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2014-08-30

アルドノア・ゼロ】共に姫を第一に思い続けていたスレインとクルーテオは、なぜすれ違い続けてしまったのか? 【アルドノア・ゼロ】共に姫を第一に思い続けていたスレインとクルーテオは、なぜすれ違い続けてしまったのか?を含むブックマーク 【アルドノア・ゼロ】共に姫を第一に思い続けていたスレインとクルーテオは、なぜすれ違い続けてしまったのか?のブックマークコメント

前回前々回に引き続き、『アルドノア・ゼロ』関連の日記です。


共に「アセイラム姫が何より大切」なことは同じだったのに。

スレイン君とクルーテオ卿、なぜこんなにもすれ違いを繰り返してしまったのか?


結論から言うと、それぞれの「大切」の中身が大きく異なり、かつ、互いにそれにまるで気づけていなかったからなのでは、と。


16歳のスレイン少年にとって一つ年下の姫を想うとは、愛する少女の身の安全を想うと同時に、その地球との和平という想いを尊ぶことで。

37歳のクルーテオにとって姫を想うとは、卑しい不良少年(スレイン)にたぶらかされたばかりに愚かな思想にかぶれ、まだ子供だったのに死んでしまった、娘のようにも思えた少女へ悼むために憎むべき地球人を討つことで。


共に「姫が何より大切」が絶対的であったため「だからこそ」とまでは言わないでも「ということも大きく影響し」、相手が違う形でやはり姫を思っていることがどうしても理解できなかったのだな、と。


二人の言動は終始この線で一貫していると思えます。


アセイラム姫15歳は99年、父の死と同年に生まれました。

クルーテオは当時22歳。

クルーテオに実子がいなければまるで娘のように、娘でもいれば父を知らない娘として不憫で仕方がなく映ったのでは。

そう推測(?)して1話(以降)を見ると、クルーテオさんの気持ちは分かりやすいのでは……と思えたりします。


例えば、第一話。

アセイラム姫15歳スレイン16歳。

姫は危険な地球行きを間近に控え無邪気に地球への憧れを顔を輝かせ語り、その姿を少年は明らかな憧憬だか恋慕だかを込めてみています。

そこにクルーテオ37歳がやって来た様子がコレ。

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問:「この場面に至るまでの、クルーテオ卿の心情を理由を添えて述べよ」

解答例を考えてみるとこんな感じでは、と。


"尊くもあり、かわいくて仕方がない娘のような存在でもある少女が突然危険な役目を自ら買って出て、

 とても利発な聞き分けのいい子だったのに、どう諌めても頑として聞きいれない。

 これは5年前から"こんな卑しい生まれの相手と付き合うのはよろしくない"と思い続けてきた、

 一つ年上のスレインとかいう地球人のガキの悪影響に違いない。

 思えばこのガキが現れて以来、姫は地球、地球、スレイン、スレインと……。

 なんということだ。

 今もどうせまた……"


その後、父の形見ペンダントを贈ったスレインが姫を見送った後の例の一幕、

「身の程を弁えよ、下郎。

 このクルーテオが姫のきまぐれをお諌めするなど恐れ多いが、

 (ステッキで一撃。倒れるスレイン)

 犬の粗相は飼い主が責を負う。次はないぞ、地球人!」

も含め、クルーテオがスレインに向けた厳しさや敵意は火星人が地球人に向けた差別意識の発露という面も強いにせよ、

それ以上に、愛娘のお気に入りで、妙な関心を吹き込んだ不良少年に対する

お父さん(代わり)の苛立ちと怒りという趣きがあるように思えたりします。


1話、地球に降下する姫の乗るシャトル(セレーナ号)を見つめつつ、

「後は見守ることしかできん」と呟いたクルーテオはそれでも

心配そうにシャトルの映像を見つめ続けます。

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映像は、通信してきたザーツバルムと切り替わって。

「三ヶ月あまりの接待役、さぞや肩が凝ったのではないのか、クルーテオ卿」

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「お勤めを果たせたとは言い切れぬ。此度の外遊を思い止まっていただく、最後瀬戸際だったというのに」

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で、暗殺事件後、ザーツバルムの扇動を受け次々に揚陸城が降下を開始したのを目にしつつ。

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「姫の地球行きをお諌めし切れなかったのは、このクルーテオの不徳」

