幻燈日記帳

2018-06-24

羽田発・札幌行き 札幌発・羽田行き 14:08


事前に渡された工程表を真面目に見てなかったため、1時間も早く空港についてしまった。まったく愚か者だ、とつくづく思いながらも自責の念がないことに失望し、かばんに入っていた文庫本を開くことすら身の丈に合わない、とただひたすら時間が経つのを待つだけの人間になりさがった。1時間遅くつかなかっただけいいよ、と言い聞かせマネージャーと合流。北海道は半年ぶり。弾き語りで行くのは初めてだった。ハードケースとキャリーを預ける。森さんの親父さんが使っていた12弦ギターのハードケースを使っているのだけど、このハードケースにはPEPSIのステッカーが貼ってある。森さんの親父さんは今、ドゥカティを乗りまわしているそうだ。飛行機はあっという間に新千歳へ着き、そのかかった時間の半分の時間で札幌まで出る。そしてPASMOから1000円以上ガツンと引かれるブルーズ。会場に到着すると前野健太さんのリハーサルが漏れ聞こえる。ライヴ会場でこうやってお会いするのはいつぶりだろうか。と考えたらもしかすると2012年のPOP鈴木祭りなのかもしれない。時が流れるのは早い。会場が元映画館、シートもそのままのホールだったのでとても楽しくやれた。前野さんのときにMCでガハハ!と笑っていたお客さんたちが曲が始まるとスッと集中していくのがわかった。映画を見るときのような気分でライヴを見るならば、前野さん以上の適任はいない気がする。僕は鉄さびの匂いを手のひらにつけながらの鑑賞だったので、僕も椅子に座ってしまえばよかった、と今更になってちょっとだけ思った。会場の方に挨拶を済ませて、少人数で打ち上げへ。ここで前野さんといろんな音楽の話ができた。ちあきなおみさんや加藤和彦さんの話ができる人って意外といままでいなかった気がするけど、普段あまり打ち上げにも出ないし、出たとしてもメンバーとわいわいしゃべるぐらいしかできてなかったな、と思い、普段は飲まないビールを「うん!飲みやすい!」とか言いながらちびちび飲んで、1/3飲んだぐらいでマネージャーは笑いながら「見たこと無いぐらい顔赤くなってますよ」と言った。そして半分飲んだあたりで烏龍茶を頼んだ。お互いの好きなレコードの話をして、ジンギスカンを食べる。ここは札幌、すすきの。金曜日の夜だった。愉快な夜は更けていった。


ホテルに帰り、テレビをつけるとあざらしのこどもが流氷のうえでゴロゴロする映像が流れていた。どこまで北海道らしくもてなしてくれるんだ!素敵な街だね。


レコード屋へ向かうタクシーの道中、運転手のおばちゃんが「春先は風が強くって。昔はこんなんじゃなかったんだけどね」とボソっと言った。6月も終わりに近づいたというけれども、暮らしの中ではきっと春先なんていうこともあるかもしれない。木々がしなり、電線が揺れるのを車窓から見ていた。


札幌から空港、南へ向かう電車の東側の車窓から見た木々はおそらく北の方角にしなったり、葉が茂り、枝が伸びたりしているような気がしたのが気になった。

2018-06-17

ここがバザーだ 01:59


仕事が終わった!明日からは久しぶりにまとまった休みだ!とエレベーターに乗り込むところで父からメールが届いた。母が足の小指を折ってしまったけれども、明日から父は泊まりで釣り、兄は大阪旅行だという。親子ともども骨折したことが過去になく、対処の仕方がわからないというのもあるが、それぞれ天秤にかけたら足の小指の骨折くらい…となったのだろうか、薄情にもそれぞれの予定を遂行することになったそうだ。翌日、実家に行き母の手助けをする。下半身不随になってしまった(きっと散歩が嫌いすぎてそうなってしまったんだ、という話になっている)バセットハウンドの世話が一番たいへんそうだった。実家に帰ってもぴゃーっと帰ってしまうことが多かったので、じっくりと話ができたし、見ていなかったアメトーークを何本も見た。年を取るのは人間だけではなく、実自体も年を取ったな、と少し感じた。作業部屋に戻ってmixiを開いてみる。レイバンスパムメールが何件が来ている。10年前の日記を読んでみる。生意気なことも言っているのだけど、これから、あれから本当に10年経ったのかな。時間と仲良くなりたい。いろんなことを考えているうちに考えていることがいやになってしまって、置いていかれるのではなく、景色を見ているのに何も見ていない、どこにも焦点があたらないような焦燥を思い出した。

