こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

『JUKE BOX』感想

 関ジャニ∞の6枚目のフルアルバム『JUKE BOX』発売から約一週間、ファンの評判も上々のようだが、私も愛聴しております。現時点での私的ランキングとしては、『8UPPERS』を別格として、『ズッコケ大脱走』や『PUZZLE』と並ぶ2位タイという感じでしょうか。
 個人的にはあまり評価が高くなかった前作『FIGHT』の流れを承けた作風でありながら、『FIGHT』よりも1枚のアルバムとして随分スッキリ聴けるようになっている。スッキリと言っても全15曲63分で、相変わらず長い。私は40分くらいがいいんだけど。ただサウンドが、前作同様に全体的に分厚くリッチでありながら、前作に較べると幾分風通しの良くなった印象で、危惧していたほど聴き疲れはしない。
 ボーカルも、ソロや1対1のハモリなど、(斉唱よりも)各人の声を活かした編成が結構なされているようであり、良い傾向である。また配分についても、渋谷と錦戸に重きを置くという傾向が残ってはいるが、タイアップの関係で「あおっぱな」では丸山が、「涙の答え」では大倉がフィーチュアされているし、「クラゲ」では始めと終りのフレーズを安田が完全に一人でこなすなど、個々人の働きの大きさは充分感じられる。そもそもオープニングの「TAKOYAKI in my heart」からして、「渋谷+錦戸+その他」ではなく、7人それぞれを均等に表に出したアレンジになっている(この点、アプローチは全く異なるが『8UPPERS』の実質的なオープニングである「モノグラム」と同様の趣向である)。他楽曲でも渋谷・錦戸以外のメンバーのソロやハモリは多く聴くことができ、各人のボーカルの堪能度は高い。
 楽曲のバランスも前作より好み。シングル曲は4曲、アルバムの前半と後半に各2曲という配分で、申し分ないバランス。また、前作についてバラードが多すぎると以前書いたが、本作はシングル「涙の答え」の他は、バラードらしいのは「あなたへ」くらい。こちらも、アルバムの前半と後半に各1曲という配分。「あなたへ」はストリングスを入れてはいるがあまりベタベタしたバラードではなく、私が苦手な「壮大系」でもないのが有り難い(ついでに書くと、前作の「輝ける舞台へ」のような説教ラップが入っていないのも随分有り難い)。
 このようにバラードがごく少ない分、「青春ノスタルジー」や「北風ブルース」のようなミドルテンポのポップスが活きている(「クラゲ」「ここにしかない景色」がこれに準ずる)。
 他のアルバム曲は、遊び心に富んだ「TAKOYAKI in my heart」「Dear Summer様!!」、パワーポップの「レスキューレスキュー」「夕闇トレイン」、ヘヴィーなバンド・サウンドの「Your WURLITZER」「West side!!」、現代のテクノポップを衒いなく採用した「Sorry Sorry love」と、それぞれに特色があるが、ジューク・ボックスと言ってもてんでバラバラの曲調を詰め込んだと言うよりは、テンションの高い楽曲を多く揃えた印象であり、もうちょっと別の言い方をすると、これまでになく「享楽的」な勢い・ムードがある。これにシングル曲の「へそ曲がり」と「あおっぱな」が加わるわけで、結果的に、ロック好きにウケが良さそうな作風に仕上がっていると思う。要するに私は気に入ったということです。
 また、これは今までと変わらぬ方針であるが、打ち込み、則ちコンピュータによる音源作成の技術が非常に発達した現代にあって、ここまで生演奏を主体にしているのには感心する。非常に贅沢である。その結果、本作でも非常に気持ちの良い、あるいは刺戟的な、伴奏が堪能できる。歌だけ聴くのは勿体ないです。あと、歌詞カード末のクレジットを見ていて気付いたのだが、パーソネルはドラム→ベース→ギターの順で記している。これって珍しいんじゃないだろうか。なんとなく好感が持てる。


