白夜

白夜 (角川文庫クラシックス)

白夜 (角川文庫クラシックス)

(2009-05-23読了)


ドストエフスキーの短編.面白かった!
言葉が悪いけれど,端的に言えば妄想男と妄想女の話.
女性とロクに話したこともない男が,ある晩歩いていると泣いている娘に出会い,この娘に一目ぼれをする.

主人公は,今まで考えてきた妄想話を一気に話してしまう.ドン引きされるだろうと思っていたら,娘は面白く聞いてくれるばかりか,「私もあなたと同類よ」的なことを言う.

話を聞いてみると,一年前に,一年後の同じ日に帰ってきて結婚を約束した男が帰ってこないばかりか連絡もよこさないのだという.この娘もまた妄想系で,なかなか痛い行動を取っていた.

結局,娘は毎晩のように主人公と会う約束をして,話をするのだった.
この娘がしたたかなもので,主人公が娘に惚れていることを見越した上で「約束して.私に恋をしないで.私たちは親友なのだから」みたいなことを言うくせにあからさまな態度を取る.文化の違いなのかもしれないが,基本的に手をつないでいるようだし,「愛している」を連発する.(親友として,という意味だと付け加えているが...)

娘は終盤(3日目の晩?)には主人公と,待っている恋人と両天秤にかけていることを告白する.3日経っても現れない恋人に愛想を尽かしたナースチェンカは,結局主人公と暮らす(といっても宿主と間借り人という関係だが)ことに決め,将来の約束までする.

主人公が幸せの絶頂にいるとき,そこに待ち人の恋人が現れ,ナースチェンカは主人公の手を離し,恋人の元に一目散に駆け寄っていくのだった...

「ナースチェンカ! ナースチェンカ! やっぱり君だったのか!」という声が私たちのうしろで聞えた。そして同時にその青年は私たちのほうへ何歩か進み寄った……。
 ああ、なんという叫び声! ギクリとふるえた彼女のからだ! そして私の手を振りほどいて、彼のほうへ走り寄った彼女の素早い動作!……。私は打ちのめされたように、じっと立ったまま、ぼんやり二人をながめていた。
(p.109)

あぁ,ナースチェンカ!


しかも後日言い訳の手紙を送ってくるもんだからダブルパンチ.「私たちは親友よね」「あなたへの愛は変わりません.だって親友ですもの」「今度彼と一緒に会いにいくわ」という内容.いったいなにがしたいのか!!

ここからは僕の先入観と偏見.世の女性の中にはこういう行動を取るタイプがいる.彼女らは自己弁護のために,計算をしてこのような行動をしているのではない(計算をして行動をするタイプもいる)と僕は思う.ほんとうにそう思い込んでいるのだ!
そう思ってしまっているのだから,計算するタイプよりタチが悪い.過去の記憶まで改竄されてしまっている場合が多い.彼女らに理屈や証拠など通用しない.

これについては,はてな匿名ダイアリーの日記を思い出した.ちょっと違うけれど,僕のイメージはこんな感じ.


あぁ,ナースチェンカ,ナースチェンカ!


夏目漱石三四郎」(美禰子)や「こころ」(謎の行動を取るお嬢さんとそれに苦しむ先生)も思い起こさせるような作品だった.

ドストエフスキーは読んだことなかったし,堅いんだろうなぁと思っていたけれど,白夜を読んでとても好きになった.時間を見つけて罪と罰カラマーゾフの兄弟も読みたい.


ねぇ,ナースチェンカ!