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小説系雑誌の存在価値とライトノベル雑誌に対する希望

 昨日、転がっていたライトノベル雑誌というボールを投球してから考えたのですが、何を目的に作られているか分からないのは何もライトノベル雑誌だけではないですね。以前、文芸誌はどうして売れないのか売れた方がいいのか? というエントリを書いた際にも少しだけ疑問に思ったのですが、文芸誌・中間小説誌・ライトノベル雑誌といった小説系雑誌の存在価値はどこにあるのか。すこし考えてみたのですが、もしかしたら分かったかもしれません。

読み手側の小説系雑誌を買うメリット

 その前に小説系雑誌を買うメリットについて考えてみましょう。
 小説系雑誌には当然の如く、やがては本になり出版される連載作品や読切作品の他に、雑誌でしか読めない特集企画や、評論やエッセイといった記事があります。もちろん、インタビュー集やエッセイ集が作家ごとに出版されることはありますけれど、小説と比べてその頻度は少なく、本にならないまま埋もれていってしまう記事は多いでしょう。
 中には評論やエッセイといった記事目当てに購読する読者もいるかもしれませんが、やはり雑誌を買うひとの大半は、その号の特集が読みたいから買うのではないでしょうか。好きな作家の特集があったら、普段は見向きもしない雑誌でも気になりますよね。
 もちろん好きな作家が連載しているからという理由で買うひとも、少なからずいるでしょう。

作り手側の小説系雑誌を作るメリット

 では、逆に出版社や編集者の立場に立って、小説系雑誌を作るメリットについて考えてみましょう。
 秋山は出版社の人間ではないので、これはあくまで想像ですが、情報発信作家勧誘が主な理由かなと考えました。
 情報発信はたとえばアニメ化の告知だとか、新人賞の結果発表など。いまはネットがあるので、いつでも告知は可能ですけれど、以前は雑誌という媒体でしかできなかったと思います。
 作家勧誘はいわゆる「うちで書いてくださいよ」的なもののことです。仮に秋山が人気作家だとして、いきなり「うちで1冊出してくださいよ」と言われてもすぐに首を縦には振りかねますが、「うちで連載を持ってくださいよ」ならやってもいいかなと思うような気がします。
 と、ここまで考えて気づいたのですが、もしかしたらこの方向の延長線上に雑誌の存在価値があるのではないかと気づきました。

原稿料と印税の関係

 作家の収入は文章を書いて貰える原稿料と本が売れて貰える印税の2種類とどこかで読んだ記憶があります。
 これに沿って考えると、例えば書き下ろしの本の場合、いきなり原稿料と印税の両方を渡す必要がありますよね。

 原稿用紙350枚の作品を、1000円の本で、初版1万部の場合:
原稿料:175万円*1
印税:100万円*2

 うえの例で行けば、いきなり275万円を渡さなくてはならないのです。1万部も売れるかどうか分からない時点で。これがもしさくっと売れて「じゃあ、増版しましょうか」という話になれば、うまく利益を出せるかもしれませんが、まったく売れずに返本されてきてしまったら赤がかさむばかりです。
 けれど、雑誌に連載したものを本にした場合はどうでしょうか?
 雑誌掲載時に原稿料を払っておけば、本にするときは印税だけで済みます*3
 これならローリスクです。

つまり小説系雑誌に求められているものとは

 参加している作家に原稿料を支払えるだけの売り上げではないでしょうか

だとすればこんなライトノベル雑誌が望ましい

 昨日、主張した遅筆作家の連載に加えて、マイナー作家の連載が欲しいですね。
 特集企画および誌面の半分に売れ線を用意して最低限度の部数*4を確保したら、残りの半分でいきなり本を出させるには抵抗があるような作家にチャンスを与えてもらいたいです
 たとえば秋山は読んでなくて恐縮なのですが、『扉の外』で第13回電撃小説大賞金賞を受賞した土橋真二郎。感想サイトなどを見て回る限り、どうも賛否両論のある作品らしく、3巻で打ち切られたものの一部では熱烈なファンがいる模様です。
 土橋真二郎のような売り上げ的に打ち切るしかないけれど化ける可能性のある作家をこそ、誌面の残り半分に入れると面白くなりそうな予感がします。これにさらに、以前、ザ・スニーカー吉田直トリニティ・ブラッド』に対して行ったように「読者ハガキで1位になれなければ即打ち切り」というような条件を課せば、土橋真二郎の熱烈なファンは読者ハガキを送るでしょうし、雑誌の売り上げも上がるでしょうし一挙両得に思います。

なんだか

 12月刊行らしい『電撃文庫MAGAZINE(仮)』が楽しみになってきました。
 ところでふと気がついたのですがライトノベル雑誌ってレーベル数に比べて少ないですよね。『電撃hp』『ザ・スニーカー』『ドラゴンマガジン』『キャラの!』しか思い浮かびません。後はネットですけれどファミ通文庫は『FB Online』があって、スーパーダッシュ文庫は公式にインタビューやエッセイのコーナーがありますね。
 要は編集部のちからなのでしょうか。雑誌に割ける編集者がいるかどうかの。ガガガ文庫なんてすごい雑誌作りそうな気配がしますけれどね。まんたんブロードも。特にまんたんブロードはこの調子でユーザを増やしていけば、出版社のPR誌みたいなものまで進化して、まんたん文庫の創刊および定期刊行に至りそうです。まあ、何はともあれ米澤穂信『11人のサト』の出版を切に願う次第。

*1:原稿用紙1枚5000円の場合

*2:印税が定価の1割の場合

*3:多分。

*4:つまり、参加している作家に原稿料を支払えるだけの部数