幻燈日記帳

2017-02-28

縫い断つ日々 18:28


早い時間に起きて散髪へ行く。外観へのこだわりとは無縁の生活なのにも関わらず最近ライヴ会場で知り合った美容師さん、横田さんに切ってもらうために原宿へ。電車をいくつか乗り継いで向かった。その前日に作った新しい曲を聴きながら口を歪めていたらあっという間に着いてしまっていた。これまでありのままを続けてきた頭髪にはじめて色気が加わることになるかもしれない。自然と心が沸き立つ。「パーマを当てたりとかはいいの?こういう感じだよ」と言われ動きをいくつか提示されるも鏡の中にいる自分は太りちらしたしがないシンガーソングライター、という事実を思い出し、「へへへ」と奇妙な薄ら笑いを浮かべるばかりだった。「迷わなかった?」なんて横田さんは言いながら鏡の中の鋏は重くなりすぎた髪を少しずつ振り払っていく。コミティアで売ってたあらごんさんの冴えない地味で眼鏡のおんなのこが原宿に髪を切りに行く話があったけど、それと自分は今まったく同じ状況なんだ、と気づいた途端、気恥ずかしさもあったが、すぐ冷静になり、29歳としてはまったく問題ない行為だ、と再び鋏の先を見つめた。仕上がりは自分の薄くなり始めた頭にどういう髪型がいいか、というのを話し合いながらの散髪だったので、個人的には今までで一番!といえるぐらいいい頭髪になった気がする。もちろん薄くなり始めた事は解決しない。晴れやかな気持ちで外に出ると風が吹いた。軽くなった襟足を実感して足取りも軽くなった。

池袋に向かい喫茶店に入る。昨日書いた曲に歌詞はつかないものか、とアイデアを紙に走らせていくのだが、結局まとまらず。そのままココナッツディスクへ納品に向かった。現店長の中川くんとは中高以来の同志だ。中川くんがココナッツディスクでバイトを始めなかったらあんなに円滑に「エス・オー・エス」がココナッツディスクの店頭に並ぶこともなかったかもしれない。いや、ココナッツにはもうひとつ大いなる偶然があるのだけど、それはまたいつか。近況を話して「もうすぐコレクターズ武道館だね」と話し合って中川くんが僕の大好きな"幻想王国のコレクターズ"をかけてしばらくしたらコレクターズのギタリスト、古市コータローさんがたまたま来店。お会いするのははじめてなのでおろおろしているとコータローさんは新入荷のコーナーをあらい「おっ、これ持ってる?」と古井戸の"酔醒"というレコードをひょいっと出した。「いや、持ってないです」「これ、最高だよ」と即購入。コレクターズと何かと縁(かいつまむと幼少期から通ったレコード屋がコレクターズをとても推していたこと、シンバルズ界隈に出入りさせてもらってますということ、大学の先生が幻想王国のエンジニアだったということ)があるので話したいことがあまりにありすぎるのと軽いパニック状態になって、どういう話をしたかは思い出せても前後関係がかなりあやふや。コータローさん去りし後、中川くんとずっと「こんなことあるんだね」と話していた。

その後店内を見て回り何枚かレコードを物色。Dennis Lambertという人の"Bags & Things"というレコードのジャケットが目を引いた。視聴すると数秒で針をあげてしまった。これは家でしっかり聴こう。

ココ池を後にして中野で恋人、友人で待ち合わせ。テレビマンをしている友人がおすすめする芸人、レオちゃんの単独公演。日記ではいろいろはしょっているけど喫茶店をでて以降たちっぱなしだったことと、レオちゃんのやさしい声質も手伝ってすこしうとうとしてしまった場面もあったのだけどめちゃくちゃおもしろかった。絶対伝わらないんだけど「食人族に捉えられ儀式的なもの始まったら儀式のための歌が中島みゆきの糸」というものなど、発想のヒントを抱えて友人、恋人と晩飯を食らった。同い年、それこそ中川くんと同じ中高の友人なので、30歳を前にした人間特有の焦りを共有し合い、帰路についた。