1. TAKOYAKI in my heart 作詞・作曲:前山田健一 / 編曲:大西省吾
 ナンバーガールの「Omoide in my head」を想起させるタイトル。それはいいとして、基本的には「ネタてんこ盛りで楽しい曲」なのだが(そういう曲は好きです)、詞曲両面で、イイ所とイマイチな所が入り交じった印象。
 歌詞は、関西人が関西人を演じているという感じで、ここを良しとするか否かで評価が分れようか。私は実はこの部分がちょっと微妙なんだよな。地元愛ってそんな素直なモンか?とも思うし。「ワテら」はないやろー、と思ってしまう。「なんだかんだ凄い街」というのも、意図不明瞭。ただ、「いつも心にたこ焼きを」というのは初心忘るべからずの比喩としてはなかなか悪くないと思う。
 各人のソロ?と、それに対する合いの手がメイン・パーツとなっているが(「∞ o'clock」を彷彿)、どっちかというと合いの手の方が面白いことが多い。
村上:いきなり村上が長いこと歌うのでちょっと驚いた。合いの手が「銭ゲバ 八重歯」の連呼なのが笑える。それに対する「それはただの悪口やで」というのは結構「リアル」な関西弁と感じます。
安田:これも合いの手に笑う。「オシャレゆうてもスカート履くとか」。この「ゆうても」「とか」が何とも言えずフンイキ出していて、心憎い。そして、「やっぱりあいつ、あっち系ちゃうか?」。やっぱりって・・・。
 なお歌唱は彼にしては少々か細いか。コンサートでの挽回を期待。
錦戸:気持ち悪いなあ(褒めてます)。歓声を被せてくるところに『サージェント・ペパーズ』を感じてしまうのは・・・考えすぎであろう。この歓声はコンサートで「実演」されるのでしょうね。
渋谷:・・・特にコメントなし。一生懸命歌っていて、良いと思います。あと、この部分の伴奏も好きです。しかし「真っ赤っけ」って、言うかなあ・・・。
丸山:「パーン!」に逃げるな!! まあその後も続けているんで、いいけど。
横山:大阪の難読地名と言えば黒門の前に柴島とか吹田やろとか、そもそも難読地名は大阪に限らず全国にあるやんけ(でも放出は「♪ハナテン中古車センタ〜」なんかがあるので確かに地域色は出ている)とか、ツッコミ所はあるのだが、そんなことより「難しい地名が読める」というのは、他メンバーのパートと違って横山のキャラクター?の反映に乏しく、ちょっとスベリ回避的なものを感じるな。
大倉:祭りだドン♪ 可愛いね。隠れ大倉ファンとしては嬉しい。『パタリロ!』の「クックロビン音頭」を思い出します。 
 曲は、バンド演奏を主体とするが(ドラムが全編で鳴りまくってます)、「合いの手」部分は打ち込みで、この切り替わりが面白い。「合いの手」部分はメロディーも好きだ。ただ、サビのメロディーがあと一歩という感じがします。 
 「あっ・・・」で終わるというのは事前に雑誌のインタビューで読んで知っていたのだが、それでも笑える。


2. レスキューレスキュー 作詞・作曲:井上ジョー / 編曲:Peach
 グリーン・デイばりの痛快さ。あるいはゼブラヘッド? アメリカのメロディック・ミクスチャー・パンクが一つのお手本としてあるのだろう。気持ち良いです。ラルク アン シエルの『KISS』というアルバムでも、2曲目はこういう気持ち良いパワー・ポップだった(「Pretty girl」)。関ジャニ∞もバンドでこの曲を演ってくれると個人的には嬉しいが、ちょっと難しいか。
 ただ普通のメロディック・パンクと違うのは、冒頭から複雑なハーモニーでメロディーが展開していることで、これはワクワクする。ハモリに力を入れてくれたらライブでもハイライトの一つになり得るだろう。
 個人的に、ラップは好きなものと嫌いなものの差が激しいのだが、この曲のBメロのラップは割と好き。
 終盤でサビをオクターブ下で大倉に歌わせているのが良い効果。この部分や、あるいは「あなたへ」のソロなど、「低音の大倉」というのが関ジャニ∞の歌唱の一つの「旨味」として定着している。
 全くの余談ながら、歌詞にある「とんでもございません」は、「とんでもないことでございます」とするのが敬語マナー的にはベターとされている(まあ「もうええがな」とも思いますが)。


