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本当にあまりに見にくかったのでデザイン再変更しました。メンヘラか。
※漫画や本の表紙画像をクリックするとアマゾンの詳細ページに飛びます。踏みますとアフィ的なものが発生しますのでそういうのが嫌な方はご注意ください。

2018-12-31

[][]「この漫画が始まった!2018」 23:22

はじめに

ご無沙汰しております。先日予言した通りまだ読み終わっておりません(20:11現在)。実家に親指シフトキーボートを持って帰り忘れたためにタイピングスピードも落ちていてえらいこっちゃ。

とりあえず書ける範囲で書いていって、年明けに追記していきますね。

おことわり

最近は出版不況もあいまって新雑誌っちゅうのはどんどんなくなっており、そのくせ有能編集者はどんどん社内で出世していったり独立したりしていくので、その受け皿としてアプリやwebでのマンガ新連載が激増しています。

それらの中には当然雑誌の新連載よりも抜きんでて素晴らしいものや、大ヒットを記録するであろう漫画もあるのですが、本記事では対象としていません。

理由? 読み切れねえからに決まってんだろ! 雨後の筍みたいにポコポコポコポコアプリ作ってんじゃねえこのやろう!

ルール

ルールは一昨年ベースに戻しました。コミックリュウはwebに移行したため対象から外れています。読み放題サービスあると偏りますね。

週刊少年ジャンプ

アクタージュ-act-age-(マツキタツヤ、宇佐崎しろ)

職業漫画はいつの時代も一定の人気のあるジャンルですが、ファンタジーバトル・スポーツ・ラブコメなどが王道ジャンルとされている少年誌で成功するのは中々難しい。職業モノは登場人物に大人が増えやすいため、メインターゲットの若年層に訴求しづらいなどど言われています(そう考えると「め組の大吾週刊少年サンデー)」の曽田正人はやっぱり天才だなぁ)が、本作は去年の「ランウェイで笑って(週刊少年マガジン)」と同じく、主人公が高校生であっても違和感のない「芸能界」をチョイスしてこれを回避。年齢による壁を乗り越えようとします。

またジャンプでは「女主人公モノは打ち切られやすい」というジンクスがあると言われています(「シャーマンキング」がこのジンクスを気にして主人公をアンナから葉に変更したなどと言われている)。これも「メインターゲットの少年にとって女性主人公は感情移入しづらいため」などと言われていますが、本作は主人公たる女優・夜凪景に対して、彼女を導く存在である監督の黒山墨字をクローズアップすることで感情移入の対象を増やして対応を図ったようです。

結果、「大人の男」(しかもゲスで性格の悪い天才肌)の墨字、「女子高校生」(しかも通常の感性や常識を持たない天才肌)の景、どちらにも感情移入されないまま本作の人気は低空飛行。一時は打ち切り水域までいったかと囁かれました。

しかし打ち切りは水物。本作は感情移入先こそ不明瞭なままでしたが、登場人物の掘り下げと表現力、演出力は新人とは思えないほど確かなもので、景の天才肌ゆえのとぼけたキャラの魅力を引き出しています。この丁寧な仕事が効いたのか危険なタイミングを脱すると、これまでコツコツと作り続けて脇を固めてきたサイドの凡人たちが感情移入の受け皿となっていくようになりました。「めだかボックス」のように主人公を感情移入の対象としてではなく、檻の中の動物のように「観察対象」としてラベリングしなおすことに成功したわけです。

「めだか」と大きく異なるのは、球磨川禊のような絶対的存在はなくともそれぞれのキャラクターがきちんと魅力を発揮しているところでしょうか。キチンと群像劇になっています。

チェンソーマン(藤本タツキ

年末にかなり面白い漫画が始まって、聞いたことないから「新人かな?」と思っていたんですが、ジャンプ+で既に成功した漫画家だったんですね。やはり時代はアプリなのか……老害は消え行くのみですね。

それはともかく本作は、最近流行りのグロテスクなスプラッタ描写をふんだんに使いつつ、主人公が覚醒しそうなタイミングで覚醒せずに敗北したり、優しく包摂されそうな流れであっさり冷酷に突き離されたりと、要所要所のポイントでマンガのテンプレを意図的にずらす組み立てになっています。

「呪術廻戦」で虎杖が一回死んだときとかもそうなんですけど、最近は読者の目が肥えてきているのか、単にテンプレ外すだけじゃもうダメで、テンプレっぽさを演出しながら最後の最後で肩透かしを食らわすような、当の主人公たちに「え? 俺ここで死ぬの? これ完全に覚醒する流れだったじゃん」と思わせるような裏切り方をするのが流行りなんですよね。本作の作者はきっとそれに感覚的に長けているのだと思います。本作は話の筋は言ってしまえばありきたりなのに読後感がとても新鮮に感じられるのですが、それはこの話の組み立て方と、それを可能にする特異なキャラクター造形にあるように思います(本作、3話時点でまだ一般的な良識を持った人が登場していません)。

問題は、生き残り競争の激しいジャンプでやっていけるのか? ですが、まあ、こればっかりは読めません。個人的には同期の残り2作が厳しいので本作は大丈夫かなーと思っています。

ヤングジャンプ

ドロ刑(福田秀)

もうドラマ化してしまうほど成功した本作も実は今年の作品。いやー始まったときからこれは人気出るぞーと思ってたんだけどなーこれじゃあ後出しジャンケンみたいだなー(棒読み

なんといってもキャラ作りが上手くて読みやすい。主要人物にアクのあるキャラクターがほとんどいないので、当たりやすい、アベレージを出しやすい漫画の作りをしています。作者が新人とは思えないぐらい洗練された作り。

正直今連載中の警察漫画だったら「ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜(モーニング)」の方が好きなのですが*1、向こうはコメディ、こっちは刑事アクションということでジャンル違いなので、あまり比べても失礼ですね。

週刊少年サンデー

蒼穹のアリアドネ(八木教広)

今時珍しいぐらいのド直球ファンタジー。ストーリーはある意味ありきたりですが、八木先生慣れてますね。暗いバックボーンをさらりと流して軽快な読み口は読者を飽きさせない。

本作イチオシのポイントはサブヒロインのルルロラちゃんです。主人公である少年ラシルの幼馴染で、ラシルのことを一際慕っていた……はずのルルロラちゃんですが、作中では記憶を失い、弱肉強食の価値観を叩き込まれ、ラシルに対して殺意と敵意を剥き出しにして襲い掛かってきます。

そっからなんやかんやあって仲間になるのですが、失った記憶は元に戻らず、しかし身体は大好きなラシルお兄ちゃんを覚えていたので、お兄ちゃんになでなでされたり優しい言葉をかけられるたびに、ルルロラちゃんは謎の発熱と動悸に見舞われるようになってしまいます。あわれルルロラちゃんは、ラシルの怪しげな「接触攻撃」に常に脅かされるようになってしまったわけです。

ルルロラちゃんはラシルに対して照れ隠しと同じタイミングで暴力を奮うことになりましたが、その暴力はその実照れ隠しではなく、純粋な恐怖と違和感によるもの。恋を知らないが故に動悸や発熱を攻撃と勘違いする……というシチュエーション自体は古今東西ないわけでもないですが、ルルロラちゃんにとっては、ラシルは基本的には兄を名乗る怪しい存在。恋の芽生えるほどの時間を共にしたわけでもなく、見た目がタイプなわけでもない。恋である理由がないのですから、もしこれが恋であったとしたら、それこそ超常的な力による「攻撃」の可能性があります。故に恋心を否定するのは単なる無知や照れ隠しを越えた純粋な論理。

ここに新ジャンル「記憶喪しツンデレ」が爆誕しました。かわいい。

メメシス(柳生卓哉)

メメシスは1話のインパクトが凄まじく、ある意味で究極の出オチ漫画だった(逆に言うと読切としてはとてもよく出来ていた)のですが、2話以降も意外とその切れ味が落ちず、現在でも一定のクオリティを維持しています。基本的にはタイトルの示す通り、主人公であるアシュー・キジラたちの実力に見合わない女々しさ、器の小ささに焦点が当たるコメディですが、女々しさにも色々バリエーションあるんだなぁと感心します。

個人的に注目したいのは敵役となる魔物・魔王軍の造形で、単なるコメディの突っ込み役と言うにはおどろおどろしく、容赦ない残虐さが際立ちます。主人公たち以外の一般人はこれに為す術がありませんし、基本的にはやられたらそこでおしまいで、中々緊張感もあります。ここが単なるギャグやコメディと一線を画すところで、アシュー・キジラの実力の高さをきっちり描くことで、落差を維持し続けられることがこの漫画の核なのかもしれません。サンデーは最近コメディが強い(というかコメディだけが元気な)ので、そういう贔屓目もあるかもしれませんが。

妹りれき(西村啓)

スマホ同期で個人情報(検索履歴)をだだ漏れにする現代に警鐘を鳴らす問題作(嘘)。こういうの完全に発想の勝利ですよね。

ここ5年ぐらいで検索サイトのサジェストで「嫌い」や「怖い」「遅い」などの感想系キーワードが出るようになった気はしていたんですよね。まだ検索エンジンの能力がこれほど優秀じゃなかったころは(これマウンティングじゃないですよ)、そもそも検索キーワードに文章や文節を仕込むのはよくなくて、ピンポイントに単語単語を区切ったり言い変えたり、そういうノウハウが必要だった記憶がありますが、今やあいまいなキーワードを投げても正しい意図を類推してくれるまでになったグーグル先生を使いこなすには、単語の質にこだわるよりもぼんやりとした意図の類推しやすい言葉を使うほうがよいのかもしれません。それでも(SNSならまだしも)グーグルで感想を検索するのはよく分からないですけど……。

