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中西理の下北沢通信(旧・大阪日記) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-01-11 2008年ダンスベストアクト

[]2008年ダンスベストアクト

 演劇ベストアクトに続き2008年ダンスベストアクト*1*2掲載することにしたい。さて、皆さんの今年のベストアクトはどうでしたか。今回もコメントなどを書いてもらえると嬉しい。

2008年ダンスベストアクト

1,Monochrome circus「掌編ダンス集」アトリエ劇研

2,演劇計画2007+山下残「It was written there」京都芸術センター*3

3,木ノ下歌舞伎三番叟娘道成寺アトリエ劇研からきたまりソロ娘道成寺

4,レニ・バッソゴーストリー・ラウンド」「パラダイスローグ」パークタワーホール

5,大橋可也+ダンサーズ「明晰の鎖」アトリエ劇研*4

6,小野寺修二×首藤康之プロデュース「空白に落ちた男」@ベニサンピット

7,じゅんじゅんSCIENCE(高橋淳)「アリス吉祥寺シアター

8,KENTARO!!「彼方から世界で1つ……」吉祥寺シアター

9,ニブロールロミオORジュリエット」世田谷パブリックシアター*5

10,e-dance 第1回 出発ダンス公演 「元気の本」アトリエ劇研*6

特別賞 contact Gonzoin府市中心市街地

 Monochrome circusはいもっとも脂の乗っているカンパニーだ。ここでは12月の小品集「掌編ダンス集」を取り上げたが「羊飼いプロジェクト」で知られる現代美術家井上信太とのコラボレーション「The Passing 01-03」アトリエ劇研)*7、「出会い」を作品化するという「旅の道連れ」滋賀会館)、フランス振付家、エマニエル・ユンとのコラボレーション「怪物」プロジェクト京都アトリエ劇研)、ダムタイプの照明家、藤本隆行とのコラボレーション「Refined colors」「lost東京長野公演(スパイラルホールなど)、小品集の連続上演「水の家」プロジェクト(ロクサドンタ・ブラック)とこの1年間ほどを振りかえっても互いに方向性の違う舞台を次々と上演してきた。新作が1年に1本以下となるようなことも珍しくないコンテンポラリーダンスにおいて、この多産ぶりは驚くべきことだ。

Monochrome circuslost

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Monochrome circus「WASH」

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「掌編ダンス集」ではA、Bの2プログラムで7本の作品を上演しているが中でもテーブルの上で森裕子森川弘和が踊る「水の家」と合田有紀野村香子による2つのデュオ「きざはし」「凪」が秀逸。いずれもテーブルの上(「水の家」)、テーブルの上と下(「きざはし」)、男性ダンサーの身体の上から女性ダンサーが一度も床に降りない(「凪」)と縛りのかかったような制限された条件のもとで展開される。以前はMonochrome circusダンスコンタクトインプロビゼーションを多用していたが、これらの作品群ではその技法がそのまま展開されることはなく、振付即興が精密な設計図により組み合わせられている。特筆すべきはダンサーの充実でここ数年同カンパニー看板となっていた佐伯有香を故障で欠き、そのため佐伯ソロ「怪物」を「凪」と差し替えざるえなかったのだが、合田野村の成長が著しく、佐伯の不在を感じさせなかった。「きざはし」などは坂本公成、森の2人により初演された作品だが、その後、佐伯合田バージョンが「踊りに行くぜ!!」などで上演され、この公演ではそれを野村合田により上演した。ダンサーが入れ替わっても作品が成立するようにカンパニー財産として受け継がれていく作品がある一方で「水の家」ではすでにカンパニーを退団した森川客演として呼び戻し、何度も同じコンビでの再演を繰り返してきたからこそ生まれてきた絶妙コンビネーションが見られ、こうした対照的な2作品を見せることで集団底力を感じさせた。

2002年アイホールで上演された「そこに書いてある」を新キャストによりリメイクしたのが、「It is written there」である。来場者全員に100ページにおよぶ冊子が配布され、観客はそれを1枚1枚めくりながら作品が進行していく。この作品は冊子(書かれた言葉から動き(=ダンス)が立ち上がっていくのを過程も含めて見せてしまおうというもので、ダンサー舞台上で冊子のなかに書かれていることを身体を使って表現していく。山下残は「言葉」で構成されるダンステクストを追求し、「言葉」と「ダンス」の新たな関係性を模索してきたが今回これがダンスフェスティバルではなく「演劇計画2007」という演劇関連の企画の一部として上演されたことで一層その意味合いを増した。

