smectic_gの日記

2010-01-02

[]UV2A続き

昔書いたシャープのUV2A - smectic_gの日記が今読み返してみるとあんまりなので,書き直してみる.

といっても,本職じゃない(ので好き勝手書ける)ので,間違っていたらご容赦を.

VAモード

wikipedia:VA方式を見てと言いたいわけだけど,

  • off状態
    • 基板に対して分子が垂直
    • 複屈折=0
    • 偏光板を垂直に挟んだ中にパネルをいれると,真っ黒.
  • on状態
    • 基板に対して分子が傾いている
    • 複屈折≠0
    • 偏光板を垂直に挟んだ中にパネルをいれると,明るくなる

の二つの状態を組み合わせて,画面の明暗をつけている.

マルチドメイン

VAでは,ひとつの画素は複数の傾く方向の異なるサブ画素から構成されている(マルチドメイン).なんで,こんな面倒くさいことをしているのかというと,マルチドメインにしないと視野角がひどいことになるから.

VAモードは液晶分子が基板に対して立った複屈折のない状態から,液晶を寝かせて複屈折を発生させて光をコントロールする.

f:id:smectic_g:20100102212917p:image:h150

でも,上の図の左側からわかるように,一方向だけに倒してしまうと見る角度によって,複屈折が違っているために明るさが違ってしまうことになる.一番ひどいのは,液晶の倒れた角度から見る場合で,この場合には電圧をかけて明るくしようとしているのに,真っ暗に見えてしまう.

これに対して,逆方向に傾けた画素を追加すると,片方のピクセルは真っ暗でも,逆方向に傾けた画素は逆に明るくなるから(上図左の右下に向かう矢印),明るさが平均化される(上図左の3つの丸の明るさの平均).つまり,角度による明るさの変化がだいぶ誤魔化せる.*1

なぜ液晶が倒れるのか

ここまでで,VA方式の液晶パネルを作るには,

  • 電圧をかけてない状態で液晶がおおむね立っている
  • 電圧をかけると液晶が倒れる
  • サブ画素単位で,別々の方向に液晶が倒れる

という条件を満たす必要があることがわかった.

では,液晶を電場をかけて倒すにはどうすればいいのか考える.

VAには誘電率の異方性が負のものを使う.この液晶は電場をかけるとそれと垂直に液晶分子が並んだほうがエネルギーが低くなる.つまり,液晶画面に垂直の方向に電圧をかけると液晶分子は横を向いたほうが楽になる.(下図)

f:id:smectic_g:20100102212919p:image:h150

この状況はドミノ倒しと同じで,ドミノも立っている状態と倒れた状態では倒れた状態の方がエネルギー的に低い.でも,これで十分かというとそうではなくて,

  1. 倒れたほうがエネルギーが低いからといって,勝手に倒れてはくれない.(ドミノが勝手に倒れないから,ドミノ倒しが出来る)
    • 実際には液晶分子の向きは常に揺らいでいるので,少し時間はかかるけど倒れてはくれる.ドミノで言えば,常に小さな地震が起きていてドミノがぐらぐら揺れているような状態.
  2. 倒れてくれるのはいいけど,どの向きに倒れるのかわからない(下図左).
    • VAに使うには,狙った方向に倒れてくれないと困る.

という二つの問題がある.

f:id:smectic_g:20100102212916p:image:h150

この二つの問題を解決するためには倒れ癖をつけておけばいい.ひとつの単純なやり方としては,上の図の右側のように最初に少し傾けておけばいい.そうすることで,倒れかけたドミノと同じように

  • 最初に少し傾けた方向に必ず倒れてくれる.
  • 傾けてない状態よりも速く倒れる

というように,問題を克服できる.

従来の方法とUV2Aの違い

基板全体の液晶を少し傾けるだけならば,液晶を垂直に配向させる膜(垂直配向膜)を基板に塗ったあとに,すこし基板を布で擦ればできる(やったことないけどたぶん).でも,サブ画素ごとに違った方向に液晶を少し倒すのは難しい.

では,実際にどうやっているのかというと,サブ画素ごとに少し突起を作って,その上に垂直配向膜を塗る.こうすることで,突起の上の液晶は突起に対して垂直になろうとするので,液晶を基板に対して傾けることが出来る.(下図左側)

f:id:smectic_g:20100102232334p:image:h150

これに電場をかけてあげると,

  • (上で書いたように)すでに傾いているところの方が傾きやすい
  • 液晶分子は周りと揃いたがるので,近くが傾いているとその方向に傾きやすい

ので,傾いた突起からドミノ倒しのように傾くことになる.