「他の諸侯に遅れをとるな。

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 かくなる上は、武をもって弔意を示すのみ」

クルーテオは心から姫の身を案じ、その死を悼み、大いに責任を感じているわけですが。

最初から最後まで、何をしているのか分かりもせず危険に飛び込んでいく子どもを案ずる保護者目線であって、

尊ぶべき皇女としてでなく、一人の人間としてその意志を本気で受け止め、考えようとはしていません。


8話でスレインを尋問するクルーテオに映像回線を繋いだザーツバルムが、

「身の危険を顧みず皇帝に謁見など余程のこと。

 その真意を知りたい。

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とドアップで画面に映されつつ問うたのに対し、

「真意?」

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「こんな子供に考えなどあろうものか」

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と返してたのもいつものごとくド本音で。

一つ下のアセイラム姫も(娘のように深く愛しつつ)「子供」と思っていた、という示唆でもあっただろうと思えるわけです。


一方のスレインにとって、アセイラム姫は一面において高貴なる崇拝の対象であり、その理想こころから敬服し共有しつつ。

時に無邪気な表情で彼に向かって地球への憧れを語り、開けっぴろげな親愛(恋愛感情はなさそうですが)を示す、彼が恋する一人の少女でもあって。

たとえ姫が死んだとしても、その遺志、共に語った「共存」の理想を護りたいという気持ちはとても強い。


二話でニロケラスを抱えてスカイキャリアーで出撃したスレインは、迎撃に出てきた地球連合軍の攻撃機を撃ち落すよう命令されますが、ためらい、どうしてもできません。

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ここでトリルランは「躾がなってないぞ、クルーテオ卿」と嘲り、コントロールを奪って殺戮を見せつけるわけですが。

スレインはトリルランが嘲ったように「自らが地球人だから同胞を殺せない」というのもあったのでしょうが、

あるいはそれ以上に"それが和平を望んだ姫の意志を踏みにじるものだから"こそ躊躇ったのだと思えます。


以上の話を踏まえると、4話でのトリルラン殺害後帰還してのやりとりは分かりやすいのではと思えます。


「トリルラン卿が死んだだと?」

はい隕石爆撃に巻き込まれて」

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「おのれ!戦局に紛れて我が占領地を狙うものがいたとは。志を同じくする軌道騎士の誇りはないのか!」

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(回想。トリルランを撃ったカットを銃声と共に三連打)

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「よかろう。いずれあぶり出し、制裁を加えてやる」

「ブラドを呼べ。地球の残党を狩り、この地を燃やし尽くせ。姫の無念を晴らすのだ!」

伯爵。ア、アセイラム姫は……。」

(回想。トリルラン「だから殺すのだ!今度こそ確実にな!」)

「なんだ?」

「あ、いえ……。すでに占領した地でのさらなる破壊、アセイラム姫の気持ちを思うと……。」

「ほう。貴様も姫の仇討ちに加わりたいと?」

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「…えっ……」

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(スレインにステッキの一撃を見舞うクルーテオ。)

「弁えよ、地球人。我らヴァースと共に戦える身分と思うか。

十五年もの年月、いつしか我が手にと焦がれ続け、砕けた月の影から無様に地球を見上げていた……

我々軌道騎士の切願を、姫はその命をもって叶えられたのだ。

これは我々軌道騎士の戦だ!貴様の出る幕などない!」

(この人も姫の死を利用しようとしている。そもそもトリルラン卿は、クルーテオ城の食客として招かれていた……)

(回想。トリルラン「あれを生かしておけば……我らは一族郎党逆賊であろうが!」)

(「我ら」……この暗殺計画には首謀者がいる。

(クルーテオ卿……?いや、まさか……)

(僕は……どうすれば……?)

冒頭からさらりと「隕石爆撃に巻き込まれて」と嘘をつくスレイン君はこのやりとりに限らず、

姫を陥れた陰謀に向き合うため、基本的必死に考え考え誰が(陰謀を企んだ)敵なのか分からない中、

時に心も偽りつつ、言葉を選び選び相手を探り、情報を引き出そうとしていっています。


一方、8話まで観れば明らかなように、クルーテオさんは基本、いつも思ったとおりのことを口にする御仁です。

で、嘘がバレないかと(8話で「次元バリアを持つ、ニロケラスがですか」と明かされた通り苦しい嘘でした)

