Marginal

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[ゲームの感想(五十音順)] [読書感想] [記事一覧]

2014-05-04

[]ノーゲーム・ノーライフ6 ゲーマー夫嫁は世界に挑んだそうです ノーゲーム・ノーライフ6 ゲーマー夫嫁は世界に挑んだそうです - Marginal を含むブックマーク

面白かったです。これである意味番外編だからたまんないですね。


僕が作品を見る基準として、その作品の考え方、コンセプトがどれくらいその作品を貫いているかというのがあります

そういう意味で、この巻は作品を統括しうる巻でもあって。

今は負けても次で、そこで届かなければさらにその次で勝つ、一つでも踏み外したら終わりの駆け引きを当然のような顔をして渡り切る、弱さを持って強さに勝つ、一人では届かないことを二人でなら、などなど。


キャラクターの描き方としても総括的ですよね。エルフシンク・ニルヴァレンの口調であったり、「成長しない」フリューゲル、その中にあって例外的ジブリールであったり。「ジブリールのこと、嫌いにならないであげてください」とあとがきで書いてますけど、そもそも趣味のためにシュヴィを襲ったことを除けば*1、たった一体の機凱種であるシュヴィに天撃を使うほどに彼女のことを認めたという「未知」への片りんを見せていたりします。最弱に対する最強を描いたことも含めて。


「なぁ、シュヴィ‐もし俺とおまえ、二人で一人だったら、さ……」

番外編のように構成しつつ、空と白をイメージした偽史であるというのも、上手いです。この世界に生まれ変わりはないということで直接的な因果関係は切りつつ、偽史として語ることにより、この作品主人公である空と白に隣接させつつ描いていますアニメ最初でこの世界に生まれ変わらせてくれてありがとうというような描写がありましたが、そんなイメージもあるのかなと思いつつ。


三巻で成長しない、完成しているという描写がありましたが、だからこそ二人、そしてそれ以上の「ひと」達の力を合わせて、「みんななかよく」世界統一、そして、テトとのゲームに取り組む。

予告の「ふたりでもまだ足りなかった」「”俺ら”で証明してやる」という言葉で、この作品さらなる広がりを感じて、それが描かれるのを楽しみに待ちたいと思います

*1:やっぱだめかも…

2013-09-15

[]SOUL CATCHER(S) 神海英雄 SOUL CATCHER(S) 神海英雄 - Marginal を含むブックマーク

SOUL CATCHER(S) 1 (ジャンプコミックス)

SOUL CATCHER(S) 1 (ジャンプコミックス)

小学校5年生の終わり、

サックスに初めて触り

音楽先生に「お前才能ある」と

褒められてから

音楽にハマりました。

僕の原点です

帯のコメントですが、まさしく神海っちゃんだなと思います。誰かに見つけてもらう、肯定してもらうことがあって、それでそのことにのめりこむ。才能って言葉に関しても否定的ではなく、一人一人にあるもので、別に世界一とかそういう強い意味を持つほどのものでもない。その人を肯定する、ただその程度のものくらいの意味であって。


傑作なのは言うまでもないのでおいといて。

神峰の汗かきっぷりが半端ねえっすね。最初コミュニケートするってこと自体に相当のハードルがありますが、各パートリーダー攻略音楽知識向上を経て最新話みたいに指揮で表現するというところまで来てると思うと移り変わりがはっきり分かりますよね。最初自分が言うことが正しいのかってだいぶためらいがちですし。打桶先輩のとことかピークですけど、その分勇気を振り絞ってる感が強くてかっけえです。


後は見返してみると、構成だいぶ考えられて描かれてますね。

第一話のパーリー四人がまだ未攻略、二話青年の主張で反応した人が今ようやく終わりそう*1ラストパートリーダー全員集合など、この部活の全体を何度か見せつつパートリーダー攻略を進めてます。神峰がこの部を導く「指揮者であるというのが今週の話でも描かれたメインテーマですが、ライトウイングが一人目*2及川覚醒が二巻半ばということと比較するとびっくりするくらいスピーディです。*3。加えて一巻でこれだけの密度ってのもなかなか。モブにも割と気を使っているし。


ほんと一話でも長く見たいので、長く続いてほしいですねえ。


ところで、キャラクター紹介地味に良かったです。打桶先輩細かいこと考えるの苦手すぎwwwwwとか刻阪のお姉さん読み切りと同じくヴァイオリニストなんだとか、谺先生パンケーキ好きなのねとか色々。

いやちょっとほんと人気出てこういう余裕のある話読みたいですよ。

*1打ち切りにも備えて、場合によってはここで終わることも考えてたんだろうなあ…

*2:二人目?