この方式には

  • ドミノ倒しのように,変化が伝わるので全体が傾くのに時間がかかる.
  • 突起のところで分子の向きが急激に変わってしまうので,どうしてもそこが明るくなってしまいがち.

などの問題がある.

これを改善するためには,上図右側のようにサブ画素全体を少し傾ければいいんじゃないか?と誰しもが思う.サブ画素全体を一様に少し傾ければ,全部の液晶分子が同時に傾くので速いし,突起のところが変に明るくなったりもしない.この誰でも考えそうなアイデアを「実現」したのがUV2Aということになる.もちろん,全体を一様に傾けてしまうと,全体が一様に少し明るくなってしまうからコントラストに影響が出る可能性はある.でも,以前計算したように,1度や2度傾ける程度ではほとんどコントラストには影響しないので問題ない.

さっき書いたように,配向膜の上を布で擦る手法だとサブ画素ごとに方向を変えるような器用なことは出来ない.でも,光を当てることで配向膜の性質を制御できるなら,マスクを通してサブ画素ごとに光を当てたり当てなかったりすることで,サブ画素ごとに狙った方向に並べることが出来る.

この「光配向」という手法は

  • 液晶の向きを細かく変えることが可能
  • 基板の大型化が可能
    • 配向膜の上を布で擦る方法は,布(ラビング布)を巨大なローラー(ラビングローラー)にキレイに巻き付ける必要があるが,職人といえども2mとか3m幅の布をキレイに貼れと言われるとさすがに厳しい.
  • 歩留まり向上(光配向の論文は,ラビング布を使わない結果,ダストや静電気が減るので歩留まり向上というストーリーが多い.そんなことないよという人もいるし,結構効くよという人もいるのでよくわからない)

というような,いくつかの意味で期待されていて,昔から研究され続けている.でも,意外と従来技術はしぶとかったらしく,なぜか実用化されない技術だった.

普通の研究用の光配向膜はアゾ色素(-N=N-)を使っていて,光を当てると光の吸収を最小にするように分子の方向が変わる.*2

たとえば,直線偏光を当てるとそれと垂直の向きにアゾ色素の-N=N-が向くように分子が回る.

これは,

  1. アゾ色素が光を吸収.
  2. 直線上だったアゾ色素がシストランス転移を起こして曲がる.
  3. 時間が経過すると,直線上に戻る.
  4. 戻る時,1/2の確率で元の角度から回ってしまう.

という原理で,光の吸収に比例して元の角度にいられなくなるから,光の吸収を最小にする角度に分子が回転することになる.

通常は光の偏光で,配向膜の分子の向き,ひいては上に載せた液晶の向きを制御するのだけど,今回は傾く方向を制御しなくてはいけないから,偏光では制御が難しい(偏光の方向に正負はないので).たぶんランダム偏光か円偏光を入射方向を垂直から少し傾けて照射することで,垂直から少し傾いた方向に配向膜を並べているのだと思うけど,ここら辺は詳細は完全に不明.この推測が合っているのかも不明(そもそも,偏光なら複屈折を持つマスクを一つ使えばいいのだけど,入射方向だときちんとした平行光を用意した上で,マイクロレンズのような凹凸のあるマスクを用意して1回か,向きを変えてサブ画素の数分露光する必要があって,どちらにしろ面倒くさい)

追記(2010-08-03)

仕事でシャープ技報を漁る羽目になって,いろいろ見てたら,UV2Aを開発者みずから説明してたレポートが上がっていたので,リンクを載せておく.

世界初の液晶光配向技術UV2Aの開発 (PDF:1,061KB)

たぶんこれよりは分かりやすいはずだけど,読んでみた限りでは,液晶科学者は初心者向け文書が下手だという印象を紙一重で与えてしまいそうな感じ.

*1:正直,中間色のガンマは今の最新のVAパネルでも視野角依存性がひどいと思ってる自分はIPS厨

*2:無論,アゾ色素なんて可視光で動いてしまうような分子を製品には使えないので,実際に使っているのは原理含めて別の可能性が高い.