3. Sorry Sorry love 作詞:SHIKATA / 作曲・編曲:SHIKATA・KAY
 本作で打ち込み主体の唯一の曲。まあこれは「こういうフンイキの曲を作りましょう」という、意図の明確な曲である。その分、質は高いが、面白みはあまりないか。ちょっとイントロもダサイ気がするしな。上で「現代のテクノポップ」と書いたけれど、実際はちょっと古い感じかも。だから悪いということでなく、志向の問題なのですが。
 7人それぞれの声が識別できる絶妙な深さでエフェクトが掛かっていて良い感じ。


4. へそ曲がり 作詞・作曲:TAKESHI / 編曲:大西省吾
 安心印のTAKESHIさん、本作ではこの1曲のみ。既に別の記事で書いたことだが、「あおっぱな」と較べると、同じハイテンションの曲でも随分造りが違う。
 「あおっぱな」は普通のポップソングよりも単純な構成だが、「へそ曲がり」は普通のポップソングよりも複雑だ(Cメロが2種類あるなど)。
 ストレートな爆発力としては「あおっぱな」の方が上だが、フックが沢山ある楽しみは「へそ曲がり」に軍配が上がる。
 「あおっぱな」は底抜けに明るいのに対して、「へそ曲がり」はしんどくてたまらんのを笑い飛ばそうとしているような、一種のヘヴィーさがある。
 こんな2曲を1枚のアルバムで聴けるのはなかなか贅沢である。
 PV見たさで何度かカラオケで歌ったが、この「立ちはだかる〜♪」という歌い出しは大変ですね。照れを残していては出せない音域である。聴いていてそうは思わせないところに渋谷の技術がある。
 PVでは逆風に吹かれながら歌うという演出だが、むしろライブでのダンスが非常に格好良くて好きだ。


5. 青春ノスタルジー 作詞・作曲:Skoop On Somebody / 編曲:釣俊輔
 意図的か否か知る由もないが、90年代のJポップの雰囲気。米米CLUBが歌って違和感ない。
 普通こういう雰囲気は編曲によってもたらされるのだが、この曲の場合はメロディー自体が90年代っぽい。エンディングに英詞が来るのもソレ風で、ちょっと小っ恥ずかしい感じ。錦戸、なんかヘンやぞ。あ、でも彼は1番Aメロの歌い出しは良い。
 この曲は、編曲も丁寧で、嫌な感じはしないのだが、私の好みではない(ジューク・ボックスの雑多さということをよく意識すれば、割り切って楽しんで聴けるが)。ただ歌唱は割と見所があって、Bメロに心憎いファルセットがあるのだが、1番の大倉、2番の丸山、ともに上手くこなしている。ファルセットと言えば2番間奏後の渋谷、その後の英詞での錦戸もバッチシだ。歌唱では、安田の2番Aメロもグー!
 

6. 涙の答え 作詞:SaoriSEKAI NO OWARI) / 作曲:NakajinSEKAI NO OWARI) / 編曲:野間康介
 シングルとしてはあまり良いと思っていなかったが、アルバムのこの位置で聴くと随分評価が上がった。綺麗な曲です。歌詞も、(くどいようですが)異常に理屈っぽい部分を削ると随分良くなると思うんだけどな。
 1番Aメロでの渋谷と安田(だよな?)のハモリ、CDでは安田のハモリが小さく録られているが、コンサートでは同じくらいのバランスで鳴ってくれるのでは、と期待。2番Aメロで丸山のバックでハーモニーを付けているのは誰だ? これもコンサートでの「バランス改善」を期待。
 サビにおける下ハモも美しいので(特に「闇を切り裂いてさ」の部分が良いなあ)、コンサートでも是非しっかり再現してもらいたい。
 それにしてもドラムでかいなー。


