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中西理の下北沢通信(旧・大阪日記) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-05-29 木ノ下歌舞伎「勧進帳」と燐光群

[] 木ノ下歌舞伎勧進帳」@アトリエ劇研

監修・補綴|木ノ下裕一

演出・美術|杉原邦生

出演|亀島一徳[ロロ]

   重岡漠[青年団

   清水久美子

   福原冠[国道五十八号戦線]

   John de Perczel[空(UTSUBO)]

 木ノ下歌舞伎勧進帳」観劇。面白かった。歌舞伎ファンもそうでない人も楽しめる公演。弁慶、義経のキャスティングに妙。今までのなかではベストかも。

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 まずはこの映像を見てほしい。今回のキャストが歌舞伎の「勧進帳」をコピーしたバージョンなのだが、本番の木ノ下歌舞伎はこれをそのままやったわけではなくて、それぞれの場面についていろんなアイデアを盛り込み、杉原邦生の演出でそれを現代演劇に移し替えたものを上演した。ただ、まずこの歌舞伎版のコピーをやったということは興味深かった。というのは、木ノ下歌舞伎は旗揚げ以来首尾一貫して歌舞伎の「現代化」を手掛けてきた。これまではどちらかというと歌舞伎特有のテキストを重視して、どのようにそれを演じるのかというところの部分はアイデア次第の部分があり、そこに不満がなくもなかった。

 これまでの演目(「四谷怪談」「寺子屋」「摂州合邦辻」「三番叟・娘道成寺」)も簡単なことはないが、まだ「四谷怪談」「寺子屋」ような世話物なら現代化というのができなくもないけれど、「勧進帳」というのはどう考えても難物である。しかも、上演するのがク・ナウカ山の手事情社のような「語りの演劇」についての独自のスキルを持った劇団であればなんとか「歌舞伎ではないなんらかの様式」をでっちあげることができそうだが、今回は京都×横浜プロジェクト2010*1ということで首都圏在住の俳優たちをオーディションで選び、横浜で現地制作するという形で製作している。そういうなかでまず歌舞伎上演のコピーから立ち上げて、そこから独自のものへ作り変えていくという今回の作業手順は方法論として興味深かった。今後もその手が使えるかどうかというのは分らないけれど、登場人物が弁慶以外は現代の若者の格好で登場して、しかも下座音楽の代わりにヒップホップ系の音楽を多用した今回の杉原演出が軽薄なものとならなかったのはやはり本番ではそのまま上演されたわけではないにしても、歌舞伎の上演をすっかり真似た稽古を準備段階で繰り返したことで習うより慣れろではないけれども出演者全員が「勧進帳」という舞台の勘所のようなものを共有していたからではないかと思った。

[] 燐光群「ザ・パワー・オブ・イエス」@精華小劇場

"The Power of Yes" by David Hare

出演:藤井びん 鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋 田中茂弘 John Oglevee 杉山英之 伊勢谷能宣 西川大輔 鈴木陽介 橋本浩明 中山マリ 南谷朝子 松岡洋子 樋尾麻衣子 安仁屋美峰 渡辺文香  桐畑理佳 横山展子 矢部久美子 根兵さやか

脚本:デイヴィッド・ヘアー 演出:坂手洋二 訳:常田景子 美術:島次郎 照明:竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響:島猛(ステージオフィス) 衣裳:宮本宣子 舞台監督高橋淳一 演出助手:武山尚史 文芸助手:清水弥生・久保志乃ぶ・村松みさき イラスト沢野ひとし 宣伝意匠:高橋勝也 制作:古元道広 近藤順子

2010-05-27 「演劇の新潮流 ゼロ年代からテン年代へ」舞台映像連続上映会

開催明日ですが焦り気味です。直前まで予約間に合います。見直してみましたが渡辺源四郎商店「俺の屍を越えていけ」面白いです。

[]「演劇新潮流 ゼロ年代からテン年代へ」舞台映像連続上映会(第2回 畑澤聖悟・渡辺源四郎商店)


主宰・中西理(演劇舞踊評論)

 東心斎橋のBAR&ギャラリーを会場に作品・作家への独断も交えたレクチャー(解説)とミニシアター級の大画面のDVD映像で演劇ダンスを楽しんでもらおうというセミネール「現代日本演劇ダンスの系譜」。今回はレクチャーではなく、「ゼロ年代からテン年代へ」と題してセレクションした現代の注目舞台の映像を連続上映することにしました。

 これまでセミネール演劇編では青年団平田オリザ弘前劇場長谷川孝治らの現代口語演劇の紹介にはじまり、前田司郎、三浦大輔らその影響を受けたゼロ年代の作家たち。そしてそこから抜け出し独自の演劇を展開したチェルフィッチュ岡田利規らの作品を紹介してきました。今回の連続上演では彼らゼロ年代作家を再び紹介するとともに「わが星」で岸田戯曲賞を受賞し話題の柴幸男をはじめとしてその後登場し、これからの10年間の新しい潮流を作って行きそうな作家たちの舞台を取り上げたいと思います。

 第2回となる今回取り上げるのは畑澤聖悟*1。セミネール第一期で紹介した弘前劇場出身で、青森県で現役の高校教師を続けながらプロの劇作家として活動。劇団昴、青年劇場などに戯曲を提供。自らの劇団「渡辺源四郎商店」を率いて東京青森で公演するなど小劇場演劇世界での活動に加えて、高校教諭として高校演劇部顧問も務め、2度の全国1位(青森中央高校「修学旅行」「河童」)を獲得するなどゼロ年代を代表する劇作家のひとりといっていいと思います。