2009-09-16

[]シャープのUV2A

日本語があんまりすぎるので,大幅に書き直しました.http://d.hatena.ne.jp/smectic_g/20100102/1262442508

「シャープの液晶は変わる」--次世代液晶パネル技術「UV2 A」を開発 - CNET Japan

no title

最初,上の記事を読んで,名前から想像したのと下を読んでわかる実際がほぼ一緒で受けた.まだ勘は鈍ってないということか.

VAってのは,最初全部の液晶分子が垂直に立ってて,垂直に電場をかけると誘電率異方性が負なので,横に倒れる.ただ,普通の説明だと最初の状態は垂直だということになってるのだが,全体を完全に垂直にしてしまうと,どっちに倒れていいか液晶分子が迷ってしまって,倒れるのに時間がかかることになる*1.また,迷った末に毎回違う角度に傾かれては,輝度が異なるので,ディスプレイにならない.

なので,実際には垂直からちょっと傾けておいて,その角度に傾くようにしておく.どうやって傾けるのかとか,どのように傾けるとかで,同じVAといっても各社いろいろな方式がある.でも,基板に凹凸を作って,その近くの液晶分子を,狙った方向に傾けておく以外のやり方はあまり聞かない.

で,今回のUV2Aは,配向膜を使って液晶を全部狙った方向に傾けてしまおうという方法.これには今回使ったような,光を照射することで,液晶の配向方向を制御する光配向膜が不可欠だったりする.なぜかというと,VAはその特性上,視野角を広げるために,各々の画素を複数の別々の方向に倒れるドメインから構成する必要がある(マルチドメイン).で,普通の配向膜の場合,液晶の並べる方向は,配向膜の上に布を擦り付けて,その方向で決定する.が,これでは各画素ごとに方向を変えるような器用なことは出来ない.

一方,光配向膜ではマスクを通して照射する光の偏光を変えれば,各画素ごとに液晶を傾ける方向を変えることは比較的自由にできる.自分の知る限り,光配向膜は配向規制力が弱いとか,別にラビングでいいじゃんとかいろいろな理由があって,昔から研究はされているんだけど,日の目を見なかった.が,こんな形で表に出るとはという驚きがある(といっても,比較的光配向膜のメリットを生かせる分野ではあるけど).

ただ,ちょっと不思議だったのは,最初に全部の液晶を傾けてしまうと,暗状態で全体がほのかに明るくなってしまわないかということ.もちろん,原理的には上のドメインごとに違う複屈折を持つ補償板をつけることで解消可能だが,まあ現実的でないこと著しい.ということで,簡単に計算してみたら,1度とか2度(傾き方向を決定するだけなら,これくらいで十分なはず)傾けた程度では,何の問題もないことが判明.

以下計算コード.

#! /usr/bin/ruby
class Cell
  attr_accessor :no, :ne, :d

  def initialize(no, ne, d)
    @no = no
    @ne = ne
    @d = d
  end

  def n(t)
    Math.sqrt(1.0 / ( (Math.cos(t)/@no)**2 + (Math.sin(t)/@ne)**2))
  end

  def delta(t)
    n(t) - n(0)
  end

  def int(t)
    (Math::sin(2*Math::PI*delta(t)*@d))**2
  end  
end

a = Cell.new(1.6, 1.7, 10)
puts a.int(20.0/180.0*Math::PI)/a.int(1.0/180.0*Math::PI)

上のコードを走らせると,複屈折が0.1で,初期の傾きが1度として,最大に傾けた角度が20.0度とすると,出るコントラストが単純計算で129000:1ということがわかる.意外と最初の傾きってのは効いてこない.ちなみに,IPSのラビング角度のずれとか,偏光子の角度ずれは1度もずれると,コントラスト比としては問題外になるから,本当に意外.

*1:もう少し科学の言葉で言うと,スイッチングの時に不連続な転移を伴わざるを得ないということ

2009-06-23

[]だれともなくアピール

去年の秋ごろからちょっとずつ講演会では小出しにしてたferro-nematicなbanana液晶の話がとうとうAdvanced Functional Materialsに出てた.小出しにしてる情報とabstractを見る限りでは実験+計算の大作(でも,強誘電性に関しては銀の弾丸であるSHGはとってなさそうなんだよね).

Ferroelectric Response and Induced Biaxiality in the Nematic Phase of Bent-Core Mesogens

うちの会社じゃWileyの論文がダウンロードできないのが恨めしい.