緊張を隠せないスレインに向け、クルーテオが目の前のスレインから顔を逸らして叫ぶ中で

「志を同じくする軌道騎士」とあったことについて。

彼の脳内的には「軌道騎士の切願を、姫はその命をもって叶えられた」のだから、

他の騎士たちも「姫の無念を晴らす」べく動く同志だろうという感覚がありそうです。

そして、目の前の地球人に軌道騎士の誇りなどあるわけがない以上、

スレインに向けず誰ともしれぬ見下げ果てた同輩に向け激していて。

その反応を聞きつつトリルランを撃った時のことを回想しているスレインがそれをどう受け止めたかは明瞭ではありませんが、

クルーテオの思いが伝わっていないことは確かでしょう。


そして続く「この地を燃やし尽くせ。姫の無念を晴らすのだ!」。

これはクルーテオにとっては姫を思うことからまったく自然に導き出されるそのまんまの真情だったわけですが、

スレインにとってみれば姫の意志に真っ向から反するもので。

トリルランの吐いた「だから殺すのだ!今度こそ確実にな!」ということを今、

クルーテオは部下であるブラドに指示したのかと疑いも強めることに。

しかし、姫をよく知るスレインにとってあまりにもその意志に反するその発言であった一方、姫の逗留時、それなりに彼に接しもたであろうスレインにとってみれば、クルーテオは良くも悪くも裏表がある人物とはなかなかに思えないはずで(実際、無かったわけですし)

(なぜ、あなたはそんな姫の思いに反することを……?)と戸惑いつつ、

彼の思うアセイラム姫の意志をクルーテオにぶつけます(「「いえ。すでに占領した地でのさらなる破壊、アセイラム姫の気持ちを思うと……。」)。


で、面白いのは次の台詞と両者の表情。

「ほう。貴様も姫の仇討ちに加わりたいと?」

クルーテオのこの台詞はおそらく、心からの侮蔑を込めて。

まだまだ子どもだったアセイラム姫の純真に付け込み、地球人との和平などを吹き込んだ卑しい地球人のガキめ。

姫がそのために死んだこの期に及んで何をほざくか、と。

「…えっ……」

相手の真意を探るべく警戒心に満ちていたからこそ、あまりにも意外な返答に完全に虚をつかれ、呆然するスレイン。

ここ、表情もいいですが、声が(は?この人、何を言ってるの?)という感じが出ていて、とても印象的です。

彼にとって見れば、姫を思う人物が(もし死んでいても姫が絶対に望まなかっただろう)「仇討ち」を口にするなど、なぜそうなるのか想像もできないことです。


一方、スレインのその反応は、"かくなる上は、武をもって弔意を示すのみ"と確信しているクルーテオにしてみれば許し難いことで。

激昂は彼にしてみれば当然のこと。

「我々軌道騎士の切願を、姫はその命をもって叶えられたのだ。

これは我々軌道騎士の戦だ!貴様の出る幕などない!」

というのはクルーテオにしてみれば"騎士でもなんでもない卑しい地球人のお前がたぶらかしたために、姫はなくなったのだ!"

との怒りの表明なのですが、スレインにとって見ればやはり"彼にとっての当然"として、

「この人も姫の死を利用しようとしている」としか受け取れません。

見事なすれ違いの描写と思えます。


でも、実は結構いろんなことを考えてるスレイン・トロイヤード君16歳、頑張って考えました。

どう言えば、どんな態度を取れば、姫を護れるだろう?探しに行けるだろう?

それで、4話の締めくくりに自分から頑固オヤジ……もとい、クルーテオを再訪問

迎えるクルーテオ。

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「なんだ、スレイン」

「私にも、アセイラム姫の仇を討たせてください」

「貴様にその資格はないと言った筈だ」

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一拍おいて、概ね理由はわかる暴力がスレインを襲う!

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「消えろ……地球人」

「私を……」

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「ん…?」

「出撃させてください」

そして、この無言の懇願

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僕のこの眼を見てください。嘘をつく眼に見えますか?(ついてます)

で……出撃は許されませんでした。


以下、5話。

クルーテオの好感度が下がりすぎて相手の性格に合わせた攻略法(「私にも、アセイラム姫の仇を討たせてください」)も不発に終わったスレイン君は、クルーテオの指示を受け出撃していたブラドのアルギュレ帰還の様子を眺めつつ、思い悩みます。

(どうすればいいんだ……アセイラム姫が無事だと分かったのに)

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(このままではいつか、本当に暗殺されてしまう……)

そんなところに、アルギュレが損傷していることに気づき、降りてきたブラドに駆け寄っていく。

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「ご無事で!ブラド卿!」(何があった。情報収集だ!)

