2008年、ブロガーが選ぶウェブキャンペーンベスト5


アドマン先生にご指名いただいたので、張り切って書いてみようと思います。ウソです。で、ウェブキャンペーン。それで食ってるはずなのに全然覚えてない。やばい。ただ、検索しまくったりするのも何なので、気合いで思い出した5つで行きます。あと、多分出遅れたのでバトンはすでに行き渡っていると思われるので、誰にも回しませんごめんなさい。やりたい人はやったらいいと思います。それと、アドマンはそろそろ機種依存文字をブログに使うのを止めた方がいいと思う。マルイチ、とか。で、ルールは、

1.印象に残ったウェブキャンペーンを5つ、2.その理由、3.バトンを渡す相手を3名指名して、バトンを回してくださいませ!


「ブロガーが選ぶ、2008年度ウェブキャンペーンベスト5」バトン|アドマン2.0@デキる広告マンの作り方
http://ameblo.jp/adman/entry-10182067644.html


とのこと。では、まいります。



  • UT LOOP
  • http://www.uniqlo.com/utloop/
  • 中村勇吾氏の傑作。類似モジュール・大量のデザインバリエーションを(ほぼ)均一価格でさばくというユニクロの、そしてUTの販売方針にうまく乗っかっているため、プロダクトのテンションとクリエイティブのテンションがとても合っていて気持ちよい。そして買いたくなる。CMとWEBが全く同じトーンで展開されていて、もしかしたらWEBは要らないんじゃないかしら、と思いつつも、しっかりと現代を象徴するモチーフである「サンプリング」に落とし込み、いつまででも見ていられる「作品」に仕上げられているところはもうなんつーかすごい。あと、音楽とかワンフレーズの尺とか、何しろノンバーバルでグローバルなところとか、すべていいです。好み。ちなみに、ユニクロのプロモーションは大部分が高いレベルで展開されていて、残る課題は「店舗・チラシ」といった「ザ・販促」部分のクリエイティブトーンと、「WEB」を中心とした「ザ・カンヌ」部分のそれとをいかに合わせてシナジーを生むか、ただそれだけだと思ってます。それができて、うちのオカンとかにまで支持されるようなことがあったら、もう「アガリ」ですね。

  • gremz
  • http://www.gremz.com/
  • 胸を張って「おれ、エコやってます」と言うこと自体が恥ずかしいとかどうとか、そういうレベルの低い議論をしている暇が既にないことを知っている人は知っていて、地球環境はもう「待ったなし」のところまで来ているわけです。んで、身近なところからエコを、なんて考えてもなかなか出来ることは少ないし、特に環境の話で考えると、リサイクルを頑張るくらいならそもそも消費しない方がまし、もっと言うと人間として存在しない方がましかも、という自己否定で自己矛盾な感じに陥るのが関の山で、そう考えると「呼吸をすると地球にやさしい」レベルでないとエコってダメなんじゃないかな、とある種の絶望があったのですが、グリムス。ステキ。何しろブログ書くだけで自然と植樹できちゃう。ブログの内容がアフィリエイトバリバリだろうがエセエコ活動の批判糾弾だろうがとにかくバーチャルな樹木が育ち、植樹はされる。この、「ともあれ、樹は植えます」というのがとても良いな、と思うのです。すばらしい。年末に来て運営者の方ともお話しする機会があり、課題がたくさんあることを伺ったので、何とか一緒に乗り越えてきたいと密かに思ってます。

  • iGoogle
  • http://www.google.co.jp/ig
  • まず、身の回りでずいぶんとiGoogleを使う人が増えたな、というのが実感できている時点で相当イケている可能性が高い。アーティストiGoogleも、誰もが考えつきそうなものだけどアーティストの調整がめんどくさくてサボってた可能性が高いところをちゃんとやりきって、かつまだ続けているというのがすばらしい。マスコットキャラのGさんと自社のアドセンスネットワークをフルに活用した物量作戦も見事で、Yahoo!の担当者は「なぜうちにはアドネットワークがないんだ」と嘆いたとか嘆かないとか。一昔前はPCのメーカーが自社関連プロバイダのページを無理矢理プリセットしていましたが、みんなあっさりYahoo!にしちゃうことが分かってがっかり、みたいな時代もありましたが、ブラウザの「ホームページ」争いは今年も、来年もきっと熾烈なままですね。Yahoo!とかほかのベンダーがどういう逆襲を見せてくれるのか期待。好きなモジュールを組み合わせるだけが正解か? いや、違うだろと個人的には思っています。ちなみに、ホームページを空白にしておくと起動がずいぶん速くなるのでお試しください、なんていう台無しなことを書いてみます。でも速くなるよ。

