グーグル八分とは何か

グーグル八分とは何か

グーグル八分とは何か

(2007-08-31読了)

巷で話題になっているグーグル八分という単語について,多少の知識はあったが,本を読んだことがなかったので読んでみた.
そういえば,著者かわからないけれど,グーグル八分発見エンジンみたいなものがIPA未踏ソフトウェアに採択されていたような気がする.

まず意見から言わせてもらえれば,著者が問題点として挙げている「私企業が自分の提供しているサービスをどうしようと勝手じゃん」という考え方を,著者自身が十分に反論できていない感がプンプン漂っている.

グーグル八分されたページからのリンクも無視するのかな?それとも検索結果に表示されないだけで,PageRank計算の際にはリンク情報はちゃっかり利用されているのかな?これについて聞いたことがないので,知っている方がいれば教えてください.


前半部分はグーグル八分に限らず,ネット訴訟になったケースをいくつか紹介してあり,知らないことが多かったのでためになった.

大企業だからリスクにそこまで敏感になる必要はない,公共性を重視すべし.という論じ方なのだが,いささか疑問が残る.大企業と中小企業の差ってなんなのだろう?(企業法的には従業員数とか,資本金とか?)
最後に自分で言ってしまっているけれど,例えば日本の電力会社は民間企業であるにも関わらず「君には電気売りません」ということができない.国に独占を認められる代わりにそういったことはできないようになっているらしい.同じことはタクシーにもあって,例外があるのらしいけれど,乗車拒否ができない,というものがある.
検索エンジンは法的に守られてないので,「〜してはいけません」ということがいえない,という結論.うーん尻つぼみ


言論の自由 vs 著作権」という問題では,共感する点が多々ある.コミケ問題に携わったことのある弁護士とのインタビューが記録されているが,できればコミケ問題について言及してほしかった.


企業は,自分の利益になるような著作権侵害には目をつむるくせに,ちょっとでも自分に不利益なことがありそうだと,著作権を理由にして他人の表現を妨害する.


というのが問題なのではないか.本書では明示されていなかったが,そういうスタイルで書かれていたので,そう書えちゃえばいいのに.今回はグーグルを対象にしていたからかな?


というように,ポジションが微妙.
どうせやるならば徹底的にグーグル批判をして欲しかった.そのほうがわかりやすい.論理的にグーグル八分の不当性を論じることは難しいのがわかっているのであれば.むしろグーグルのシェア独占による「将来の不安」について具体的に論じるべきだったと思う.


感心したのは,ペイジランクのペイジがpage(頁)ではなく,グーグルの創設者のひとりであるラリー・ペイジのペイジであるということを書いてあること.
もうひとつ,スパムメールの語源に言及しているのを本で初めて読んだ気がする.コンピュータに携わる人にとっては割と常識だろうけれど,一般向け書籍で紹介するんだ(笑)というような気分になった.


批判的な感想になってしまったけれど,本書はなかなか面白いと思う.
グーグルがシェアを独占し,法整備がされない限りグーグル八分の問題と,それがもたらすあらゆる企業への「カノッサの屈辱」的な絶対優位な立場という問題の可能性がありますよ,ということをわかりやすく解説してあるという点で重要だと思う.

何よりグーグル八分検索エンジンの開発が待ち遠しい
アルゴリズムによって人間が「おっ」と思うものが出てくる,というのが技術者(少なくとも自分)にとっては一番の喜びだと思うので