今日は昨日作った曲を少し作り直す作業。その再構成、デモの録音に半日費やし、作業が終わり昨日買ったレコードを聴いていた。コータローさんに薦めてもらった古井戸は想像していた印象と違う部分が素晴らしくて、こんなにモダンなものだったとは!冬のうちに聴けてよかった。コータローさんに感謝です。そしてもう1枚、Dennis Lambertの"Bags & Things"を聴くんだけどこれがまた素晴らしかった。全然関係ないし、メロディが似てる、といかそういう話ではないのに「冬のある日」と始まるあの歌を思い出していた。

ふぁる代ふぁる代 2017/02/28 22:48 カンヌ映画祭から来ました、、心にすーっと入ってくるとてもとてもいい曲ですね歌声も、、すてきですね 陳腐な言葉でごめんなさい、、古井戸、、私も好きです

2017-02-08

BGM 01:55


1. Check My Machine / Paul McCartney

昨年、清澄白河に出来た45rpm Tokyoというカフェと併設の7インチ専門店で購入。数人の友人知人から「マッカートニー2はダメでしょ」と言われたことあるんだけど好きな曲が結構はいっていて個人的には好き。でも特に好きなのはアルバムに入らなかった"Secret Friend"とこの"Check My Machine"。この世界観で無責任にバンジョーが鳴っているのがたまらないです。


2. Gardenia / Iggy Pop

恋人の付き合いで行った服屋(ZARA)でかかっていてなんてカッコイイ曲!とShazamしたらイギーの新譜だった!のでその足で吉祥寺のユニオンで新品LPを購入。この日は確かときわ台の高田書房店長とユニオンでばったり会って「なにかおすすめを1枚見繕ってください!」と言ってロビン・ワードの「ワンダフル・サマー」を薦めてもらった。春のことでした。


3. 私立探偵 / RC SUCCESSION

高校生の頃に池袋のココナッツで購入したRCの84年作"FEEL SO BAD"に収録。この頃ちょっとずつロックと距離を置きたかった時期だったのかA面はあまり聴かずにB面ばかり聴いていた事を思い出します。RCのポップな部分がとても好きです。


4. 不良少女 / 岡村靖幸

テンポが似ているのでつなげてみました。数年前に吉祥寺のココナッツで購入。twitterに入荷のツイートがあがってすぐお店に行った記憶があります。"DATE"でもこの曲が特に好きでついつい聴いてしまう一曲です。


5. The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy) / Blossom Dearie

スカートのファンの方から頂いた7インチ。ずっと探していたので頂いたときには本当に嬉しかったです。フォンタナからリリースされた7インチはCDにもなっていないのに、7インチという特性も手伝ってか、コマーシャルでポップな内容のものばかりです。いつかこれらの音源と67年の"Soon It's Gonna Rain"がまとめてCDになることを願っています。


6. The Paleolithic Game / George Russell & The Living Time Orchestra

つい先日、ココナッツの吉祥寺で購入した1枚から。ジョージ・ラッセルは先程書いたときわ台高田書房の店長が「面白いから探して聴いてみたら」と薦めてくれてMPSあたりから出たレコードを1枚買ったらてんでわからなかったのにこのレコードは大好物でした。


7. The Hound Of Music / Georges Arvanitas

ユニオンの新宿中古センターで購入。かなり高い値段だったのにジャケ買いしてしまった。フランスジャズピアニスト、ジョルジュ・アルヴァニタスのライブラリー音源。シンプルかつ力強いテーマが好きです。


8. East Side Song / Maurice Vander

2,3年ほど前にユニオン御茶ノ水ジャズの専門館で購入。Maurice Vanderをジャケ買いしたのはいつだったろうか。日本のレーベルから10インチ再発されていたシリーズがあって、そのヤンシー・キョロシーのレコードをたまたまジャケ買いして、そのレーベルのものを何枚か買ってみよう、と買ったのがMaurice Vanderだった。聴いているとこのタッチは大好物。暫くしてピンときた理由がわかった。ピエール・バルー「生きる」で最高のピアノを弾いているのは彼だったのだ。