 弘前劇場長谷川孝治同様に現代口語津軽方言ベースにした群像会話劇の形態を取りますが、「ままごと」の柴幸男や東京デスロック多田淳之介と同じように畑澤の作品もその作品で提示される構造自体がより大きな世界モデルとして提示されるような構造を持っているという点では共通点があり、また実際の活動でも指導していた弘前中央高校が柴原作・畑澤脚色の「あゆみ」で今夏の全国コンクール決勝大会に駒を進めたほか、東京デスロックとも今秋に合同公演を予定するなど「テン年代演劇」と先行世代の橋渡し役としても注目される存在です。



【日時】5月27日(第2回 畑澤聖悟・渡辺源四郎商店) 7時半〜

【演目】渡辺源四郎商店「俺の屍を越えていけ」アトリエ1009(60分)/日本劇作家大会短編

戯曲コンクール最優秀賞受賞作品

f:id:simokitazawa:20100520143305j:image

【作・演出】畑澤聖悟 

【出演】

本荘 ラジオ制作部・ディレクター:萱森由介

東根 営業部、組合青年部長   :木村幸(劇団支木)

郡山 アナウンサー部アナウンサー:工藤静香

松島 報道部          :工藤由佳子

北上 技術部、組合員      :高坂明生

三沢 ラジオ制作部・ディレクター:三上晴佳※その他の畑澤聖悟作品(高校演劇作品)なども紹介する予定。


【場所】〔FINNEGANS WAKE〕1+1 にて 【料金】1500円[1ドリンク付]

※[予約優先]  定員20人ほどのスペースなので、予約をお願い致します。当日は+300円となりますが、満席の場合お断りすることもあります。

【予約・お問い合わせ】 ●メール fw1212+100527@gmail.com  あるいは BXL02200@nifty.ne.jp(中西) お名前 人数 お客様のE-MAIL お客様のTEL お客様の住所をご記入のうえ、 上記アドレスまでお申し込み下さい。 06-6251-9988 PM8:00〜 〔FINNEGANS WAKE]1+1 まで。 web:fw1plus1.info  Bridge Gallery & Bar 〔FINNEGANS WAKE〕1+1 大阪市中央区東心斎端1-6-31 リードプラザ心斎橋5F (東心斎橋清水通り。南警察署2軒西へ)

「渡辺源四郎商店」は、劇作家畑澤聖悟(はたさわせいご)を「店主」とし、畑澤自身の戯曲を上演することを主目的とした劇団です。2005年7月にスタートしたプロデュース・ユニット制作の開店準備公演『俺の屍を越えていけ』、開店公演『夜の行進』等7作品の上演をへて、2008年4月、劇団として活動を開始しました。青森市青柳アトリエグリーンパークを本拠地に、クオリティーの高い作品を全国へ発信しています。また、地元の中学生や高校生を対象にしたワークショップや学校公演も積極的に展開しています。(略称:なべげん)





今後の上映映像ラインナップ(予定)

快快「Y時の話」(作者了解済み)

ポツドール「顔よ」「激情

デス電所「夕景殺伐メロウ」(作者了解済み、日程調節中)

青年団リンク・ままごと「わが星」(作者了解済み)

チェルフィッチュ「三月の5日間」

ニブロール矢内原美邦)「五人姉妹」

五反田団「ながく吐息」(今回)

ヨーロッパ企画「Windows5000」

柿喰う客「真説・多い日も安心」(作者了解済み)

悪い芝居「嘘ツキ、号泣」

シベリア少女鉄道(作者了解済み)

サンプル

東京デスロック

劇団野の上

2010-05-26 トヨタコリオグラフィーアワード2010・ファイナリストが決定

[]トヨタコリオグラフィーアワード2010・ファイナリストが決定

“ネクステージ”(最終審査会)ファイナリストは以下のとおり。(五十音順)

石川 勇太(いしかわ ゆうた)

神村 恵(かみむら めぐみ)

ストウ ミキコ・外山 晴菜(とやま はるな)

田畑真希(たばた まき)

キミホ ハルバート

古家 優里(ふるいえ ゆうり)

“ネクステージ”(最終審査会)の概要等の詳細は、 http://www.toyota.co.jp/tca/ に掲載される。

詳細は下記URLをご参照ください。

http://www2.toyota.co.jp/jp/news/10/05/nt10_029.html

<本件に関するお問い合わせ先>

トヨタコレオグラフィーアワード事務局

TEL:03-3373-1166

トヨタ自動車株式会社

詳細は http://toyota.jp/ をご覧ください。

2010-05-23 遊劇体と悪い芝居

[]遊劇体♯49〈遊劇体×泉鏡花オリジナル戯曲全作品上演シリーズ6 〉「多神教」

遊劇体♯49 〈遊劇体×泉鏡花オリジナル戯曲全作品上演シリーズ6〉

『多神教』

作:泉鏡花 演出:キタモトマサヤ

日時 2010年5月21日(金)〜25日(火)

※受付開始は開演の60分前、開場は30分前です。

5月21日(金)19:30

22日(土)14:00☆/19:00

23日(日)14:00/19:00

24日(月)19:30

25日(火)14:00

☆ 22日(土)14:00の公演終了後、アフタートークを行います。

ゲスト:権藤芳一氏(演劇評論家)