2008-10-24

[]パスタで液晶

今日ふとお昼に出たパスタを見ていたら,棒状のパスタが集まって層構造を形成していた*1.いままで,こういうデモに使えそうなサイズかつ手軽さのものでスメクティック層が出ると思っていなかったので驚いた.

ネマティック相ならある程度細長いものならば適当にゆすれば作れるのは,割りばしとかつまようじとかで体験できると思う.このとき,どうやっても頭としっぽの区別が(自発的には)つかないと言うのがつまようじを揃える時にすごいむかつくわけだけど,またそれは別の話.

で,これは昔偉い人が(Onsagerさんとか)理論的に証明したことで,相互作用のない単なる棒でもある程度の密度で詰めれば勝手にネマティック相になる.

でも,スメクティック相はそこまで簡単じゃなくて,単なる棒だと少し厳しい.実際の分子だと細長い分子が隣り合った時に,重なった長さを大きくしようと言う働きがあって,これが棒状の分子がくっついて層を作る原動力になるのだけど,目に見えるようなものでこういう相互作用を持ったものと言うのはなかなか思いつかない.粒子の間で引力が働くと言う事自体が珍しいのに,さらに,棒が縦に連なった時と横に並んだ時とで横に並んだ時の方がエネルギー的にだいぶ楽にならないといけない.

で,本題のパスタに戻る.今日のパスタは(たぶん)マカロニリガーテ*2のクリームソースあえ(具はサーモンだけどどうでもいいや).

スメクティック相になるのに必要な条件ってのはいくつかあって

  1. さっき言った,棒同士が横にいた時の方が安定になる相互作用
  2. 棒が剛直
  3. 棒の長さが揃っている
  4. でも,どこがが少し不ぞろい(揃いすぎていると結晶になってしまうので)

で,何がすごいって上のパスタはこの条件を全部備えている.

まず,クリームソースの粘性により重なってる部分の表面積に比例した引力が働く.さらに,このパスタは中空だから棒の上下方向の引力はほとんどない.次に,このパスタはそこそこ壁が厚い上に,イタリアではアルデンテを通り越した固さで出されるのが普通なので,けっこう固い.たぶん,細目のマカロニでは再現できない.で,ペンネを想像してもらえればわかると思うけど,この手の少し太めのパスタは長さがきっちり揃っている.でも,茹でるものだから少し径や長さに違いが出る.


いろいろ考えると,条件を調整すれば(パスタの形とソースって事だけど)もっと複雑な相も出せるんじゃないかと思うし,普通にスメクティック相が出るだけでも良いデモンストレーションになると思う.

*1:といっても,SmBか,ほとんどCryBだけど

*2:ペンネリガーテを斜めじゃなくて平行に切ったような形.日本のスーパーで売ってるのを見たことがない

2008-09-30

[]難しいと言われたのがショックだったので

液晶オタが非オタの彼女に液晶を軽く紹介するための10相 - smectic_gの日記が単語いっさい説明なしでハードコアすぎといわれたのがショックだったので,あげた液晶相の簡単な説明と言うか,Googleでどんな検索をすればいいかの簡単な説明.

  • SmA2

日本語だとかからない.英語だとかすかにかかる.が,論文のabstractが大半なのであまり役に立たない.まあ本文にも書いたけど古びを感じさせる液晶相なのでこんなもの.普通は分子1個でひとつの層をつくるのが,分子2コで1層を形成しているという相.

XRDをとると1層の厚さが測定できて,それがだいたい分子2個分になるので区別がつく(普通は,1層の厚さは分子1個分になる).ただ,顕微鏡でいくらのぞいても普通の1層が分子1個分のSmA相とは(SmA-SmA2相転移があって,特有の欠陥-知らんけど-が出てこない限り)区別つかない.

  • B2

こんなメジャーな相,絵付きで出てくるだろうと思ったら,B2だと全くGoogleから検索できないので焦った.そりゃハードコアと言われるわけだ.Banana liquid crystalと検索すると英語でいくつか説明が見つかる.が,あまり詳しくない.ちなみに,"B"は"Banana"ないしは"Bent-core"ないしは"Bow"ないしは"Boomerang"の略で,分子の形が棒状じゃなくて曲がっているという意味.その後の数字は(一応)相が見つかった順番.現在B8まである.なんで,"B"の意味が複数あるのかというと,Bananaなんて卑猥すぎて発音できませんという一派と,分子が曲がってて色も黄色っぽいのが多いからBananaでいいじゃん派と,もういいよBow(Boomerang)で派が未だに争ってるから.

