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”All alive are fitting.” 「生きてりゃ適者です。」

2013-09-12

NATROM氏はどこで道をあやまったのか〜AMA1994をちゃんと読もう〜

承前。

http://d.hatena.ne.jp/sivad/20130718/p1

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20130907#p1

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20130829#p1

まずひとついえることは、NATROM氏はAMAに準拠したいならばまずは文章を文章としてちゃんと読むことですね。

部分的に切り取って勝手解釈を広げていくから誤解に誤解を重ねてしまうのです。

前回も書いたように、1994年時点でのAMA報告書も、きちんと読めば化学物質過敏症を否定などしていません。部分的な見解拡大解釈していけば、氏のようにどんどんおかしな方向に走ってしまいます

というわけで、再度、AMA1994年報告書の該当部分を訳しておきました。まちがい等ございましたら、コメントにてご指摘くださいませ。

まずは、以下の文章をお読みください。

AMA等による”Indoor Air Pollution”のQuestions That May Be Askedより、MCS関連の部分です。

問われるであろう質問

室内の空気汚染は様々な議論のある主題である。室内空気の性質は現在進行中の問題だ。この領域に関する、たえざる発展に関して情報収集を怠らないことが重要である。以下の質問医師や他の分野の医療専門家たちに問われるであろう質問である

化学物質過敏症(MCS)、あるいはトータルアレルギーとはなにか?

MCSという診断名、化学物質過敏症あるいは環境不耐性ともいわれる診断名は、ますます増えているが、現象の定義は除外診断的でありはっきりとした総体としての発生機序は確定していない。MCSはその診断を受ける患者が増えるにしたがって広く知られるようになり、議論を引き起こした。

MCSという診断がなされる患者は、揮発性の物質を含む物質群への接触あるいは接近の結果、複数のシステムによる不調にみまわれているといわれている。それらの物質には、早くから汚染源として認識されていたもの(たとえばタバコの煙やホルムアルデヒドなど)や、その他の通常では無毒と考えられてきたもの、双方が含まれるようだ。MCSのコンセプトを支持する何名かは、一般に認識されている過敏症のタイプに加え、ある種の関節炎や大腸炎といった慢性疾患もこれによって説明できるかもしれないと考えている。

これらの状態は純粋精神的なものであると考えている治療家もいる。ある研究では、この診断を受けた患者には、対照群では28%程度である抑うつ不安障害、身体表現性障害が65%の頻度でみられたと報告している。しかしこれに対しては、過敏症を発症した患者は通常の生活を送ることが困難になるため、それが精神的な不調にもつながるのであろうこと、また神経系の障害からそれらの不調があらわれる可能性があるとの反論がある。

現在では、MCSとの主訴がある、あるいはその可能性が高い場合、それらの主張を精神的なものとして却下するべきでなく、包括的検査をすることが不可欠である、というのがコンセンサスであるプライマリケアを施す者は、患者に潜在的な生理的問題がないことを確認し、アレルギー医や他の専門家の診断を受けることの意義を考えるべきである

臨床環境医とはだれか?

臨床環境医学は、コンベンショナルな(主流の)専門科としては認識されていないにも関わらず、一般人のみならず医療専門家たちの関心を集めている。臨床環境医、つまりトータルアレルギーあるいはMCSによって被害を受けていると考える患者治療する医師の団体は、臨床環境医学協会として設立され、現在では米国環境医学アカデミーとして知られている。そのメンバーは他の伝統医学の専門領域からアレルギー医や内科医を集めてきた。


…お読みいただけたでしょうか?

その上で、ちょっとした国語の論説文の問題になりますが、上記の文章の内容として適切な方を選んでみましょう。

1. 化学物質過敏症は医原病で心因性としてあつかうべきであり、臨床環境医を避けるべきである

2. 化学物資過敏症を医原病や心因性としてあつかうべきではなく、臨床環境医等の診断の意義も認めるべきである

普通に読めば、であることは明らかでしょう。むしろ、1のような主張に対して、やんわりとたしなめるような文章、といってよいくらいです。

これを1のように勘違いしてしまうのは、たとえばコンベンショナルでない、という部分にのみ固執してしまい、全体の文章を読めていないということでしょうね。

もちろん、http://members.jcom.home.ne.jp/natrom/consensus.htmlでの氏の解釈が見当違いなのはいうまでもありません。

ちなみにある分野がコンベンショナル(主流)な専門科であるかどうかということそれ自体は、化学物質過敏症に関して科学的な結論につながるよう情報ではありません。

たとえば米国ではオステオパシーという分野はコンベンショナルな専門科とされていますが、日本では代替医療です。

http://www.nhs.uk/conditions/Osteopathy/Pages/Introduction.aspx

逆に漢方日本では保険適用分野ですが、欧米では代替医療です。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC516460/