  • NIKE+THE HUMAN RACE 10K
  • http://inside.nike.com/blogs/humanrace-ja_JP
  • NIKE+は概念として「ひとりで走るランニングは、終わった」と言うものを掲げており、オンライン上ではそれが確かに実現されていて、個人的にもコミュニティを作って競ってみたりしていたわけですが、一体感を担保するためには何かもうひとつ足りんな、と思っていたところに持ってきましたきっちりと、リアルイベント。しかも日本だけじゃなく世界各国で同時開催。この「同時性を共有できる」ことはすごく大きな価値があると思っていて、ニコニコ動画が当たったのもこの辺にポイントがあるだろうし、WEBという「同時性を共有しづらい」メディアにあって、それを無理にWEB上で表現しきろうと(してはいるけど)せずに、ちゃんとリアルに感じさせた、と言うのが評価点です。来年はもっと走ろう。

  • ハジケル・ジャクソン
  • http://spritenew.jp/
  • ティザーの動画(橋から傘さして落っこちるやつ)から強烈に興味喚起され、なんだかんだで90日間のうち1/3くらいは見守りました。ハジケルジャクソン。情報大爆発のこのご時世、テクノロジーでびっくりさせるのももちろんいいですが、こういうアナログ×ゲリラみたいなプロモーションももう一つの方向性としてあると思うのです。アホらしいことを真剣にやる、やり抜く。それが大事かと。で、去年から言ってますが、メディアじゃないところをメディア化させるとか、商品そのものをメディア化させるとか、そういう取り組みがすごく必要だと思うのです。警察に許可取るとか、そういうめんどいこともたくさんあるのですが、2009年は必ず一つ二つは怒られるか怒られないかギリギリのラインで勝負してみたいと思ってます。だって、みんな、怒られるくらいじゃないともう反応しないでしょ。で、ハジケルはいつまでブログやるんだろ。がんばれ。


敢えて訂正とかせずに、思ったままだーっと書きました。書きながら、ほかにも話題になったものたくさんあったなー、とか思ったのですが、まあ、それはまたいつか別の機会に。来年もし同じ趣旨のエントリを書くことになったら、自分が手がけたもので5つ、いや、2つくらいは占めたいな、そう思いました。


それでは、アドマン、あとよろしくね!

広告も変わったねぇ。


仲畑さんの本に続いて、これまた良書。ほんの少しでも広告に関連したお仕事をしている人は必ず読んだほうがいい。



で、読んだだけでは少し物足りなくて、「自分自身にとって広告とは何なのか、そしてその広告はこれから先どこに向かっていくのか」を真剣に考えておいたほうがいい、と思う。以下、読書メモ。

同時性ですよね。いまこの一瞬、何十万、何百万人と同時体験しているよろこび。生中継の興奮こそ、いまも昔もクリエイターたちの最大の強敵、ライバルです。


テレビCMについて、電通杉山氏。確かにほかのメディアでは実現しにくいな。その「よろこび」を証明して魅せたのが2chの「実況板」で、それをエンターテインメントに昇華させたのがニコニコ動画。あたるのには訳がある。

なまじっかの思想家やなんとか党の人なんかよりも、広告のほうがよっぽど思想を売っていますよ。しかも、それがおもしろく展開されているのが、あの当時のアメリカの広告界だった。


オグルヴィロールスロイスDDBのワーゲンなど、古典的名作を挙げながら。確かに、アメリカの優れた広告は思想を売っていると思う。で、もちろん2008年もっとも思想を売ることに成功したのがオバマ氏ね。さすが。

