演出 勅使川原三郎

出演 勅使川原三郎 佐東利穂子 

 2016年ダンスベストアクト*1で1位に選んだ勅使川原三郎の「KARASアップデイトダンスシリーズ。この「シェラザード」が今年の第1弾となった。バレエ音楽の「シェラザード」と上記の説明にあるが、実はリムスキー・コルサコフの「シェラザード自体千夜一夜物語の語り手、シェヘラザード(シャハラザードシェエラザード)の物語テーマとして、1888年夏に完成されたリムスキー=コルサコフ作曲の交響組曲

 バレエ音楽として知られるようになったのは作者の死後の1910年バレエ・リュスの振付であるハイルフォーキン振付バレエ『シェヘラザード』が制作され、作者の死後の1910年にミハイルフォーキンの振付によってバレエ『シェヘラザード』が制作され、それが有名になったためだ。

 バレエ作品物語バレエでもあり、ストーリーがある*2が、これは振付のミハイルフォーキンらによる創作であり、原曲は4つの主題があるが、それがそのままバレエ物語対応するものとして創作されたものというわけではない。

交響組曲 「シェラザード

第1楽章 海とシンドバットの船・・・シェラザードが第290夜から第315夜に渡って語った「船乗りシンドバッド物語」によった音楽

第2楽章 カランダー王子物語・・諸国を行脚するカランダーという苦行僧は、「アラビアン・ナイト」の数箇所に出てくるため、どの物語を描いたかは不明

第3楽章 若い王子王女・・・・・不明

第4楽章 バクダットの祭典と海、

   そして終末・・第9夜から第18夜にかけて語られる「荷担ぎ人夫乙女たちの物語」の、青銅騎士の立つ岩が磁石で出来ている、近くを通る船が揃って引き寄せられては難破するという物語に基づいている

そういうこともあってか勅使川原版「シャラザード」はバレエ・リュス版の筋立てとはほぼ無関係でよりリムスキー・コルサコフの交響組曲自体と向かい合ってダンス作品化したものとなっていた。音楽原典の4つの楽章をそのまま使用しているが、第1楽章と第4楽章が勅使川原ソロ

第2楽章が佐東利穂子のソロ。第3楽章は勅使川原、佐東のデュオという構成

 「シェヘラザード」といえばバイオリンで奏でられる主題象徴されるように官能性が感じられる表現定番。そのためにバレエなどでも女性男性共に腹部が露出するような衣装一般的であるが、勅使川原版は男女ともに黒を基調とした

*1http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20170102/p1

*2バレエ『シェヘラザード』あらすじ シャハリヤール王が狩りで城を留守にしている最中に、彼の愛妾ゾベイダを含む後宮の女奴隷たちは看守のユーマクを買収し、男奴隷部屋のカギを入手する。女奴隷たちは男奴隷たちを解放し、彼らとの逢瀬を楽しむ。ゾベイダもまた「金の奴隷」との逢瀬を楽しむ。そこへ王が帰還。後宮の女たちの不義密通が露見してしまう。王はあらかじめ弟から女たちの留守を利用した不貞可能性を警告を受けており、今回の狩りでの外出はそれを調べるためのものであった。王は「金の奴隷」を含む男奴隷を皆殺しにする。ゾベイダは悲嘆のあまり短剣自殺。愛妾の自殺に王は深く悲しむのであった。

2017-01-11 サンプルワーク・イン・プログレス公演「ブリッジ 〜モツ宇宙へのい

[]サンプルワーク・イン・プログレス公演「ブリッジ 〜モツ宇宙へのいざない〜」@アーツ千代田3331 B104

作・演出 松井

出演 古屋隆太 奥田洋平 野津あおい 天明留理子 武谷公雄  伊東沙保 鶴巻紬 山田百次

 「モツ宇宙」(腸からつながったもうひとつ宇宙)を信奉する新興宗教ワークショップ布教のための集会)という呈で舞台が進行する。設定が思わず笑っちゃいます的に抜けてておかしいので、コントのように受け取りながらしばらく見ていると、登場人物の全員が心に闇を抱えて壊れかけている人間なんだということが分かってきて、松井周の乾いた人間観が思わず恐ろしくなってくる。