妹の露出がほぼほぼ検索履歴のみ(作中で喋ったことがまだ片手で数えられるぐらいしかない)なのも、「わかるー。ついこういうの調べちゃうよねーあるあるー」という層と、「えー、こんなこと調べたりするの。何考えてんだ分からん……」という層の両方が入りやすくなっていてよいなと思います。

中身も良くも悪くもサンデーらしさがあってよいと思います。コメディの軸足はぶらさず、兄にも妹にも互いに過度な愛情や感情を抱かせることなく、思春期入った兄妹のほほえましいディスコミュニケーションが等身大になっていて高品質。悪く言えばアクがなくて、無味乾燥。こういう普通の作品が大量の作品の波の中に埋もれていって人知れず消えていくようになった結果が今のサンデー凋落の決定的原因なんだよなぁ……。

週刊少年マガジン

オリエント大高忍

オリエントはいいぞ。

すもももももも「マギ」と2発当ててもはや大御所、何を描いてもそこそこ売れてしまう存在となった大高先生ですが、本作も前作には劣りません。本作は「鬼」なる化物が支配した世界を取り戻すべく戦う「武士」の物語、つまり日本の戦国時代をモチーフにしたオリジナルファンタジーですが、そこで立ちはだかる問題は我々が身近で経験することそのもの。

たとえば、主人公である武蔵は仲間から笑われ迫害されることを恐れて、自分の夢である「武士」について語ることが出来ませんし、友人である小次郎は武蔵の真っ直ぐな夢に引け目を感じて己に対する自信を消失しています。途中から仲間に加わったつぐみはかつて別の武士団に所属していましたが、そこの棟梁は恐喝や暴力的手段で部下を高圧的にコントロールする、今で言うところのモラハラ上司・毒親でした。

世界が変わっても、青少年の心の闇は同じだという直接すぎるほどに強いメッセージ。現代社会では簡単に行かないことでも、ファンタジーならではの語り口の中から見える希望(例えば現実には同調圧力社会は鬼によって壊滅しないし、毒親を殴ったら傷害罪になりますね)。「マギ」でも大体そういう感じでしたが、大高忍はファンタジー世界に青少年の抱える悩みや問題を織り込む天才です。だからこそ彼女の描く漫画は全て少年漫画の王道だし、常にそうあり続けて欲しいと願ってやみません。

ヤングマガジン

ギャルと恐竜(森もり子、トミムラコタ)

恐竜飼う漫画というと「恐竜の飼いかた(コミックリュウweb)」という先輩がいるわけですが、本作との違いは正直そんなに大きくはないです。恐竜、というファンタジーの存在が違和感なく受容されていて、そのために作品全体に漂うどこかのんびりとした空気。恐竜を現代人が飼う、ということにすると設定上どうしても無理が生じる部分が多いので、そこらへんを誤魔化すには設定からぐだぐだにしていくしかないのでしょうかね。

いや、むしろ「恐竜を飼う」ことへのリアルさは本作の方が小さい。恐竜とは言うものの、箸で飯を食うわ合鍵使ってギャルの元カレとトランプして遊ぶわ、お前実は着ぐるみ着た人間だろ、と言いたくなるシーンの多いこと多いこと。いや実際、本作における恐竜は外国人であったとしても何ら違和感なさそうです。異分子を簡単に包摂してしまう「ギャル」という存在と、異文化社会でゆるりと生き抜ける「異邦人=恐竜」とのマリアージュ。

本作で特筆すべきはこういう漫画がヤンマガに載っているということでしょう。「みなみけ」の例はありますが、もし主人公がギャルだというだけでヤンマガ読者層に受容されたのだとしたら、それマジあげぽよ〜って感じですね(古い)

僕もギャルに受容されたい

アフタヌーン

天国大魔境(石黒正数

本作は既に「このマンガがすごい!2019」オトコ編1位を獲得しており、ここで紹介するまでもないのですが、私から一言言わせていただきたいのは、本作はTSFモノとして良作ということです。

メジャー誌でTSFというと僕はまだ「ボクガールヤングジャンプ)」の印象が強いのですが、本作は「ボクガール」のようにTSFがメインではなく、いわゆる近未来のディストピアもの。「少女終末旅行(くらげバンチ)」のように終わった世界を旅するパートと、その世界のどこかに存在する?(そもそも同じ時代なのか?)と思われるユートピア的施設のパートを交互に描いています。その具体的なところをくだくだ書いたりはしませんが、旅パートに登場する「お姉ちゃん」の出自が衝撃的なのにも関わらず、石黒正数の淡々とした語り口によって語られることによって、TSFとしてのエキセントリックさは極端なまでに抑制され、あたかもよくある普通の日常的異常であるかのように物語の中に消化されてしまいました。これを「LGBTに対する世間の目が……」などと読むことも出来るでしょうが、僕としてはもっと単純に、「抑制的にTSFが表現されたからこそ、逆にそのエロスが芳醇な香りを伴って放出されるようになった」と感じます。

回りくどい言い方になって恐縮なのですが、石黒正数作品に登場する女性って、肌を露出したりとか性的アピールがまるでないのにどこかエロいんですよね。下品な物言いになりますが、どこかトイレの盗撮シーンのような、汚物箱の中のナプキンのような、本人が意識しない「生の性」が露出する瞬間みたいなものをよく抑えているんですよ。本作はそういう視点から、男性と女性の狭間であるTSFがガッツリと描かれているという点で、良作なのです。

それでは皆さん、よいお年を〜(もう遅い)

*1:ハコヅメは連載開始が2017年で、当時モーニング未購読のため、本ブログでは紹介されていません

2018-12-29

[]「この漫画が始まった!2018」でもその前に…… 00:18

一年ぶりです。皆様いかがお過ごしでしょうか。

誰も読んでいない? 一理ある。

今年もなんとかかんとかマンガレビューをしていきたい所存なのですが、いかんせん今年発表されたマンガ雑誌が全然読みきれておりません。

今年はコミックDAYSという神アプリがリリースされたことによって購読雑誌が11誌(コミックDAYSで配信されていて読んでいない雑誌も含めると16誌)に増えたのはいいんですが、流石に全部読むのがしんど過ぎた。怖くて数えていませんが、ざっと見て30冊ぐらい溜まっています。明後日までに読めるところまで読みますが、多分無理です。オワワワワワ

そういうわけでレビューが年内厳しそうなので、代わりといってはなんですが僕をそんな闇に引きずりこんだコミックDAYSの神っぷりについて簡単に説明しておきましょう。

コミックDAYSは神

そもそもコミックDAYSとは、講談社が出しているオンラインコミック配信サービスの名称です。スマホアプリがメインターゲットですが、webサイト経由でパソコンでも読めます。

マンガアプリは各社各様のものが玉石混交で入り混じっており、特にアプリオンリー配信の多い昨今は、毎週安定して時間を確保することが苦手な私には辛い環境ですが……話が逸れました。

マンガアプリは数あれども、漫画雑誌を購読出来るサービスというのは比較的めずらしいのです。DAYSを除くと集英社の「ジャンプ+」「ヤンジャン!」、講談社の「マガポケ」「Dモーニング」などが代表的ですが、いずれも決まった1誌か2誌を読ませることに特化した仕様で、私のように複数の週刊誌月刊誌を乱読する人間は複数のサービスを同時に使うか、kindleで一つずつ手作業で買うかしかありませんでした。

音楽や映画・ドラマ、アニメなどではspotifydアニメストアなどの月額配信サービスが隆盛を極めており、一般雑誌でも「dマガジン」などでは最新号をジャンル横断的に読むことが出来ますが、なぜか漫画雑誌に関してだけはそうした仕組みがほぼないに等しい*1Kindle Unlimitedのマンガ取り下げ騒動などを見る限り、漫画の読み放題サービスの損益分岐点が高過ぎるのだと思いますが、それゆえに統一したサービスは登場せず、配信サービスは雑誌レーベルごとに蛸壷化していく……。

コミックDAYSはそんな状況に対して遂に一石を投じてくれる存在となりました。何しろ出版界の雄たる講談社の出版する13誌を1サービスに統合し、月額960円(6誌の場合は720円)で提供するというのですから、激震です。配信されている雑誌には既に電子版配信アプリを持っていたり、kindleでの売上が大きそうな雑誌もあるのに、よくぞ決断してくださったと、僕は感涙するばかりです。

どんだけ神なのか

ライバル他社である集英社の看板サービスであろう「ジャンプ+」と比べてみましょう。ついでにコミックDAYSの目下最大のライバルとなりうるサービスであるマガジン☆WALKERとも比較します。

ジャンプ+(WJ,SQ,ウルジャン購読)コミックDAYS(もっとプレミアム)マガジン☆WALKER
雑誌数最大3*2最大1339*3
金額\1,900*4\960*5\500
バックナンバー無制限1-2ヵ月*6前号のみ
紙との差額最大\300*7最大\9,270*8\11,966*9

※数値はいずれも2018/12/29現在

こうして見ると、同じ雑誌の定期購読サービスとはいっても、その中身は全然違うということが分かるかと思います。

ジャンプ+は買い切りの定期購読サービスです。いわば紙の雑誌を電子版にしただけ。流通コストや在庫コストが下がった分だけ安くなっていますが、基本的にはお値段変わらず、その代わりにいつまでも読めますよ、というサービスです。

コミックDAYSとマガジン☆WALKERは雑誌読み放題サービスの延長線上にあるサービスで(というかマガジン☆WALKERは雑誌読み放題サービスそのもの)、その本質はスケールコストと読み捨てによるサポートコストの削減。あくまでも瞬間的な「読む権利」のみを売ることで単体レベルでの値段を大幅に下げる代わりに、手元に置いて何度も読み直したかったら単行本や雑誌本体を買ってくださいね、というスタンスです。

マガジン☆WALKERの方がトクなのになんで買わないの?」という声が聞こえますが、いかんせんカドカワが元締なせいか、ラインナップがサブカルオタクに寄りまくっており、メジャーなレーベルが取り込めていません。普通の漫画雑誌が読めると思っていると大怪我します。少年エースコミックフラッパーなどコアな雑誌専用と割り切って使うなら優良サービスで、一般雑誌もそこそこ読めるので500円は実際破格です。私は時間的余裕がないので買っていません……。

買い切りで雑誌を配信する意味

ところで皆さんは読み終わった雑誌を捨てずに取っておくタイプですか?

