『右傾化に魅せられた人々』[Amazon] / [bk1]

右傾化に魅せられた人々―自虐史観からの解放 大統領選で国民戦線のルペンが躍進したことは記憶に新しいが、フランスを中心にヨーロッパで右派に魅かれる若者が増えている現状のルポ。
 実はインドもそうだっていう話をしたことがある( 経済(移民・南北) 〜誰がもうけてんだー!?参照)が、ヨーロッパも日本と驚くほど似ている。だいたいの若者の論点は、移民批判(フランスの場合はマグレブ諸国)、EU化やアメリカ化批判、自虐史観批判(フランスの場合はヴィシー政権アルジェリア戦争を肯定的に捕らえるべきだと論じられる)、全共闘世代批判(フランスだと「68年派」と呼ぶ)である。
 ただ、フランスの若い右翼層は比較的よく理論化されており、旧来の右翼層(日本だと皇居で礼拝しちゃうおじいちゃんたちみたいな層)とグローバル化を批判する若い右翼層の間には明確な断絶があるようである。例えば、最初に出てくる青年はシュヴェヌマン(社共連合のリーダーであるジョスパンの盟友であったが、ジョスパンが経済のグローバル化に積極的である点を批判してたもとを別った社会主義者)とルペンのどちらを支持するか迷った後にルペン支持に回ったと答えていることからも、それは想像できる。ここは資本主義批判をすることで負け組扱いされることを恐れる日本の若い右翼との最大の差かも知れない。しかし、彼らがシュヴェヌマンではなくルペンを支持するのは、やはりその歯切れよさと、フランスの過去に対する肯定的な言動が決定的になっている。おそらく日本で石原慎太郎が支持される構造と良く似ているだろう(ちなみに件の青年、ルペンを選んだことによりシュヴェヌマン派のガールフレンドから振られたらしい)。
 こうしたフランスの現状をルポした後、話はまとめとしてルペンやオーストリアハイダーのような「モダンな」右翼についてのまとめにうつる。モダン右翼の典型的な例は暗殺されたオランダのフォルタインである。フォルタインについての日本語でのまとまった論述は少ないので、この点も参考になるだろう。

 遺伝子が生存に与える影響

Tibetans show 'evolution in action' :A gene for well oxygenated blood is spreading in the Himalayas.
 クリーヴランドのケース・ウェスタン・リザーヴ大学の形質人類学者シンシア・ビールによれば、標高4,000メーター以上に住むチベット人のヘモグロビン含有量の調査をしたとこおr、その人々の一部が10パーセント程度血中酸素濃度が高いことが判った(要するに、酸素濃度分布に山が二つあったわけですね)。これは、この特性が単一の遺伝子に由来していることを示唆する。
 また、この人口グループのうち、20歳から60歳の女性の妊娠履歴の聞き取り調査を行ったところ、低酸素濃度グループの女性は15歳に達する前に死んだ子どもが平均2.5人いたのに対して、高酸素濃度グループでは0.4人であった。