米国では化学物質過敏症を主にあつかうのは臨床環境医学とされていますが、デンマークの報告書にあるように、米国以外で化学物質過敏症治療研究しているのは必ずしも臨床環境医ではありません。

http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/mcs_Danish_EPA.html#2.1%20MCS%E3%80%81%E7%99%BA%E5%B1%95%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2

これら分野のとりあつかいは各国のさまざまな社会的政治的事情もからむことがらで、ここから化学物質過敏症がどうであるかという結論が引き出せるようなものではないのです。

そして、AMAがせっかくこのようにたしなめてくれているにもかかわらず、つまみ食いで誤解を重ねに重ねてしまっているのが、現在のNATROM氏です。

くりかえしましょう。

https://twitter.com/NATROM/status/343369547455270912

化学物質過敏症患者が反応する対象は患者恣意によって左右されている」というのは、たとえば、「放射能」を不安に思う人が瓦礫焼却に対して「反応」する一方で、瓦礫受け入れに賛成する人には反応しなかったりすることを指します

https://twitter.com/NATROM/status/344017514835095554

臨床環境医たちが厳しい診断基準を作らなかった理由を、「顧客が減るから」だと私は推測する。連中は患者のことなんて考えてないよ。不安を煽って顧客が増えればそれでよかったのだろう。

https://twitter.com/NATROM/status/344020644603764737

化学物質過敏症は臨床環境医によってつくられた「医原病」だと思う。

https://twitter.com/NATROM/status/343387391605735426

香り付き柔軟剤調子が悪くなる人がいるのはよくわかる。しかし、「ドアを開けると放射性物質が入ってくるのが感じられる」とか「3m先の野菜残留農薬に反応する」とかはわからない。柔軟剤調子が悪くなる人も、一緒にされたくないでしょ?

はたしてAMAはこのような放言を推奨しているでしょうか?

いえ、そのまったく正反対なのですよ。

一部否定的な人たちはいるのでしょうが、そういうところだけ切り取って暴走しているのが、現在のNATROM氏です。

AMAは医療者として、彼よりずっととまともですよ。

これも繰り返しになりますが、AMA1994がいうように、この分野は発展中なのであって、より最新の知見をとりいれたオーストラリア(2010)やデンマーク(2005)の報告書が現時点の資料としてはおススメできるものといえます

オーストラリア(2010)

http://www.nicnas.gov.au/__data/assets/pdf_file/0005/4946/MCS_Final_Report_Nov_2010_PDF.pdf

デンマーク(2005)

http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/mcs_Danish_EPA.html

デンマーク報告書和訳の結語を読んでみましょう。

http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/mcs_Danish_EPA.html#9.3%20%E5%8B%A7%E5%91%8A

MCSの存在に関する知見について大きな不確実性があり、もっと知らなくてはならないという必要性はあるが、現在の我々の知識によっても、MCSは現実のものであり、ある人々は低濃度の化学物質への曝露に対しても特に過敏であるということが示されている。

日々の化学物質の使用を削減することに一般的に注力することによって、MCSの問題は、子ども妊婦のような曝露しやすく感受性の高いグループの一般的保護、そしてそのことによるMCSの新たな発症の防止に寄与することができる。MCSの一般的認知は、またMCS患者と彼等の問題に対するより良い理解をもたらし、そのことで彼等の日々の生活を少しでも楽にすることに貢献できることが望ましい。

そういうことですね。

オーストラリアも、デンマークも、1994年のAMAですら、その時点での知見を総合した結果として、化学物質過敏症が医原病だの心因性だのといった立場はとっていないのですよ。

現在進行形誤謬をばらまいているのは、残念ながらNATROM氏ご本人というわけです。


AMA原文はこちら

http://www.epa.gov/iaq/pubs/hpguide.html#faqs

Questions That May Be Asked

The subject of indoor air pollution is not without some controversy. Indoor air quality is an evolving issue; it is important to keep informed about continuing developments in this area. The following questions may be asked of physicians and other health professionals.

What is "multiple chemical sensitivity" or "total allergy"?

The diagnostic label of multiple chemical sensitivity (MCS) -- also referred to as "chemical hypersensitivity" or "environmental illness" -- is being applied increasingly, although definition of the phenomenon is elusive and its pathogenesis as a distinct entity is not confirmed. Multiple chemical sensitivity has become more widely known and increasingly controversial as more patients receive the label.

Persons with the diagnostic label of multiple chemical sensitivity are said to suffer multi-system illness as a result of contact with, or proximity to, a spectrum of substances, including airborne agents. These may include both recognized pollutants discussed earlier (such as tobacco smoke, formaldehyde, et al.) and other pollutants ordinarily considered innocuous. Some who espouse the concept of MCS believe that it may explain such chronic conditions as some forms of arthritis and colitis, in addition to generally recognized types of hypersensitivity reactions.