僕のように年末にまとめてマンガのレビューでも書こうとするバカだと、半年前に読んだ連載が思い出せなくて読み返したくなることも多々ありますが、基本的には皆さん一度読んだ雑誌はすぐ捨てるんじゃないかと思います。

かつて、漫画雑誌というのは新聞と並んでかさばるゴミの代表でした。「読み返す必要がないから」というより、「置いておく場所がないから」という消極的な理由によって、漫画雑誌は捨てられてきたのではないかと思われます。

しかし電子書籍の到来により「雑誌を捨てる」必要がなくなり、漫画雑誌環境は劇変しました。今や、電子書籍漫画雑誌を買えば、その電子書籍サービスが終了するまで(ローカルにDLしておけば、そのアプリや端末が壊れて動かなくなるまで)ずっと手元で読み返すことが出来るようになりました。凄いですねー。

で、皆さん、読み終わった雑誌を読み返したりしてます?

しないですよね。それよりも最新号読むのに忙しいし、そもそも気に入った漫画があったら単行本を買う、という人もいるかと思います。

ジャンプ+をコミックDAYS(とマガジン☆WALKER)と差別化している大きな要素は(ジャンプが読めるというブランド的な価値を別にすれば)買い切りのプランであることですが、実は漫画雑誌業界には買い切りの需要はほとんどないのではないかと僕は思っています。

そもそも漫画を読むために雑誌を買う、というのは、結構リッチな行為です。

漫画1本読むだけなら、雑誌を買うより単行本を買うほうが経済的です。安いし、かさばらず、紙質も綺麗で保存しやすいです。

週刊少年誌で言うと単行本1巻辺り9-10話ぐらい載っていて400円ぐらい、一方の雑誌は1号辺り250円ぐらいなので、大体雑誌1本に読みたい漫画が5本は載っていないと採算が合いません。中高生とジャンプなら話は別ですが、普通そんなに同じ雑誌の漫画を大量には買わないでしょう。

それでも雑誌を買うとしたら、それは雑誌に「速報」としての価値があるから、また「偶然の出会い」があるからです。

「最新話がいの一番に読める」あるいは「知らなかった面白い連載や読切が発表されたその瞬間に立ち会える」

というのが漫画雑誌の根本的な提供価値になっていくのだとしたら、漫画雑誌が目指す方向は買い切りではないとは思いませんか*10

だから、講談社というネームバリューのある会社が「期間限定で読み放題」(=実質的な読み捨て)というビジネスモデルを採用した意味はとても大きいと僕は思います。

言うなれば、この後漫画雑誌電子化によって行くべき方向性が、コミックDAYSの成功如何で決まってくるということです。

講談社の戦略

補足しておきますが、講談社は別に漫画雑誌の買い切り路線を捨てたわけではありません。

コミックDAYSで配信されている漫画雑誌は今でもkindleを始めとした電子書籍マーケットで購入出来ますし、なんなら電子書籍版限定の特典がついていたりします。

週刊少年マガジンが特に分かりやすいですが、マガジンは紙でしか読むことの出来ない「はじめの一歩」があります*11。また巻頭グラビア懸賞ページ、読者参加ページなども多くは紙媒体でしか見ることができません。

kindle版ではこれらの要素が大幅にカットされている分、過去作品の復刻連載が巻末に掲載されています。今となってはkindle版を買わなくなってしまったので分かりませんが、僕が買っていた頃はフェアリーテイルダイヤのAトモダチゲーム恋と嘘の4本が掲載されていました。本誌連載のみならず他誌の人気連載を引っ張る辺りがあざといですね。

一方コミックDAYSのもっとプレミアムでは復刻連載もありませんし、バックナンバーも制限があります。しかし、講談社の別の雑誌も購読している場合、コミックDAYSは圧倒的に安いです。また、購読にともなってついてくる200ptを使えば、コミックDAYSのアプリ連載を月に2-3話ほど購入できます。

週刊少年マガジンしか読まないけど復刻連載やグラビアなどを読まない場合は、「マガポケ」の定期購読サービスがあります。月額840円と少しく安くなります。

講談社はこれら4種類の媒体を通して、漫画雑誌の明日を見極めようとしているようです。

*1:例外はカドカワの「マガジン☆WALKER」、Komiflo社の「Komiflo」など。マガジン☆WALKERについては後述。Komifloは実質ワニマガジンの定期購読サービスであり、バックナンバーを1年間読める神サービスだが、成年雑誌のみのサービスなのでここでは割愛する

*2:雑誌ごとに個別契約可能

*3一般誌含めると91

*4週刊少年ジャンプのみ購読の場合900円(iOSで課金する場合960円)

*5:プレミアム(6誌のみ)の場合720円

*6月刊誌は前前号、週刊誌は3号前まで

*7週刊少年ジャンプのみの場合60円

*8:プレミアム(6誌のみ)の場合4,880円

*9:男性漫画誌20誌のみで計算した場合。実際には女性漫画誌一般雑誌なども入るため、この3倍ぐらいにはなるはず

*10:実際、マンガワンやマガポケではバックナンバーを一時的に無料公開することで、「何度でも読み返す(単行本)」と「最新話を読む(雑誌)」への導線にしようとしています

*11:これは講談社の戦略というよりも作者の森川ジョージのこだわりですが

2017-12-31

[][]「この漫画が始まった!2017」縮小版……という名の読書メモ 23:59

今年は形式を少し変更します。4月からPaperWhiteを買って本格的に電子書籍生活に入ったのですが、逆に3月以前の記憶が全然ない……。

ルール


			
  • 僕が読んだことのある雑誌掲載漫画の中から、今年に連載を開始したもので「アツい」「面白い」と判断したものに「☆」を進呈。
  • 「今年」とは、連載としての初掲載が2017/1/1〜2017/12/31までであった作品である。
  • 読切は対象としない。読切から連載に昇格した場合、読切ではなく連載が始まった日を「連載開始」と定義する。
  • 短期集中連載からの昇格であったり以前に同様な連載が存在する続編などの場合、一番最初の連載の始まった日を「連載開始」と定義する。
  • なるべく多くの雑誌からくまなく選ぶ。
  • どれほど面白くて好きでアツくても、連載開始が2016年以前の漫画は対象としない。

アフタヌーン

アフタヌーン全13作からは多めに4作ピックアップ。(「もう、しませんから。アフタヌーン激流編」は除外)

シンギュラリティは雲をつかむ(園田俊樹)

第二次大戦前後の欧州を思わせる世界で、傲岸不遜な天才少年が天才の遺物たる人型飛行機を駆って暴れまわる。登場人物は誰もがエゴイスティックで、それでいて分相応に等身大で、それはある意味でとても「人間臭い」。「人型飛行機」や「スライド式スイッチでの操作」といった突飛な設定も、アクの強い主人公と作品全体を使ったハッタリで上手く誤魔化されている。

作者は現役の博士課程学生だそうだ。天は二物を与えるか。

☆我らコンタクティ(森田るい)

「お姉ちゃんの妹」「妹たち」の森田るいが放つ脱力系SFコメディ初の連載作はロケット開発が舞台。町工場で作られるお手製のロケット、それを巡る町のドタバタは次第におおごとになっていくが。

すっとぼけキャラたちの感情や生活が、SFという舞台を通して大掛かりな話に振り回される、という作者お得意の構図は健在。「妹」シリーズではお姉ちゃんは宇宙船に乗る妹を止められず、妹はミッションによって記憶を失いながらもお姉ちゃんと再開するために帰還を果たしたらお姉ちゃんが自分のクローンを大量に作っていたりしてこちらもすごかったが、「我らコンタクティ」では、ただでさえ作るのも打ち上げるのも大変な自家製のロケットを「宇宙で映画を上映して昔見たUFOに見せる」ためだけに(!)、警察やらJAXAやらを出し抜いて、勝手に打上げしてしまう。しかも半年ほど前には日常生活に倦んで、金儲け目当てでロケットに飛びついたり、愛人の家に放火しようとしたり、実の弟を殺そうとしたりしていた人たちがだ。ロケットってすごい。実際にはこんなあっさり出し抜かれたりはしないだろうからフィクションなのだが、それをこんなに気持ちよく描写してくれる作品はなかなかないと思う。これ、マジでオススメです。なんなら今年は「我らコンタクティ」ともう一作(エヴァンス)をオススメするためだけにこの記事を書いたといってもいい。

オススメの仕方を見ても分かる通り、この作品で一番好きなのが、安川先生(明らかに的川泰宣先生がモデル)の登場するシーンです。

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最初に出てきたときはロケットに興味津々であちこち見物しては感嘆の声を上げる、いかにも研究者然とした好好爺なんですけど、警察当局に「では打ち上げに危険はないと?」と聞かれた途端に「いや実に危険!」とバッサリ。

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言ってることはえらく正論なんですけどね。代わりに探査機乗せたら手伝ってあげるとか、正論の範囲ではいい人なんですよ。でもこの漫画って、そもそも正論でやってきてないわけです。なのに今さら教科書通りに「ダメ」と言われてもねぇ。

そのくせして、勝手に打ち上げたのを捕まえにきたときには子供のようなはしゃぎっぷり。宇宙畑の人間のことをよく分かってるじゃないですか。

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もう大好きです。「妹」シリーズも良かったですけど、「我らコンタクティ」はもう最高です。最高。

