人権擁護法案再び!?
鳩山首相、人権侵害救済法案の早期提出表明 言論統制の危険性も
鳩山由紀夫首相は3日の参院本会議での代表質問に対する答弁で、民主党内で検討されている人権侵害救済法案(旧人権擁護法案)について「できる限り早期に国会に提出できるよう努力を約束する」と表明した。また、「差別問題をはじめ数々の深刻な人権問題が後を絶たない。人権救済機関の創設は非常に重要だ」と必要性を強調した。民主党の松岡徹氏の質問に答えた。
首相が同法案の提出に強い意欲を示したことで、永住外国人への地方参政権(選挙権)付与法案や夫婦別姓法案と合わせ、与野党の保守系議員らが「日本を日本でなくする国家解体法案」と指摘してきた3つの法案が今国会でそろい踏みする可能性が出てきた。
民主党の救済法案は、各省庁の上位に、独立性が高く他の機関のチェックの及ばない「第2の司法機関」ともいうべき人権侵害救済機関を設置することを柱としている。
かつて自民党政権も党人権問題調査会を中心に法整備を検討し、平成20年に法案(太田誠一調査会長私案)をまとめたにもかかわらず、結局は国会提出に至らなかった。人権侵害防止は他の法令で可能とされる上、法案は肝心の「人権侵害の定義があいまい」で「救済機関の権限が強大」と指摘されたためだ。また、公権力による民間の言論活動への介入の根拠となるだけだとの意見も多数出された。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100203/plc1002032019014-n1.htm
一方、民主党は昨年の衆院選マニフェストで「人権侵害救済機関の創設」などを掲げ、千葉景子法相は就任直後の9月17日の記者会見で、「国際的にみても(設置が)当たり前の機関だ。実現に向けて早急に取り組みたい」と語っていた。
ただ、民主党案は自民党案よりさらに大きな問題点も指摘されている。1つは、焦点の救済機関を自民党案の「法務省の外局」ではなく、首相官邸直結の「内閣府の外局」に設置することだ。政府と党の一体化を進める民主党政権では、党の意向がより反映されやすい。さらに、救済機関を中央だけでなく、各都道府県に置くことや、立ち入り調査などを行う人権委員に国籍要件を設けないため、外国人の就任も可能とされることも問題視されている。
救済機関は、人権侵害の申し立てがあれば、立ち入り調査のほか、調停や仲裁、勧告、公表、訴訟参加など国民生活の隅々にまで介入・干渉する司法権を持つ。また、報道機関には努力義務を課すなどメディア規制色も強い。
これらは、民主党の支持団体である部落解放同盟の要望をほぼそのまま取り入れたものでもある。野党議員からは「人権救済とは名ばかりで、政府や特定団体による『人権抑圧法』だ」との批判もある。(小島優)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100203/plc1002032019014-n2.htm
人権擁護法案がまた話題に出てきたようですね。
確かに、「人権救済機関の創設」は必要だと思いますが、
問題点があまりにも多くて賛成できません。
まずは経緯を改めて説明します。
人権擁護法案に関する一連の経緯
人権擁護法案は小泉内閣時代の2002年に一度提出されました。
その時は、報道機関による人権侵害が特別救済手続の対象となっていたこともあり
「メディア規制法」の一つとしてマスメディアやジャーナリストらの大反発を受けました。
そして、審議がほとんどされないまま2003年の衆議院解散により廃案になりました。
その頃の反対論は、「権力が都合の悪い言論を抹殺するために利用する恐れがある」
という、左派的な反対論が趨勢を占めていました。
2005年にも自民党内で再提出の動きが浮上しましたが、今度は党内から強く反発が出ました。
党内の右派を中心に、「人権侵害」の定義が曖昧であること、人権擁護委員に国籍要件がないこと、
人権擁護委員の推薦候補者として「その他人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する団体の構成員」
を挙げたことなどを理由にした、右派的反対論が台頭したのです。
救う会が北朝鮮拉致問題の解決になると反対し、保守系文化人やジャーナリストが反対キャンペーンを
大々的に行ないました。
日本共産党*1の機関紙、しんぶん赤旗も人権擁護法案に反対する社説を載せましたが、
左派的反対論は右派的反対論ほど盛り上がることはありませんでした。
2005年の時は、結果的に人権擁護法案の成立は阻止されることになったのですが、
安倍内閣を経て、福田内閣が成立すると再び提出の動きが浮上しました。
やはり、自民党の保守系議員と保守論壇が大きく問題視した揚句、やはり葬られました。
人権擁護法案(人権侵害救済法案)の問題点
まあ、簡単にいえば、
誰かが「人権侵害だ!!」などと言いがかりをつければ、
それがまかり通ってしまいかねないということです。
私は右派的反対論にも左派的反対論にも同意しており、
左右のどちらからみてもトンデモな、非常に問題がある法案だと思います!!
