simpleA記

馬にふつまに 負ほせ持て

所詮、揺れ幅なんよ

前回に引き続き、文学な話をしましょ。


波乱万丈つながりで行くと、お次は、ジェフリー・アーチャー。この人もチョー大変。


この人、国会議員になったり、破産したり、小説が大ヒットを飛ばしたり、牢屋に入ったり、と普通の人の10人分くらいの浮き沈みを経験したの。wikipedia:ジェフリー・アーチャー


個人的な趣味で言うと、ハリウッド映画のような単純かつ大げさなストーリー展開を持つ、彼の作品がお好きなの。『百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)』、『十二枚のだまし絵 (新潮文庫)』・・・


そんな彼の作品の中で、今回ご紹介するのは、『無罪と無実の間』。

無罪と無実の間 (新潮文庫)

無罪と無実の間 (新潮文庫)


この世はね、パーフェクトじゃーないから、あちらこちらにホコロビがあるの。そのホコロビのひとつが、無罪と無実の間にある隙間。


裁判の結果、罪に問いませーん、という「無罪*1」と、
ホントに何もしていませーん、という「無実*2」の間には、
少しだけ隙間*3があって、その微妙な空間でフラフラと揺れ動く物語なんです。


大の大人が寄ってたかって揺れ動くわけだから、そんじょそこらの理由じゃーないの。そこには、じーさんとばーさんの愛が見え隠れし、そんな愛なんてもんに流されてちゃー、社会秩序は保てませーん、という正義まで乱入してくるの。


こーいう物語は、結末なんて、どーでもいいの。揺れ動くメトカーフ夫婦に、どこまでもついていって欲しいよ。人生なんて、所詮、この揺れ幅のことなんよ。も一度言いましょ。人生を評価する指標(大きさ)ってのがあるとすれば、この揺れ幅だけなの。そこんとこを勘違いすると、誰よりも大きな墓を作ろう、なんてくだらん競争に走っちゃうの。あなたの人生、どんくらい揺れてる?


ちなみに、この『無罪と無実の間』ってのは、英語のタイトルだと、「Beyond reasonable doubt」っていうの。「Beyond (a) reasonable doubt」ってのは、法律の用語らしく*4、もしヘンテコな人が翻訳したら、「合理的な疑いを超えて」なんてアホなタイトルになってたのかも。『無罪と無実の間』というタイトルをつけた訳者は、とっても偉ーいと思える一品です。


ってなわけで、結局何が言いたいのかって言うと、「この『無罪と無実の間』は、ジェフリー・アーチャーが破産しちゃったあと、一発大逆転を狙った作品で、ホントに見事、大逆転しちゃったものなの。彼のようなジェットコースター人生は疲れちゃうので、真似はしたくないけど、破産中にこんな物語を書き続けた彼の根性は真似したいよねー。そんな彼の揺れ幅も意識しながら読んでみてね。縦に大きく揺れ動いた人間が書いた、激しい横揺れ物語だよーん」ってこと。

*1:社会における決め事

*2:神様や自然に対する決め事

*3:普通の国なら、「疑わしきは罰せず」というルールがあって、どう考えてもこいつが犯人だ、と思ったとしても、十分な証拠がない場合、無罪にしなくちゃいけないの。そのため、この無罪と無実の間に、ほんの小さな隙間ができるんよ。

*4:http://d.hatena.ne.jp/Barl-Karth/20051111