7. 夕闇トレイン 作詞:田中秀典 / 作曲・編曲:野間康介
 名曲「エネルギー」「ローリングコースター」のペアによる楽曲であるが、これらに較べると些か平凡な印象。サビ後半の「さよならtwilight train」というところのメロディーに惹かれるが、こうしたフックがもう一つ二つ欲しかったところである。何度も聴いていると、段々良く思えてきますが。
 「日陰探す猫みたい」というのは良いフレーズだ。
 これはバンド曲かな? ドラムが忙しそうである。


8. クラゲ 作詞・作曲:ISEKI from キマグレン / 編曲:久米康嵩
 先にも述べた通り本作は、前作『FIGHT』からの流れを大凡継いで、結構分厚いサウンドの曲が多いが、そんな中でこの曲のアタマとシッポは実に「刺戟的」。安田のボーカルにアコギ一本、傍らではミュートを当てたトボけたトランペットの音が微かに聞こえる。実に嬉しくなってしまうサウンドだ。流石、久米康嵩。安田の歌唱も大らかで実に良い。
 このノリで1曲通してやってもらっても良かったのだが、一気に現代風のポップスへ。こちらはこちらで楽しいです。ノリの良いBメロが嬉しい。前作の「フリーダム理論」に近い雰囲気の曲だが、私はこちらの方が大分好き。「タリラリラ」のサビ良し。上品なストリングスも良い。
 期待した通り、エンディングはオープニングのムードに戻る。この曲はコンサートでバンド演奏する曲ではないと思うが、オープニングとエンディングだけは是非是非、安田にギター弾きつつ歌ってもらいたい。横にトランペッターがいればもう、言うことなしだ。
 

9. Dear Summer様!! 作詞・作曲:GAKU / 編曲:久米康嵩・GAKU
 タイトルからは全然期待していなかったのだが、大いに裏切られた。オープニングからして、「おっ、これは!」と惹かれたが、実際、素晴らしかったです。非常に高揚します。本作の白眉と言いたい。
 様々なサウンドのアイディアに満ちた快作である。アイディア合戦ということでは西の「TAKOYAKI in my heart」、東の「Dear Summer様!!」という感じだが、個人的には現時点では東に一票。
 オレンジ・レンジを彷彿するようなオチャラケたダンス・ナンバーなのだが、曲のテンションと歌詞がとても良くマッチしている。かなり軽薄な感じだが、関ジャニ∞はよく歌いこなしている。
 楽しい曲でありながら、サビがポップになりきらないところがクールである。Bメロで一旦クールダウンしてから、おもむろにサビに向けて再度アクセルを踏み直すところも心憎い。
 2番ではヘヴィ・ロックの要素も出て来る。しかもねえ、是非しっかり聴いてもらいたいのだけれども、2番のサビではシンセのストリングスが鳴っているのですよ。こんな曲にストリングス入れようと思いますか? そしてこれがアイディア倒れでなく、バッチリ格好良いのだ。ミクスチャーの要素もある。とにかく脳ミソ揺さぶったるで〜の精神で、痛快。
 更に見逃せないことに、Cメロ(七色交わる〜)の前には、カモメの声がサンプリングされている。これは、その後で聞こえる波の音と併せて、「夏の海」の演出であると言えばまあそうなのだが、ロック・ファン、殊にビートルズ・ファンは、このカモメの声にあの歴史的実験作「Tomorrow Never Knows」(ミスチルじゃないよ)と同じ匂いを感じるはずである。
 一応バンド・サウンドではあるのだが、こうしたサンプリングや音の遊びがたくさんある楽しい曲である。ブ・ブ・ブブブブ・・・からサビの爆発に繋がるクライマックスも、実に痺れる。
 「拝啓」は「敬具」で結ぶことを教えてくれる、教育的な曲でもある。


