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中西理の下北沢通信(旧・大阪日記) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-12-31 2008年演劇ベストアクト

[]2008年演劇ベストアクト

 大晦日恒例の2007年演劇ベストアクト*1 *2 *3 *4h*5掲載することにしたい。(ダンスパフォーマンス編は後ほど掲載する予定。まずは表のみだが、後ほどコメントも加筆の予定)。さて、皆さんの今年のベストアクトはどうでしたか。今回もコメントなどを書いてもらえると嬉しい。

2008年演劇ベストアクト

1,維新派「呼吸機械*6 (びわ湖さいかち浜特設水上舞台)

2,ポかリン記憶舎「鳥のまなざし*7(シアタートラム

3,五反田団「偉大なる生活冒険*8 *9こまばアゴラ劇場

4,SPAC・宮城聰演出ハムレット静岡芸術劇場

5,ポツドール「顔よ」本多劇場

6,チェルフィッチュフリータイム六本木Super Delux)

7,クロムモリブデンテキサス芝刈機」青山円形劇場)、「血が出て幸せ(HEPHALL)

8,ヨーロッパ企画あんなに優しかったゴーレム(ABCホール)

9,渡辺源四郎商店「ショウジさんの息子」青森アトリエグリーンパーク)

10,いるかHotelからッ騒ぎ!」大阪芸術創造館)

次点東京デスロック「3人いる」(神戸アートビレッジセンター

特別賞 平田オリザロボット演劇「働く私」

 1位には昨年の「nostalgia」同様に維新派「呼吸機械」を選んだ。実は昨年選んだ「nostalgia」は今年1月に京都芸術劇場春秋座でも上演され、今年は「呼吸機械」への準備の意味も込め、小劇場公演「聖・家族」(精華小劇場栗東文化会館さきら)の上演もあり、維新派にとっては充実の1年だった。

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 内橋和久の変拍子音楽に合わせ単語の羅列みたいな大阪弁のセリフをラップ調で群唱するのが維新派のヂャンヂャン☆オペラスタイルだ。しかし、新国立劇場で上演された「noctune」あたりから「動きのオペラ」、すなわち動きだけでセリフがないダンス風のパフォーマンスがもうひとつの柱となってきた。「キートン」「ナツノトビラ」、前作の「nostalgia <彼>と旅をする20世紀三部作 #1 」(2007)と「動きのオペラ」への方向性はしだいに明確なものとなってきた。

維新派「呼吸機械」の動きのオペラ(「聖・家族から映像

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 今回の作品表題の「呼吸機械」を思わせるダンスシーンを作品の冒頭とラストのそれぞれ15−20分ほど、作品の中核に当たる部分に持ってきた。「それありき」で作品が組み立てられており、「動きのオペラ」のひとつの到達点を示した作品に仕上がった。特に前半部分の動きをほぼ繰り返す形で反復しながらも、それをびわ湖の湖面に向かって舞台上を流れていく水のなかで行うラストシーンが秀逸。動きだけでなく、野外劇場からこそ可能な水の中の演技で飛び散る水しぶきが照明の光を乱反射して輝き、大人数による迫力溢れる群舞とともにほかに比較するもの簡単にはないほどに美しかった。維新派上演史に残る珠玉10分間だといってもよかったかもしれない。

 ポかリン記憶舎はサイトスペシフィックな作品であるcafe公演「humming2」と身体表現系の演劇への傾斜を深めた「鳥のまなざし」という対照的な2公演で健在ぶりを示した。特にシアタートラムというこれまでのない大空間を使い空間構成にも冴えをみせた「鳥のまなざし」は「和服美女空間」などのパフォーマンス公演で模索してきた身体表現と会話劇系のスタイルのよる演劇を融合させ新たな形式幻想劇を提示してみせた。惜しくもファイナリスト進出は逃したものの、そのパフォーマンス公演「和服美女空間」によりコンテンポラリーダンス振付であるトヨタコリオグラフィーアワード二次審査会に選ばれた*10のも特筆すべき出来事であった。

 今年初めに岸田戯曲賞を受賞した五反田団前田司郎だが受賞後の「偉大なる生活冒険」と「すてるたび」の2本ともベスト級の秀作舞台だった。前田演劇は描かれる世界にある種の幻想白昼夢のような異世界侵入してきて、それが区別されずに渾然一体のものとして表現されることで、そのためその作品一種の「幻想劇」として表現される。この特徴がもっとも顕著なのは前述のポかリン記憶舎・明神なのだ平田オリザ流の会話劇から明らかに幻想劇の方向に舵取りを進めてきたのが、「逃げろおんなの人」で、それは「キャベツの類」「ふたりいる景色」「さようなら 僕の小さな名声」では一層明確になってきた。「偉大なる生活冒険」もそうした方向性の延長線上にある。もっとも今年の2本は「偉大なる生活冒険」が日常世界描写から地続きの幻想垣間見せる舞台だったのに対し、「すてるたび」は夢の中の世界とも思われる描写から父の死などの現実垣間見えるというまったく逆の構造を持った対照的作品であった。

 前田らと同世代劇作家であるチェルフィッチュ岡田利規ポツドール三浦大輔ヨーロッパ企画上田誠もこれまでの彼らの作品の印象を一変するようなインパクトを持つ作品ではなかったのは残念だが、刺激的な作品を見せてくれた。特に演劇音楽におけるサンプリングリミックス的な構造を取り入れてネクストステージを目指したかに見えた岡田の「フリータイム」は実験として興味深いもの舞台としては「三月の5日間」のように成功してはいないように思われたが、この集団が今後どのような方向に進んでいくかについて予感めいたものを感じさせる作品であった。

チェルフィッチュフリータイム

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ポツドール「男の夢」(参考映像

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ヨーロッパ企画あんなに優しかったゴーレム」CM(本編とは関係はあまりない?)

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 クロムモリブデン青木秀樹も1月上演の「スチュワーデスデス」が昨年のベストアクトに入っているので今年のベストからは省いたが「テキサス芝刈機」、「血が出て幸せ」と3本の新作を上演。

 畑澤聖悟が弘前劇場時代代表作のひとつであった「ケンちゃんの贈りもの」(作・演出 畑澤聖悟=2005)を大幅に改稿し新たな拠点となる小劇場空間「スタジオグリーンパーク」(青森市)のこけら落としとしした渡辺源四郎商店「ショウジさんの息子」も初演にも出演した宮越昭司(劇団雪の会)、そして今回その息子役を演じたささきまことの好演が目立った。

 SPAC(静岡舞台芸術センター)の芸術監督就任した宮城聰演出による「ハムレット」もよかった。ク・ナウカ活動休止にして静岡に移った宮城だが、以前に見た就任最初作品巨匠」では前任の鈴木忠志が集めてきた俳優陣に対する遠慮のようなものが感じられたが、ようやくはっきりしたベースが出来てきた印象だ。ク・ナウカ時代に上演して失敗したという「ハムレット」に再挑戦したのも宮城現在創作環境が充実してきているという宣言のようなものであろうが、結果的には上演が簡単はいえない「ハムレット」の舞台のなかでも上位に入る好舞台であった。ポスト・美加理のニューヒロインを予感させる瀧井美紀(ガートルード役)の存在もあり、今後がますます楽しみであるシェイクスピア現代演劇化では宮城とはまるで異なるコンセプトでこちらはシェイクスピアコメディーを全員女性キャスト関西弁に置き換えしゃべくり漫才のように演出した谷省吾シャイクスピアの第2弾いるかHotelからッ騒ぎ!」も出色の舞台であったと思う。

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