キャラバラ売り論2

ここまでのまとめ

キャラクターのバラ売り論
青ひげノート - キャラクターのバラ売りの問題と可能性
キャラクターのバラ売りとはこういうこと?
12人の妹と12人の兄
ヒゲのある生活:キャラのバラ売りがどうとか
ギャルゲの行き着く先?
自ら世界を編み上げるということ
grevグループ - tmp:キャラのバラ売り


前回私は、スキップしまくりで作業的コンプリートするよりは、
最初の段階でキャラクタを選べた方がいいな、という話をした。


対してterasuy氏は、「新たな出会いの喪失」「間接的・直接的な魅力の喪失」
を指摘する。前者はプレイヤとキャラクタの関係が、
後者はキャラクタ同士の関係が、保守化・断絶するという問題だ。


その二つの問題を解決するのが、
giolum氏のカードゲーム・TRPG的なシステム構想である。
新たな出会いの可能性とキャラクタ間の関係を保ちつつ、
攻略は別々にすることで作業コンプも回避できる。二段構えだ。


実は『シスプリ』も最初の連載では12人セットではなかった、
ネギま』も既にその先駆の要素(セットとバラ)がある、
ゲームセンターで流行のトレカ系モデルを流用できる、
理想世界の構築には時間が必要で、読み捨てを減らす本来の趣旨に反する、
など他にも指摘を頂いた。これらを踏まえつつ、更に考察してみよう。

キャラバラの現状分析

nyでダウソするニートウィニート)というフリーライダー
富裕オタクにぶら下がっているのが現在のエロゲ市場の構図だろう。
富オタは仕事で時間がないので、必然的に大作も作業コンプになる。
すると、(じっくり遊んだウィニートの)評判にも関わらず、
実際は大したことないという感想を抱き、富オタは「降りる」かもしれない。
この問題を回避するのが、キャラバラ化と、ダウソできない特典だ。


実際エロゲ業界でもそういう動きが見られる。
アリスが『妻みぐい』を廉価帯の価格で出したり、
そういう動きとも合流して一つの流れになる。
また、DLsiteなどダウンロード販売では、
単価の安さから自然とバラ化する。ただし、
サブキャラを入れて2〜3人という形も多い。
三角関係さえあれば、シナリオの密度は維持できる。
それと、『らぶフェチ』のように属性の明確化も有効そうだ。

キャラバラの基礎理論

まず先にバラ化の弱点を明かしてしまえば、
あの『Fate』も『ひぐらし』もバラ売りは無理で、まずヒットしない。
しかし、最初からのバラは無理だが、後のバラ化は可能だ。
そもそも同人の二次創作の原動力はバラ化力でないかとも言える。


バラ化に向いているのは、ハーレム的な美少女ノベルゲームだろう。
すなわち、主人公とヒロインが放射線状の関係(1対n)を持つ。
ヒロイン同士の関係はあまりないので、バラ化しても大過ない。
逆にヒロイン同士の関係を描く作品には全く向かない。
特にミステリ形式のバラ化は不可能だ。ジャンル的に全員必要。
『モルダヴァイト』(戦略)とか、『あすか120%』(格闘)のような、
普通に遊べるゲームにも向かない。向くのはハーレムノベルだ。
ただし、追加商品でのバラ売りはどのジャンルでも可能。


それから、バラ化は抜きゲに向いているという指摘を検討しておこう。
世界観を描くためにはキャラクタが揃っている必要があるが、
キャラクタが揃っていれば世界観が描けるとは限らない。
またバラ化は商品化とは限らない。むしろ逆にセット化が商品化という面もある。
端的に表しているのは、「おにゃんこ」から「モ娘」までのアイドル界の現象だ。


そもそも複数キャラの攻略は純愛と矛盾しないか、という根本的な問題がある。
東浩紀動物化するポストモダン』では、解離的な解決がなされていた。
ゲームのシステムの水準では分岐・複数攻略で純愛と矛盾するが、
物語の水準では主人公(に感情移入したプレイヤ)は単一の運命を辿る。
対してバラ化では、分岐・複数攻略を商品の購入時点へと更にメタに後退させる。

キャラバラの応用理論

まず、バラ化がむしろプレイヤに固有な経験をもたらす方法を考えてみよう。
例えばカスタマイズは一つある。『マリカン』とか『人工少女』とかその流れ。
ときメモ』が攻略対象の好みに合わせるのに対して、これらは逆だ。
「カスタマイズ」なのでロボものが向くが、普通のノベルでも可能だ。
例えば選択肢によっては髪を切るとか。ただし手間は掛かりそう。


バラ化が、一人の対象との一期一会に繋がる可能性もある。
具体的には、ストリーミング配信で、攻略を間違えると、落ちる。
アイマス』などが近い発想だろうが、かつての『バーチャコール』や
『ノエル』も根底は同じ考えに基づいているのではないだろうか。


次に、モジュール化とライブラリ化のように、バラ化の再利用性を考えよう。
一つの作品に一集団のキャラクタ群ではなくて、かけもちもありうる。
キャラクタが仮想劇団を構成していると考えれば良い。
最初はサブキャラで様子見、人気が出ればメインヒロインを演じるとか。
ただしAVなどとは大いに異なり、処女性が何より大事なエロゲ界では、
二回メインヒロインを演じるのはかなり困難だろう。『下級生2』の例もある。
(参照 http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news2/1093921049/


現状でも、『キッド・ミックスセクション』や『エルフオールスターズ脱衣雀』、
また『エヴァと愉快な仲間たち』など、ボードゲームではありうる。
しかし、更に仮想劇団が他のメーカの作品に出演したら面白そうだ。
ナムコ クロス カプコン』の美少女ゲーム版という感じか。
現状では『御神楽少女探偵団』のような例になってしまうが…。

補足

廃人への下り坂とエンジンブレーキの必要性
もともとキャラバラ理論が出た背景は、時間不足の問題からだ。
社会人エロゲーマーはお金より時間が足りてなさそうで、
それなら供給過剰を何らかの形で解決する必要があると。


解決方法はバラ化以外でもある。例えばRPGやSLGなどで
同じブランドなら作品を超えて経験値やアイテムを継承できるとか。
おまけ的なデータコンバータを本格的にシステムとして導入するわけだ。


特にMMORPGではコミュニケーションに重点が置かれているので、
タイトルを飛び越してレベルを継承できると効果的だ。
ただしゲーム内アイテムが更に資産化し、RMTや廃人が増えるかもしれない。
弾幕STGや格闘のように、プレイヤの新規参入が更に難しくなる恐れもある。


長々と述べたが、キャラの展開の仕方はかなり面白いテーマだと感じる。