会場  

京都・五條會館五條楽園歌舞練場

京都府京都市下京区西高瀬川五条下ル平居町61-62-63

 京阪本線清水五条駅1番出口下車徒歩5分

 阪急京都線河原町駅2番出口下車徒歩約20分

 京都市営地下鉄五条駅3番出口徒歩約15分

 京都市バス4・17・205系統「河原町五条」「河原町正面」下車徒歩3分

 ※会場周辺には、駐車場・駐輪場はございません。ご来場の際には公共の交通機関をご利用ください。

出演

  

大熊ねこ 坂本正巳 こやまあい 

村尾オサム 戸川綾子 あた吉

条あけみ(あみゅーず・とらいあんぐる)

氏田敦(劇団冬芽舎) 中田達幸  誉田万里子(オリゴ党) 

長谷川一馬(桃園会) 赤城幻太(劇団異国幻燈舎)

濱奈美(劇団ひまわり) 久保田智美  池川辰哉(妄想プロデュース)

塚本


スタッフ 

舞台監督塚本修(CQ)[照明]西岡奈美[音響]大西博樹

舞台美術佐野泰広(CQ)[衣装]是枝真寿美

作曲]わたなべともえ(ベートルズ)[宣伝美術]古閑剛 [写真]竹崎博人

制作岡本司+児山愛(A≠T)〔制作協力〕尾崎雅久(尾崎商店)

カンパニーメンバー]菊谷高広 猪野明咲 鶴丸絵梨

[協力]シバエンジン

[後援]NPO法人大阪現代舞台芸術協会(DIVE

[主催・企画製作]遊劇体

京都芸術センター制作支援事業

[]悪い芝居「らぶドロッドロ人間」ART COMPLEX 1928

f:id:simokitazawa:20100525153928j:image

悪い芝居「らぶドロッドロ人間」

日程:2010/5/19〜5/23 ART COMPLEX 1928(京都)

   2010/6/11〜6/14 王子小劇場(東京)

 作・演出:山崎彬 舞台監督:hige(BS-II)、涌本法明(BS-II) 美術東野麻美

 照明:西崎浩造(キザシ) 音響:中野千弘 衣裳:西岡未央 小道具:梅田眞千子、

 進野大輔 宣伝美術植田順平、山崎彬 演出助手:鈴木トオル、進野大輔

 広報:四宮章吾 制作吉川莉早、大川原瑞穂梅田眞千子

 共催:ART COMPLEX 1928 企画・製作:悪い芝居

 ART COMPLEX 1928 POWER PUSH COMPANY 京都芸術センター制作支援事業

 出演:

 きたまり(KIKIKIKIKIKI):心(彼氏の浮気が許せない女子、施設に自ら入所)

 吉川莉早 :愛(OL 心の彼氏を寝取る)

 大川原瑞穂:由香(愛の姉 小劇場女優 愛と部屋をシェア)

 梅田眞千子:未来(愛の友人 愛と部屋をシェア

 進野大輔 :足川(心のバイト仲間 心に叶わない片思い中)

 四宮章吾 :口男(心の彼氏、施設の侵入者)

 仲里玲央 :胸山(施設の職員、心の父親)

 西岡未央 :尻田(施設の職員、心の母親)

 植田順平 :腰骨(施設の職員 長髪)

 山崎彬  :巨婦人(マザコン口男の母)

<料金>一般前売¥2500 当日¥2800

※各種割引あり

<お問い合わせ>悪い芝居 http://waruishibai.jp

 演劇のスタイルや演出を作品ごとに変化させるのは最近の若い劇団(柿喰う客、ままごと、東京デスロック、快快……)の特徴のようだが、悪い芝居もその典型。ただ、これまでは作品世界とそのスタイルがピタリとはまる感じがなかったのも事実だが、今回はよく合致したかも。舞台は2階建て構造になっていて、階上が「こころ」という名前の女の子の部屋がリアルなセットで作りこまれている。階下とその部屋の外側は「森の世界」と設定されており、そこは森のようなあるいは病院施設のようなイメージが混在しているが、リアルというよりは不思議さがただような空間である。

 「らぶドロッドロ人間」という芝居はこの2つの世界物語が同時進行していくような構造となっている。互いに独立した2つの世界が同時進行していくという物語構造は最近では東浩紀の「クォンタム・ファミリーズ」がそうだし、もっというなら「1Q84」をはじめとする村上春樹小説にも頻出する構造で、「セカイ系」的ともいえるし、今風ともいえなくはないが、逆に言えばそれだけではそれほど珍しいわけではない。

 今回の悪い芝居の独自の工夫と思われるのは階上の「部屋の世界」と「森の世界」ではそれを体現する俳優の演技のスタイル自体がまったく異なり、しかもそれが通常のように交互に展開していくだけではなく、時にシンクロ(同期)しながら同時多発的に進行していくということだ。

 複数の部屋で起きる出来事が同時進行していくという作劇法は最近ではポツドール三浦大輔が「顔よ」「恋の渦」などで用いており、異なる演技体が同じ舞台上で同時に展開していくという演出法も山の手事情社のハイパーコラージュなど過去に例がないわけではない。ただ、今回の悪い芝居「らぶドロッドロ人間」はその2つの手法を組み合わせたのがアイデアで、階上の「部屋の世界」では登場人物の演技は比較的リアルで、青年団あるいはポツドールによくあるような群像の現代口語演劇で展開される。これに対し、「森の世界」に登場する俳優らの演出・演技法はある意味80年代演劇的。部屋の世界での演技とはまったく違い、賑やかにあたり狭しと飛び回ったり、殴り合いをしたりしている。