「何が無事なものか。我が名誉は地に堕ちた」

「強い相手だったのですか?」

「いいや……オレンジ色のこざかしい奴にバカにされただけだ」

「……ここで何をしている?」

「……っ」

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「伯爵についてなくてよいのか?」

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「……叱られました。出すぎたことを言って」

「出すぎたこと?」

「私にも出撃させて欲しいと」

「ふん……貴様も同じだな」

「…えっ……」

「地球人だ、小賢しい」

「……ぁ……」

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「そんなに武勲を上げて取り立ててもらいたいか」

「違います!私はただ……」

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「姫様の……ことが」

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「……ぉ……」

「ふん……つまらぬ……」


全体としてスレインはクルーテオから出撃を許されないため、ブラドが姫を今度こそ暗殺すべくクルーテオが遣わした刺客なのではないかとも疑いつつも、損傷したアルギュレから"何かがあった"ことを嗅ぎ取り、情報を収集してどん詰まりの状況の突破口を求めると共にブラドの目的について不器用に探りを入れています。


ただ、"何らかの糸口が見つかるのでは?"という期待が先行して逆に自分が何かを問われることを想定できていなかったので(16歳の少年なので)、「……ここで何をしている?」と問われ動揺してます。

そこでブラドが続けた「伯爵についていなくてよいのか?」が意図しない助け舟になり。

「……叱られました。出すぎたことを言って」と俯いてごまかします。スレイン君、ナイスプレイです。


しかし、続けて投げかけられた思わぬ言葉にここでも意表を突かれ(ここの「…えっ……」の声も面白いです)、ガードが下がったところに。

「そんなに武勲を上げて取り立ててもらいたいか」はスレインの心を反射的に波立てる一撃となります。

クルーテオがスレインの"自分のように"姫を思っていない言動に刺激され激情を見せたように、スレインは己が姫の身の安全と共に護りたいと願っている"和平への願いに真っ向から反することをお前は願っているだろう"と言われては、考える先に「違います!」と激情が口をついてしまいます。

しかし、そこでやや冷静さを取り戻し「姫様の……ことが」とボカして見せています。スレイン君、頑張ってます。


で、ここでのブラドの反応。

「つまらぬ」というのは、前回伊奈帆たちの策略にはまり、撃退されたときの捨て台詞と同じです。

そしてこの後の再戦で現れたオレンジ色のカタフラクトを目にして彼は「我が宿敵」と呼びかけるわけで……つまり、照れ屋のブラドさんとしては地球人に向けることができる、最大限の褒め言葉なわけです。

しかし、視聴者には分かっても、スレインにそんなことが分かるわけも無く。

「姫のこと」が「つまらん」と吐き捨てられた……ことによると、その驚きと発言は姫を殺そうとしているからでは……と受け取られてしまったようにも。

ブラドはいかにもクルーテオの部下らしい良くも悪くもまっすぐな気性の方なのだと思われますが、ここでもコミュニケーション不全があり、切ないところです。

いい人だったのに、抜刀おじさん。惜しい人を亡くしました。


で、その後、他に有効な打開策を思いつけなかったスレイン君はクルーテオの謁見の間を用い、皇帝に直訴という賭けに出ます。

皇帝が大変に気のない応対をし、ザーツバルムさんが一枚上手でした……という結末に終わりますが、これ、そんなに悪い手だったかと言うと、そうでもないというか、スレインが把握している状況からすれば、十分以上に納得できる賭けだったかと思えます。

判断は臨機応変。いざとなれば自分を信じて行動する」は界塚ユキが伊奈帆に常々言い聞かせていた言葉とのことですが、スレインもその基準に沿った行動をしてみせている感があります。



以下、7話。


その冒頭。

次の引用は皇帝直訴という賭けに敗れ、完全に追われる身となってしまったスレインによる、クルーテオ城脱出からヘラスのロケットパンチを撃ち弾いて登場するまでの独白です。

「地球機に敗北した軌道騎士はブラド卿とトリルラン卿のみ。

 そしてトリルラン卿が敗北した時、アセイラム姫は地球のオレンジ色の機体と一緒にいた。

 スカイキャリアのデータによると、その機体が載った船は南南西に進路を取っていた。

 確証はない。偶然かもしれない。

 でも、今はこれしか手掛かりがない……」

軌道騎士側の調査はどうにも進められない。

陰謀の解明が叶わないならば、とにかくまず、アセイラム姫の無事を確認し、その元に辿りつきたい。

今辿れる手がかりはもう、これしかない……これも、納得できる判断だと思います。


で、例の伊奈帆とのやりとり。

(デューカリオン発進。ブリッジにアセイラム姫)

