芸人交換日記

原作の小説の方は2年くらいまえ(多分)に読んだ。
非常に感動して、後半は泣きながら読んだ記憶がある。あまりにリアルなので読み終えたあと、「イエロー・ハーツ」のDVDを観ようとしたくらいだ。
架空の話なのにもかかわらず。


最近唐突に(もう大分内容を忘れてたから)読み返して思い出し、
確か舞台化されていたはずと思い、いまさらながら舞台のDVDを観た。


舞台に登場するのは3人だけ、
甲本役の田中圭くん。
田中役の若林くん。
それと甲本の彼女役の女優さん。

舞台の真ん中にポストがおいてあり、左側が田中の部屋(エリア)、右側が甲本の部屋(エリア)として、舞台後ろにつくった段差を適宜いろんな場面に活用するというすばらしい演出で、観初めてすぐのめりこめた。
交換日記を相手がひらく(目でおう)のにあわせて、書き手が声にだして言うという方法で、とてもテンポよく話がすすんでゆく。


甲本は熱かったりうるさかったりちょっと軽薄だったりする性格がとてもよくあらわされていた。
一方の田中は、いい意味で若林くんのまんまで、本当に適役。
ふたりとも、小説で、文字だけで読むよりもずっと魅力的なキャラクターで、ふたりの掛け合いが息があっていて面白くみていられた。

この1週間、何度も見返しては泣いた。

はじめは、2年ぶりにひとりで交換日記を書き始めた甲本の独白のシーン、怒りのあとに座って語る田中のシーンでそれぞれ号泣した。
もう二度と言わない、イエロー・ハーツで漫才してーーーーー!!
と叫ぶシーンは文字ではこれほどの感情は伝わらなかったと思えた。


最後の天国漫才のシーンが本当に見事で感動した。
これまでのことが伏線になっていて、すばらしい漫才。
余談だが、(芝居もよかったけどもちろん)漫才のシーンになった瞬間の若林くんのオーラが明らかにちがうのにも目を見張った。
(昔、橘いずみさんの「真空パック症」というひとり芝居を観にいったときも同じように感じたんだけど、歌のシーンになったとたん、「歌手:橘いずみ」に豹変した、あの感じと似ている。)

余談はおいといて。

なんども見返すごとに、感情移入する部分が毎回ちがって、いろんなシーンでとにかく何度も泣いた。


笑軍おちて、「オレは誰も幸せにできない、なんの才能もない」ととことん落ち込む甲本。おもしろくなったとほめられても自分のことじゃない、ほめられてるのは田中なんだ!と叫ぶ甲本。
なんの才能もない、と絶望する彼には自分をかさねずにはいられず、そんなポイントでまた泣けた。

そして次は、解散を告げられて「自分には甲本しかいないんだ、甲本と漫才がしたいんだ、考え直してくれないか」と
今まで淡々としたキャラだった田中の心からの叫びに泣いた。相方に離れていってほしくない、ずっと一緒にいてほしいという、別れを切り出された田中の激しい悲しみが伝わってきて泣いた。
「自分と漫才やってきて楽しくなかった?」この答えが聞けなかった田中の切なさ。
別れに恨み言のひとつもいわず、感謝しかない、この世界につれてきてくれてありがとうと感謝の言葉で分かれるとことは本当に泣ける。

だから、田中の怒りの意味も分かる。5冊目の日記を読んで怒り出した田中には
原作読んだときはびっくりしたけれど。
自分が一番やりたいと思っていた相方に去られ、後がなく、新相方とがんばっていくには、
怒りで自分を支えるしかなかった。そうでなくてはくじけそうだったから。


そうして、何度目かの鑑賞で、いろいろなシーンの感情を理解しながら
最後の田中の独白シーンを見るとさらに深く泣けてくる。
かなりセリフが省略されていることに、小説と照らし合わせると気づく。
ここの部分は小説で補完したほうがよりいいかな。
甲本への思いを持続させたままじゃ、新相方にもうしわけないから、だとか、
イエロー・ハーツを封印したのはケジメをつけた甲本のため、だとか
そういうことを含めての田中の思い。


田中は甲本が帰ってきたらまた一緒にとも考えて、待っていようとも考えた。
でも彼がいま一番守らなくてはいけないのは家族なんだと説き伏せられた。

改めて思う。
甲本が、田中のために夢をあきらめただけじゃない。
田中も甲本を思って、思った上で自分の進むべき道を選択した。

ふたりとも実はそうなんだ。
なんていう相方愛なんだろう。
なんて相手の幸せのことを願ってるんだろう。

自分の人生の進む道を相方を幸せにするためを第一に選択したんだ。

お互いが何よりも相方の幸せを願った上で自分の人生を選択した。
それに改めて泣けた。

また、甲本が、今うれていても毎日が不安で弱音を吐くシーン。
これにも胸打たれた。
眠れなくて、頭がいたくて、毎日薬を飲んでいる。
このセリフには泣かずにはいられない。



そんな感じで、何度も何度も飽きずにいろんな感情を新たにしては泣いている。


若林くん自身はこの舞台、どう思っていたんだろうと興味をもっていろいろ調べてみた。

本を読んだ時点では、売れない芸人のことがリアルにかかれていて、自分の経験と酷似していて、嗚咽で最後のほうはなかなか読み進められなかったとかいてある(エッセイ本より)。
舞台中のラジオ(ANN)では、漫才の形を見つけた瞬間のあの気持ちのが自分もそうだったというようなことをはなしていた。
おさむさんも記者会見で「若林くんにとっては一部ドキュメント」っておしゃってたけど、
たしかに長く売れなくて、そして自分の形をみつけて・・・という共通する部分があり、
この役は若林くんにぴったりだと私も思った。

ウィキみたら、なんかこの後、朗読劇になったり映画になったりしてるみたいだけれど、
この「舞台」バージョン以外はみたくないなあ。
田中は若林くん以外ではみたくないなあ。
なんて思った。