☆ブルーピリオド(山口つばさ)

なんでも要領の良いウェイ系高校生(誌上ではなんと「DQN」呼ばわりされてる)がどういうわけか絵の世界に魅せられて、あれよあれよというまに美大受験を目指すことに。

美術の世界で"Blue Period"と言ったらまずピカソ青の時代で間違いないが、今作では「青」に青春の苦悩、美大受験の厳しさを重ねつつも、マイナスのイメージは薄く、来たる夜明けを予感させる清々しい色として、美術の世界に目覚めた主人公を象徴する色となっている。

☆ダレカノセカイ(三都慎司)

施設育ちである以外は一般的な高校生だった主人公・加茂野ゆかりの生活は、高校の卒業式前日に一変してしまった。突然襲いかかる白い巨人、「クリエイター」を名乗る目付きの悪い謎の少女、自分に宿っていた不思議な力。なんの変哲もないハズの自分を狙って襲いくる世界、世界、世界。つい先日まで普通の人間として暮らしてきた自分が実は人とは違う力を持った化け物だった、という成行きは「亜人」を思わせるが、「亜人」と異なり「クリエイター」への実験の類は既に終わっている設定のようで、グロさは控え目だが、代わりに設定の大掛かりさでは比較にならない。角材のような直線的な武器が飛びかう戦場のアクションシーンは美麗で見易く、ここは流石に講談社連載作家の為せる高い画力。飛び抜けたものはないが、圧倒的な実力で安心して読んでいられる作品。

☆全生物に告ぐ(オオヒラ航多)

最強を目指してプロアスリートからヤクザまで片っ端から喧嘩でブチのめしてきた中学生がある日出会ったのは、絶滅したはずの恐竜だった……? 人類最強すら手緩い、時代は全生物最強を目指す! ありがちなステゴロ喧嘩漫画かと思いきや、突然喋る恐竜が`現われて唐突に「テラフォーマーズ」のような生物蘊蓄がナレーションで始まる感覚は好き。チャンピオンに載っていそうな逸材だけれど、人間に紛れてひそかに暮らしている「恐竜人」たちの社会に対する悲哀がところどころで語られるのはアフタヌーンゆえか。面白いのだけれど、バキや喧嘩稼業の域にはまだ達していない。

イサック(DOUBLE-S真刈信二

「勇午」「スパイの家」の大御所真刈信二の次回作は、美麗絵師DOUBLE-Sを迎えての中世ヨーロッパもの。三十年戦争真っ只中のドイツで、戦国時代からやってきたサムライ火縄銃片手に復讐の旅を続ける。丁寧な描写に時代考証で重厚な読み口は流石にアフタヌーンだが、やや地味過ぎるか。

魃鬼(下川咲)

ダム開発で沈もうとする四国の山あいの村を舞台にしたサスペンス・ホラー。安定した画力と描写によって、淡々と人が死に、事態が主人公(よそ者)の手によってゆっくりと取り返しのつかないところに向かっていく様は見事に演出されている。

バギーウィップ(大野すぐる)

万年一回戦の気弱な少年。ひょんなことから元プロテニスプレイヤーの天才少年に見出され、猛特訓と逆襲の日々が始まった。アフタヌーンらしい爽やかな読後感。ベイビーステップが終わってテニス漫画に飢えているならおススメ。

大蜘蛛さんフラッシュバック植芝理一

「ディスコミニケーション」「謎の彼女X」の植芝理一の新作は、タイムスリップマザコンラブコメ。罪深過ぎる。わたしには早過ぎました。

しったかブリリア(珈琲

ハッタリと知ったかぶりを極限まで磨き上げることで大学デビューに成功した先輩と、同調圧力が苦手すぎて知ったかぶってしまう後輩の究極の知ったかぶりバトルコメディ。出オチ半端ないが、先輩の高校時代の元カノ(天然の空気ブレイカー)という飛び道具を用意しており、今のところそれなりにやっている。名前は出オチ(理助はともかくみなとみらいってどんな名前やねん)。

来世は他人がいい(小西明日翔

ヤクザの娘のヤクザの息子の政略結婚……のハズが、息子はとんだサイコパス。実家から一人東京へ出てきて味方不在の中、男前な主人公・の健気な努力が涙を誘う。

金のひつじ尾崎かおり

「神様がうそをつく」の作者が送る青春闘争劇。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」を彷彿とさせる出だし(登場するのは幽霊ではなく引っ越していた生きている幼馴染)にドキドキしたが、最新号でまさかの家出。「家出」がアフタヌーンにおける作者の代名詞になりそうな予感。

恋の罪-エルネスティナ-(如月芳規)

マルキ・ド・サドの同名小説を再話でコミカライズ。没落貴族の娘と大商人の養子の息子との純粋な恋が、商人の未亡人と悪辣な貴族の手によって引き割かれていく。NTR漫画としては申し分ありません。この手のものは完全バッドエンドでないことも多いけれど、サドの原作だからきっと全滅だろう。小説の方も読んでみたいが、和訳は出ていないのかもなぁ。

リュウ

リュウは今年不作。全7作のうち1作、webから1作を紹介。

☆花やつばめ(浅岡キョウジ)

「お姉さんの食卓」「戀愛」の浅岡キョウジが新境地。今度はショタ優位のおねショタ画家とモデルの関係で描く。当初は一本調子だったが、お姉さんの画家ライバルの登場で少し面白くなってきた。

☆メルヘン課長とノンケ後輩(ミナモトカズキ

ゲイであることを公言し、幸せそうな毎日を送っているように見える課長。しかし実際はどうなのだろう? 課長の語る恋のアドバイスは実は、恋愛で満たされていないことの裏返しなのでは? 心の底で乙女な純情を飼っている犬飼課長と彼の「乙女な本音」が気になる自称ノンケの部下・高木くんが織りなす、ライトなラブ?コメディ。

リュウには珍しいゲイものだが、読み慣れていない僕でもあまり違和感なくサクサク読める。入門書としてオススメか?

1~3話、最新話はこちらから。

no title

DANGAN GIRL(長谷川絢也)

サバゲー漫画。ゲーム好きで現実世界から逃避していた主人公・高梨沙羅や性別を偽って参加する謎多き凄腕スナイパー・ミステリオ、傭兵時代のマスターの過去などストーリーとして見るべきものは多いが、いかんせん肝心のサバゲーの流れが全く分からない描写力が痛い。

憑依どーん!(アンドーミチタカ

下ネタとギャグとオカルトを足して闇鍋に煮たら多分こうなる。クソ漫画には違いないがある種の養殖モノなので私の趣味ではなかった。

チェローフさんの魔法人形(星川ちどり)

かわいらしいキャラクターたちが織りなすやすしい世界の魔法ファンタジー。タイトルにもある餅巾着ことロロロジオがポンコツかわいい。僕はククラーシカ派ですが。

兜の花(由里華三夫)

シェアハウスで暮らす5人の男女に渦巻く愛憎劇を独特の筆致で描く。作品全体に漂う陰鬱な雰囲気、互いのハラワタを探り合う息詰まる展開。どことなく昼ドラっぽい雰囲気を感じるのは私だけじゃないだろう。勇蔵の朗らかな笑いだけが救い。彼は救われて欲しい。

ひみつのはんぶんこ(ぴのきみまる)

今年のリュウの「性の目覚め」枠。個人的には好きだったが、テーマがストレート過ぎるのもあってかすぐに終わってしまった。

カースブラッド(梶山浩

異世界転移から始まるもの凄く重厚なハードファンタジー。主人公の元の世界の話が全然出てこないのがやや違和感。

ヤングジャンプ

YJは今年も既存作が元気で、新連載はやや迷走気味か。波平さん、ブルーフォビアあたりが伸びてくれば面白いのだが。11作中、ピックアップ1作。(「うまるちゃんR」「レトルトパウチ!」は除外)

☆バスルームのペペン(川西ノブヒロ)

父親から送られてきた不思議な生物ペペン(自称河童)と暮らす心優しい高校生のほんわか日常ライフ。とにかくペペンがかっぱかわいい! YJにおける唯一の清涼剤。

ファインダー -京都女学院物語-(秋本治

こち亀から秋本治を解き放った結果その一。唐突なラグランパンチによる写植が面白く感じてしまう程度で、亀山に対する愛情は感じるがそれ以上はなく、毒にも薬にもならない印象。登場する女子は相変わらず趣味も言動もどこかおっさんくさい。

カオリわーにんぐ!(リコシェ号)

匂いフェチ大歓喜の動物フェロモン漫画。主人公の巨乳がコマの枠に乗るほどだったが、あまり脱がなかったせいかあえなく今年度新作の中で唯一打ち切られた。

helvetica ヘルベチカ(染井紬希、津木波シズカ)

魔女狩りを題材にした異能バトルファンタジー。話の全貌が中々見えてこないままに読者を置いてけぼりにしている感じがある(主人公も置いてけぼりにされている)。

TAMATA(茅ヶ崎麻)

読切で人気だったスーパーウェイトレスが連載化に伴いまさかの失職。父親と祖父を絡めた壮大な陰謀と秘密結社との戦いが始まり、「ずっとウェイトレスのままでいた方がよかったのでは……」と思わせる。

凛とチア。(山田シロ彦)

男子高校生が主人公のチアリーディング漫画。男の娘ではない。

スナックバス江(フォビドゥン澁川)

「パープル式部」「てらほくん」の鬼才、遂に連載獲得。流石に週刊連載は厳しいのかとがったネタは減ったが、その分万人ウケは良くなったかもしれない。

DINER ダイナー(河合孝典、平山夢明

殺し屋相手専門のレストランで働くことになってしまったウェイトレスの悪夢のような日常。原作小説をコミカライズ

ふしぎの国の波平さん(畑優以、小森陽一

「ヤスミーン」の鬼才が「海猿」「トッキュー!!」の産みの親と手を組んだ。中身は職業モノだが、舞台は海上保安庁ではなく熊本の遊園地。

7's -セブンズ-(キドジロウ)

「お願いします。私を守ってください」突然すぎるちょっと変わった告白は、抜けられない無限ループのデス・ゲームの開幕の合図だった……。「All You Need Is Kill」の系譜に属する正統派ループもの。違うのは、ループのトリガーが自分の死ではなくヒロインの死である、というところ、そして舞台が近未来の戦場ではなく、日常の高校生活であるということか。

ブルーフォビア(鶴吉繪理)

人を同じ鉱物に変えてしまう不思議な鉱物、海鉱石。それに侵された人は「藍病」と呼ばれ、離島の研究所で非人道的な実験が日々行われていた。記憶喪失の研究者と、藍病の少女の逃走劇。初出はCOMITIA118らしいが、絵の感じは東京喰種に少し似ているような。読切は面白かった記憶があるので期待はあるが、いかんせんまだ判別しきれない。

コミティア時代の作者評はこちらから。

【漫画家】鶴吉繪理の哲学・その世界(第一回) - このクリエイターがすごい!