10. あおっぱな 作詞:増子直純 / 作曲:上原子友康 / 編曲:大西省吾
 やっぱり傑作! 改めて実感しました。作者を同じくする「モンじゃい・ビート」よりも、率直に言って遥かに良い。但し「Dear Summer様!!」の次という位置は適切だったのだろうか? 個人的には、当初紹介されていたようにアルバム冒頭に持ってきてもらいたかった。
 曲の特徴については「へそ曲がり」のところで粗々書いたので省略するが、この曲は演奏も素晴らしい。ベース・ラインがとても魅力的だし(練習しました)、何よりドラムがめちゃくちゃ格好良い。私は基本的にはスネアがバシャバシャ鳴っている「軽くてパワフル」なドラム・サウンドが好みなのだが、この曲のドラムは、これがモダンなのだろうか、めちゃくちゃ重い。どれがスネア?と思うくらいに。しかし格好良いのだ。
 「モンじゃい〜」と同じメンツかな?と思いつつも、シングルではパーソネルが掲載されておらず判らなかったのだが、アルバムが出て漸く判明。全然違うメンツでした。ドラムが浜崎大地、ベースが松田卓己、ギターが大西省吾。
 

11. 北風ブルース 作詞・作曲:葉山拓亮 / 編曲:野間康介
 葉山拓亮は今まで「Brilliant Blue」「トリックスター」「Fight for the Eight」「ルリルラ」といった曲を提供しているが、毎回テイストの違った曲で、実に器用である。今回はサザンオールスターズ風味の湿ったポップス(『キラー・ストリート』に収録されていても違和感ないんじゃないか)。
 このタイトルはちょっとどうかと思っていたのだが、聴いてみると歌詞はなかなか良い。「どこへ行くアテもなくさまよって/辿り着いたその場所でまた飛べるならそれでいい」なんて、ニヒルじゃないの。ちょっと刹那主義的でもある。
 「Looking for your rules」というフレーズも格好良いし、それが2番で「Looking for your shoes」に展開するのもお洒落。
 各人のボーカルが活かされているのが嬉しいが、特に注目したいのは2番Bメロ後半の村上。「その流れに身を任せ〜♪」、素晴らしい出来!
 張替智広(ドラム)、柳野裕孝(ベース)、佐々木貴之(ギター)、野間康介(鍵盤)のカルテットによる演奏が実に気持ち良いが、特に2番後の長めの間奏(2:07〜)は要注目である。佐々木貴之の「ブルージー」なギター・ソロも良いが、その後の、野間康介によるエレクトリック・ピアノのソロが何とも言えず素晴らしい。聞き過ごしていた人は是非とも聴き直して欲しい。


12. あなたへ 作詞:童子-T / 作曲:童子-T・REO / 編曲:REO
 作者の「童子-T」という名前を見て、てっきりラップだと思っていたら、歌詞といい曲調といい、なんか物凄く古くさい曲が流れてきたんで驚いた。昭和57,8年くらいのフンイキである。「二人の涙雨」と変わらんがな。しかも「二人の〜」は笑えるけど、こっちはあんまり笑えない。
 「懐メロコーナー」ということで、アルバム前半の「青春ノスタルジー」と対になっているのであろうか。まさか。
 そんなわけで、綺麗な曲とは思いますが(ソロ・ボーカルも堪能できるし)、好みでない。やはり「青春ノスタルジー」と同様、「ジューク・ボックスの雑多さということをよく意識すれば、割り切って楽しんで聴ける」というタイプの曲。
 再び余談ながら、1番Aメロの丸山は珍しく鼻濁音で歌っている(「ないあの坂」の部分)。まあその次の「落ち葉」は鼻濁音になっていないので、偶然だと思うけど。あと、2番Aメロの安田の歌い方が「くるり」の岸田繁に似ていると思いませんか。


