「若作りうつ」社会

「若作りうつ」社会
熊代亨 2014 講談社

内容、カバー折口より

年の取り方がわからなくなり、寄る年波に足が竦んでしまっている現状について、ミクロな個人とマクロな社会の両面から考えていく――そういう趣旨の本です。過去に遡ってそうなった原因を検証し、未来に向かって何をすべきか模索するための本でもあります。(中略)本書を通じて一人でも多くの人に「年の取り方」について思いを巡らせていただき、これからの年の取り方について真面目に考えてみてほしい、と願っています。

感想

○現在の日本社会について、ライフスタイルに即した年齢の重ね方がわからなくなっている人が多い、と指摘。

その原因をまあ、郊外の新興住宅への人口移転、地域社会の衰退、そしてそれによる社会関係資本と世代間コミュニケーションの減少としている。そうした極めて常識的で、論じられに論じられまくった議論を再び新書サイズとはいえ延々とくり返している。内容が薄い。年の取り方がわからなくなった、というその内実も根拠も、ぼんやりしていてよくある思いこみの議論になってはいないか。その解決策も、(なんとか関係をつないでいきましょう)という、小学生でも書けるような身も蓋もないしょうもない結論。

○日本のサブカルチャーについて、未成熟社会だからこそ育まれたもの、と主張。なるほどな、おもしろい指摘だな、と思う部分はある。しかし、なにをもって「成熟」とするのか、そもそも「成熟」とはなんなのか、時代の要請によって「成熟」の定義は変化しないのかなどなど、難しい議論を多分に含んでいる。こういう点にあまり言及できておらず、雑な議論だな、と感じた。

○健全な年の取り方、それぞれのライフスタイルのあり方についても、エリクソンの指摘をくり返すばかり。著者がエリクソンの主張から、それをどう深めたのか、どうアレンジしたのか、よくわからなかった。