Some practitioners believe that the condition has a purely psychological basis. One study reported a percent incidence of current or past clinical depression, anxiety disorders, or somatoform disorders in subjects with this diagnosis compared with 28 percent in controls. Others, however, counter that the disorder itself may cause such problems, since those affected are no longer able to lead a normal life, or that these conditions stem from effects on the nervous system.

The current consensus is that in cases of claimed or suspected MCS, complaints should not be dismissed as psychogenic, and a thorough workup is essential. Primary care givers should determine that the individual does not have an underlying physiological problem and should consider the value of consultation with allergists and other specialists.

Who are "clinical ecologists"?

"Clinical ecology", while not a recognized conventional medical specialty, has drawn the attention of health care professionals as well as laypersons. The organization of clinical ecologists-physicians who treat individuals believed to be suffering from "total allergy" or "multiple chemical sensitivity" -- was founded as the Society for Clinical Ecology and is now known as the American Academy of Environmental Medicine. Its ranks have attracted allergists and physicians from other traditional medical specialties.

bero2006bero2006 2013/09/13 16:01 前後はわからないが、引用部の訳文を読む限りでは
1も2も適切でないように思える。

「精神的なものとして却下するべきでない」

これは「心因性としてあつかうべきである」と「心因性としてあつかうべきではない」のいずれとも合致しない。心因性/心因性でない、どちらもありうる。ドモルガンの法則。


「包括的な検査をする」「潜在的な生理的問題がないことを確認し、アレルギー医や他の専門家の診断を受ける」

ここに「臨床環境医」は出てこない。「アレルギー医や他の専門家」が「臨床環境医」を指すかどうか書いてない。
別の部分で「臨床環境医学は、コンベンショナルな(主流の)専門科としては認識されていない」とあるので、どちらかといえば否定的なニュアンスを感じる。まあ中にはアレルギー医出身の臨床環境医がいるかもしれないけど。
いずれにせよ「臨床環境医を避けるべきである」とも「臨床環境医等の診断の意義も認めるべきである」とも合致しない。


MCSと即断するのでも、精神的と即断するのでもなく、(具体的に何のアレルギーか)検査しろ、と
その上で、(既知の検査ではわからない)実はMCSな人や精神的理由な人がいるのかもしれないけど、どちらも「と考えている人もいる」と紹介するにとどめ、肯定も否定もしていない。

sivadsivad 2013/09/20 12:24 うーん、あなたも「コンベンショナル」に引っ張られて文章の流れを読んでいないように見えますが、少なくとも否定していない、という点は合意できるわけですね。
ところがNATROM氏は上記にあるように
『「化学物質過敏症患者が反応する対象は患者の恣意によって左右されている」』
『化学物質過敏症は臨床環境医によってつくられた「医原病」だと思う。』
『臨床環境医たちが厳しい診断基準を作らなかった理由を、「顧客が減るから」だと私は推測する。連中は患者のことなんて考えてないよ。不安を煽って顧客が増えればそれでよかったのだろう。』
などというような強い否定バイアスを持つようになってしまい、かつ、医師や科学をかたり、そのバイアスを拡散しているわけです。あまつさえ患者への偏見にすら加担している。
医療に関わるまともな人間なら、これがとんでもないことだとわかるんじゃないでしょうかね。

anan1477anan1477 2015/08/26 22:42 大変申し訳ありません。下らないお節介で申し訳ないのですが、2010年オーストラリアの報告書がリンク切れを起こしています。

リンク先が Page Not Found と表示されており原文の存在がないため、全く同じ資料であるのかどうなのか確認することが可能ではないのですが、以下が同じ内容のものであると思われます。違っていたら、申し訳ありませんでした。

http://mcsliving.com/blog/wp-content/uploads/2014/11/MCS_Final_Report_Nov_2010_PDF.pdf

私自身のブログにも、2010年オーストラリアの報告書へのリンクを表示してあったのですが、それに関してもリンク切れが起きていましたので、「もしかしたらこちらも?」と思い確認してみたところ、やはりリンク切れが起きていました。

大きなお世話で大変申し訳ありませんでした。

なお、まだ修正途中の記事ですが、私の場合、以下の記事のサブウィンドウ内に、2010年オーストラリア報告書へのリンクをはっています。長い記事ですので読んでいただかなくても結構です。報告させて頂いただけですから、どうか放置をして下さい。

http://state-of-our-world-anan1477.blogspot.jp/2013/05/cs5-the-damage-caused-by-misinformation.html



長い説明で、申し訳ありませんでした。
失礼させて頂きます。

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