つまり、公権力であろうと、人権団体であろうと、誰であろうと、
「人権侵害だ!!」と騒ぎ立てれば、それがまかり通ってしまうわけです。
例えば、検察の捜査を批判する報道に対して検察側が「人権侵害だ!!」と
主張して、報道を委縮させることもできますし、
人権団体を標榜する規制推進派が、彼らが規制したがっている創作物に対し、
「人権侵害だ!!」と主張すれば、その創作物を事実上の発禁にしてしまうことが
できる危険性があります。
2008年に出された意見広告には以下のように書かれています。
これは偽装薬品です。一見、「人権」を「擁護」する「法案」ですが、この法律は日本人の言論・表現の自由を抑圧する法律です。定義が曖昧な「人権」をタテに、三権分立から独立した三条委員会の「人権委員会」が、人権侵害と判断する行為を処罰、勧告するものです。そのために、全国に張り巡らされた「人権擁護委員」2万人が、ゲシュタボのように人々の言動を監視し、人権侵害だという訴えがあると、捜査令状なしに立ち入り、証拠を押収します。
国民の自由な意見が発信されるインターネットも、壊滅的な打撃を受ける可能性が大きいのです。あなたのパソコンが、ある日、突然押収されてしまうかもしれません。
●政治や社会問題や宗教への何気ない疑問も
●外国人参政権への反対意見も
●拉致問題への発言、行動も
●外国人犯罪への意見も
●防衛問題への意見も
●コミックマーケットに出す同人誌も
●入学式、卒業式の国旗掲揚と国歌斉唱も
人権侵害だと訴えられる可能性が大きく、日本人の自由な言論・表現が抑圧、弾圧されます。
というわけで、反対派(特に保守派)の主張の趣旨というのはこういうものです。
(それにしても、「コミックマーケットに出す同人誌も」という文言だけやけに浮いているような…)
他の問題点に関しては、冒頭で紹介したの産経新聞の記事をご参照ください。
必ずしも私が問題だと認識していないものもありますが、人権侵害救済法案の
問題点とされる点については大筋がほとんど掲載されています。
在特会などの排外主義的なヘイトスピーチが規制されることに期待する意見もありますが、
あまりにも甘すぎる考えだと思います!!
では聞きますが、在特会の活動を批判することに対して、
在特会が「反日左翼が言論弾圧している!!」と騒ぎ立てたらどうなるでしょうか!?
そして、人権擁護委員に在特会の関係者が入り込んでいたらどうなるでしょうか!?
たちまち反在特会側は人権侵害の烙印を押されることに
なってしまいますよ!!
これは決してあり得ない話ではないと思いますよ!?
私が在特会だったらそのような方法で反対論をつぶしてやるでしょう。
事実、新宿で行なわれたヘイトスピーチに反対する会の主催する集会に参加した方とのやり取りでは、
@knkz2009さんは人権侵害救済法案(人権擁護法案)についてどう思われますか!? 表現規制の問題からも反対論がありますが。 http://bit.ly/dbDREs
http://twitter.com/slpolient/status/8590459401
@slpolient 現在の法案と運用の方向では、表現規制の問題でもそうですし、「在特会の人権ばかりが救済されてカウンターが規制される(その逆は色々理由つけて片付けられる)」なんて事も十分あり得ると思いますね。
http://twitter.com/knkz2009/status/8592202479
@knkz2009 やはり、在特会の言い分が強く通る可能性も捨てきれませんからね… 在特会的なものと別の反対運動があればいいんですけどね… 規制推進派はイクオリティ・ナウのように人権団体を名乗ってますしね…
http://twitter.com/slpolient/status/8605392806
というように、在特会の人権ばかりが救済されて、反在特会側が規制される可能性について
懸念を表明していました。
なのに、それと矛盾する、在特会のメンバーが人権擁護委員会に入り込むことが
ありうるというのでしょうか!?