「見つけた……!アセイラム姫!」

「アセイラム姫、やっと見つけた……」

「姫は死んだ。……なのに……なぜ探している?」

「え?」

「君は姫が生きているのを知っていた。…何故だ?」

「どういう意味ですか?」

「答えろ」

「姫に逢わせて下さい」

「僕の質問が先だ」

「んっ……もしかして……姫を利用するつもりですか」

「利用されると……困るのか?」

「あなたは……」

(スカイキャリア発砲、ほぼ同時にスプレイニール、反撃)

(伊奈帆機、射撃後にスレイン機にアンカーを撃ち込み降下の勢いを殺し、陸地に着陸)

「あなたは……僕の敵ですか!?

(非常警報が鳴り響く中、叫ぶように)

(スカイキャリア、着水。暗い表情で伊奈帆が呟く)

「君は………僕の敵だ」

直訴という大ギャンブルに出て負けたスレイン君、直後のより勝算も展望も持てなかった賭けに勝てたと思い、舞い上がってしまったのかと思えるんですね。

周りの陰謀を疑いに疑い続けたせいで"自分が誰かから陰謀の仲間だと疑われる"ことは考えてもみず、アセイラム姫を発見した時点で、ただひたすら姫を思う自分は当然姫に組するものとみなされ、逢わせてもらえると一人合点していた気配が。

しかも、本心を隠して相手の腹を探る姿勢が打ち続く試練の間に身体に染み付いてしまっていて、それが完全に裏目に出てしまっていたことが伺えて。


まず、不信感を抱いている相手を信用させたかったらまず自分の身元を明らかにするのが基本なわけです。

「もし」を論じるなら、スレインが名乗りを上げるだけで(そして、今更それで増えるリスクもありません)、状況は全く変わったはずで。

例えば「僕はスレイン・トロイヤード。アセイラム姫に仕える地球人です。火星亡命したトロイヤード博士の息子です」とでも告げていれば、伊奈帆の対応はまるで違ったでしょう。

ただ、精神的にそれが出てこない状況に追い込まれたのだ……と理解はできるところか、とも思えます。

あるいは最初の「見つけた……アセイラム姫」が、「アセイラム姫、ご無事で……よかった!」であるだけでも、伊奈帆の受け取り方は大きく異なったはず。

もっといえば、撃墜されての最後の台詞が「あなたは……姫様の敵ですか!?」でも別の未来が待っていたかもしれません。

しかし、アニメ本編では、そうはなりませんでした。

そして、その流れが不自然にならず、むしろそこに至る事情を斟酌すれば相当に自然とも言えるよう、スレイン側も工夫が重ねられてきていたのだとも思えます。


ちなみに、伊奈帆側からの捉え方はどうだったかというと。


「蝙蝠」はニロケラス戦でカームがそう呼んだからでしょうし、スレイン側が伊奈帆に投げかけた「オレンジ色」もニロケラス戦(及びアルギュレ戦)から。

で、ニロケラスは友人だった起助をなぶり殺し、それを援護した「蝙蝠」は直接カームを殺しかけていて。

ライエの素性(ただ、結構推測していそう)も撃破後のスレイン君とトリルランの会話を知らないとはいえ、(後の隕石爆撃も含め)たかが生き残りの学生集団抹殺に過剰にこだわる姿勢からキナ臭さは感じていたのかもしれず(ニロケラス撃破作戦を立てるにあたり「なぜか敵は僕たちを追っている」とも言っていました)。

何より、トリルランは姫が身分を明かして立ちはだかっても戦闘を再開させた敵でした。


そして、なぜ他の火星騎士との戦いに介入してきたのかは不明なものの、宣戦布告なしでてんでバラバラに攻め入り、皇帝の休戦命令も平気で破った過去同類の行状からは(他の面々の反応もそうであるように)どんな理由で仲間割れしてもおかしくない程度にしか思えなかったでしょう。

実際、スレイン登場時の反応はこんな感じでした。

伊奈帆「あれは……」

OP挟んで中略)

韻子「仲間割れ?」

ユキ「さあ…?獲物を取り合いしてるだけかも」

伊奈帆「どっちでもいいよ。敵の敵なら、味方でなくても役に立つ」

その上で伊奈帆はスレインのトリルランとの決裂もクルーテオ城での出来事も知る由もなく、「蝙蝠」は変わらず(かつて撃破したニロケラスの)一味であると思わない理由がありません。