サンデー

サンデーはマギをはじめ大物作家が次々と消えていった一年だった。新陳代謝は成し遂げたが、代わりの作品がなんとも言えず……停滞脱出は遠いか。取りあえず初恋ゾンビ読もう。11作中、ピックアップ2作。(「彼女の産みたて卵」「十勝ひとりぼっち農園」は除外)

保安官エヴァンスの嘘 〜DEAD OR LOVE〜(栗山ミヅキ

これは、西部劇の世界を舞台に犯罪者どもと戦う、強き保安官の物語ではない。女性にモテようと健気に努力するも報われることのない、男の哀しき喜劇である。

「だがしかし」を皮切りに「天野めぐみはスキだらけ!」や「古見さんは、コミュ症です。」など、ここんところ、サンデーはラブ?コメディ専門誌になったのかと思うぐらいショートコメディ寄りのラブコメのプチヒットが相次いでいるが、今年も一本当たった。安定した画風とナレーションによる容赦のないツッコミは笑いどころもとても分かりやすく、なんちゃってウェスタンの世界で女にモテることを動機にカッコつけ続けるエヴァンスの 言動は「あるある」ネタとしてよく出来ている。エヴァンスに銃撃とモテ理論の真髄を叩き込んだ親父の迷言回想録も見所の一つ。

もっとも、それだけでは次第に飽きられ、一発ネタで終わってしまっていたかもしれない。この漫画の影の立役者は、今やメインヒロインとなった女賞金稼ぎ、フィービー・オークレイであろう。

フィービーとエヴァンスは仕事上のライバルであると同時に、異性として少し気になる間柄、というポジションでもある。しかしどちらも自分からはアプローチしたくないので、話は必然的に「かぐや様は告らせたい」 のように、恋愛下手同士がお互いの言動を操ろうと苦闘する感じになっていく。

単独回とフィービー回、2つのストーリーパターンを上手く混ぜあわせることによってパターンに幅が生まれ、マンネリ化を見事に阻止。もっとも最近はフィービー回の人気が高いのか、単独のモテ奮闘回が少なくなり、おじさん不満である。

蒼穹のアリアドネ八木教広

クレイモア」の八木教広の新作は天空都市国家の皇女レアナと元人間兵器の少年ラシルが主人公の冒険モノ。キャラの立ち方、話の構成など見ていてとても安心感がある。ポテンシャルも作者の実力も充分だと思うが、あくまでド直球の王道モノなので、受けるかどうかは多分に運次第。期待値込みで☆一つ。

天翔のクアドラブル新井隆広

江戸時代初期、天正遣欧少年使節団を題材にした異能バトルファンタジー。試みは良かったが、作者の宿命とも言える華のなさが災いしたか致命的に地味。こういうのってどうするのがいいんでしょうね。

第九の波濤(草場道輝

ファンタジスタ」のベテランが放つ、本格派水産学部漫画! ……という触れ込みだったのだが、ヒロインとは2話で離れ離れになるし、時代錯誤的なしばきはあるし(作中で体育会系の特訓をすることは否定しないが、 現代の実在の大学を舞台にしているのに、なぜ作者の過去の体験に取材したのか?)、間違え方がすごい。ベテラン優遇はやはり良くないね。

妖怪ギガ佐藤さつき

古今東西の「妖怪」を別角度から切り取る少短編。無難で地味な、クスリと笑えるちょっといい話が多い。長編「クロ」は反響があったのか何回にも渡りシリーズ化し、実際続きも気になったし良かったが、作品のテーマ的に考えてそれでいいのか? という気もする。

キング・オブ・アイドル若木民喜

アイドルが歌でもってオーラを形に変換するようになった近未来。伝説のアイドルの息子、遥名まほろは死んでしまった母親を復活させるため、トップアイドルを目指して女装しアイドル養成学校へと入学する……。若木民喜の新作だけあって女の子をはじめキャラクターは力入っているが、なんだかご都合展開が多く感じるのが気になるところ。

隕石少女 -メテオガール-(石山り〜ち

突然空から少女のロボットが振ってくるようになってから数年。人々は……それに「慣れた」。関心を持たなくなった人類に、彼女たちが今哀しみの爪を立てる。主人公の言動がゲスのそれに近く、プロット的にはいい奴のはずなので決定的に違和感を感じてしまい、乗り切れない。主人公が不可解なので、羽根への怒りもいまいち共感しきれないところが残り、余計にストレスがたまるという。いや、これは僕が変人なのも悪いのか。

シノビノ大柿ロクロウ

浦賀にペリー率いる黒船がやって来た江戸時代末期。伊賀の「最期の忍び」、沢村甚三郎に幕府より密命が下る。「黒船艦隊の提督ペリーを暗殺し、日ノ本を死守せよ」……!  史実を題材にした歴史ファンタジーで、ハッタリながらそれっぽい忍術などが披露され面白いが`、あと一息なにかが欲しい。

探偵ゼノと7つの殺人密室(杉山鉄兵七月鏡一

「ARMS」「AREA D」の七月鏡一の新作はファンタジックなミステリーもの。完全犯罪のために建てられた建築物、殺人密室を巡って繰りひろげられる推理は破天荒で、画風もあってとても現代日本が舞台には思えない。実は異世界なのかもしれない。7つの建築物のうち2つが既に解決済みだが、7つ終わったら連載終わるのだろうか。

マリーグレイブ(山地ひでのり

妻のミイラを抱えて反魂の儀式に必要な素材を集める男・ソーヤー。彼にはある秘密が……。普通に面白いんですけど、よくも悪くもサンデー作品という感じで、絵が作風に対して可愛らしすぎる気がするんですよね。設定の都合上ヒロインが固定出来ず、毎回行きずりの女性が登場するのも不安要素。ネタ切れするのと連載終わるのと、どっちもなければいいけど。

個人的にはほのかに香るクソ漫画センサーがビンビンです。

マガジン

「貴方の一票が展開を決める」アンケートなど新企画もあったが、全体としては変わり映えのない連載陣。よく見ると今年はスポーツ漫画の投入がない。15作中、ピックアップ1作。(「寄宿学校のジュリエット」は除外)

☆ランウェイで笑って(猪ノ谷言葉)

低身長のためファッションモデルへの挑戦の道を断たれた少女、千雪は、クラスメイトにファッションデザイナー志望の少年、育人がいることを知る。しかし彼は貧乏ゆえにその夢を叶えるための進学すら出来ない。「アイツの夢を笑ってしまったら、私も私の夢を笑ったアイツらと同じになってしまう」。絶望的な逆境を前に全力でしがみつく、決死の夢への挑戦が始まった。

マガジンでは珍しい大人しい男主人公が新鮮で、気の強い(強すぎる)ヒロインとのマッチアップがうまくハマっている。もっとも育人も少年漫画の主人公張っているだけはあり、肝心の部分では結構欲張りにエゴを主張するので、この手の主人公にありがちなストレスは薄め。導入部分でモデルメインの話かと思いきや気がついたら服飾デザイナーの話になっていたが、面白いので無問題

ちなみにタイトルの「ランウェイで笑って」だが、スーパーモデルの歩くファッションショーの世界では、笑顔を見せないことが一般的だという(http://www.afpbb.com/articles/-/3105512 参照)。この話題はパリコレを最終目標としている本作でも引きつがれており、低身長でもモデルを目指す千雪と、貧乏人であってもデザイナーを諦められない育人、常識に真っ向から立ち向かう二人への声援としてタイトルが機能している。ランウェイで見せる笑顔は、彼ら二人の世界に対する宣戦布告であり、勝利宣言になるのだろう。

先生、好きです。(三浦糀)

KIRIN(彼女いない歴=年齢)だった主人公、樋口は女子校の新米教師。ところがある日、担任の生徒から告白を受けて……。読切ではヒロインは一人だったのだが、連載化を受けてヒロインが増量。「お前ら全員面倒くさい!」路線に突入か?(ヒロインはあっちと違っていい子です)

8畳カーニバルよしづきくみち

YouTuber実録漫画などにも意欲的に取り組んでいたマガジンが満を持して送り出してきたのは、ニコニコの踊り手漫画。作者は「クーロンフィーユ」「君と100回目の恋」(作画)などのよしづきくみち。ヒロインは可愛いのでしばらくは続くだろうけど、 主人公の「空気圧☆ヒナタ」くんがこれからどうなるのか、皆目見当がつかない。実家がけん玉工場なので、けん玉と化け物じみた体力とで独自のスタイルを見出だしているのだろうか。

マコさんは死んでも自立しない(千田大輔)

「さよならトリガー」の千田先生が本誌登場。女子力の高い男子高校生とズボラな大家大学生のおねショタ日常4コマ。「川柳少女」のリスペクトか、4コマ連作の最後にめくりでデレ1ページという構成がにくい。……そういえば昔あった「今日の女バレ」という4コマもこういう構成だった気がする。仕掛け人は編集か?

