アガサ・クリスティ『ホロー荘の殺人』(ハヤカワ文庫)

アンカテル卿の午餐に招かれたポアロを待っていたのは、血を流している男と、その傍らでピストルを手にしたままうつろな表情をしている女だった。それは風変わりな歓迎の芝居でもゲームでもなく、本物の殺人事件だった!(早川書房http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/320022.html)

アガサ・クリスティはかなり久しぶりに読みました。クリスティは大好きなんですが改めてこの作家の作品は面白いと思いました。時代を超えた面白さがあると思います。勿論、書かれた時代の時代性、価値観という部分をわかってうえで読まなくてはいけない作品もありますが、それでも物語のなかの人物像は普遍的。『ホロー荘の殺人』はクリスティがミステリと恋愛ものとを融合させようとした作品。ホロー荘に集う人々それぞれの想いが事件を起こし、謎が広がっていく。そのなかで「愛」が描かれていく。「愛」とはなにか。そして創造することへの業をも描ききる。登場人物たちの個性が活き活きと描かれクリスティの人物観察の細かさに驚嘆する。今読んだほうがそれがわかる。
ポアロシリーズの一つですが他の作品とは毛色が違います。『ホロー荘の殺人』のポアロはいわば傍観者、観客の一員といった感じです。わざわざポアロを出したのは失敗とは作者の弁。ポアロの推理目当ての本格ものを読みたい人向けではないかもしれません。

ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)