赤の女王とお茶を このページをアンテナに追加 RSSフィード

”All alive are fitting.” 「生きてりゃ適者です。」

2007-02-09

Youtubeで読むジャズ史「東京大学のアルバート・アイラー」(その1)

菊池成孔師匠の例の本読んでます。歴史編、通称「青本」のほうですね。

流石に面白い。

本人が言うように、かなり和声主義的な「バークリー史観」ですから異論は多いと思いますが*1ジャズを手っ取り早く俯瞰するには最良の書ではないでしょうか。特に聴くだけでなく「やってみたい」人向きには随一だと思います。

しかしモノは音楽、ことにジャズ。やっぱり聴いて、見てナンボですよね。

ここは一つ、みんな大好きなYoutubeを使って(Web2.0!)菊池流ジャズ史を追ってみようではありませんか。

プレ・モダン・ジャズ

モダン」成立以前のジャズです。ブルーズゴスペルラグタイムといった音楽起源といわれています。いわゆるスウィングジャズと呼ばれるもので、ビッグバンドによる演奏が主流でした。

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ルイ・アームストロング(Tp)。通称サッチモトランペットの奏法を大幅に広げたジャズトランペットの父ですね。管楽器を身体の延長として自在に操ったという点ではジャズにおける即興演奏の父といってもいいのかもしれません。

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グレン・ミラーTb)楽団。アッパーでスウィンギーでメロウ。第二次大戦では戦意高揚音楽として大活躍したそうです。

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デューク・エリントン楽団&エラ・フィツジェラルド(Vo)ジャズの父&史上最高のジャズヴォーカルですね。いやーこれはたまらん。エラカッコ良すぎ。

この頃のジャズブルーズゴスペルの影響を受けつつ、ダンス音楽としてのスウィング感を重視していました。またアドリブは入るものの、「フェイク」と呼ばれる飽くまでもメロディーの変形に留まっています。

モダン・ジャズの成立〜ビ・バップ

そして、第二次大戦後。

神いわゆるGODチャーリー・パーカーの登場です。

プレ・モダンからモダンへの移行の瞬間を以下の動画で見ることができます。

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まずテナーサックスを渋ーく吹き始めるのがプレ・モダン巨匠コールマン・ホーキンス

そしてその後ろで不敵に構えるアルトサックスこそチャーリー・パーカーです。見るからにふてぶてしいのですが、大先輩ホーキンスのソロが終わるのも聴かず演奏に突入するオレ様ぶりはさすがというか。

しかしそのソロ、明らかにホーキンスのそれとは雰囲気が違います。

スピード感が違う。メロディ感が違う。そして圧倒的なクールネス。

モダン・ジャズの成立です。

二人のソロの大部分はいずれもアドリブで構成されているのですが、その組み立て方が全く違うのです。ホーキンスのそれがメロディを変形した「フェイク」であるのに対し、パーカーの演奏はメロディを一旦コードにまで分解し、そのコードから新たにメロディラインを創造するインプロヴィゼーションなのです。もちろんそれをこれほどの高速でやってのけるのはパーカーの天才によるところが大きいのですが。当時まだ20代。

やがてこの方法論に傾倒した数人の若者によって、「モダン・ジャズ」は異様なスピードで発展していきます。

ジャズ理論化・抽象化が始まった瞬間です。

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上の動画パーカーとその盟友ディジー・ガレスピー(Tp)コンボによる演奏。スゴイ切れ味ですね。

グループ表現とはいえ、スウィング時代とは質感がまるで違います。もはやスウィングというよりドライブ感。そしてアンサンブルよりも、ソロを引き立てることに主眼が置かれました。上のサッチモの演奏と是非比べてみて下さい。

いってみればベンチャー音楽でしょうか?

これら、パーカーガレスピーらによるモダン・ジャズ黎明期「ビ・バップ(BEBOP)」といいます。

ビ・バップ音楽のゲーム化ともいえます。あるコード進行が与えられ、ルールに従ってそれを再構築する。お題を与えられ、あとはいかに手際よく、センスよくそれを処理するか。そういう競争になったのです。飛び入りで参加して、出演者をノックアウトする。ビバップライブはそんな鉄火場状態だったともいいます。

ハードバップの成立

華々しい誕生を遂げたビバップでしたが、比較的短い間に進化の袋小路に達してしまいます。パーカーの方法論は革命的でしたが、それはあまりにもパーカー個人の資質によるところが大きかった。パーカー的な即興演奏パーカーによって完成されてしまったため、同じ方向への発展ができなくなってしまったのです。

そこで、ソロイズム一色のビバップに対し、ソロアンサンブルバランスを考えて総合的な表現力を目指すハードバップが生まれました。ちなみにこの「ハード」は「激しい」という意味ではなく、ハードウェアの「ハード」、ハードボイルドの「ハード」と同じ。「堅い、しっかりした」という意味です。