青春相関図(三宮宏太、廣瀬俊)

恋人が飛び降り自殺を図り、意識不明に。彼女を死に追いやったのはどいつだ? 手掛かりは彼女が書き残していたあだ名だらけのクラスの人間相関図。そして「私は5人のピエロに殺される」の文字。設定は面白そうなのだが、肝心の主人公が情緒不安定なので、読んでてこっちまで不安定な気持ちに。3秒で激昂して殴りかかるぐらい直情型の人間なのに、突然「今までの敵を欺くための演技だったのさ!」とか言い始めるおかげで感情移入先が行方不明になるし、まごう事なきクソ漫画と言える。

五等分の花嫁(春場ねぎ)

破格の報酬と引き換えに同い年の高校生の家庭教師をすることになった少年、風太郎。相手の5つ子は見た目そっくりの美人姉妹だが、中身はそれぞれに手を焼く問題児で……。「煉獄のカルマ」の俊才が送る正統派ラブコメ。絵も美麗でキャラクターも性格こそ悪いが適度ないい奴具合を保っている(らいはと四葉は癒し)。読切の時も良かったし、長続きしそうです。

血戦の九遠(枩岡佳範)

ジャンプに載っていそうな典型的なバトルファンタジーのクソ漫画。ジャンルとしては退魔師モノ。いっそ「フルバック」の続きそのまま載せて欲しいけど、最近の「○○話に続け!」という生存欲あるアオリは好き。

彼女、お借りします(宮島礼吏

「AKB49」「もののて」の宮島礼吏の新作はレンタルカノをテーマにしたラブコメディ。ヒロインは可愛いしプロ意識の高さもあって良いが、主人公はちょっとクズ度が高い(しかも田舎から上京してきた大学生としてはリアリティのあるクズさ)。よって少しストレスフルな読み心地に(主人公のクズさがヒロインの女神度を引き立てている面もあるが……)。

ワールドエンドクルセイダーズ(不二涼介、biki)

「貴方の一票が展開を決める!」企画の第2弾(多分)。いわゆるデスゲーム系の異能バトルもので、やはり典型的クソ漫画。話の都合か読者投票のせいか、5大幹部のうち一人を呆気なく倒してしまってからはマンネリ気味になりあえなく打ち切りとなった。

杖ペチ魔法使い♀の冒険の書(あわ箱)

戦士と格闘家の娘に生まれたおかげで筋力999、魔力とMP0の女魔法使いが主人公の出オチコメディ。真面目で厳格な遊び人が毎回身体張ってる印象。

おはようサバイブ(前原タケル)

「貴方の一票が展開を決める!」企画の第1弾(多分)。奇病「デネブ」で人類の大半が死に絶えた後の世界を描く、ディストピアサバイバル。優柔不断な主人公にやきもきしている間に話がどんどんおかしな方向に進んでいき、最終的におっさん言葉をしゃべっていた高須先生がモデルのキャラクターが自分は女だとカミングアウトし、主人公の精子を求めて襲いかかるというカオスを披露して終了した。

楽々神話(椿太郎)

土手で拾った神様は、乱暴でワガママでどうしようもなく幼稚な奴だった。ストーリーとしては結構重いテーマだったのだが、ヒロインが最低最悪過ぎたせいか掘り下げが上手くいかないままに駆け足でマガジンを出て行った。主人公も性格がいいとは言えないキャラだったが、あれだけのクソ人間に巡り会えばあの対応も仕方ないと思わせるほどだったので、漫画キャラとはいえ最低限の倫理は必要だなと感じた。

HiGH&LOW g-sword(CLAMP、[原案]HI-AX)

ハイロウがCLAMPと夢のコラボ。ハイロウの世界観が良く分からないので詳細は控えるが、CLAMPは普通にしっかり仕事しているように思いました。

東京卍リベンジャーズ(和久井健

新宿スワン」の和久井先生が、今度はタイムスリップものでマガジンにリベンジ。もちろんヤンキーモノだが、タイムスリップものなので主人公は元ヤン、しかもYJの正次達とは比べられない「挫折した元ヤン」である。そんなヘタレな彼がなけなしの漢気を振り絞って元カノと親友の死を防ぐために奔走する姿がとてつもなくブザマで、カッコいい。

ランカーズ・ハイ(中島諒)

喧嘩で無敗の高校生、渕上竜也。彼は裏社会で行われる無法の賭試合、「ランカーズ・ハイ」に出場し、借金2億の返済を狙っていた。読切は良かったんだが……、流石に主人公に足枷が多過ぎた。設定に縛られ過ぎてネタづまりになっていた気がする。後は幼馴染のヒロインが可愛かったことしか記憶にない。確か途中でwebに移籍したので、結末は分からないままになっている。

ジャンプ

2月に前代未聞の6inを実施(生存率は3/6)。その反動か後半は投入抑えめで生存率が高いものの全体としては小粒。11作中、1作ピックアップ。

Dr.STONEBoichi稲垣理一郎

アイシールド21」原作者が新時代科学漫画を提げて堂々の帰還。全ての人類がある日石化してしまった、という石化フェチ垂涎の導入から始まり、3700年後に石化が解けて目覚めた体力オバケの高校生、大樹……ではなく、その友人の天才高校生、天空がどうやら主人公(そういえば大樹と杠は元気だろうか?)。最初の頃こそ天空の傍若無人ぶりや性格の悪さも鼻についたが、科学王国建国編に入ってからは彼も自分の言葉に見合うだけの苦労を重ねており、普通にいいキャラクターとして立ってきた(性格は悪いけど)。クロム、コハク、金狼、銀狼など過去人ではない現代の住民(科学の存在を知らない)が個性豊かなのも大きいんだろう。大成はしないかもしれないが息長く続きそうな漫画である。

ぼくたちは勉強ができない筒井大志

マジカルパティシエ小咲ちゃん」の筒井大志が古味先生の薫陶を胸に「ニセコイ」ズムでジャンプに参戦。ニセコイゆずりのご都合展開や設定踏み倒しはそのままだが(主人公貧乏設定のくせに終電なくしたあと平然とタクシー選択肢に入れるのやめろ!)、主人公は特定の女性への好意の自覚はない状態をキープしており(一応……)、ニセコイほどの既定路線感は薄い。でもうるかちゃんはきっとダメだろうなぁ……途中参戦の幼馴染の不憫。

U19(木村勇治)

「大人」による子供の支配を掲げた「大人党」による子供への恐怖政治が敷かれた近未来。大人の都合で引き裂かれた幼馴染を取り戻すため、少年は目覚めた異能で仲間と共に「大人」に挑む。ジャンプ新人としてはレベルも平均的で、展開少し遅いなと思ったぐらいだが、ちょっと競合相手が強過ぎたか、あえなく打ち切り

ポロの留学記(権平ひつじ

次期魔王の魔界のプリンス・ポロは大の人間界マニア。争いのない世界を求めて留学と称して人間界に転がりこんできたのだった。主人公が最強なのが悪かったのか、全体を通してつまらないクソ漫画と言えた。終盤は緊張感もあってよかったが、作者の目指していないバトル漫画の方向性なのが見え見えで可哀想ではあった。

腹ペコのマリー(田村隆平

隣の教会で行われていたフランス王族蘇生の儀式に巻き込まれた高校生、タイガはマリー・アントワネットの娘であるマリー・テレーズと肉体を共有することになってしまった。「べるぜばぶ」の田村隆平がおくるラブ?コメディは、なんというか特にとがった部分もなく、無難に続いて無難に終わってしまった印象。悪くはなかったと思うんだけどね。

ROBOT×LASERBEAM(藤巻忠俊

黒子のバスケ」の次はゴルフ、と言っていた藤巻先生、有言実行。何事にも興味のなかった「ロボット」のようだった少年が、天才高校生ゴルファーとの出会いを通して次第にゴルフに惹かれていく。流石にベテランだけあってソツのない面白さだが、展開が巻き気味で打ち切り路線に入ったように見える。やっぱりゴルフは地味だったかな。

シューダン!(横田卓馬

背すじをピン!と」の横田卓馬はジャンプの鬼門、サッカーでの再挑戦。あまり強くない少年団が転校生の少女を切っ掛けに変わっていき、次第にサッカーの面白さと勝つことの喜び、勝利への渇望を覚えていく様が丁寧に描かれていてよかったが、やはりというか、あいにくジャンプでは受けなかったようだ。こちらも巻き展開に入り、おじさん寂しい。

クロスアカウント(伊達恒大)

SNSを通して憧れの女優のプライベートアカウントと仲良くなっちゃう羨しいラブコメ。ところが設定の都合上主人公はそのことに気付かないし、女優本人の方が勝手に盛り上がったりなんだりする間に、サブヒロインの幼馴染の人気が上昇。主人公が幼馴染に告白されるなど絶賛迷走中。いやむしろ迷走し続けていてくれ! 頼む!(真麻派)

トマトイプーのリコピン大石浩二

メゾン・ド・ペンギン」「いぬまるだしっ」の大石浩二の新作。相変わらず時節ネタを可愛い画風に持ち込むシュールな作風は健在。キャラが園児からゆるふわキャラに変わってむしろ強化されたかもしれない。

フルドライブ(小野玄暉)

「赤毛のアチョー」の新人が卓球でジャンプ連載デビュー。絵を見てると不安定な気持ちになる。「赤毛のアチョー」のときはこんな絵じゃなかったと思うんだけどなぁ……。話としては世界に無頓着なくせに卓球に関しては人一倍プライドを持った主人公と周囲のいい人たちがいい味出してるけど……絵のせいでとにかく画面が地味。

