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中西理の下北沢通信(旧・大阪日記) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-11-28 佐々木敦×環ROY×吉田雅史「日本語ラップの『日本語』とは何か?」 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

佐々木敦×環ROY×吉田雅史「日本語ラップの『日本語』とは何か?」

昨今のMCバトルを端緒とする日本語ラップブーム。いまだその勢いはとどまることがないが、良く考えてみれば「日本語ラップ」という表記は、少々特殊な表現ではないだろうか。かつて起こった「日本ロック」論争は、日本語でロックを歌うことが可能かどうかという議論だった。やがて日本語のロックが世に溢れ出すと、「日本語」という修飾語は不要なものとなった。同様に「日本語ラップ」が可能であることを今さら疑う者はいないだろう。しかしながら「日本語」という修飾語がジャンル名から取り去られることは、今のところなさそうだ。

その日本語ラップリリックを追ってみれば、いわゆるバイリンガルスタイルと言われる、英語を多く取り入れたスタイルも多く聞かれる。一方で、環ROYの最新作『なぎ』は、日本語の表現にこだわった作品だ。その詩作方法は、短歌J-POPを参照するなど、主にアメリカのそれを参照する多くのラッパーたちとは一線を画すものだ。またダンサーの島地保武とのライブパフォーマンス『ありか』では、即興を軸にしたダンスラップの交点という別の角度から、日本語という言語の可能性を追求している。

そんな日本語に独自のこだわりを持つリリシストと、『ニッポン音楽』などの著書でも日本語の歌について考察してきた佐々木敦、自身もラッパー視線で『ラップは何を映しているのか』などで日本語ラップに着目する吉田雅史の3人が、「日本語のうた」としての「日本語ラップ」について議論する。

吉田雅史によるレクチャートークを聞くのはこれで2回目。面白いが、全体を大きく俯瞰するというよりも個別のアーティスト(この日は環

ROY)の他との微細な差異をクローズアップして照射していくようなところがあって、その分析の手つきには巧みなものを感じるし、興味深くはあるのだが、やはりそれは今回の場合だったらラップとかヒップホップの海外国内の流れにある程度は精通している人がメインのターゲットなんだろうと思った。前回はSCOOLでビートメイクについての話を聞いて「群盲、象をなでる」の感がしたと感想を書いたが、今回もそれは相変わらずで、何度かレクチャーを聴講していけば次第に空白部分が減っていくのかもしれないが、こういうのはそうでもないかもしれない。

環ROYについては以前contact Gonzoとコラボをパルテノン多摩の野外ステージで見たことはあって、ラッパーと呼ぶにはちょっと変わった感じの人だなとは思ったが、楽曲についてはあまり聞いたことがなかった。今回レクチャーでも話題になった「ふることぶみ」という曲をYoutubeで聞いて見たのだが 、曲もよかったし、いささか異端児だがこういうのラップといっていいんだというのが興味深いと思った。

このトークではいとうせいこうについては一瞬ふれはするものの具体的な言及はついになく、ブッダブランド「人間発電所」のリリックの分析から論を始める。日本語としては異常に畳語が多いほか文法的にも日本語に不適な用例が散見されるなどの特徴をあげつらっているのだが、次にくらべるのが環ROYでは飛躍がありすぎではないか。


私が知りたかったのは単純に私でも名前は知っているスチャダラパーRHYMESTERリップスライムキック・ザ・カン・クルーなどといった人たちが日本語ラップにおいてはそれぞれどういう役割を果たしてきたのかというけっこうベタ歴史だったのだが、ここはそういうことの語られる場ではなかったようだ。

 ラップについてはまったくの門外漢ではあるけれど少し以前から興味は持っていて、それには大きく分けて2つのルートがある。ひとつはままごとの「わが星」や杉原邦生演出時の木ノ下歌舞伎のようにポストゼロ年代の演劇においてラップ舞台上に登場するには珍しくなくなっていて*1、現代口語とラップの関係に興味があること*2

 もうひとつは私の好きなアイドルももいろクローバーZアイドルとしては珍しくラップ曲を歌い、そうでない曲の場合も歌唱を一部がラップであるという曲が数多く、そういうことがラップ本丸ファンからするとどのように見えているのかが知りたかったこと。

