風の果て

風の果て (上) (文春文庫)

風の果て (上) (文春文庫)

風の果て (下) (文春文庫)

風の果て (下) (文春文庫)

蝉しぐれ」が非常におもしろく,しかも読み終わったのが阪急梅田駅であったことからブックファーストで同じく藤沢周平の「風の果て」上下を購入.蝉しぐれ同様,平凡の武士の生涯を描きます.現時点(中年になって)と過去の時点(若侍のころ)を交互に描く手法もうまくはまっています.やはり思うのは,過去を舞台に借りているだけで,書きたいのは現在の人間の姿なのかなと.一般庶民(侍も現在で言えば官僚でしょうから)の,たくさんの制約条件の中で揉まれ生き延びていく様を描いています.風景や季節の描写がきれいなのもこの著者の特徴でしょう.