でも、マーケティングというのも、本当は調べることがすべてじゃなくて、調べてそこから企てることを意味するんですよね。


リサーチャー止まりのマーケターにならないように。戦略とコンセプトくらいは常に作っておきたいものです。

「いい土地があれば、いい家を建てたくなる」


電通澤本氏の言葉。確かに。この枠にはいいクリエイティブが似合う、みたいな空気感がなくなったなあ。映画館で流れるCMって叙情的なものが多くて画面の大きさや雰囲気も手伝ってすごく響くものが多いけど、テレビのスポットにもそういうものがあっていいんだと思う。ただ、WEBに関して言えば、「いい土地」なんてほとんど、いや、一個もないかもな。その代わり「そこの土地とあっちの土地をくっつけちゃえ」とか「その土地、全部青くしちゃえ」とかがしやすいんだけど。

バブル崩壊のあたりから変化したように思いますね。それまでは、広告主がつくり手に対して、尊敬の念、リスペクトの気持ちをもっていた。けれども、ある時期からプレゼンテーションが非常に大がかりになって……。(中略)つくる側も芸を見せることよりも、広告主さんの意見をかたちにすることだけに注力するようになった気がします。


バブル崩壊の頃まだこの業界にいなかった人間としては、こういう昔話はうれしい。東北新社中島氏の言葉。この会社に入ってこの仕事を始めて4年、常にこれは疑問に思い続けていて、「与件の整理」から始まる一連の滑らかなプレゼンテーション。ただ、そればっかりやってると面白くもないし、それにそもそもまともな人間が考えればどの広告会社が解釈して提案しても、まあ、なんとなく同じようなものができあがる。それだと差別化できないし、クライアントもちょっと困るんじゃないかな、って。もっと考えないと。

気合いを入れてつくったものなら、伝わると思うんです。演出でも、企画でも、絶対に手を抜かない。どういうふうにお茶の間に響いていくのかを、かなりシビアに想像して、テレビを見ている人の気持ちに思いを馳せてつくっていくしかないと思うんです。


気合いと根性。絶対に手を抜かない。妥協しない。合わせに行かない。大事。

インターネットでは時間軸を表現しにくいから、


うーん、確かに。それは大いなる弱点であり特徴。ここは深堀りして考えたいな。

こういうときこそ「つぎにみんなが幸せになるための目標」のようなものをみんなで共有することが大切だと思うんです。かつてのテレビにはあったんですよね。みんなを幸せにするなにか、が。


それぞれのメディアが誕生した時代背景にも大きく依存すると思っていて、飽食の時代に誕生したWEBは「みんなが幸せになるための目標」にそぐわない予感がしています。じゃあなんなんだろ。やっぱりテレビかな。

でも、新しいコミュニケーションの仕組みを考えるのは得意だけど、「芸」の部分で、人を楽しませることができているかというと、まだそこまで成熟はしていない気がします。お茶の間を楽しませるために舞台で踊りきれる職人芸をもった人は、まだ現れていないような……。


確かに。どきっとした。広告はあくまで表現であって、スキームがすべてじゃない。コミュニケーションデザインなんていう言葉が持て囃されると構造論ばかりが進化して表現がついていかないという結果になると思っていて、すでにそうなっているなと思っていて、結局はインフラ・スキームの上に載るコンテンツ・表現が大事なのであって。確かにメディアプランニングで工夫することはできるけど、それは工夫であって本質ではないはず。


どなたの話にも共通項として必ず出てきているのは、4マス、とくにテレビCM中心の時代と言うのはとっくに終わっている、そしてWEBを活用する重要性はわかっている、ただ、マスがいらないかというとそれは嘘で、必要に応じてメディアニュートラルにプランニングしないといけないよね。ということ。どのような立場にいてもそう思うんだなあ、やっぱり。


広告会社が1社しかなければやり方はいろいろあるんだろうけど、複数者が強烈な競争環境の下日々戦っている、と言う状況にあっては、「あの競合にどう勝とう」みたいな議論が優先されることが多くて、それがちょっとうんざりしてきた。上場企業である以上、企業としての価値向上は株主責任としてあるんだけど、その方針、戦略が広告の提案や表現にまで結構影響を及ぼしている感じがあって、それはあまりいいことではないな、と。よく分からないと思うので例示すると、WEB企業はテクノロジーに強くてしかるべきだから、テクノロジーを活かしたソリューションを提供しよう、みたいなね。その時点でニュートラルじゃなくなってるし、それだといつまで経っても今の状況が変わるはずもなく。


クライアントと消費者を代理するようにしよう。改めて。会社とかメディアとかベンダーの代理してても仕方ないしな。注意。