まあ、在特会ならやりかねないでしょう…
連中は、目的のためなら手段を選ばないでしょうからね…
この際だから、AMIやコンテンツ文化研究会なんかも、人権団体として
人権擁護委員会に名前を連ねるべきでしょう。
拉致問題に関する団体も、チベット・ウイグル人の団体も、人権擁護委員に
名前を連ねるべきです。JAPANデビューで名誉を毀損された台湾人*2も、
みんなそろって人権擁護委員会にお入り下さい!!
と皮肉たっぷりに言っておきます。
他にも懸念される問題点はあります。
ストーカー被害に対して、「民事不介入」を口実に、殺人事件が起こるまで放置した某県警と同じように、
人権擁護委員の怠慢により、本来救うべき人権が救済されないならそれはそれで反対する理由の一つです。
余計なことをして人権を侵害するどころか、
本当に救済されるべき人権が救済されないのであれば、
悪法という他はありませんよ!!
国民は基本的にお役所仕事を信頼していませんから、
人権擁護委員会なんて、ほとんど当てにされないんだろうな!!
そういうのも変な人権団体をのさぼらせることになるんだろうな…
私がいいと思ったコメントをいくつか紹介します。
先の産経新聞の記事を取り上げたはてなブックマークには以下のコメントがあります。
your 在特会みたいな糞のような団体を見ると「消えてくれないかな」とか思うが、在特会みたいな糞のような団体が活動できなくなる法律は断固反対する。 2010/02/04
http://b.hatena.ne.jp/entry/sankei.jp.msn.com/politics/policy/100203/plc1002032019014-n1.htm
このコメントに私は強く同意します。
在特会のような排外主義的な主義主張であっても、言論の自由・表現の自由は保障せざるを得ないというのが
「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る
という言葉こそ、言論の自由を守るための大原則だと私は思っています。あと、
arama000 人権擁護法案 在特会的な連中がこの法案を作り上げているという事を自覚しろ。言論空間を狭めてるのは在特会的なものの所業だし、それは在特会的なものの人権を削りなおかつ他人を巻き添えにしているんだという事をわかれ!
というコメントもなるほど。と思いました。
在特会などが人権擁護法案を制定する口実を提供しており、巻き添えを食らう自分たちは
えらい迷惑を被っているぞ!!ということなら、私も否定はしません。
ただ、人権擁護法案が最初に提出されたのは2002年3月で、在特会が発足されたのは2007年1月。
よって「在特会的な連中がこの法案を作り上げている」というのは誤りですので指摘いたします。
今後の動向
さて、人権侵害救済法案は今後、どうなっていくでしょうか?
外国人参政権と並ぶ「日本解体法案」と位置付けられているので、保守派が黙ってはいないでしょう!!
私がこの記事をアップするころにはチャンネル桜が取り上げていることでしょう。
というわけで、外国人参政権に反対する人のほぼ100%が反対するでしょう!!
児童ポルノ法の時とは異なり、保守論壇が全面的に味方であることは
せめてもの救いでしょう。*3
なお、小沢幹事長の問題をめぐり国会が紛糾していることもあり、また国民新党が反対していることもあり、
外国人参政権法案の提出は困難になりそうだとも言われています。
予算が成立する3月下旬以降の提出になるだろうとの見通しを示しています。
民主党内にも人権擁護法案反対派はいて、2005年にはwikipedia:人権擁護法案から人権を守る会という
議員連盟を結成しています。
自民党は、谷垣総裁になって以降、安倍政権、麻生政権の時以上に、
真正保守的な方針を取っているので、党を挙げて反対していくものと予想されます。
それを考えても、激しい政局になることが予想されますので、
提出や成立は困難だという見通しは楽観的すぎるでしょうか…
とにかく、私は反対の立場を取ります。
まずは、冷静に動向を見守っていくことから始めたいと思います…