2018-06-14

これまでの私、これからの私 03:11


千駄木の青柳くんのところで整体。ここ数週間バッキバキだったのであまり間をあけずに行ってきた。整体で重要だな、と思えるのは施術自体ももちろんそうなんだけど、普段口にしない体について思っていることを言葉にして話して、自分も気づくということだと思っていて。これはある種のカウンセリングだったりするんだろうか。


整体終わって谷根千のあたりを少し歩いて電車に乗ってジャニスへ。高校から大学まで足繁く通ったジャニス。すっかりレンタルはしなくなってしまったけど、今でも時々レンタルCDの納品に行っていたのでした。しかし"CALL"が店頭に並んでいるのも見なかったのでかれこれ2年以上来店していないことになる。久しぶりのジャニスは移転してしまったけれども、CDに囲まれるというウキウキと恐怖が同時に押し寄せるあの感覚は、調子がいいときは心地よく思えるし、調子が悪いと「情報が押し寄せてくる…!」となってしまう。。幸い、訪れたときは調子がよかったので、心地よかった。

2018-05-29

レトロニム 03:55


ある曲の印税支払いの明細書が届いた。いままで自主でやっててアルバム全体でいくら分、とかそういう明細ならいくつも見てきたけど、単曲の明細書、しかもちゃんとした額の明細書は初めてだった。この1曲ががんばってくれたおかげて私は今こうやってマンションの集合ポストの前でこらえきれず開封した明細書を見られているんだ、と泣きそうな気持ちになった。30歳にして、ようやく現実の足音が聞こえてきたような気がする。幻聴かもしれない。幻聴だとしたらユリイカから原稿の以来が来たあたりからおかしいなと思っていたんだ。実家から持ってきた古いコンポは24年前のものだ。恋人との付き合いは10年を越えた。エス・オー・エスをリリースして8年経ち、実家を出て5年も経った。夢見心地で時々きっつい悪夢を見させられる人生にようやく現実というものが私の肩に手をかけようとしているのだろうか。現実が私の肩に手をかけたとき、私は殴り飛ばされるのかもしれない、抱擁を求められるのかもしれない、ただあいさつされるだけかもしれない。だからこそ、その入金が本当に嬉しかった。私はタワーレコードに向かい様々なCDを買った。買い逃していたニール・アンド・イライザの新譜、NRQの新譜、サンプル頂いていたのに特典のカセットが欲しいからとceroの新譜も買った。もうずいぶん前に勧められたブルニエール&カルチエールや、晩年のチェット・ベイカーの録音、メル・トーメのラジオの放送のために吹き込んだライヴ録音なんかも買った。取材とかで時々「初めて買ったCDはなんですか?」と訊かれる事がある。子供の頃から音楽漬けだったので、細かく覚えていない。途切れなく音楽を聴いていたから始めてもらったお小遣いで何を買ったかも覚えていないのだ。もしかすると今回のタワレコでの買い物は本質的にはそれに近いのかもしれない。

2018-05-27

ミスター・木 03:06


心理的に長過ぎた製作期間を過ぎて、数曲レコーディングが完了。1曲に至っては歌まで入れてきた。そして次の仕事。また曲を作る期間に入ります。頭も回ってない時間が増えちゃったけどそれでも楽しいのは不思議なものだ。ナイポレの選曲で自分のライブラリーと向き合う時間が数週間に一日はあるからそれかもしれない。6/1はハードコア選曲回だったので更に曲数が増えました。選曲もかなりいい感じ。先月発売したばかりのものから、母のライブラリーから受け継いだものまで。うれしいねえ〜


某社に4年ぐらい送ってなかった某曲の著作権の契約書を送った。即入金かな〜と思ったら某社の振込ラインに満たない額しか入ってなかったらしく入金はなさそうです。僕は発売から4年経った某曲の印税を受け取れる日は来るのでしょうか。


先日、THREEでイエママのサポートをやったとき、共演で久しぶりにあった井上くんが酔っ払っていて「澤部さんはどうせ帰っちゃうんでしょ、打ち上げでないんでしょ」と絡まれる。下戸のインタビューを楽しく読んでくれたそうだが「そういう絡まれ方が嫌だから僕は打ち上げが嫌いなんだぞ」と目を見て話した。伝わっただろうか。楽しい気持ちを共有したいのはわかるが、楽しい気持ちを強要されるのは居心地が悪い。