 最初から明らかにおかし電波系の野津あおい、トラウマ障害になってしまった奥田洋平変態ぶりが絶妙山田百次、自壊している鶴巻紬、一番普通に見えるが実はもっとも不気味な武谷公雄、もっとも付き合いたくない偏執タイプの伊東沙保……。いくら新興宗教現場だといっても普通もう少しまともな人が交じっているものだが、全員おかし世界創造する松井周の内在した狂気(要素)に戦慄させられた。異常な世界にただ1人投げ込まれた主婦役の天明留理子のリアクションリアルで見事。

 ワーク・イン・プログレスというがよくあるようにこの作品を再構築して再演するというのではなくて、この教団の儀式が劇中に出てくる新作を製作するための準備ということらしい。

http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/19991019

2017-01-10 無隣館若手自主企画vol.15 柳生企画「メゾンの泡」@アトリエ春風舎

[]無隣館若手自主企画vol.15 柳生企画メゾンの泡」@アトリエ春風舎

作・演出柳生千翔

出演:うらじぬの、鶴田理紗、林ちゑ、吉田

地上は汚染されて健康的に暮らすのが困難になった時代。ほとんどの人間は地下の巨大な集合住宅に居を構えているが、 部屋の数が限られているため、 一定住民税を支払えない市民たちは引き続き地上での暮らしを余儀なくされていた。階層が上なほど社会的立場が低く、下にいくほど高い。

上層エリアに住む京子は、心が離れてしまった夫と家庭内別居中。単身では地上行きになりかねないため、 互いに離婚を切り出すこともできない。

そんな中、難民支援法の恩恵を受けて、上階に地上人の男が住み始めた。外から来た彼に興味を持つ京子だったが、 やがて自分との間に底知れない溝を感じるようになる。人類未来希望が託されたこの建物は、 今日増改築を繰り返し、地下へと伸び続けていく。

 無隣館柳生企画メゾンの泡」@アトリエ春風舎観劇。せんだい短編戯曲賞を受賞した柳生千翔作品を初観劇SF的な設定で未来階級社会に潜む差別感情問題を描き出すが、現代階層社会への揶揄意味合いも持たせているのであろう。若手の中ではもっと平田オリザ的だが、これが彼の本領なのかどうかには若干の疑念もある*1破天荒だった綾門と比較すると優等生っぽい構えが気になるのだが、この公演では一部しか見せてないような予感もする。次回公演もぜひ見たい。

 無隣館を新劇劇団によくあるような養成所のようなもの勘違いしている人もいるかもしれないが、到底そんなものではない。柳生千翔もそのひとりだが、演出部には第1期の綾門優季に続き、次々と才能あふれた人材が集結しており、すでに複数の若手作家の間で引っ張りだこになっている感のある鶴田理紗をはじめ、俳優特に女優)の水準は非常に高いと思わせた*2

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女の子には内緒「ささやきの彼方」せんだい短編戯曲賞受賞

*1戯曲賞受賞の作品は今回のような現代口語の会話劇ではなく、モノローグ文体であるらしい。3月に再演が予定

*2:というか若さに似合わず、皆うまいのに驚かされると思って経歴を調べてみればいずれも無隣館2期生だが姉役の林ちゑは2013年から世田谷シルクにほぼ常時出演、妹役のうらじぬのは子供鉅人の劇団員新人クレジットがあるが)。ともにそれなりの経験はある人だったようだ

2017-01-09 ミュージカル「わたしは真悟」@新国立劇場中ホール

[]ミュージカルわたしは真悟」@新国立劇場ホール

原作楳図かずおわたしは真悟』(小学館刊)