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テナーサックスソニー・ロリンズギタージム・ホールらによる演奏です。奔放に即興をしながらも、ビバップと比べてコンボ全体としてサウンドやグルーヴの調和をきちんと保っていることが分かります。

また、ビバップ黒人一色でしたが、ここから白人ミュージシャンが次々と参戦してきます。

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デイヴ・ブルーベック(P)&ポール・デスモンドAs)コンボによる"TAKE FIVE"。5/4拍子の有名曲です。ややヨーロッパを感じさせる、独特のクールネスですね。

そしてこの頃から急速に頭角を現し始めたのが後の「帝王マイルス・デイビス(Tp)

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うーん、大人の音ですねぇ。

チャーリー・パーカーバンドにいた若手トランペッターだったマイルスは独立後、パーカーとは違う道を模索します。例えば上の動画ではビッグバンドと共演していますが、スウィングともビバップとも違うクールで知的、かつメロディアス即興表現を既に獲得しています。

このハードバップ時代は音楽的にもっともまとまりがあり、日本でいう「ジャズ」のイメージに一番近いのではないかと思います。

しかし、ジャズが本当に面白いのはこれからなのです。

その先陣を切るのは上のマイルス・デイビス、というよりほぼマイルスの時代になって行くのですが、さすがに長くなってきたので次回に回したいと思います。

お楽しみに。


Youtubeで読むジャズ史「東京大学のアルバートアイラー」(その2)

Youtubeで観るジャズ・ピアノの系譜

*1:これだと60年代以降は解析不能になる

itoppi802itoppi802 2007/02/10 18:06 このエントリはすごいっすね。勉強になります、というかリンク探してきたの乙です乙です。
音楽学のコーナーになるのかな、その本と増田聡さんのも入れてそこらへんの本を読んでみようかなと思いました。

sivadsivad 2007/02/10 19:49 どうも〜。楽しんでもらえると嬉しいです。わたしも結構なジャズマニアなもんで。まあidみれば分かる人は分かってしまうんですけどね。マイルス特集もしてみたいですが、それは流石にマニアック過ぎでしょうね。

itoppi802itoppi802 2007/02/11 10:58 忘れていました、Book1st.梅田店に今来て思い出しましたが今月のユリイカはそういえば、でしたね。追記しておきます。成孔さんも寄稿ですね。

んー…sivad…

bluesy-kbluesy-k 2007/02/11 12:51 >sivadの元ネタ
はじめまして。わからなかったのでググって見たんですが、ここが上位にかかりすぎです。結局見つけましたが、検索結果的にもマニアックですね。http://www.muzie.co.jp/cgi-bin/artist.cgi?id=a048890#music

マイルスでマニアックになってしまうのですか。・・・というのは Jazz 好きの感覚ですね。

supezousupezou 2007/02/11 14:11 sivadさん、ハッとさせられました。とてもいい記事ですね。ありがとうございます。TAKE FIVEあたりはやはりあの時代にあって異質ですね。その2、期待してます。

sato-kichisato-kichi 2007/02/11 16:04 おお!
大変勉強になりました。

jfpwrjfpwr 2007/02/11 17:40 very very nice

jyagijyagi 2007/02/12 16:14 大変楽しいまとめで楽しませていただきました!Jazz好きなひとならConfirmation演奏したくなる記事ですね。マイルス編期待してます。

organizerfujixorganizerfujix 2007/02/13 16:43 おもしろかったです。興味深く拝見させていただきました。やはり動画だとわかりやすいですよね。

sivadsivad 2007/02/13 17:21 皆さんコメント、TB、ポイント等ありがとうございます!
まだまだいろいろなミュージシャンがいますので、よかったら芋づる式に辿ってみてくださいね。感想も歓迎です。
なにより日本のジャズがもっともっと盛り上がるといいですね。

菊地成孔(本人)菊地成孔(本人) 2007/02/13 17:28
 たくさんの推薦メールが届きまして伺わせて頂きました。素晴らしい。有り難うございます。Uチューブのジャズ部門(?)がもっと充実すると良いですな〜。

sivadsivad 2007/02/13 19:56 ご本人、ですよね?
こんなところまでコメントありがとうございます。楽しんでいただけて嬉しいです。ジャズマンはどんどん映像を上げるべきですね〜。ジャズとYoutubeは相性抜群です。
次は赤本で勉強させて頂きます。。

sivadsivad 2007/02/15 09:20 はてなチョコポイントもありがとう〜。今後ともよろしくです。

uraniouranio 2007/03/13 01:17 この記事が大好きで上記の青本買って読んでみました。最高に面白いですね。一晩で読んでしまいました。
同時に、持っているジャズCDに対して「あの時期になるわけか」と理解が深まった気がします。音楽は学んでナンボですね。

N_ardisN_ardis 2007/05/05 09:51 はじめまして。ボクも本著を読みましたが、素人同然ゆえに音がないのがどうもつらいところでした。そういう思いをもっていたため、こちらの日記はほんとにありがたいです。参考にさせてもらいます。