インスタグラムをなんとなく見ていたら方便くんが盛大にチリトマヌードルをこぼしている画像をあげていた。めったに方便くんの写真にいいねをつけないのになぜかいいねを押してしまい、不幸があったときにだけいいねを押すような人間に自分もなっちまったのか、と様々なことを呪った。


以前シェアハウスをしていたみんなと久しぶりに会った。くだらない話ばかりして、こういう時間はいいものだ、と素直に思う。


制作の期間が終わったので積んでいた漫画を少しずつやっつけていく。阿部共実さんの「月曜日の友達」2巻とんでもなくよかった。今夜は大沖さんの「たのしいたのししま」1巻を読んで寝ようと思う。大沖さんがコミティアで出して、その後twitterにアップしていたにがみちゃんの漫画、一日でかきあげたそうで、読んでても大沖さんすげえ乗ってるな!とこちらもアツくなる内容でテンポ感含めて最高でした。

2018-05-19

ビガップ太郎 02:17


エス・オー・エス』の臨時増版分が我が家に届いた。低価格を求めて今までとは違う業者にオーダー。1万円ぐらい値段が違った。はじめてのプレスなので仕上がりが不安だったので届いたCDをそのままプレイヤーにかける。通して聴くのはかなり久しぶりだ。「エス・オー・エス」は今だったらこうやらない、というアイデアがたくさん詰まっている。いつまで経っても自分の中では古くなれないアルバムになってしまった気がしていて、それはそれで少しさみしい。事務所でcero特集のユリイカ鈴木慶一さんが寄稿したコラムを今更読ませてもらって膝から崩れ落ちた後の確認作業だったので、自分のシャイネスはそういうことじゃないのかもしれない、でもいつも心にシャイネスがあって…だなんて考え出してまとまらなくなった。アルバムを聴き終えた時、8年も前のレコードなのに安心して聴けてしまうんだね。私の失望と輝ける私の未来が同じバナナの葉の上に盛り付けられ、それらを素手でいただかなければいけないような状況だと感じた。8年も前の事ぐらい「そんなレコードもありましたね」で済ませたいのに8年たったいまでも「一人でも多く聴いて欲しい〜」と思ってしまうスカートのファースト・アルバム『エス・オー・エス』をどうぞよろしく。


yes, mama ok?のリハーサル。リハに入る度に僕はyes, mama ok?の曲が本当に好きなんだな、としみじみ思う。いつか「The Charm of English Muffin」を書きたい。いつか「問と解」を書きたい。いつか「Q&A call 65000」を書きたい。いつか「Hurry Up!」を書きたい。いつか「days of heliotrope」を書きたい。

2018-05-09

グーテンターク 21:34


昼間、買って3ヶ月もたなかったNintendo Switchのプロコントローラーの入院手続きをして郵便局に持っていった。昼食を摂ろうと某店に入って注文したらあまり好みのものとは言えなくて顔が曇っていたんだけど、そこになんともいえないフュージョンがかかっていてさらに精神力を削られていく結果に。書店にいって鶴谷香央理さんと大沖さんの新刊買いにいったのだが鶴谷さんのがなくて、辛うじてくたびれたロープでビットにつながれていたかつて心と呼ばれたものがゆっくり離岸していくのが解った。それぞれは大した事じゃない。3ヶ月経たずに8000円分近い楽天ポイントと引き換えに購入したコントローラーがぶっ壊れたことも大したことじゃないんだ。(修理出している間に楽しもうと買ったもともと壊れていたジョイコンLを買い足したのだがそれが一週間もしないうちに暴走しだしたことはまた別だけれども。)なんとなく入ったカレー屋のスパイスカレーがショボかったのも大したことじゃない。そのカレー屋でフュージョンがかかっていてもなにも不思議じゃない。傷は浅い。書店で読みたかった本がないのももうこの街に住んで4年近く経つんだから解ったはずだよ。しかし、全ての痛みを全身で受けた書店の帰り道の踏切を渡る頃にはサッド・モンスターがそこに誕生していた。ライヴも終わって、さて創作だ!とスイッチを入れた数時間前の私はもう既に渡れない橋の向こう側にいるようだった。かなしいペダルをこいで部屋に帰ると布団だけが僕を優しく受け入れてくれた。ああ、眠ったね。抗えないかなしみを抱えてしまったときは眠るしかないんだろうか。輝かしい失われた数時間。棄ててしまうべき数時間。やれたことは沢山あったはずだろう。その数時間。