9. Sunny / Cy Coleman

ebayに出品されているものをTJNY唐木さんにお願いして落札してもらった7インチ。サイ・コールマンはブロードウェイの作曲家で…みたいな紹介はいくらでも出来る。ジャズマンがロックの時代をどう生きたか、ということに興味がある自分にとってはこれはその最良のひとつ。ある種のプライドのようなピアノプレイだと思います。


10. Number Nine / Van Dyke Parks

ココナッツディスク吉祥寺店で購入したプロモのコンピ「The Core Of Rock」から。ヴァン・ダイク・パークスのデビュー・シングルらしいんですがアイデアも音像も素敵。この雰囲気でアルバムを1枚作っていたらどうなっていたんだろう、とも。


11. Button Up Your Overcoat / Mel Torme

これもココナッツディスク吉祥寺店で購入。ジャズマンがロックの時代をどう生きたか…第二弾。これは限りなく正解だと思います。小さい編成で小気味よくかつビートのアプローチが儚くもたのしい快楽。


12. Byrd Avenue / The Four Freshmen

続くよ!最近ココナッツディスク吉祥寺店で購入したフォー・フレッシュメンのレコード。そろそろ解っていただけたでしょうか。ぼく、ココナッツディスクだいすきなんです。遠い記憶だけど多分この曲十代の頃に臼杵さんあたりのDJで聴いてる気がする。


13. Ah! Dis-donc, Dis-donc / Jo Lefebvre et son ensemble

さてまたココ吉。やたらと古いペラジャケの日本盤がドカンと入荷していた時期があって、ジャケットも魅力的なものが多かったので購入したものの1枚。楽曲自体は「あなただけ今晩は」のメインテーマで、えっ、音から考えると絶対60年代でしょ、映画より前の雰囲気あるんだけど、と解説みたらミュージカル原作だったという事が解って、これだから好きだよ日本盤!と天を仰ぎました。


14. Tiger Guitars / Billy Mure

そのココ吉で買ったペラジャケの日本盤のなかからもう1枚。レスポールやアルカイオラとかの音響的なアプローチをしたギターレコードであることは間違いないんだけガレージ。乱暴な感じがしてちょっと好き。


15. Big Boss Man / Syndicate Of Sound

ときわ台の高田書房で購入。常々ロック嫌いを公言している僕ですが、やっぱり本当は好きなんじゃないか、って思ってしまうときがあって、それがこういうレコードを聴いてしまった時。ドラムが最高。そこにスネアいれますかー!と唸ってしまう。


16. Lester Leaps In / The Monochrome Set

続けて景気のいい選曲。下北沢のユニオンでやってたニューウェーブ系の放出セールで7インチを見つけて購入。高校生ぐらいの頃から好きで聴いているモノクローム・セットだけど、この曲で思い出深いのは18歳の夏、免許合宿に行っている時、iPodのシャッフルでかかってこんなにいい曲だったっけ、と妙に泣けてしまったこと。ずっとチェット・ベイカーの伝記を読んでいたさみしい18歳の夏、余計に響いた。


17. I Wanna Play The Drums Tonight / Tot Taylor

続けて下北ユニオンのセールで購入したものその2。大学生の時に立ち寄った神保町のユニオンでかかっていたコンパクトオーガニゼーションのコンピにやられて、こりゃ沼だ、とあまり近づかないようにしていたのだけど、7インチぐらいだったら、と思って買って聴いたらやっぱり最高だったので今後の楽しみがまた増えました。


18. Straight Lines / New Musik

直線的なポップさにシンセサイザーのリズムが絡む、ニューウェーブの時代らしい表現が大好き。ココナッツディスク吉祥寺店の壁にかかっているのをなんとなくジャケ買いしたらアタリで、トニー・マンスフィールドの名前をそこで覚えました。


19. Number One Song In Heaven / Sparks

スパークスを最初に気にしたのはジャニスの下にジャニス3号店があった頃、店頭のディスプレイに"KIMONO MY HOUSE"がかかっていたのが強烈なインパクトだったから。それからちょっと時間が経ってどういう経緯だったか忘れてしまったけどYouTubeでこの曲を聴いてすぐトリコに。そして割りと早めの段階で図書館に「ハロー・ヤング・ラヴァーズ」があったので借りて聴いてみたらそれも最高だったのでスパークスを聴き狂う日々が来てしまったわけでした。どうしてもこのレコードが欲しかったのでネットで探したら大宮のレコード屋にあるという事が解って買いに行ったことは覚えているのですが、調べても記憶の中の店ではなく、どうやらそのお店はなくなってしまったようでした。そこではスタイリスティックスの78年ぐらいのアルバムも一緒に買った。