確定ではないにせよ、ニロケラスを援護していた「蝙蝠」と同じと疑っていてその確認も兼ねて問われただろう中、スレイン君の「どういう意味ですか」「姫に会わせてください」はそりゃあ、まずいでしょう。

「姫を利用されると困るのか」はニュアンスとして「だから殺しに来たのか?」に近かったのでしょう。


で、話題の途中なのですが、以降、8話について。


実際、8話での伊奈帆の台詞がある種、前話解釈の答え合わせのようにもなっていました。

種子島で遭遇した火星人、あなたの事を探していました。

そして、貴女が利用されることを恐れていた。

敵の中には、貴女がまだ生きていると思っている者がいます。

警戒するに越したことはない。

勿論、伊奈帆は「種子島で遭遇した火星人」は「敵」の一員であり、「貴女が利用されることを恐れていた」は言うまでもないこととして当人に向かって口にしませんでしたが、彼が知らないトリルランの言葉を借りるなら「だから殺すのだ!今度こそ確実にな!」という意図で来たのだろう……と語っているわけです。

なお、7話の伊奈帆の最後の台詞「君は………僕の敵だ」は、4話におけるライエとの会話にあった「本当の敵はあの人を暗殺しようとした人」と繋がってもいるわけです。


ともあれ、そんなこんなで無情にも伊奈帆に撃墜されたスレイン君は、クルーテオさんに捕まり、尋問を受けることになったわけですが。

概ね、ここまで書いてきた線で、クルーテオ、スレイン二人の心情は詳述しなくても察して頂けるのではと思います(横着ですみません)。


一応幾つか挙げると。


スレインが初めて応えた言葉が「あなたは……アセイラム姫に……忠誠を……誓っていますか……」であったこと。

それを聞いたクルーテオが(聞くまでもないことを何を今更……)と眉をひそめ。

「続けろ」と鞭打ち続行を命じ、「生意気小僧が」と吐き捨てる。

その際の両者の心情は重ねて説明する必要はないかな、と。


そして、スレインとクルーテオのすれ違いの一つの到達点が次のやりとりで。

「どうだ地球人。何か話す気になったか?」

「伯爵は……姫をお慕いしていますか……?」

「なに?」

「伯爵は、味方ですか?」

「ああ、味方だとも」

「さあ、吐け。貴様の罪の裁きとして、地球の仲間に更なる恐怖を味あわせてやろう」

「やっぱり嘘だ。あなたは地球と戦う理由が欲しいんだ」

「姫は地球との平和を望んでおられたのに、あなたは姫の死を利用して……姫の夢を壊している……」

クルーテオは心から彼なりの「姫の味方」……まだ幼い心を"目の前の卑劣な地球人"に付け込まれ、信ずるに足りない地球人どもを信頼してしまうことを押し留められなかったことを悔いて止まない保護者として、せめてもの追悼として「貴様の罪の裁きとして、地球の仲間に更なる恐怖を味あわせてやろう」と告げていて。

スレインにとってみれば姫の理想とこうも反することを得々として語るクルーテオをこれで「姫の味方」などではないと確信してしまう。

そして、続けてスレインが語った姫の望みと夢はクルーテオにしてみれば正にこの小僧が吹き込んだ愚かな幻想で、案の定それは裏切られ、愛する姫が死ぬ原因となったもの。

だからこそ、ここでクルーテオは自ら鞭を手に取り、抑えきれぬ憤怒をまず椅子を破壊するほどの一撃で紛らわせ(そうでもしなければ手加減など到底出来ずにすぐに殺してしまう)

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居合わせた部下がドン引きする狂態を示すことになったわけで。

ようするに、ここは4話トリルラン殺害後、帰還してのやりとりの拡張再現版なのでは、と。


なお、

「ご無事だと……どうされるのです……。また暗殺するのですか……」

「なにっ!?」

「トリルラン卿に、命令したのでは……今度こそ、殺せと……」

「生かしておけば……一族郎党逆賊だと……!」

「貴様、トリルラン卿の最期を見たと申したな…」

「ええ…僕が撃ちました」

「…では、隕石爆撃に巻き込まれたというのは」

「次元バリアを装備した二ロケラスがですか?」

「……っ!」

「あなたの……思い通りにはさせない」

「姫様は、あなたの…野望を……砕く……!」

という色々ぶっちゃけたくだりがザーツバルムが映像通信を切ってからということで。

"スレインはザーツバルムに伝わらないことを確認した上で、クルーテオが陰謀に組しているかどうか試すべく決定的な情報を出したのでは"という解釈を見かけるのですが、おそらくそれは違うだろうと思えます。