 

 詳しい作品についての分析は後ほど台本を手に入れてから、時間がある時に書こうと思うが、大ブレイク寸前の若い劇団ならではの勢いを感じさせる作品。こういう勢いのある時期の集団特有の魅力というのは惑星ピスタチオ、遊気舎、シベリア少女鉄道ポツドール、五反田団、ダンスで言えばイデビアン・クルー珍しいキノコ舞踊団など過去にも何度も立ち会ってきたが、今の悪い芝居にも同種の匂いというか輝きを感じ取ることができる。客演のきたまりもダンサーとしての特異な身体能力を発揮して大活躍。京都公演は終了したが、これからはじまる東京公演は要注目である。

2010-05-22 BATIK「SHOKU」@サンケイホールブリーゼ

[]BATIK「SHOKU」@サンケイホールブリーゼ

BATIK「SHOKU」サンケイホールブリーゼ)を観劇。

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 構成・演出・振付:黒田育世

 照明:森島都絵[インプレッション] 音響:山田恭子 舞台監督:寅川英司+鴉屋

 衣装後藤寿子 制作:ハイウッド

 出演:植木美奈子大江麻美子、梶本はるか、田中美沙子、寺西理恵、西田弥生、矢嶋久美子

 黒田育世の代表作である「SHOKU」のひさしぶりの関西公演(大阪では初)である。この作品にはいろんなバージョンがあって最初に見たのは黒田自身が踊ったソロバージョン。その後、シアタートラムBATIK版を初演。前に関西で見たのは2006年8月*1だから、その時からは4年が経過している。最近では昨年の「踊りに行くぜ!!」in福岡で短縮版の上演を見ていて、これが素晴らしい出来栄えだった。だが、これが黒田育世自身が出演していないバージョン。この時に本人に聞いたところでは「最近は自分が出演しない時もある」ということだったのだが、実は今日はロングバージョンでもあるし、黒田自身も出演するんだと実際に見るまで、勘違いをしていたこともあり、本人が出てないのはちょっと肩透かしをくらったような気がした。

うむを言わせぬような群舞の構成力の素晴らしさ。黒田育世の振付家としての端倪すべからざる力を見せつけられる思いがした公演であった。振付家には独自の身体言語の開拓においてその力を発揮するタイプと個々のダンサーのムーブメントというだけではなく、複数のダンサーの配置や動きによって、舞台上で空間構成をしていくことに優れたタイプがある。ソロダンサー出身の振付家が多いことなどもあって、後者のタイプは日本では前者と比べると稀な存在で、これまで上海太郎舞踏公司の「ダーウィンの見た悪夢」の「進化」のシーンで見せた上海太郎の振付や複数の作品で見せたイデビアン・クルー井手茂太の振付などにその数少ない例外を見てきたが、黒田育世もそういう面において、それに劣らぬ才能を持った振付家であることをこの作品を見て改めて確信させられた。

 以上が4年前の関西公演の時の感想でそれは基本的には今回も変わりはないのであるが、伊丹との大きな違いはその時には中心になって踊っていた黒田が今回は出演していないことだ。実は福岡で黒田出演しないバージョンを初めて見た時には黒田が出演している場合にはどうしても舞台の最中、無意識に彼女の動きを目で追ってしまい、そのせいで全体の群舞の構成などに目が届かなかったのだが、黒田がいない場合にはそういう中心が存在せずにいままで以上に個々のダンサーの顔が見えてくる。「だから、この方が作品としてはいいのではないか」と思い、そして同様のことを黒田自身にも話した。そして、それは今回も変わりはないのだけれど、福岡の時のイムズホールサンケイホールブリーゼ空間の大きさの差も関係あるかもしれない。あるいは福岡の時のメンバー(寺西理恵、伊佐千明、中津絢香田中美沙子、大江麻美子、梶本はるか)と比べると若干の入れ替わりがあり、これも若干印象の違いに関係したかもしれないのだが、黒田が出演していた時と比べるとほんの少しだけではあるけれど、線の細さが気になったのも確かなのだ。

 そういう細かな差異はあるとしても、BATIKがやはり日本コンテンポラリーダンスにおいてワンアンドオンリーを感じさせるのは、黒田育世ならびにBATIKというカンパニーに魅力はやはり鍛えられたダンサーたちの強靭な身体能力と、それをもってさえ極限状態に追い込むような黒田育世の振付・演出との間の高度な緊張関係というかフリクション。それがそのまま作品の主題や方向性を体現するように位置づけられていることだ。

 これは特に東京の最近のコンテンポラリーダンスによく見られるような新ジャドソン教会派風だったり、あるいは言葉を使った「演劇のようなダンス」などとはまったく対極をいく動きで、本人でないのではっきりしたことは分からないけれども、例えば桜井圭介氏はこれをおそらく「コドモ身体」とは認めないだろうと思うけれども、私はこれを「アンコントローラブル(制御不能)な身体」の実例として、見かけはずいぶん違うけれども矢内原美邦と双璧ではないかと考えている。

