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2009-05-08

[]大野松雄鉄腕アトム/音の世界』完全版、世界初リリース決定!

鉄腕アトム・音の世界

鉄腕アトム・音の世界


 先日のエントリで、7月に行われる大野松雄氏の生涯初のコンサートを含むイベント『<アトムの音をつくった伝説の音響クリエイター>大野松雄〜宇宙の音を創造した男』を告知させていただいたが、これに続く関連リリースとして、大野氏が75年にコジマ録音から発表した『鉄腕アトム/音の世界』のCD再発売が決定した。といってもこれ、オリジナル・ジャケット、オリジナル・マスター、オリジナル選曲でCD化されるのは今回が初めて。というのも、これまで大野氏率いる「綜合社」(タージ・マハル旅行団の映画『「旅」について』の制作や、アニメ『ルパン三世』第一シリーズなどを手掛けた音響制作会社)が解散になって以来、「マスターが紛失した」と言われていた幻の音源だったのだ。それがついに今年、某所でこのオリジナル・テープが発見されたのである。

 本作は、63〜66年までフジテレビ系で放映されていた国産第一号アニメ鉄腕アトム』のために作られた、音響デザイナー大野松雄氏が制作したサウンドトラック(効果音)を商品化したもの。オリジナルはアナログLPで、現代音楽レーベルであるコジマ録音傘下の「ALM」から75年にリリースされた。土取利行+坂本龍一ディスアポイントメント・ハテルマ』などの電子音響を担当している、プロデューサーの吉田秀樹氏によって企画され、これがインディー盤としては異例の大ヒット。79年にジャケットをカラー原画に改め、同内容でビクターから再リリースされて、初めて全国一般発売が叶った。その後、原作者の手塚氏の死後に、令嬢のるみ子氏の采配で手塚治虫生誕70年の99年に、ジャケットを再改訂して初CD化。アナログLPも限定発売されて好セールスをマークし、オリジナル放映時を知らないDJ世代にもファンを集めて、日本の電子音楽の初期のマイルストーン的一枚として有名なアルバムとなった。だが、先に触れているように「オリジナル・マスター紛失」は当時のスタッフの共通認識で、ワーナーでCDされたのは、当時のLPヴァージンディスクから盤起こしした音を元に、大野氏がリマスターを施したもの。拙者が監修で関わった作品集『大野松雄の音響世界』(全3巻)がキングレコードから発売された際に使われた抜粋音源も、同マスターが使用されている。実はこのとき、コジマビクターなどの過去のリリース先の倉庫を一度調べて、マスターが残されていないことをスタッフは一度確認しているのだが、所在を突き止めるにいたらず。それが今回時間を経て、当時のディレクターがその執念で、オリジナル・マスターの所在を突き止めたのである。これが手塚治虫生誕80年、および大野松雄氏の初イベントが開催される今年に見つかったことには、神の采配を感じてしまう。

 オリジナル・マスター使用(2009年リマスターを制作中)はもちろんのこと、現代音楽レーベルらしい大人な渋さで味わいがあるコジマ盤の初回ジャケットでの復刻も初めて。さらに、コジマビクターと受け継がれながら、ワーナーでの初CD化のときに割愛されていた、冒頭と終幕の『鉄腕アトム』主題歌のダイジェストも今回初めて同盤に収められた。また大野氏によると、オリジナル・マスターには当時立体音響にご執心だった大野氏の意向で特殊な位相処理が施されていたらしく、LP盤ではそれが正しくカッティングできなかったとのことで、スタジオで制作されていた本来の『音の世界』のサウンドがリスナーに届けられるのは、今回が初めてになるらしい。今、先行音資料をもらって聞いているのだが、ワーナー盤では針トレースノイズによって微妙にマスクされていた音のフリンジ(輪郭)などが、今回はくっきりと再現されており、全体の印象はまったく異なるほど違う聴感がある。はっきり言って、今回のCD化こそが「初CD化」と正々堂々と声高に言えるもので(過去のスタッフの方々すいませぬ)、向こう10年これだけでご飯何杯もお代わりできるとお約束できる、お茶の間必携の1枚になるだろう。