最期の捨て台詞と覚悟していただろう「あなたの……思い通りにはさせない」「姫様は、あなたの…野望を……砕く……!」に明らかなように、スレインはクルーテオを陰謀の首魁(か上位のメンバー)と確信していたわけです。

スレインの捉え方からすればクルーテオに話すというのは陰謀一味にも当然伝わるということになるわけで、ザーツバルムに伝わるか否かは意味がありません。


あと、クルーテオによるスレイン尋問の特にこの部分は分かりやすく、7話の伊奈帆とスレインのやりとりと重ねられる形になっているのだろうと思えます。

「アセイラム姫、やっと見つけた……」

「姫は死んだ。……なのに……なぜ探している?」

「え?」

「君は姫が生きているのを知っていた。…何故だ?」

「どういう意味ですか?」

「答えろ」

「姫に逢わせて下さい」

「僕の質問が先だ」

「んっ……もしかして……姫を利用するつもりですか」

「利用されると……困るのか?」

「あなたは……」「あなたは……僕の敵ですか!?」

「君は………僕の敵だ」

ここで失神したスレインはその後のクルーテオの転向を全く認識しておらず、7話の伊奈帆が「蝙蝠」を敵だと確信したのと同様にクルーテオを陰謀の一味と確信したままでいるのでしょう。


そして、最後に。

「アセイラム姫が、生きておられる。そんなはずは……っ!……まさか……!」

「貴様は真実を知り、一人で姫を探していたのか!」

「逆賊に悟られぬよう、誰にも明かさず、たった一人で……我らに捕まり、殺される危険も顧みず」

「……許せスレイン。良くぞここまで忠義を尽くした」

「この者を手厚く介抱せよ!」

(私も姫に忠義を誓った者。姫に手をかけた反逆者、許しておかぬ……)

「地球連合本部に連絡を取れ。休戦を申し込むと同時に、アセイラム姫捜索の協力を願う」

「我ら軌道騎士を愚弄したものを、必ずや突き止め、成敗してくれる……!」

このクルーテオの大転向なんですが。


「ここまで幾度も強調されてきた地球人への差別意識がいきなり吹き飛んだ!?クルーテオさん、なんで?わけがわからないよ!」"という話ではない"ということになります。


"まだ子供の姫に軽佻浮薄な幻想を植えつけて道を誤らせ、死に追いやったとばかり思い込んでいた小僧が、実は強固な意志と誠実さと知力を兼ね備えた立派な一人の男だったと初めて気づいた。そして、何より大切なこととして、姫様は生きておられたのだ"……という話なのでしょうね。


元々地球人への敵愾心も当人的には"何より大切な姫への追悼を示すにはそれしかない"という理由で見せていた二次的なもの。

なので、姫様のためとあらば過去自分(たち)が何をやらかしたかなど本気で何の問題にも感じず(勿論、相手側が同様に思う理由は何もありません。ここら辺がまさにクルーテオさんのクルーテオさんらしいところ)、平気で地球人とも手を組もうとするわけです。

クルーテオというキャラクター描写として、全く問題なく一貫しているのではないかと思えます。

(なお、城内向け映像で部下に指示を出した直後にディオスクリア襲来という流れですので、休戦提案は地球側に発信されていないのだろうと思われます)。


ちなみに、クルーテオさんがスレイン君を一人前の優れた男として認めたということは当然、アセイラム姫も同様に一人前と認識し、その理想もそのように真剣に捉えなおすことにすぐに繋がったはずで。

if展開や本編での「実は生きていたクルーテオ卿の再登場」を願う人にとって、そこら辺を考えてみるのも面白いのではないかなー、と思えたりします。



ちなみに、「では、スレインとクルーテオがもっと早く、共に姫様への思いを認め合って手を取り合うシナリオはありえなかったの?」ということについては、「実は4話ブラド来襲の時点で実現する寸前だった」という話も。

ブラド来襲時、アセイラム姫の「あの騎士と話をします」との決意を伊奈帆が「ここにいてください」 「ここにいて」と押し留めて。それは必然といわないまでも、丁寧に準備された当然の流れではあった(※)わけですが。

もし姫がブラドの前に正体を見せ「控えなさい!」とやっていたら、驚愕し本当に控えた上でむしろ喜び勇んで上司のクルーテオに報告、スレインとの電撃和解待ったなし……というところだったわけで。