 ただ、共通点はあっても、矢内原と黒田の間には大きな違いがある。実はこの日、舞台終了後に森山開次と黒田育世によるアフタートークがあり、その中で森山が触れたのが、「同じ踊るといっても男と女では根本的な差異があるのではないか」ということで、確かに黒田の作品には作品において「女性性」と「性」が剥き出しに表出されるというのが大きな特徴となっていおり、この「SHOKU」という作品においてもそれは例えば「赤い」衣装であったり、パフォーマーのまるであえぎ声を思わせるような激しい息遣いであったり、音楽リズムに同期しての激しい動きだったりする。

 話の流れの中では「男」と「女」の性差のような形で語られていたけれど、実は私は森山が話した話の中にはもうひとつ別の対立軸があって黒田のダンスがなになのかということを考えるのにキーワードとなってきそうな気がする。それは森山が話したダンサーが「演じる」ということだ。例えば森山の「TSUBASA」という作品で彼は民話「鶴の恩返し」をベースにしてダンスを構築。ここで「鶴」を演じるわけだ。「鶴」になるといってもいいのだが、これはバレエなどがその典型だが、歴史的に形式が確立されてきたひとつのあり方であった。これは「白鳥の湖」などを考えればすごく分かりやすいのではないだろうか。黒田以降に登場した振付家で同じく「女性性」「セクシャリティー」の問題に焦点を当てた作品を作り続けている振付家・ダンサーにきたまりがいる。実は私は彼女のダンスの本質はパフォーマーの「キャラ立ち」ということがあり、それはすなわち「演じる」ということで、ここに大きな差異があることが分かるだろう。

 「演じる」ではないダンスには実はもうひとつの系譜があり、それはマリウス・プティパからバランシンマース・カニングハム、そしてW・フォーサイスに受け継がれた運動性に特化したアブストラクトダンスだが、もちろん、これも黒田の作品とはもうひとつの対極である。

 それでは黒田のダンスにはどんな特徴があるのだろうか。それはダンサーがなにかに「なる」のではなく、また「運動性」という抽象的な存在物に仮象するのでもなく、ただ、そのものとしてそこにある。すべてを剥ぎ取り剥き出しにしていくダンスだ。これは実はある種の舞踏が目指していたものと通底ところもないではないが、黒田の独自性は圧倒的な運動負荷を連続してダンサーにかけ続けることで、ダンサーが持っている「演じる」ことや「身体を制御して動く」こと、そしてそういうことを可能にするような訓練によって獲得された技術(スキル)を無化するような振付・演出により「剥き出し」のダンサーの根源的な「性」「生」そのものをそこに立ち現れるようにさせようということにあるのではないだろうか。実はテレビ放映では「猥雑」などと表現されることもあった「SHOKU]ではあるが、記号ないし象徴的なレベルで性を連想させるような隠喩(メタファー)ないしもっと露骨かつ直接的表現(唾を口から垂らすとか)もあっても、実際に見た印象ではそうでもないのは同じエロスでも「性的」というよりは「生」を感じるからで、その理由はダンサーの「剥き出しの生」がそこにあるからではないかと思う。 

 最後に矢内原美邦に戻ると、矢内原の場合、彼女が演劇にも興味を持っていることからも分かるように、ダンスの場合でもやはりダンサーは社会的な関係性を持ってなにかのキャラを演じている。この場合、今までにない動きだから面白いというのを除いて、そうならばこの場合、矢内原にとってこの動きに負荷をかけて生まれてくるフリクションはどんな意味を持っているのかということについてはもう少し考えてみないといけないとは思うのだが、少なくともそれが黒田がそうであるような「剥き出しの生」ではなさそうなことは確かなようで、ここに両者の大きな差異はある。 

2010-05-16 青年団とチェルフィッチュ

[]青年団革命日記」@こまばアゴラ劇場

革命日記』

作・演出:平田オリザ

2008年、執筆後10年の時を経て、初めて平田オリザ自身の手で演出された幻の戯曲革命日記』。共同体の臨界点を鋭く描写し、前回、若手中心の座組ながら脅威の動員を記録した伝説の1本が、変革の予感渦巻く2010年青年団本公演として再演決定!

出演 能島瑞穂 福士史麻 河村竜也 小林亮子 長野海 佐藤誠 宇田川千珠子 海津忠 木引優子 近藤 強 齋藤晴香 佐山和泉 鄭亜美 中村真生 畑中友仁

スタッフ 舞台美術:杉山 至 照明:岩城保 衣裳:有賀千鶴 演出助手:鹿島将介 玉田真也 宣伝美術:工藤規雄+村上和子 太田裕子 宣伝写真:佐藤孝仁 宣伝美術スタイリスト:山口友里 制作:木元太郎

会場 こまばアゴラ劇場

東京都目黒区駒場1-11-13 TEL.03-3467-2743

京王井の頭線駒場東大前」駅東口より徒歩3分

青年団革命日記」は[P4]合同公演の「Fairly tale」として平田オリザ書き下ろし、1997年に安田雅弘の演出により利賀村の新緑フェスティバル、彩の国さいたま芸術劇場で上演されたものだ。初演から10年目にあたる2008年に平田自身の改訂・演出により、青年団若手公演として上演され、今回はその再演として初めて本公演としてこまばアゴラ劇場で上演された。

 初演の時には外部への書き下ろし作品ということから気がつかなかったのだが別役実を原作とした1997年の「マッチ売りの少女たち」(伊丹青山円形劇場)、太田省吾を原作とした1998年「新版・小町風伝」(水戸伊丹湘南台)の上演はあったものの、この間、平田のオリジナルの完全新作はなく、「Fairly tale」の次の新作が「海よりも長い夜」(1999年)。市民運動の集団の崩壊を描いた「海よりも長い夜」と同様にこの「革命日記」はテロ行為を計画、実行に移そうとしている革命組織という一般の人たちにとっては非日常的な集団を描きながらも「個と集団の対立を通じての集団の崩壊」というほぼ同じ問題群を扱おうとしている相似的な作品といえるかもしれない。  

