ブロガーとライターの相互作用

「プロのライターが無料のブログを書くことについて問題」

まず、プロのライターが無料のブログを書くことについて問題。

僕は元々実用系の無記名仕事がメインのライターなんだけど、ここ数年は名前を出して仕事をするようになり、自分の名前で本も出した。このような仕事はブログがあったからできるようになった。無記名の仕事が多かった時代も、単著を出したいという思いは強く、さんざん売り込みをかけていたけど、まったく取り合ってもらえなかった。

gotanda6さんに比べたら(比べなくても)とても駆け出しなのですが、自分もブログを営業ツールにしたいと思っていました。それに、営業コストが意外と大きいということを実感しています。

営業先の分野・媒体に関する下調べだけでも多大な労力が掛かり、載れるかどうか分からないのに資料代と調査の時間がかさみます。歴史のある雑誌だと、そこの編集者・ライターの知識水準を追い越すのは、新人にはほぼ無理です。

この営業コストの問題を解決するのは専門特化です。しかし無名だと、専門に詳しいこと自体を説明するのが、相変わらず大変です。そこで、ネットで分かると話が早くなります。ただ、ブログを営業用にすると言葉を選ぶ必要があるのと、ブログを更新するだけではなくサイトに凝縮する必要があるでしょう。

「下手すりゃ将来的には専業ブロガーよりも飯が喰えない状況」

あと、「プロのライター」というものに対して、ちょっと問題意識が違っている。記名で原稿を書くような専業ライター(つまり「プロのライター」)は、いま急速に喰えなくなっていて、下手すりゃ将来的には専業ブロガーよりも職業としてなりたたない(飯が喰えない)状況になりかねない。

gotanda6さんよりずっと経歴が浅いので、業界の内部事情は詳しくないですが、資料によると雑誌広告の売上をネット広告が抜いたので、将来的に専業ブロガーが職業として成立する可能性はあると予測しています。ブログと二足のわらじを履きたいのは、出版市場が縮小して、原稿料が据え置きなためです。

そして、ブロガーとライターの相互作用を期待します。ブログを書くことで下調べや構想にして(何かの下請けのように)、逆にライターとして書いて余った材料をブログに使う(牛丼屋がバラ肉を使うように)という、好循環による効率化の余地があると考えます。

これは、マンガ家における同人誌と商業誌のような位置付けだと捉えています。それに、マンガを原作としてアニメ化したりするメディアミックスというのが常態になっていて、ブログも書籍化などしていますから、以前より境界は乗り越えやすい気がします。

石田衣良化」(ライターを通して副業をゲット)

しかも、雑誌業界は前よりも風通しが悪くなっているから、仕事は下の世代のライターにはなかなか回ってこない。それでもライターで食っていこうとするなら、ライターを通して副業をゲットしていくしかない。それをうまくやることを僕は石田衣良化と名付けている。

イケメンの石田衣良氏と同一視などしたら恐れ多く、「ふー、びっくりした」と言われてしまうでしょうが、副業ゲット作戦自体は考えています。今度出る新宿ロフトトーク・イベントが副業(ライティング以外の仕事)になりますね。

あと同人流通で何か作りたくなってきました。専業同人になるわけではないですし、たとえば失敗したとしても、それをネタにまた何か書いたり、とにかくサイクルをつなげたら何とかなるかもしれない、という気持ちです。

将棋でたとえるとこんな感じです。そっぽの駒を取りに金銀を打つより、歩でと金を作る方が遅くてぼんやりしているようで、意外と確実に利いてくるというような……。つまり、権威ある雑誌(金銀)に載ろうとしてすごく苦労するより、誰でもできそうなこと(歩)で成り上がっていく方法を考えています。そもそもブログは誰でも書けますし。

「ライターの肩書き出世問題」

ライターの肩書き出世問題 - 【B面】犬にかぶらせろ!

まあ、それはともかく、ライターという肩書きって先詰まり感があり、多くの同業者が次第に別の肩書きへと出世していきます。だってライターって肩書きだと、あまりテレビや新聞にコメントを求められなさそうでしょ。

(……)今日から僕の肩書きは「ケータイ小説評論家」ということにします。ケータイ小説評論家の速水健朗です。さっそく名刺に刷るぞ。

gotanda6さんの「ケータイ小説評論家」は鋭い! 新興ジャンルは需給ギャップがありそうですし、その分野を独占できる可能性があります。最近できたものというと、「ニコニコ動画評論家」とかもありそうです。というか、なぜ「ブログ評論家」を見かけないのでしょうか。ブログ(でしか書けない)評論家、という風に解釈されてしまうからでしょうか。

今度出るトーク・イベントでは「萌え理論家」という肩書きなのですが、これは基本的にイベントを開催する芸能事務所がつけてくれたものです。これか「萌え文化評論家」みたいなものを将来肩書きにするかもしれません。ただ、今の自称は「フリーライター」です。肩書きを変えるタイミングは単著が出たときだと思っています。