  • ネマティック液晶,コレステリック液晶

まあ,これは説明不要だよね.検索すれば出てくるし.日本語のwikipediaの説明よりも英語のLiquid crystalの説明を読んだほうがいいかもしれない.

  • カラムナーヘキサゴナル相

日本語でも一応かかる.が,日本語で「カラムナー相」でイメージ検索すると8割以上が山形大のELをやってる某有名教授のblogの写真で締められるのにため息."Columnar phase"でイメージ検索するとそれっぽい絵が出てくる.

  • SmC*

Googleに限らず検索エンジンでこういう記号のはいった単語を検索するのは骨が折れる.というか,無理.SmCを教科書で引くと,「分子が層構造を作っているが,層内部では分子間の長距離秩序がない.分子は層に対して傾いている」と言うようなことが書かれているはず.「*」(スターと発音する)というのは,系にキラリティーがあると言うこと.系にキラリティーがあるおかげで鏡映面がなくなって,強誘電性がもたらされるのだけど,最初の論文はそんなことは当たり前じゃないかと言われてPRLを蹴られたというのは有名な話.

"ferroelectric liquid crystal"でイメージ検索するとそれっぽい絵が出てくる.日本語も「強誘電性液晶」で検索すればそこそこの結果が得られるかも.

  • ブルー相

Samsungの試作品で一躍有名に.話題になった時期が最近なのでGoogleでも検索結果に困らない.英語版wikipediaのBlue phase mode LCDの説明が詳しい.もしくは,九州大の菊池先生のページ.

  • AFLC

FLCがニッチに留まることが確定した今となってはなんというかすごい微妙な相.でも,「反強誘電性液晶」で検索すると意外と見つかる.

あと、de Gennes(isbn:9780198517856)とChandrasekhar(isbn:9780521427418)ってのは、液晶の有名な教科書なんだけど、どちらも少し古いので強誘電性液晶のことが一切載っていない(Chandrasekharの2nd Edには強誘電性液晶のことが載るようになったらしい。でも、反強誘電性液晶のことはきっと載ってないと思うけど)。

強誘電性液晶の教科書というと、福田-竹添(isbn:9784339005585)が一般的だと思うんだけど、これはこれで反強誘電性液晶の話はほとんど載ってない(と記憶している)。そして、上のようになってしまった今となってはだれも反強誘電性液晶の教科書を書くことはないと思う。

  • SmC*副次相

実は,こういう言い方しないような気がしないでもない.が,強誘電と反強誘電の間に無数にある一連の相をまとめていう言い方はなんかある.ここら辺の議論も当時はけっこう盛り上がったはずなんだけど,"devil's staircase"でこの元記事がけっこう上に来る辺りネットではないも同然.

  • B4

ごく最近まで,というか,下手をすると今でもこの相の構造はよくわかってない.ので,検索してもあまり見やすい図とかは出てきようがない.

B2あたりだとまだそれっぽい図が出てきたりもしたのだけど,これについては全く出てこない.なのでいろいろな意味で地雷.

  • バイアクシャルネマティック相

初稿では別の液晶相だったのだけど,身元バレしそうなマイナー液晶相だったので慌ててこれに差し替え.これもメジャーかと言われると微妙なんだけど,なぜかwikipedia英語版にBiaxial nematicの項目があるので,興味がある人はそれを参照してほしい.

これを使うとすごい応答速度の速いLCDが作れるんじゃないか的なことが期待されていたりした.まあ,100℃以下でこの相が出てくる材料を知らないけど.(ちなみに,RCAがつくった最初の液晶ディスプレイは駆動温度が100℃近かったりしたので,頑張ればどうにかなるのかも知れない)

ちなみに、元の記事を書いたときには屈曲型コア液晶で普通にサーモトロピックなバイアクシャルネマティック(Nb)が出るという話になっていたと思うのだが、いつの間にか実はそこらへん全部勘違いだったんじゃね的な風潮になっていて焦る。

液晶業界は結構こういうことが多い。自分の信じる道を進むべし。

2010-8-28 少し追記。