 実はこのうち後者はもちろんそのことが直接触れられたわけではないけれど、表を使ってラップおよびラッパー演者が置かれている構造の分析のようなことがあって、それではラップというのは単なる音楽のスタイルやフレージングなど歌唱のスタイルをいうのではなくて、作者/演者/歌われる意味内容が3位一体のようになって成立するんだということが言われていて、そういう文脈の中では例えばアイドルだからという以前に他人の書いたリリックを別の演者が歌うということについての拒否感情からいえば、例えばももクロラップ曲をラップファンが受け入れたりするというようなことには私が予想した以上の大きな壁があるんだなというのが分かったという意味で興味深かった。

素人の私にも分かる程度のことでももクロラップ関係を紹介するとももクロの曲にラップパート多いのは以前在籍しいまは女優をしている早見あかりが声のキーが低く、皆と同じキーで歌えなかったため、彼女のためラップパート付け加えてもらい、そこに早見だけでなく他のメンバーも入れ替わり立ち代わり入ることになり、アイドルグループなのにどの曲にもラップが入るのが普通のことになっていたという経緯がある。

実は他の分野でもそういうことはあるのだが先に紹介した2つのこと、演劇ももクロはことラップに関しては無関係なはずだが、いくつかの結節点において関係しあっている。

最初はいとうせいこう。彼が日本におけるラップの創始者の重要なひとりであることはラップおよびヒップホップ世界では常識のようだ。そういえばラップを使った演劇の例としてリーディング公演「ゴドーを待ちながら」を演出した宮沢章夫のことを取り上げたが、いとうせいこうは宮沢が率いたラジカルガジベリンバシステムの重要なメンバーのひとりでもあった。

いとうせいこうのことを長々と書いたのはももクロにオリジナルとして提供された最初のラップ曲「5 the Power」を書き下ろしたのがいとうせいこうだったからだ。この曲はその後、ライブでも折に触れ歌われる定番曲になっている。

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5 The POWER - ももいろクローバーZ

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挨拶〜5 The POWER - ももいろクローバーZ

 とはいえ、「5 The POWER」はいとうせいこう作詞MURO、SUI作曲の本格的ラップ曲とはいえ、まだリリックメロディーには若干のアイドル楽曲らしさが垣間見えたのさがあるが、作詞鎮座DOPENESSの「堂々平和宣言」には最初に耳にしたときには驚いてぶっとんだ。

もともとは映画「遥かなるしゅららぼん」の主題歌だったこともあるのだろうが、女性アイドルが歌うと言うことを想定したとは到底思えない曲想である。アイドルラップなどというと一般層にはいまだにEAST END×YURIのようなイメージが強いと思われるが、この「堂々平和宣言」は一度ライブ映像で確かめてみてほしいが、それとは対極的な楽曲なのだ

  「5 The POWER」でももクロがいとうせいこうのリリックをどのように歌いこなしたかを踏まえたうえでのこの楽曲だと思わせるが、あくまで想像だが前者にかかわったアーティストとは世代の違う若い鎮座DOPENESSに対し、レコード会社プロデューサーである宮本純之助が「あなたならどう使う」と挑発した可能性さえあると思っている。

作詞鎮座DOPENESS / 作曲編曲:MICHEL☆PUNCH・KEIZOmachine! from HIFANA・EVISBEATS<iframe width="560" height="315" src="//www.youtube.com/embed/GeTEhGsW2mM" frameborder="0" allowfullscreen=""></iframe>
堂々平和宣言 - ももいろクローバーZ

堂々平和宣言 ももいろクローバーZ

 それというのはこちらはほぼ間違いなくこの曲を受けてと考えているが、「堂々平和宣言」の後に今度は 「5 The POWER」製作に作曲者として参加していたMUROが「もっ黒ニナル果て」という楽曲を提供しているのだけれど、これが「もっ黒」という言葉に代表されるようにアフリカ系アメリカ人の音楽としてのラップをそれまで以上に感じさせる曲で、こうした楽曲キャッチボールにはももクロ媒介としたバトル合戦のような部分が感じられ、ある意味「ヒップホップらしさ」を感じるからだ。

 ももクロラップ曲の最新バージョンは「Survival of the Fittest -interlude-」

作詞サイプレス上野 作曲:invisible manners 編曲:invisible manners、伏見蛍)。

- YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=XbM-x-AXNNE:embed:cite

*1:最近では宮沢章夫演出のリーディング公演「ゴドーを待ちながら」にもセリフをラップで語るという趣向が登場していた

*2日本語ラップというのでそういうことが語られるかなと勝手に期待したが、少し聞いているうちに文脈的に全然そうじゃないことが分かった