キャスト 高畑充希 門脇麦 小関裕太 大原櫻子 成河 田鍋謙一郎 奥村佳恵 斉藤悠 宮菜穂子 水野栄治 江戸川萬時 清家悠圭 加賀一肇 碓井菜央 工藤広夢 引間文佳 鈴木

脚本:谷賢一 ミュージシャン演奏トウヤマタケオ Open Reel Ensemble吉田 匡 和田 永 吉田 悠)

音楽トクマルシューゴ阿部太郎 歌詞:青葉市子

演出振付:フィリップ・ドゥクフレ 振付美術エリックマルタン 映像オリヴィエ・シモーラローラン・ラダノヴィッチ 照明:大平智己 音響:松木哲志 ヘアメイク鎌田直樹 稽古ピアノ太田裕子 通訳加藤リツ子 演出助手豊田めぐみ 舞台監督足立充章 技術監督堀内真人 演出協力:白井晃

 楳図かずお漫画わたしは真悟」を原作にしたミュージカル。歌も歌えて演技派との評価も高い若手女優陣(高畑充希 門脇麦 大原櫻子)を主要キャストに配置し、エリザベートのルイジ・ルキーニ 役などミュージカル俳優としても活躍している成河を真悟役にした新作ミュージカルというのが世間一般認識なのだろうが、私はトウヤマタケオOpen Reel Ensemble音楽演奏を生で担当するということ、青年団演出部の谷賢一が脚本担当すること、演出振付がフィリップ・ドゥクフレであることがきっかけでチケットを取り見に行った。

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すべてを2・5次元ミュージカル演劇の名で評するのが適当であるのかどうかについては若干の疑義もあるが最近漫画アニメ作品舞台化の企画が数多く上演されている。その中でも今回の「わたしは真悟」は特筆すべき出来栄えであったのではないかと思う。

 まず何といってもOpen Reel Ensembleを中心にした生演奏音楽音響が素晴らしかった。Open Reel Ensemble吉田 匡 和田 永 吉田 悠)の3人とトウヤマタケオの4人だけで歌唱部分の伴奏だけではなく、状況音や「真悟」の発する声や信号などもすべてリアルタイムオペレーションで行っており、こういうのは世界的に見ても稀有なことだと思う。フィリップ・ドゥクフレによる一風変わった振り付けとも合わせて、娯楽性はありながらいわゆるミュージカルっぽくない味わいには好感が持てた。

 漫画単行本で7巻にもおよぶ内容をコンパクトにまとめしかもセリフの群読などにも対応した谷賢一の脚本もよい出来栄えだったのではないか。女優少年少女を演じるという演技スタイル80年代小劇場演劇一般化され、いわば日本現代演劇お家芸といってもいいほどだが、そのスタイル確立した代表的劇団が遊◎機械自動シアターでそこで演出担当していた白井晃が今回は演出協力でも参加しており、子ども役の演技など彼が手がけたのではないか。

わたしは真悟 (Volume7) (小学館文庫)

わたしは真悟 (Volume7) (小学館文庫)

 

[]「画と機 山本耀司朝倉優佳」@東京オペラシティ アートギャラリー

斬新なクリエーション世界を刺激し続けるデザイナー山本耀司と若手画家朝倉優佳による展覧会最近はすっかり展覧会にもご無沙汰していたと反省東京オペラシティ アートギャラリーに出かけた。ただ、本当はICCで開催されていると思い込んでいたライゾマティクスの展示に出かけたのだが、まだ始まっておらずとりあえずここに入ったのだった。

 朝倉優佳の絵はなかなかの力量を感じさせるものであったが、ファッションデザイナーである山本耀司の展示と組み合わせた意図はよく分からなかった。山本衣装の展示としては展示のやり方が平板なのではないかと思った。

2017-01-08 「俺のネクストガール」@品川ステラボール