20. This Must Be The Place (Naive Melody) / Talking Heads

トーキング・ヘッズが嫌いだという母の意見を尊重し、あまり聴かないまま20歳を迎えて、新宿ユニオン本館の100円レコード市でこのレコードを発見。せっかくだし買ってみよう、と買ってトーキング・ヘッズをはじめて聴きました。あのセールはかなり衝撃的でPRINCEの"1999"、坂本龍一さんの"B-2 UNIT"とか結構いろいろ買ったはず。でも今回収録したのはその後ココナッツディスク吉祥寺店で購入した初回盤のクリアヴィニール盤の音です。


21. Love Talkin' (Honey, It's You) / 山下達郎

会場BGMとして60分のラインがトーキング・ヘッズになるように組み立てていました。テンションあがるような曲にしてもよかったのですが1曲目がゴウスツだったもので、ここからさきは「押したらかかる曲(そして押さないように心がけたいという意味もある)」でした。ちょっと長くなるんですけど僕はシュガーベイブが好きすぎて山下さんのソロを真面目に聴くようになったのは実はスカートと名乗って活動しだしてしばらく経ってからでした。シュガーベイブのガレージな雰囲気と楽曲の整合性の取れた矛盾を愛しく想いすぎて、鉄壁のグルーヴを手に入れたそれ以降、「鉄壁のグルーヴを手に入れてしまった」と感じてしまいどこか馴染めない、と思う部分があったのだと思います。ですがある時、ある方から「これは僕じゃなくて澤部くんが持っているべきだと思って」とRCA/AIR YEARSのLPボックスを頂いた事をきっかけに、改めてそのカタログを聴いて時間をかけて聴いていって、「Love Talkin'」をはじめ、「MUSIC BOOK」や「DANCER」、「迷い込んだ街と」、「いつか」などもともと好きだった部分からほどいていくことが出来ました。あの時ボックスを下さった方には感謝してもしきれません。でもまた今回そのボックスの音源ではなく香川のハードオフで買ったオリジナル盤からの音です。


22. スニーカーダンサー / 井上陽水

数年前、晴れ豆でcero高城くんのDJを聴いてすぐ買ったのはロスト・グリンゴスの「ニッポン・サンバ」でしたが、その時にかけてて、後に思い出したように買ったのが「スニーカーダンサー」でした。井上陽水さんにはいつも奇妙なものを感じていて、迂闊に近寄れないため、まだオリジナルアルバムはこれと「氷の世界」しか聴いていないのですが、安全地帯に凝り始めた今、機は熟しているのかもしれません。吉祥寺のユニオンで購入。