 感情をあまり出さずにぼそぼそとしゃべるなどの演技の特徴から「静かな演劇」などとも呼ばれた平田演劇だが、この「革命日記」あるいは「海よりも長い夜」では登場人物は明確かつ破滅的に対立しあい、時に大声で怒鳴りあう。以前から私は平田オリザ演劇を「関係性の演劇」と評してきたが、人間同士の関係性の精密な描写が平田の持ち味だとした時に平田の芝居で登場人物が静かで、怒鳴りあったりしないのは閉鎖的な人間関係の中で決定的な対立を回避するための生活の知恵とでもいうべきで、平田が例えば研究室などを舞台に登場人物を描く時に彼らは明日もまた顔を突き合わせて生活していかなければならずそういうなかでは決定的なカタストロフ(破局)は回避する、そういう現実を舞台は映しているからだ。

 であるならば、集団のメンバーが集団の崩壊もいとわないような決定的な対立に至るそういう集団の終末的な状況においては平田舞台でも怒号が飛び交ったり、大声で言いあったりするということは普通に描かれていく。

 ここで描かれるのは(おそらく新左翼系の流れをくむ)左翼革命組織のアジトのある1日(のうちのリアルタイムの1時間半)である。ここはメンバーのうちひと組の夫婦が住んでいる家で、この日は空港襲撃のテロ計画の最終確認の日なのだ。ここには非合法活動組織のメンバーのほかにも、表向きの隠れ蓑であるボランティア活動の支援メンバーや近所の人たちも訪ねてくる。打ち合わせをしようと三々五々集まったメンバーだが、最初からテロのやり方をめぐり、メンバー間に対立がある様子。しかも外部からもたびたび邪魔が入りなかなか論議は進まない。

 「革命日記」「海よりも長い夜」ともに興味は集団とその崩壊ということにフォーカスしているが、こうしたことに平田が興味を抱いた大きな動機はやはり当時まだ生々しかった「オウム真理教」事件であろう。また、このすぐ後の2002年には「9・11」の米同時多発テロも起こり、そういうことも彷彿とさせるところもある。ただ、この「革命日記」をいま見るとそれ以上に哀しい日本人の戯画に見えることも確かだ。こちらは情けない大人たちだが、こうした崩壊しつつある組織の退廃はなにも革命組織だけに限らず、企業にも政治にもそこここに見え日本を覆いつくしているように思える。

[]チェルフィッチュホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」@ラフォーレミュージアム原宿

2010年5月7日(金)〜5月19日(水)

会場:東京 ラフォーレミュージアム原宿

作・演出:岡田利規

出演:山縣太一、安藤真理、伊東沙保、南波圭、武田力、横尾文恵

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http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20100305

@simokitazawa 平田オリザ青年団革命日記」もいま見るとこれまで以上に哀しい日本人の戯画が見える。こちらは情けない大人たちだが、こうした崩壊しつつある組織の退廃はなにも革命組織だけに限らず、企業にも政治にもそこここに見え日本を覆いつくしていると思えた。

16 minutes ago webから

@simokitazawa チェルフィッチュホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」観劇。面白かった。やはり、こういう種類の若者たちを描かせたら、岡田利規の活写力は群を抜いている。登場人物たちのどうしようもない情けなさに笑った後、少し哀しくなったが、これが日本の凋落の現実を象徴しているとも思う。

21 minutes ago webから

2010-05-15 井手茂太ソロダンス「イデソロリサイタル」サンケイホールブリーゼ

[]緊急フォーラム文化政策舞台芸術のこれから

精華演劇祭・特別企画

フォーラム平田オリザ氏に聞く、文化政策舞台芸術のこれから


昨年秋に起きた政権交代は、もちろん舞台芸術に関わる私たちにとっても、無関係ではありません。

もっとも象徴的なのは、2010年秋にも法律制定の動きが本格化すると言われている「劇場法(仮称)」の問題です。具体的に、「劇場法(仮称)」はどのような影響を及ぼすのでしょうか。内閣官房参与としてこの問題にも取り組んでおられる平田オリザ氏をお招きして、文化政策未来についてお聞きします。

――劇場劇団の関係は?

――公立と民間の劇場の在り方は?

――公的助成金の行方は?

興味のある方はぜひお越しいただき、直接疑問をぶつけてください。

日時|5月15日(土) 19時〜21時30分(終了予定)

料金|無料

定員|100名

申込|お名前、所属(あれば)、連絡先、参加人数を添えて、Web予約フォーム、またはTEL・E-mailにて精華小劇場までお申込ください。先着順で定員になり次第締め切ります。