なんとも、切ない話ですね。

※9話で姉の界塚ユキが語る、伊奈帆の姫への執心。互いに強く意識し合っていった経緯は、例えば2話の伊奈帆の反攻宣言と4話アルギュレ襲撃時の姫の決意が対で描かれた上で4話終わり近く……という流れが楽しい

共通するのは「居合わせた誰かのために自分が」という意思表明。

2話、鞠戸から姉への通信を聞いての伊奈帆による提案。

「さっきのやつ、まだ僕らを追ってきてるって」

「でも、その隙に避難民を乗せたフェリーが出航できるかも」

「僕らが囮になれば」

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ここで(あ……)と伊奈帆を見る姫の表情。

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これが、すこし後でカームに「中二病?」と胡乱にも受け止められる「この窮地、この試練私には引き受ける務めがあると感じます」に繋がっていて。


で、今度は4話、アルギュレ襲撃時。

「あの騎士と話をします」

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「姫様。危険です!もし、暗殺者の仲間だったら……」

伊奈帆、姫(たち)を見つめている。

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承知しています。ですが……」

「ここにいるみなさんを守るには、それしか。」

伊奈帆、驚きの表情を浮かべる。

※彼が驚くのはかなり珍しい。

「いけません!!昼間は運がよかっただけです!もう二度と、あのような無茶は……」

そして、それが伊奈帆を動かす。

「ここにいてください。」

「ここにいて。」


以上の対になってるやりとりの映像の流れ、時々の表情なども見応えがあるのですが。

4話終わり近く、アルギュレ一時撃退後の描写が特に愉しいところ。


カーム「ふう……作戦通りってかんじだな」

韻子「どこが!?危ないとこだったじゃん!」

韻子「伊奈帆らしくないよ!無茶なんかして……」

伊奈帆「そうかな……」

ここで伊奈帆はエデルリッゾを伴った姫を見やり。

地球人への蔑視を隠さないはずの火星で(皇帝に次いで)最も尊い身である皇女は、伊奈帆(たち)に向け自然にお辞儀する。

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「……そうかも。」

伊奈帆はアセイラム姫の行動をみて驚き、何かを感じ、決意し。

彼を見つめ続けてきていた韻子が(ちゃんとここで気づいてるのがなんとも)「らしくない」と気づいた行動を取り。

そして、伊奈帆自身もその原因について気づき、認めているし、作品も視聴者にそれを明確に示している。


対ヘラス戦でもいわば、この続きとなっている幕があり。

艦長バラスト注水を要請、収容・保護されている民間人たちの目の前に飛び降りてきてロケットパンチの前に立ちはだかり、迎撃を試みる伊奈帆が、ふとそこに姫がいることに目をやり、戦闘中なのにじっと見据えて。

そんな伊奈帆に向かって姫がひとつ頷き、慌てるエデルリッゾが避難を勧めるのに応じて立ち去っていく……という流れも愉しい。


なお、もう一つ「if」を書いてみると。

もしもニロケラスを運んだのがスレイン以外のクルーテオの部下で、流れが大体同じだった場合

生存と陰謀は普通に報告されていたであろうところでした。

スレインだからこそアセイラム姫のためにクルーテオを疑ったわけで。

普通のクルーテオの部下ならボスに報告しない理由がありません。


なお、そこで流れが異なりニロケラスが撃破されなかったとしても、姫が正体を晒して眼前に立ちはだかった時点で相当面白いことになったはずです。

ニロケラスではまずいところを見られても、スカイキャリアーを始末して口封じすることができません。

それはそれで、トリルランは当人が語ったとおり「一族郎党逆賊」の窮地に陥るところでした。

色々、面白いですね。


ただし、ここまで書いてきたように、姫への弔意をせめて地球人への懲罰で示そうというクルーテオにしてみれば。

姫を惑わせた罰も兼ねてスレインを同行させ地球人への攻撃に加わらせるのは(その報告で"地球人との和平が姫の意志だった"などと答える彼に二度と出撃を許さないことも含め)極めて当然だった……ということも書き添えておきます。



私からは、とりあえず以上です。


※2015/2/1追記

他、アルドノア・ゼロ全般についてのまとめ。

○一期

http://togetter.com/li/701654

○二期

http://togetter.com/li/768604

界塚伊奈帆はスレイン・ザーツバルム・トロイヤードをどう認識し、何を思っているのか?

http://togetter.com/li/777005