 山下残コンテンポラリーダンスダンサー振付家と目されており、それゆえ、その創作物たる作品ダンス作品しかも少し毛色の変わったダンス作品として受け入れられてきた。しかし、今回の「It is written there」のように言語テクストすなわち脚本とそれを具現化する俳優の身体所作の交差する点において成立する表現こそ「演劇」と呼ばれるのではないか。このようにいままで自明のものと思われていた「演劇」「ダンス」「言語」「テキスト」の関係を問い直す戦略なのである。絶えざるテキストの参照で「動き」と「言語テキスト」の距離はたえず揺らぎ続けるが、その揺らぎそのものダンスなのではないか。あるいは「単語」「短文」に当たるような短い動きのパッセージを元々の「一対一」対応対応とは切り離された文脈自由に切り離し、つなげるという作業を行うとそこから一瞬の飛翔により、あたかダンスといっていいムーブメントが生成する。そんな風に「ダンスとはなにか」と考えさせるのがこの作品の魅力だ。

 代表であるゴーストリー・ラウンド」「パラダイスローグ」連続上演したレニ・バッソ北村明子活躍も目立った。このところ公演はほとんど海外での公演で日本での活動はあまりなかったレニ・バッソであるが、今年は前記2作品に加え、小品集「ショートピースアンソロジー」も上演。このほか音楽家粟津裕介とのコラボレーション「davetail」も初演の2001年以来7年ぶりに大幅に改訂し、事実上の新作に近い形で上演した。

ゴーストリー・ラウンド

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 KIKIKIKIKIKIきたまりも「サカリバ007」でトヨタコリオグラフィーアワードオーディエンス賞を受賞するなどその存在感を一層増したが、「サカリバ007」は2007年ダンスベストアクトに選んでおり、代わりに木ノ下歌舞伎客演して踊ったソロダンス娘道成寺を選んだ。

 同じくトヨタアワードでネクステージ特別賞とオーディエンス賞をダブル受賞のKENTARO!!も目覚ましい活躍が目立った1年だった。彼にダンサーとしてのスター性があるのは間違いないが、それだけに留まらずソロ公演「彼方から世界で1つ……」ではクラシック音楽(ドビュッシーの「アラベスク第一番」)に合わせて踊ったり、「吾妻橋ダンスクロッシング」のKENTARO!!DXではジャズマイルス・デイビスの「"MILES RUNS THE VOODOO DOWN" )に合わせて踊るなど新たな実験にも取り組み、今年以降の一段の進化を予感させた。年末には自ら率いるカンパニー旗揚げ公演もあり、こちらも今後が楽しみな出来栄えだった。

KENTARO!!(参考映像

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"MILES RUNS THE VOODOO DOWN" (Miles Davis)

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 水と油活動休止後、メンバーであった小野寺修二おのでらん)と高橋じゅんじゅん)がそれぞれ自らのカンパニー設立活動を本格的に再始動した。その作品小野寺演劇色が強く、高橋ダンス的という違いがないではないが、小野寺バレエダンサー首藤康之と九同プロデュースした「空白に落ちた男」ではダンスの要素も取り入れるなど、一概に小野寺演劇高橋ダンスと決めつけるわけにはいかない。じゅんじゅんSCIENCE(高橋淳)「アリスダンスはいえ、伊藤キムたかまゆら個性派ダンサーを集め、強いキャラクター性を打ち出し、アンサンブル重視の水と油時代とは一線を画した表現となった。水と油超絶技巧ともいえる遊びのないアンサンブル演技はマイム技術にたけた4人の阿吽の呼吸があったればこそ成立したとともいえ、小野寺高橋ともにやりたくてもできないというのが正直なところかもしれない。ただ、この2人が手掛けているダンスパントマイムジャンルは今年9月に新カンパニーを発足させ、本格的な活動再開を目指している上海太郎の動きも合わせて、今後注目していかなければならないであろう。

大橋可也+ダンサーズ「明晰の鎖」

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 大橋可也+ダンサーズ「明晰の鎖」も閉塞された世界の感触をうまくとらえた舞台として鮮烈な印象を残すものであった。

 今年は残念ながらニブロールの年ではなかった気がしますが、映像と身体表現コラージュ風に組み合わされた時のカッコよさという点では「ロミオORジュリエット」は抜群だった。シェイクスピアとどう関係するのかと考えてしまうと???で、そのせいで積極的に推すことにはためらいを感じるのだが。ニューカマーでは飯田茂実の新カンパニーe-dance旗揚げ公演「元気の本」がよかった。いわばコンドルズ身体表現サークル÷2のようなところがあるのだが、メンバーの身体能力が著しく高いのも特徴で、面白いと思う。だれか、東京に呼ぼうというプロデューサーはいないだろうか*8