2017-01-17

離れて暮らす二人のために 00:51


"PARKS"の試写に招待されたので見に行く。("PARKS"とは4/22(土)テアトル新宿他で公開される日本映画です。吉祥寺井の頭公園100周年の記念もあり、その場所で起こった/起こる事を描いた映画です。吉祥寺のあたりをぷらぷらしていることが幸いしたのか縁がありまして僕も出演しているのです。映画のために一曲書き下ろしています。「離れて暮らす二人のために」という曲です。映画の詳細こちらから。http://www.parks100.jp/) 普段あまり行く機会がない東銀座の劇場での試写だった。ギリギリの時間になって会場に着くと来ると言っていた社長は居なかったが、ココナッツディスクの社長とバッタリ。一言二言会話をかわして映画が始まった。"PARKS"はとても不思議な映画のように感じた。それは見知った景色(ココナッツディスクだって映るんだよ!棚に注目だ!)がスクリーンに映っているからかもしれない。見知った人たち(マイメン谷口くんやゴロニャンずでベースを弾いていた池上さんやシャムキャッツも!)がスクリーンに映ってるからかもしれない。そもそも自分が映っているんだからそれが一番不思議だ。映画は橋本さん永野さんかわいい!という視点だけでも最初から最後まで楽しめるし、その視点を少しずらしていくだけでもまた違った味わいが顔をだす。吉祥寺という街を舞台に全てが完結するので閉じた映画になるのかな、と思っていたんだけど、不思議と閉じた感じはなく、エンドロールが流れる頃には自分が好きな街をいくつか思い出していた。僕の知ってる街は誰かの知らない街。僕の知らない街は誰かの知ってる街。私写場を出て手始めに東銀座を地図もなく歩き始める。これは寒さのあまり携帯片手に街をあるく元気がなかったからではない。僕の手袋はミトンだから一度したら外したくないからでもない。映画がそうさせた。知らない街の顔を見てみたい。昼下がりの東銀座の裏通りを歩いて行く。ヤクルトレディ、配送のお兄さん、台車を押す人が多い街なのだろうか。大通りに出れば車はビュンビュン走っているのに一本入れば高いビルの影になった薄暗い街だ。でも駐車場の値段はすっげえ高い。デタラメに歩いたら有楽町の方に出た。地図を見てみるとたかだか一駅程度の移動距離に50分もあるき続けていた。もっと知らない道を歩きたいと思っていたけど割りとすぐ見たことある風景になってしまったのは少し残念。遅めの昼食を摂り、喫茶店に入りワンマンのセットリスト再考。リハーサル入ったらしっくりこない点がいくつかあったためだ。紅茶を頼んでいれるつもりのなかった砂糖を無意識にひとさじ入れていた。50分歩いただけで本能出てきてしまうのかよ!一口飲むと渋めの紅茶だったので正解だったのかもしれない。メンバーの意見も汲んで第二案を書き上げ喫茶店を出ようとしたら昨年一緒に仕事をした人に声をかけられた。「ふふふ、ここはお気に入りの喫茶店で。サボってるんです」 素敵な大人だ〜!今度ご飯行きましょう!と言って帰路につく。ぼんやり車窓を眺めていてもふと映画の事が頭をよぎる。PARKSは4/22公開です。

2017-01-14

「13万持って外で待ってるって」 23:37


毎日が不安で不安でたまらない。多くの先輩ミュージシャン達がそうだったように些細な事で自分もあちら側に行ってしまうのではないか。制作やライヴへのプレッシャーはある。続けることは時に恐怖だ。今は止まれない。決意を元に注射を一本打つことにした。これを打てば不安は過ぎるはず。自分にとって1/28のワンマンはそれぐらい重要なんだ。とはいえ、ここ数年は注射なんて採血ぐらい。「痛いんですか?」「さあ、人それぞれだけど皮下注射だからそんなに痛くないはずだよ」。この種の事ははじめてだ。細い針の先に果たして安堵が広がるのだろうか。針先を冷たい、とも思わない短い時間に身を委ねる。身体の中を何かが走るような感覚もない。はじめてというのはあっけないものだ、というのを私は知っていたはずじゃないか。握った拳を解くと男はこう言う。「抗体ができるまで2週間ぐらいかな。だから気を抜いちゃダメだよ。僕も打ったのにインフルエンザにかかっちゃったから」。ワクチンについて何も知らなかった私は2週間かかると聞いて椅子から転げ落ちた。2週間後ってワンマン当日じゃないですか。ワンマンまでに倒れないようにワクチン打ったみたいな部分もあったのに!

明らかに高熱が出ていそうなマスクをした少女を横目に処方箋を受け取って薬局に向かう。土曜日なのに薬局は高齢者でぎゅうぎゅうになっていた。平日にはこれなかったのだろうか。あっ!眩しい!(鏡を目の前に置かれてしまったようだ) 薬剤師さんに「まだまだかかると思うんで」と言われ、駅前へ向かい本屋に入る。靴下ぬぎ子先生の新刊と、恩師牧村憲一さんの新書を購入。再び薬局に戻り、牧村さんの新書を2ページ読んだら呼び出された。約一月分の喘息の薬を受け取り、自転車にまたがりスーパーで買い物。ストレスから来る病的ではないが多少の過食(ただの食べ過ぎ)と父親譲りの逆モデル体型を儚み、チゲ鍋を食らうことを決意したのが今日という一日だった。