精華小劇場 http://www.seikatheatre.net

TEL 06-6643-7692(11:00-18:00) E-mail info@seikatheatre.net

主催|精華演劇祭実行委員会・精華小劇場活用実行委員会・大阪市

協力|NPO法人大阪現代舞台芸術協会


2010-05-13 twitter版お薦め芝居6月

[]twitter版お薦め芝居6月

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twitter版お薦め芝居6月

twitterお薦め芝居6月 クロムモリブデン「恋する剥製@HEPHALL・赤坂RED THEATER★★★★ 「あなたには中身がないから」そう言われて女に振られた口先だけの剥製男。彼は恋愛がうまく出来ない。男はその口先を買われて「占い」の世界に。クロム1年ぶり大阪登場。

twitterお薦め芝居6月 柿喰う客「露出狂」王子小劇場・精華小劇場★★★★ 七味まゆ味、コロ、深谷由梨香ら柿喰う客女優陣に加え、山脇唯(ヨーロッパ企画)ら客演を加え、オール女性キャストで送るスポ魂活劇。今回はどんな演出スタイルが飛び出すか。

twitterお薦め芝居6月 快快「SHIBAHAMA」東京芸術劇場★★★★ 今もっとも注目の若手劇団が快快。多摩美出身だけあって、美術 、映像、衣装音楽などすべてにおいてセンスのよさが感じられる快快だが、今回取り組むのはなんと古典落語の「芝浜」。どうなるだろうか。

twitterお薦め芝居6月 ベトナムからの笑い声ベトナムガエシ」@精華小劇場★★★★ 今もっとも純度の高い笑いを追求するのがベトナムからの笑い声。ひさびさの大阪登場は必見だ。ほぼ日本語ではない会話劇、タイトルから妄想させる不条理劇、映像作品、エセミュージカルの4本オムニバス。

twitterお薦め芝居6月 SPAC「ペールギュント静岡芸術劇場★★★★ ヘンリックイプセンの代表作を宮城聰が演出。タイトルロールのペールギュントを演じる武石守正、SPACの新ヒロイン、たきいみきらSPAC俳優陣による音楽劇。

twitterお薦め芝居6月 SPAC「王女メディア舞台芸術公園 野外劇場「有度」★★★★ 宮城聰ク・ナウカ時代の代表作をSPAC芸術監督就任後初めて上演。また、SPACでは初めて美加理が客演。嬉しいことだが、これもSPACの俳優たちが成長してきたという宮城の自信の表れか。

2010-05-12 大阪松竹座「団菊祭五月大歌舞伎 昼の部」

[]「団菊祭五月大歌舞伎 昼の部」@大阪松竹座


昼の部

一、摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)

  合邦庵室の場

            玉手御前  菊之助

             俊徳丸  時 蔵

             浅香姫  梅 枝

             奴入平  團 蔵

            母おとく  東 蔵

            合邦道心  三津五郎


二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)

           武蔵坊弁慶  團十郎

           富樫左衛門  菊五郎

            亀井六郎  家 橘

            片岡八郎  権十郎

            駿河次郎  高麗

           常陸海尊  秀 調

             源義経  藤十郎


三、天衣紛上野初花

  河内山(こうちやま)

           河内山宗俊  三津五郎      

           松江出雲守  錦之助

 「摂州合邦辻」*1の玉手御前を菊之助が熱演。この玉手御前と俊徳丸の話は歌舞伎文楽以外にも蜷川幸雄演出の舞台でも知られる。最近では京都に本拠を置く若手劇団木ノ下歌舞伎」が上演したのも記憶に新しい。歌舞伎バージョンを見たのは初めてであるが、やはり、いくら歌舞伎とはいえ、この話の終わり方は相当無理があるのではないだろうか。 

2010-05-09 京都の暑い夏201015周年記念公演5th Anniversary Performance“3×Ch

[]京都暑い夏2010・15周年記念公演5th Anniversary Performance“3×Choreography“@京都芸術センター

世界のエッジに立つ振付家3名と若手ダンサーの豪華な競演。

[日時]5/8(土)19:00開演 5/9(日)17:00開演

[会場]京都芸術センター フリースペース

[料金]前売 2,000円 当日2,500円

受講者は¥500引き。*客席に限りがありますので、ご予約はお早めに。 »お申込み←完売しました。(5/8の当日券はありません。)

Choreography 1 チョン・ヨンドゥ「between」

2009年のフェスティバルでワークインプロレスを行なった作品をもとに、オーディションで選出されたダンサーとともに京都にて共同製作を行います。15周年記念フェスティバル委託作品。

[演出・振付]チョン・ヨンドゥ(韓)

[出演]中神惟 福井幸代 京極朋彦 高室久志 Emmi Venna

Choreography 2 エリックラムルー「HUSAIS(ユザイス)」カーン国立振付センター(仏)芸術監督のエリックラムルー+ エラ・ファトゥミによる処女作品にしてバニョレ振付家コンクールSACD賞受賞作品(92年)。ベルリンの壁崩壊以前の閉塞した世界情勢と理解の不能性をつきつめた’90年代の香り高い傑作。

[演出・振付・音楽]エリックラムルー エラ・ファトゥミ

カンパニー・ファトゥミ・ラムルー)(仏)

[出演]合田有紀 野村香子

Choreography 3 エマニュエル・ユイン「Cribles(クリブル)」

アンジェ国立振付センター(CNDC)の芸術監督エマニュエル・ユインによる最新作。CNDCからダンサーが来日し、日本人ダンサーと共同製作します。京都アンジェ・エクスチェンジプログラム

[演出・振付]エマニュエル・ユイン(仏)

[振付アシスタント]ヌノ・ビザロ(仏)

[出演]福岡まな実 百田彩乃 戸田はる香 佐伯有香 Johann Nohles Marie Orts ほか

2010-05-05 宮北裕美+垣尾優「Emergency Stairs」@京都芸術センター

[]宮北裕美+垣尾優「Emergency Stairs」@京都芸術センター


京都芸術センター開設10周年記念事業フィナーレ

「オープンキャンパス」

最終日の5日に、ショーケースという形で作品発表をいたします。


19:00−20:30  てんこもり堂『紙風船』(作・岸田國士)[演劇]