13. Your WURLITZER 作詞:錦戸亮 / 作曲:錦戸亮安田章大 / 編曲:Peach
 「Dear Summer様!!」と並ぶ、本作のハイライト。錦戸・安田の二人のクレジットであるが、メインは錦戸だという。ほんとにビックリしました。
 率直に言って、これまでソングライターとしては完全に安田>錦戸という評価だった。錦戸については、「悪くはないが、突き抜けたところのない曲を書く」というイメージだった。それがこの曲でいきなり思い切り突き抜けた。
 関ジャニ∞がこれまでに発表した曲の中でも、一、二を争う妖艶かつスリリングな曲である。編曲の力もかなり大きいが(イントロからして聴く度にゾクゾクします。Peachという人は本作でいきなりの大抜擢だが、良い仕事をしている)、めちゃくちゃ格好良い曲である。涙が出るほど(マジで)嬉しい曲である。演奏も超タイト。
 安田が前作で提供した「Dye D?」は複雑な間奏を挟みつつも約3分という短い曲であったが、まるでこれに対抗するかのように、この曲はなんと2分10数秒。しかも展開も豊か。
 歌は基本的にソロの連鎖である。冒頭は錦戸。この歌唱がまた良い! ガナリが入った「さぁ!」が最高! ほんとに、いきなりどうしちゃったんだよ錦戸亮!という感じである。
 歌唱は丸山(Aメロ2度目)→大倉(Bメロ)→安田(サビ)と連なる。大倉は「選ぶよ君に似合いのメロディ」の1フレーズだけで、ファンには物足りないかも知れないが、いやいや、この曲のキモの一つです。立派に責務を果たしている。
 最後は、渋谷が冒頭と同様のフレーズを繰返す。これがまた、冒頭の錦戸に挑戦するかのようで、実に痺れる。勿論、良い歌唱です。
 渋谷の「さぁ! こんな歌はいかがですか?」というフレーズ(これはこのアルバムの宣伝文句としても使われている)に導かれて、次の「West side!!」が始まる。ベタと言えばベタだが、しかしめちゃ格好良い演出である。ビートルズ・ファンとしてはここでも『サージェント・ペパーズ』を連想してしまう。
 歌詞は、サビ末の「君は弱くない!」というのが力強くて、好きです。「君は強い」よりも、却ってポジティブに響く言い方だと思う。

 ところで、ウーリッツァー(Wurlitzer)というと、ロック・ファンなら普通はエレクトリック・ピアノのメーカーを連想するんじゃないかと思うのだが(なので私もこちらで「もしや村上についての歌か」と書いてしまった)、実はウーリッツァーはジューク・ボックスも作っていて、歌詞からも判るようにこの曲ではそちらの意味である(雑誌のインタビューで錦戸も明言している)。


14. West side!! 作詞・作曲・編曲:Peach
 まさかまさかのメドレー。いやー驚くとともに、嬉しくなっちゃいました。曲と曲を、無音状態を挟まずにそのまま繋げちゃうというのは、先述の『サージェント・ペパーズ』然り、プログレ然り、やっぱりアーティスティックを志向するミュージシャンなら一度はやっておかなきゃいけませんな。
 これはライブではバンドで演るしかないだろう。だとしたら「Your WURLITZER」もバンド? それは流石にまだ難しいんじゃなかろうか。でも演ってくれたら驚喜します。
 サビがちょっと明る過ぎるのが個人的にはちょっと残念で、しかし「明日はハレルヤ〜」でまたちょっと暗くなるのが嬉しい。当然「七転び八起きで West side!!」というところも好き。
 冒頭の「West side!!」という渋谷のコールを聴いて「ミセテクレ」を連想しないエイターはいないだろう。個人的にはやっと「ミセテクレ」に取って代わるへヴィーなバンド曲が現れてくれたか、と嬉しく思っている(「ミセテクレ」、割と好きな曲ではあるが、ライブで欠かさず演るほどの曲ではないんじゃないかと感じていたので)。
 この曲の最後でのシャウトなど聴いていても、やっぱり渋谷すばるは誰もができるわけではないことをやっている、貴重なシンガーだなと感じます。


15. ここにしかない景色 作詞・作曲:A.F.R.O / 編曲:大西省吾
 「マイホーム」の二番煎じに聞こえる、という点に目を瞑れば、良く出来たポップ・チューンである。PVも良いしな。この位置に来ることで、アルバム本編を終えてエンドロールを見るような気持ちで聴けます。