2017-01-11

離れて暮らす二人のために 00:51


"PARKS"の試写に招待されたので見に行く。("PARKS"とは4/22(土)テアトル新宿他で公開される日本映画です。吉祥寺井の頭公園100周年の記念もあり、その場所で起こった/起こる事を描いた映画です。吉祥寺のあたりをぷらぷらしていることが幸いしたのか縁がありまして僕も出演しているのです。映画のために一曲書き下ろしています。「離れて暮らす二人のために」という曲です。映画の詳細こちらから。http://www.parks100.jp/) 普段あまり行く機会がない東銀座の劇場での試写だった。ギリギリの時間になって会場に着くと来ると言っていた社長は居なかったが、ココナッツディスクの社長とバッタリ。一言二言会話をかわして映画が始まった。"PARKS"はとても不思議な映画のように感じた。それは見知った景色(ココナッツディスクだって映るんだよ!棚に注目だ!)がスクリーンに映っているからかもしれない。見知った人たち(マイメン谷口くんやゴロニャンずでベースを弾いていた池上さんやシャムキャッツも!)がスクリーンに映ってるからかもしれない。そもそも自分が映っているんだからそれが一番不思議だ。映画は橋本さん永野さんかわいい!という視点だけでも最初から最後まで楽しめるし、その視点を少しずらしていくだけでもまた違った味わいが顔をだす。吉祥寺という街を舞台に全てが完結するので閉じた映画になるのかな、と思っていたんだけど、不思議と閉じた感じはなく、エンドロールが流れる頃には自分が好きな街をいくつか思い出していた。僕の知ってる街は誰かの知らない街。僕の知らない街は誰かの知ってる街。私写場を出て手始めに東銀座を地図もなく歩き始める。これは寒さのあまり携帯片手に街をあるく元気がなかったからではない。僕の手袋はミトンだから一度したら外したくないからでもない。映画がそうさせた。知らない街の顔を見てみたい。昼下がりの東銀座の裏通りを歩いて行く。ヤクルトレディ、配送のお兄さん、台車を押す人が多い街なのだろうか。大通りに出れば車はビュンビュン走っているのに一本入れば高いビルの影になった薄暗い街だ。でも駐車場の値段はすっげえ高い。デタラメに歩いたら有楽町の方に出た。地図を見てみるとたかだか一駅程度の移動距離に50分もあるき続けていた。もっと知らない道を歩きたいと思っていたけど割りとすぐ見たことある風景になってしまったのは少し残念。遅めの昼食を摂り、喫茶店に入りワンマンのセットリスト再考。リハーサル入ったらしっくりこない点がいくつかあったためだ。紅茶を頼んでいれるつもりのなかった砂糖を無意識にひとさじ入れていた。50分歩いただけで本能出てきてしまうのかよ!一口飲むと渋めの紅茶だったので正解だったのかもしれない。メンバーの意見も汲んで第二案を書き上げ喫茶店を出ようとしたら昨年一緒に仕事をした人に声をかけられた。「ふふふ、ここはお気に入りの喫茶店で。サボってるんです」 素敵な大人だ〜!今度ご飯行きましょう!と言って帰路につく。ぼんやり車窓を眺めていてもふと映画の事が頭をよぎる。PARKSは4/22公開です。