        垣尾優 & 宮北裕美『Emergency Stairs』[ダンス]

会場:フリースペース 入場無料

http://www.kac.or.jp/bi/311

2010-05-04 大阪松竹座「團菊祭五月大歌舞伎」夜の部

[]「團菊祭五月大歌舞伎 夜の部」@大阪松竹座


夜の部

一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)

  十種香

            八重垣姫  時 蔵

            武田勝頼  錦之助

            腰元濡衣  菊之助

           白須賀六郎  萬太郎

            原小文治  権十郎

            長尾謙信  團 蔵


二、銘作左小刀

  京人形(きょうにんぎょう)

            左甚五郎  三津五郎

           京人形の精  菊之助

             井筒姫  巳之助

             奴照平  秀 調

             おとく  萬次郎


三、梅雨小袖昔八丈

  髪結新三(かみゆいしんざ)

  白子屋見世先より

  閻魔堂橋まで

            髪結新三  菊五郎

            手代忠七  時 蔵

            下剃勝奴  菊之助

          白子屋娘お熊  梅 枝

          加賀屋藤兵衛  高麗

            車力善八  秀 調

         白子屋後家お常  家 橘

         家主女房おかく  萬次郎

           家主長兵衛  三津五郎

          弥太五郎源七  團十郎

 團菊祭が大阪松竹座で行われるというのは珍しいなと感じてはいたのだが、歌舞伎には門外漢ゆえ、あまり深くそのことについて考えていなかった。どうやら、それまでの常打ち小屋であった歌舞伎座がしばらく使えなくなるということで、松竹としては大阪にもこれを持ってきて、新たな市場開拓をということがあったみたいだ。そういうことで、大阪松竹座の五月大歌舞伎團十郎菊五郎の一座による團菊祭となった。

 とは言っても、御大である團十郎菊五郎が登場するのは夜、昼ともに1演目づつである。團十郎舞台復帰してここまで健在ぶりを見せてくれたのは嬉しいことだが、現在の健康状況では團菊祭といえども、何役も入れ替わり出演するのは無理で、これが精一杯なのであろう。

 その空隙を埋める役割を今回担うことになったのが、菊之助三津五郎。特に菊之助は3演目出ずっぱりの奮闘だが、この日の場をさらったのは三津五郎で、彼の活躍なしでは今回の座組みは持たなかったのではないだろうか。初めて見た演目だったが、この日の白眉と言えたのが「京人形」という舞踊劇。 

 

2010-05-02 渡辺源四郎商店「ヤナギダアキラ最後の日」@下北沢ザ・スズナリ

[]渡辺源四郎商店「ヤナギアキラ最後の日」@下北沢ザ・スズナリ

f:id:simokitazawa:20100504034912j:image

 作・演出:畑澤聖悟 照明:浅沼昌弘 音響:藤平美保子 舞台美術山下昇平

 装置:渡辺源四郎商店 舞台監督:田守裕子 プロデュース:佐藤誠

 ドラマターグ・演出助手:工藤千夏 宣伝美術:木村正幸 制作:渡辺源四郎商店

 出演:

 宮越昭司 :柳田明

 工藤静香 :柳田智英

 牧野慶一[劇団雪の会]:村岡繁春

 工藤由佳子:村岡真由美

 工藤貴樹 :佐藤優

 畑澤聖悟 :宮田良一

 三上晴香 :東出美加

 吉田唯  :清原清彦

 山田百次[劇団野の上]:木崎五郎

畑澤聖悟(渡辺源四郎商店)の舞台が現代口語演劇のように見えるのは確かなのだが、それだけではないと改めて気がついたのは割と最近のことである。その最大の特徴はその神話・寓話的構造にある。神話・寓話的構造などと小難しげな言葉を突然持ち出されても困ると思っている人が多いと思うが、神話というのは「世界はこのようなものである」ということをお話という形式で示すということで、それはすなわち、そこで提示される物語の構造が世界そのものの構造と相似的であるということだ。

 そして、神話の場合、世界の構造を分りやすく提示するために例え話として現実にはありえないような突飛な設定を導入するということがあるが、この「ヤナギアキラ最期の日」にもそういう仕掛けがある。

舞台となるのは十和田湖畔にあるホスピス。ここに80をとうに超えた老人である柳田明(宮越昭司)が付き添いである智英工藤静香)と一緒に入院している。このホスピスにはほかにも宮田良一(畑澤聖悟)ら元気に見えるが実は死期の近いがん患者らが入院しており、この日はさらに一見してヤクザと分る村岡繁春(牧野慶一)が妻と子分を伴い最期の日々をここで過ごすために入院してきた。

 さらにそこにフィリピンから来たアロハシャツを着てサングラスを着た軽薄に見える若い男が訪ねてくる。どうやら、死ぬ前に人目会いたいと現地の新聞に広告を掲載したのに応えての来日らしい。この舞台の眼目のひとつ山田百次が演じる木崎五郎がいったい何者なのかということなのだが、新聞に掲載されたという「人魚の生き胆」という言葉、あるいは舞台の冒頭近くで柳田明と智英が交わす木崎についてのやりとりなどいくつかの伏線からそれは徐々に明らかにされていく。(続く)