ゴーレムハーツ(大須賀玄)

人の仕事を手伝う魔法人形、ゴーレムが活躍する世界で、一人自由意志を持ち行動するゴーレム、ノア。彼の目標は彼のマスター、レメクを世界一の魔導学師(ゴーレムの作者)にすること。ストーリーはハートフルだが、レメクといいノアといいやっていることが悪気なく迷惑なのが、それはそれでストレスフル。悪人が出てこなきゃいいってもんじゃないんだなと思った。

2016-12-31

[][]「この漫画が始まった!2016」縮小版……という名の読書メモ 23:53

去年「2016年はもうちょっと復帰する予定です。」と言ったな。あれはウソだ。

ていうか炎炎の消防隊といいアリスと蔵六といいめぐみちゃんといいだがしといい今アツい漫画は去年か一昨年の奴ばっかりじゃん

ルール

			
  • 僕が読んだことのある雑誌掲載漫画の中から、今年に連載を開始したもので「アツい」「面白い」と判断したものを書く。*1
  • 「今年」とは、連載としての初掲載が2016/1/1〜2016/12/31までであった作品である。
  • 読切は対象としない。読切から連載に昇格した場合、読切ではなく連載が始まった日を「連載開始」と定義する。
  • 短期集中連載からの昇格であったり以前に同様な連載が存在する続編などの場合、一番最初の連載の始まった日を「連載開始」と定義する。
  • なるべく多くの雑誌からくまなく選ぶ。
  • どれほど面白くて好きでアツくても、連載開始が2015年以前の漫画は対象としない。
まめコーデ(宮部サチ、COMICリュウ

この作品のためだけにこの記事書いたと言っても過言でない作品。七女*2亡きあとはまめコーデが世界を取ります。

モデル事務所にスカウトされ、はるばる鳥取から上京してきた姫川まめ。スラリとした体型、長い足と小さな頭、適度に纏まっていて華美過ぎない顔は服を主役として魅せる生体マネキンたるモデルの理想の姿。恵まれていながらも、普段着はキャラクタープリントのトレーナー、趣味はごはんを食べること、好きな食べ物は唐揚げ、酒を頼めば泡盛スムージーってなんですか?、チャームポイントは鳥取弁……。

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もちろんそんな感じで生き馬の目を抜くファッション業界を生きていけるわけもなく、オーディションには落ち続ける日々。限界を感じていたまめの前に白馬の王子様、いやマネージャー様の如月瓜が現れた。

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敏腕マネージャーと天然田舎娘が二人三脚でファッションモンスターと戦う、可愛いあり、可愛いありの可愛いしかないファッション漫画である。

あらすじだけ拾えば少女漫画でもありそうなファッション業界成り上がりモノにも見えるが、さにあらず。まずはまめちゃんの可愛さに注目して欲しい。瓜の実家の弁当屋で大量の唐揚げに囲まれて、口を脂でテカらせながら屈託なく笑うまめはとてもあいくるしく、誰もが愛さずにはいられない存在である。しかし……都会のファッショナブルでオッサレーな女に慣らされた男たちには、この純朴な可愛さが理解されない(そもそも作中にあんまり男出てこないけど)。まめの可愛さ、美しさに気付くことが出来るのはパートナーである瓜を含めて、一部の女性だけなのだ。

そう、この作品の隠された(隠れてない)テーマ、それは百合である。まめが姉にプロデュースされている時の瓜がまめを見る表情がどことなく鬼気迫る修羅の目付きであったとしても、何も不思議なことはない。実は宮部サチは、知る人ぞ知る百合食事漫画の傑作「満腹百合」の作者なのだ。その朴訥で露骨な性を匂わせないながら濃厚な愛情を感じさせる描写は本作でも健在。いや、作中で恋心が明言されていない分、更によい香りがするようになっていると言っていいだろう。

その匂いが感じられた時点で、貴方もまた、まめの魅力に囚われていると言える。

もう一度言おう。七女亡きあとはまめコーデが(リュウ百合)世界を取る。

将棋メシ(松本渚コミックフラッパー

将棋漫画と飯漫画という、ある意味混ぜたら絶対面白いに決まっている素材を混ぜて作った漫画。ずるい。

作者は「盤上の罪と罰」の松本渚。「盤上の罪と罰」の都ちゃんも良かったが、なゆたちゃんもド安定の逸品。ずるい。

ちなみにこのブログを読む人はよく知っていそうだが、女性棋士は今のところ非実在な存在であり、女性のタイトル保持者などいつ誕生するか想像もつかない。作品に華を添えるためとはいえ、こういうところのファンタジックな設定も、やっぱりずるい。

唯一の不安要素は、対局規定の変更で昼食休憩時の外出がなくなったこと。これが作品に及ぼす影響は小さくなさそう。作者もtwitterで嘆いてたし、どうなるだろうか。

手のひらの熱を。(北野詠一、週刊少年マガジン

今年のトップヒットは一応「VECTOR BALL」なんだけど、僕、雷句先生と合わないので。むしろこういう地味な作品が好きで、これにも期待してたけれど結果はあっさりとweb送りからの打ち切りマガジン、不作!w

中身はよくある空手のスポ根モノ。ド素人だけど素質(努力を厭わない性格と姿勢の良さ)を見出だされた主人公が、天才少年と共に中学の部活動で才能を開花させていくストーリー。

あらすじは凡百なんだけど、つくりが丁寧でキャラクターもすっきりとイヤミがなく、さわやかな読み心地。マガジンにありがちなヤな性格の先輩とかゲスの極みみたいな顧問とかが登場しない。そうそう、こういうのでいいんだけどな、こういうので。でも実際問題として打ち切られているので、マガジン読者はイヤミなキャラ造形の方が好きなのかな……。

「振り向くな君は」のように華麗に甦ってくれないものかね。中々難しいが。

うらたろう(中山敦支週刊ヤングジャンプ

未読のため後ほど情報追加予定。今年連載開始した作品1つも読めてない……。

RYOKO(三ツ橋快人、週刊少年サンデー

サンデー枠は「魔王城でおやすみ」との二択。Twitterサンデー連載作家の皆様が驚愕していたそのセンスに敬意を表してこちらを紹介します。あと「魔王城でおやすみ」のレビュー文が上手く書けなかったので。

近未来の日本。時の政府食料自給率の向上を目指して食材を活性化、増殖させる薬剤の秘密開発を進めていたが、失敗し、暴走。薬剤を投与された食材たちは奇形化・怪物化し、逆に人々を食らい始めた。家族の安全を守るため、そして、家族の食卓を守るためには、街中を破壊し暴れ回る食材たちを倒し、狩らねばならない。……これは、亡き母の遺志を継いで毎日の献立を守るために日本刀を奮う少女の『調理』記録。

これ、まず言えるのが、荒い。それもそのはず、作者が新人賞にこの作品を投稿してから受賞決定、そして連載決定までわずか3ヶ月足らずという超スピード。ちなみに最初の新人賞入賞からも半年ぐらい。それだけ編集部がこの若き才能に惚れ込んだということになる。

絵は稚拙だし、プロットも甘々。伏線らしき伏線もないし、基本的にはつっかけ履いたセーラー服の女の子が日本刀を振り回して『調理』するのを見守るだけの作品。そのフェティッシュさにグッと来たら本作を読む価値は充分あると思う。そうでないなら……まあこれを見てくれ。

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美しいだろう?(画は稚拙だけど)

ちなみに上記だと見にくいのだが、彼女の鼻には絆創膏が貼ってあり、これが一種のチャームポイントになっている。ただし……この絆創膏、家族の鼻にもあるので、ひょっとしたら遺伝の模様とかかもしれない。

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お母さんは警察官で、混乱の最中殉職。お父さんは健在だが片足を失っており(現在は義足)、戦うことは出来ないという設定。料子の双肩に一家の食卓がかかっているというのは比喩ではない。

現在話が進み、一家以外のキャラが登場したり、強敵・米(この響きが面白い)との戦いなど、話は次第に面白くなってはきている。どこまで成長出来るか。伸びしろはかなり広いと思う。ただやっぱり絵がなあ……。

なお、今年のサンデー新連載組はどれも比較的好調で当たり年。注目すべき作品としては他に売上筆頭株の「古見さんは、コミュ症です。」やベテランコンビの「双亡亭壊すべし」「柊様は、自分を探している。」など。この辺りを抑えておけば、貴方も立派なサンデーオタクだ。

鬼滅の刃(吾峠呼世晴、週刊少年ジャンプ

優しい炭売りの少年は、鬼に皆殺しにされた家族の仇討ちめ、そして鬼にされてしまった妹を元に戻す方法を探るため、鬼を駆除する鬼殺隊となり、旅を続ける……。

作者の吾峠呼世晴はいわゆる伝奇系の作風を得意としていた新人で、江戸時代を下敷にしているであろう作中の世界設定は作者の作風と良く合う。絵も安定しないながら表情の書き分けはしっかり出来ており、独特の味がある。そして何より、この作者は会話の呼吸の独特さが本当に良い。

例えば下の2ページ。

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単体では普通のコマだが、上のシーンの直後にめくりから下のコマが現れると独特のインパクトが生まれる。予定調和的な会話のキャッチボールが突然断絶し、あたかもギャグが差し込まれたかのような空気が生まれるのだ。これは是非読んだことない人は一度ちゃんと読んで欲しい。もう少しいい例が出せれば良かったのだが。

ジャンプ新連載組では「ゆらぎ荘の幽奈さん」と「約束のネバーランド」が人気Wトップという印象。鬼滅の予想外の伸びで新連載はそこそこ定着したものの、暗殺教室ニセコイBLEACHこち亀トリコと大型連載の終了の影響が大きそう。ジャンプカラーの見えにくい紙面が続くやも。