2017-01-09

ワム太郎 01:38


鼻歌を歌いながら浴槽を磨く。軽快かつ粗雑にやるのがモットーだ。私が作業のように蛇口をひねり上げると泡は流れていった。

湯を張り、防水ケースにiPhoneをいれてじっくりと湯に浸かる。先日ユニオンに恋人と行ったとき「私の好きなアルバムのアナログがある」と言ってティーンエイジ・ファンクラブのレコードを指していた、と思ったら、友人のツイートでなんとなく読んだ「本人が選ぶティーンエイジ・ファンクラブのベストレコード10」みたいな企画の記事に、そのレコードが2位に選ばれていた。僕はまだティーンエイジ・ファンクラブを聴いた事がなかった。なんで今まで聴いてこなかったか、というのにはいくつも理由はあるのだろうけど、単純に言えば機会がなかった。熱心に薦めてくれる人はいなかったし、好きなんでしょ?と訊かれる事も多く、そうなると妙に距離が出来てしまうというものだ。温めの湯に浸かりAppleMusicでそのレコードを探して聴いてみたら、自分でも驚くほどすんなり入ってくる。事あるごとに85年以降の洋楽でまともに聴いてるのはTMBGとレンタルズぐらいと言ってきたし、実際そうだった。それとエレキギターというのが自分の中でまだ確立されていないもののような気がしてそのあたりを処理するのに時間がかかりそうだ、と後回しにしてきた部分はある。ロックにおけるギターの理想はスパークスと思っていた。自分でもまだ整理しきれていないのだけれども、その価値観は少し揺らいだような気がする。

夜、恋人が新宿で買い物する、というのでほいほいついていった。セールになっている普段はあまり見る機会のない女性ものの洋服を見ながら「これはモダンでいいね」「これは奇抜だけどとてもキュートだね」なんて言いながら相手の購買意欲をひたすら煽っていった。いい買い物が出来たようでそれは何より。その帰りにユニオンに寄ろうと思い、ユニオンの入っているビルの1階にあるATMで現金をおろし、エレベーターに乗って気合を入れたら既にお店は閉店の支度をしていた。今日が祝日だということを忘れていた。そうだった。私はハイパー無職。曜日の感覚が退化した悲しい生き物。この気持を何で埋めよう、と店頭にあったアルコール消毒スプレーで悲しみで汚れた両手を清めた。

紀伊国屋の漫画フロアへ。欲しかった漫画をまたドカンボカン!と買ったのはユニオンの悔しさがアルコール消毒スプレーだけでは清められていなかった、という事だろう。数件探してもなかったすみれファンファーレが山積みになってて最高だよ!(私信:ゼキさん紀伊国屋にたくさんあったよ!)店内をうろうろして5冊ほど買って家に帰る。寒い部屋を先日買った暖房器具が暖めていく。レコードを聴きながら、日記を書いているので、これを書き終われば、漫画を読む、という感じです。

2017-01-08

じゃじゃ馬娘の横顔 01:37


年末年始とはなんだったのか、というぐらいにバタバタした日々が過ぎて落ち着きを取り戻した部屋と身体と気持ちで少しゆっくり出来ている。友人が送ってくれたCDを聴きながら漫画を読んでいたら、音楽で熱い気持ちになって漫画を読む手を止めたり、漫画で熱い気持ちになって音楽を一度止めてしまったり感情が忙しい。

昨日はzeppでライヴだった。zeppは数えるくらいしか行っていない。東京事変電気グルーヴcero小沢健二の4回のはずだ。えっ、そんな錚々たる方々が演奏したステージにこれから立つんですか。身支度をして部屋のドアに鍵をかける。廊下から見える半年前に暮らしていた一軒家に洗濯物がかかっているのが見えた。新しい暮らしが始まっているんだな。車のエンジンをかけるにはちょうどいい希望と感傷だ。ライヴは最初の2曲は緊張した。とにかく緊張した。1曲目の「スウィッチ」なんか今自分が弾いているフレットは8フレットなのだろうか、と、わかりきったことを気にしてしまったりした。演奏の評判は上々。とにかくいい経験になりました。本番後、自分の楽屋に戻るとき、清竜人25さんの楽屋から笑い声が聴こえてきたのが最高にぐっと来ました。深夜にライヴがあるボーイを除いて残ったメンバーとスタッフでバーミヤンで打ち上げ。バーミヤンがある世界に生まれてよかった。

一昨日に放送が開始された「山田孝之カンヌ映画祭」の音楽を担当しています。新曲「ランプトン」は編集が済んだ6話分のドラマを鑑賞して書きました。回が進むごとに味わい深く感じるはずです。凄く面白いドラマです。狂気とクリエイティヴィティは表裏一体、という事を改めて突きつけてくれます。http://www.tv-tokyo.co.jp/yamada_cannes/