*3:まあその後覚醒が一ページで…ってのはあります

2011-09-17

[]ドッペルゲンガーの恋人 唐辺 葉介 ドッペルゲンガーの恋人 唐辺 葉介 - Marginal を含むブックマーク

ドッペルゲンガーの恋人 (星海社FICTIONS)

ドッペルゲンガーの恋人 (星海社FICTIONS)

僕ももう三十になったし、そろそろ田舎の祖父の布団のなかで嗅いだ懐かしい香りも漂いはじめるのだろう。加齢臭というものは、そんなに悪いものではないと思うのだが、この意見は世間ではあまり賛同を得られていない。


内容をとばして、きまぐれさんの感想に反応。*1

僕が読む限りでは、夢は「おそらく主人公が「良心」に目覚めつつあるってこと?」ではなく、オリジナルとクローンは違うということだと思います

この物語では慧とユリを明確に分けています。展開としても登場人物の意見としても。オリジナルとクローンの主人公を同一人物として置いた上で、「主人公の意識がヒロインをひたすら侵食するだけの物語」*2とするならば、ユリを慧として、主人公が付き合うのがもともとの彼の望みであり、正しくなりますが、そうはなっていないです。そもそもこの作品のクローン技術の紹介として出てくるボノボ、メイとサツキも花を愛するか否かということによって同じでないと描写されています

ボノボの例以外にもオリジナルとクローンはそれぞれ異なった描かれ方をします。クローン側としては主人公最初の「恋人」がクローンであったから美しい、ナグモさんが潔癖症、クローンとなる際の若返りなど。オリジナル側としては冒頭に引いた主人公のセリフを対比することが出来るかと。

意見としては、ユリの発言以外に先生のも参考になるかと。先生自分が何かあった際に、データと体細胞を破棄するように言っているというのもそのように思えるんですよね。クローンは元は自分の精神ではあるけれども、その意見を聞くのは「自分」ではないという意図ではないかなと。だから、「オリジナルたる自分」が死んでいる場合にはそもそもクローンを生み出す意味がないという。


それで、最終的にクローンというのは人形のような衛生的、完全な、死のない世界を作るけれど、他でもない「その人」が死ぬことから逃れることは出来ないという事実を描写しているのが最後の夢ではないかと思います最初に引いたように、「オリジナル」であれば、年をとって変わっていくことを悪く思わないと思うので。

相変わらず変な作品を書くなあという感じです。凄く面白かったですけど。

2011-09-12

[]なれる!SE5 夏海公司 なれる!SE5 夏海公司 [asin:4048708090:detail] - Marginal を含むブックマーク

SEとして長生きするコツなんだと思う?桜坂君。

長生きってのは……つまり一つの会社で壊れずふてくされず、肉体的にも精神的にも平穏に生きていくってことだけど。

……分からない?簡単だよ。

仕事を探さない。

これだけさ。


ということで、なれるSE5巻が出たので買ってきたのですが。冒頭からこれなので、あー、胸が痛いわーという感じ。序だけ読んで、絶好調だな!と思いましたよ。僕はSEではないですし、ここまで忙しくもないですけど、読んでて共感する部分結構あります。この作品の実感に基づいた部分って、それだけに胸に響くと言いますか、感じるところが多いです。

手を変え、品を変えて続けているこの作品で、毎回上手いよなと感心しているところですけれど。


内容自体は非常に面白かったんですけど、このシリーズ自体についてちょっとあって。このシリーズはフィールド、職務内容を毎回変えるというのが一つと、ラストが工兵くんが仕事の原理原則にのっとって裏技のような王道から困難の解決を見つけるというのがもう一つ特徴になっています

毎回異なる山があって、それを解決するカタルシスがあるってことなんですが、現実に基づくこの作品、どれくらいこれで行けるのかな?というのがなくもなく。僕にはよく分からないので、ずっと続けられるのかもしれませんが、たまにはキャラものの短編集的なものとか、二巻以上の長編とかそういうのもあってもいいんじゃないかなと、個人的には思います


あとは、工兵君ほんと優秀だよな…とか、ヤンデ…梢さんかわいいよ、梢さんとか。

2011-05-04

[]これはゾンビですか?7 はーい、眠れるチチです 木村心一 これはゾンビですか?7 はーい、眠れるチチです 木村心一 - Marginal を含むブックマーク

羽月莉音の帝国を読んでて、これゾン最新刊ってちょっと似たところがあるなあと思ったのでそこについて。


一般的に物語はインフレーションの方向へと向かいます。力は強く人数は多く、規模は大きく。

そのインフレーションとして羽月莉音の帝国という作品は非常にわかりやすいです。一巻の後書きからして「ストーリーはまたたく間にスケールアップしていくことでしょう。一〇〇〇兆円単位くらいまでいきますから」と書かれているくらいで。つまり金銭という単位において巻を増す毎にインフレを起こしている。とはいえ、それが単純に増えているかというとそうでもないというのが面白いところなのですよ。

新しい巻辺りとかとくにそうなんですけど、スケールアップは基本的に安定的なものではないのです。動かされる金銭は増えているけれど借金もどんどん膨大な額となっている。RPGのレベルアップ的な意味でのインフレとは質が異なります


それに今回のこれゾンって似ているよなと思って。

歩がクリスへ出した交換条件というのはクリスの呪いをなんとかしてやるというものです。そして、それを実際に行うためにはクリスより強い女王をなんとかしなければなりません。本来であればそういったことはするべきではないです。100万円のものを買うのに500万円の借金をするという行為なので。でも、今をなんとかするために、ある意味戦いを通した信用を担保にして借金して現状をなんとかするんですよね。

実際に次の巻で女王との登場が予告され、クリスから「頑張ってね」と言われます

こういった様子を見て、ある種の物語における主人公は、雪だるま的に増えていく借金をインフレさせていくことにより辛うじて破綻させないように進むものなのかなーとか、今はないかもしれないけれどこの人にならお金*1を出せると思わせるような魅力を持っているものなのかなーとかいろいろ思ったのでした。


や、なんていうかある種の貧乏くじだろとは思うんですが実際にそれをやり遂げる様はかっこいいよなと。

*1:もちろん単純に金銭というだけではなく