今年は短いですが、このぐらいで。よいお年を。

そして、来年も宜しくおねがいいたします。特に何かあるわけではないですが。

*1:今年は諸事情により現時点でCOMICリュウ月刊アフタヌーン週刊ヤングジャンプの下半期ほどを読み切れていないため、一部作品が後で追加される可能性があります。ご了承下さい。

*2:「第七女子会彷徨

2016-05-24

[][]「日替わり小説」は小説の習作として適切であるか 15:34

おはようございます。知人から「マンガレビューで同人誌とか出したら」とおだてられるたびに、「ブログで面白くない駄文しか書き散らせない人間がレビューだの評論だの出来るわけないだろ」と思うようになりました。

さて、あまり表立って宣伝はしていませんが、このたび新都社にて「天馬博士」のペンネームで「日替わり小説」なる小説を連載しています。ジャンルは特に決めておらず、縛りは各話300字から1000字の文字数制限。それに1日1更新という時間制限だけです。

"Done is better than perfect"を実践する

元々「小説を書いてみたい」という気持ちがあり、試しにこっそりと何度か書いてはいました。しかし、2000〜5000字ぐらいを超えると興が醒めるというか、筆が進まなくなってしまいます。結果として、書きかけの投げ小説ばかり溜まっていくという状態に。

一度投げた小説を書き直すのは大変でした。なら一気に書き上げられる文字数で小説を完結させてやればいいのではないか。例えば1000字なら、毎日だって書けるかもしれません。それが、「日替わり小説」を思い立った理由です。毎日更新も文字数制限も、こだわりがあって選んだものではなく、「練習」のためのもの。いわばオマケ要素に近いと言えます。

「毎日千字」の煉獄

とはいえ、1日1更新を続けるのは至難です。

元々そんなに筆の早い方でもなく、プロットを練るだけでもそれなりに時間がかかります。その時その時の調子次第ですが、一編に概ね2時間、本当は8時間ぐらいは欲しいです。

もちろん毎日8時間を趣味に費すなど不可能。つまり、ほとんどの更新分は、自分自身で満足のいく出来にまで到達していないのです。

「だからつまんないのは仕方がないんだ」と言い訳するわけではありません。つまらないのは僕の力不足ですから。それに、「日替わり小説」は元々練習として書き始めたもの。公開してみた方が感想や反応などのフィードバックが貰えるし、人の目もあって執筆にハリが出るだろう、ということで新都社のスペースをお借りしているのです(実際、感想や感想企画の皆様には貴重なアドバイスを頂いており、感謝しています)。質が良くないのはある意味で宿命とも言えます。

そもそも「練習」としてどうなのか

ところで練習というからには、執筆を通して小説・文章を書く力が上達していなければなりません。上達していないのであれば、それは練習方法として適していないということになりますから。

「日替わり小説」開始から、もう4ヶ月が過ぎました。1話1時間としても、合わせて140時間ぐらいは費している計算。全ての練習ですぐに効果が出るわけではありませんが、少しぐらいは効果が現れてもいい頃です。

と言っても、小説が上手くなったか、執筆能力が上がったか、ということを客観的に判定するのは難しい。そこで、自分の主観的な感触をいくつかの要素に分けて書き並べてみようと思います。「アレは上手くなったな、コレは変わってないかな」といった具合に書いてみれば、多少なりとも分かってくるでしょう。「日替わり小説」で、人は小説を上手く書けるようになるのかが。

設定やネタを練る時間には事欠かない

設定作りやネタ出しは紙やキーボードに向き合っていなくても出来るので、日中気が向いた時には頭の中でうんうんやっていたりします。あとは気になったキーワードや思い浮かんだワン・センテンスを即座にメモる癖がつきました。もっとも、思いついた瞬間には「これで1日分書ける!」と思っても、一晩寝るとどう捻ったら面白くなるのかさっぱり分からなくなっていることが多いので、メモはもっと丁寧に書くべきかもしれません。

今現在ネタ帳にはザッと50ほどのキーワードが羅列してありますが、ここ1週間ほどでそのストックから使われたキーワードは2つ。残りの5つはその場で捻り出したものです。土壇場での発想力の方が磨かれている……のかもしれません(あまりいいことではなさそうだ)。

1000字にプロットもクソもない

最大1000字の掌編小説なので、ネタとプロットは大体一緒くた。頭の中で展開を決めたら直接書くことが多いです。とはいえこの「展開を決める」という作業が一番苦労している気がします。テーマがそのまま物語として成立していればいいですが、キーワード一つ(例えば「アマチュア無線」)だけだと、そこから更に捻って物語に昇華させなくてはなりません。要するに「オチ」に向かってキーワードを落とし込んでいく作業が必要になります。これを広義のプロット組み立て能力ということにしましょう。

感想でもよく「オチが弱い」と言われていますが、実際ここが一番苦手だと感じています。オチを考えるのが下手ならオチから逆算してフリを付ければいいんですが、そうすると話として平坦な感じになってあまり面白くなくなる気がするんですよね。そういえば鈴木輝一郎先生が似たようなことを言っていたような。

とはいえ「出来ません」では済まないので、なんとかして毎日オチを捻り出しています。こればっかりは方法論もなにもなく、根性と妥協の産物です。ギリギリまで考えて、納得がいったらそれで書く。納得がいかなくても時間が迫ってきたら書く。毎日そんな風に追い込んでいるだけあって、最近はベタオチなら比較的スッと出てくるようになったと思います。とはいえ、0が1になったようなもので、ここはまだまだ。

「書く」力には向かない

文章を実際に「書く」際には二通りの能力があると思います。いわゆる「文章力」と執筆速度です。この二つに関しては、そんなに変わった実感がありません。そもそも苦手意識があまりないという事情がありますし、やるなら「写経」なり「要約」なり、もっといい方法があると思います。

文章力についてはまだまだ洗練の余地はあるだろうと思いますが、現状の必死の執筆では上手くなるとは到底思えません。もっと時間をかけて完成度を高める訓練をするべきでしょうね。

速度については、これだけもの凄い勢いで毎日書いていると少しは速くなっている……かも、しれないです。ただ、こちらも実感はさほどないですね。

推敲する時間がなさすぎる

推敲や編集をする作業は、短編や掌編を書く上で最も重要な能力と言ってもいいと思います。いかに文章のエッセンスを抜き出しつつ、小説の形を維持出来るか。余計な修辞は省かなくてはなりませんが、小説なのですから出来事の羅列になっては意味がありません。字数制限の厳しい掌編だからこそ、文章の言葉一つ一つにこだわりを持って選び抜かなくてはなりません。

こういう作業はやったことがなかったので、正直かなり面白いです。不要な文や修辞を抜いたり、削って余った字数を使って段落間の整合性を取ったり、オチを増強してみたり、パズルのように文章をいじっていきます。やればやるほど文章が手に馴染んでいく感触があり、気に入った時には軽く朗読したくなったりもします。時には文字数に収まりきらず、苦渋の決断で肝いりの文章や設定を丸々削ったりすることもありますが、そういうことも含めて推敲の楽しみの一つではないかと思います。

……というのは全て時間の余裕がある時の話です。時間のない時はそうは行かない。「日替わり小説」の場合、大体書き終えた時点で1200字ぐらいあります。これを削るなり書き直すなりして1000字以内に収めていくのですが、取れる時間は大体5分から10分といったところです。字数を揃えて誤字チェックしたら終わりです。文章表現だの話の筋だのに拘っていられません。

字数削りも必然的に大味になります。場合によっては500文字とか削る必要が生じますから、段落1つ丸々カットとかはザラです。もちろん、それが物語の大筋には関係ないと判断しての大鉈振るいですが、結果として全体の構成、特に序盤は無理させがちです。オチは話のメインなので削りにくいんですよね。最悪の場合、取りあえず小説の体をなしていればいい、ということで、時間のない時には一番無理をさせられる部分でもあります。

そんなことしていてスキルが上がるとも思えず、なんとかしてちゃんとしてやりたいのですが、時間がない……。ナナメ読みであんまり重要そうじゃない段落を見つける力は付いたかもしれないですが。

〆切と字数は死んでも守れ

世の中の大抵のものには「〆切」というものがあります。完成度は高い方がいいに決まっていますが、延々と完成度のみにこだわることは難しい。〆切と完成度との二律背反の中でいかにクオリティの高いものを提出出来るか。そこまで含めて創作活動と定義するのであれば、1日ごとに〆切を迎えるこのやり方は創作活動の練習には適していると言えなくもないでしょう。ただ、〆切を守る能力が身についたかと言うと、正直ついてません。

また字数についてですが、最近は意識せずとも、企図した展開に沿って書くだけで1000〜1200字程度に収まることが増えました。掌編小説を書く以外には使い道のなさそうな能力ですね。とはいえ、昔は漫然と書いているうちに2000字とかいうことも多かったので、無駄のない文章を書く訓練にはなっているのかもしれません。

暇ならやれ

結論として、毎日小説を書くことで、物語のネタや展開を考える力は多少なりとも養われるのではないしょうか。一方で推敲作業に関しては、十分な時間を取らなくてはそもそもトレーニングとして成立しないようです。推敲は小説をクオリティアップさせる作業なので、完成第一だと後回しにされやすいということだと思います。

文章自体を鍛えようと思う人にとっては、小説を書くのは迂遠な方法かと存じます。まして毎日〆切を設定するのは無意味でしょう。

ちなみにこのエントリですが、4000字程あります。原稿用紙に換算すると10枚程度、文庫本なら5ページ程度ですが、画面で見ると結構な分量に見えますね。「日替わり小説」にしてもおよそ4日分ですが、当然4日程度ではなくもっとかかっています。普段もこのぐらいゆとりを持って書ければいいんですがね。