SNS三社の規模や給与

2月発表のSNS三社のアプリ課金等(アバター等を含む)の収入は次のようになっています。(各社のIRデータから抜き出しましたが、異質のものを比較している可能性もあります。)
ディー・エヌ・エーは、EC事業を除いたものをカッコ内に示しました。

会社 全体売上(百万円) 課金売上(百万円) 課金の09との増減 全体内比率
ミクシィ 4540 724 +196.4% 16.0%
グリー 14302 11938 +86.7% 83.5%
ディー・エヌ・エー 29404(25511) 23420 +412.9% 79.6%(91.8%)

ここからいえることは次のようなものです。

その他の事業

残りの部分の売り上げはどこから上がっているかといえば、mixi・グリーは広告です。ディー・エヌ・エーは広告とEC事業です。ただし、ディー・エヌ・エーは広告事業が伸びていません。多数の事業を持つディー・エヌ・エーですが、人材をソーシャルに集中することで伸びを実現しています。

人件費

各社とも人件費が伸びています。原価内の人件費(簡単に言えばエンジニア等にかかる部分)をみてみます。
これをみると、エンジニアについて「どの会社に行けば給与が上がる or どの会社が積極的に採用している」というのが分かります。

会社 原価全体(百万円) 人件費(百万円) 人件費の09との増減 全体内比率
ミクシィ 1033 179 +32.7% 17.3%
グリー 1225 375 +162% 30.6%
ディー・エヌ・エー 4069 224 +129% 5.5%

売上原価に占める人件費の割合は会社の開発形態やソフトの形によっても変わってきます。が、いずれにせよ、人件費単体の増加は人材収集や給与アップに関係します。

グリーの社員数は、昨年6月で174名であり、その一年前は102名だったようです。現在もこのペースで採用しているならば、200名を越えていることでしょう。エンジニアをどの程度採用しているのかは知りませんが、給与もアップしていそうです。
グリーとディー・エヌ・エーは、中途採用でかなり積極的な取り合いを繰り広げています。が、これだけでみると、今はグリーの方が給与が高くなりやすい?

スマートフォンソーシャルゲームの今後

二つのアプリ提供方法

スマートフォンのプラットフォームは大きく二分されます。

これらのプラットフォームにおける「ソーシャルゲーム」はどのように提供されるのか。二つの方法がありますし、実際、両方とも使われます。

  • ブラウザ上で動作させる(HTMLによる「ブラウザアプリ」)
  • ダウンロードして実行する(いわゆる「ネイティブアプリ」)

例えば、現在のスマートフォン版のmixiアプリGREE、モバゲーが現在提供しているスマートフォンアプリはこれになります。つまり、HTMLで動作させるアプリですので、ケータイ版と基本的な形は変わりません。とはいえ、HTML5JavaScriptCSSの表現力が生かせますので、そこが大事になります。動きのある処理は、FlashLiteからJavaScriptに書き換えることになるでしょう。

それに対して、ネイティブアプリがあります。これはiPhoneならばObjective-CAndroidならばJavaを用いて、SDKを利用して開発することになります。これについては、三社ともまだ取り組みの途中になっています。これは、App StoreAndroid Marketといったところからの集客が可能であることもありますが、ブラウザゲームでは不可能な表現力を持つことが魅力といえます。

DeNAが海外のminination(事実上撤退)で提供していたアプリは、ブラウザアプリ、ネイティブアプリの両方でした。

ブラウザアプリ先行

そして、「日本では」ブラウザアプリが先行しています。モバイルでの取り組みの資産が有効活用できるから、といえるでしょう。

企業 ブラウザアプリ ネイティブアプリ
mixi 現在提供中 取り組み中
GREE 現在提供中 取り組み中
モバゲー 現在提供中 取り組み中

モバゲーの独自の取り組み

モバゲーに関していえば、ネイティブアプリ開発について、ネイティブSDKを用いた開発よりもむしろ、ngCoreを用いた開発を先行させたいということのようです。デベロッパJavaScriptでコードを書いて、ngCoreの提供するAPIを叩きます。ngCore部分ではiPhoneAndroidの差異を吸収してくれるそうです。なお、Android版についていえば、ngCoreの基盤部分だけ最初にダウンロード・インストールしておけば、その上で動作する部分は単なるJavaScriptなので簡単に追加可能(ネイティブアプリではないので)だそうです。これをアグリゲートモデルというとか。こちらの場合には、App Store等を経由しない方式となり独自性や操作の簡便性が得られます。

ngCoreの提供が順調に行われて、問題なく動作すれば勝ち組になりそうですが、まだどんなAPIが提供されるのかも見えていないので、不透明です。

海外の動向

さて、海外ですが、ZyngaやPlayfishといった大手についてはPCからの移行ということになります。
彼らは基本的にはネイティブアプリを作ります。既存のPC向け(Facebookなど)はFlashアプリだったわけですが、これをあえてブラウザアプリに書き換える必要もありません。

といったものがあります。

しかし、これらの大手には大きな欠点があります。つまり「プラットフォーム自体は握っていない」というものです。

FacebookMySpaceなどの大手SNSの上に乗っかり、そのシステムの上でソーシャルゲームを作ってきた彼らは、そこに問題を持ちます。(なので、プラットフォーム自体を構築したり買収したりしていますが、Facebookなどと比較するとまだまだ小さい。)

同様に、日本のSNSの海外進出についても同じことが言えます。DeNAとグリーは進出を進めようとしていますが、まだまだ基盤は小さい(というかグリーに関していえばこれから)状態です。

スマートフォン向けのゲームプラットフォームは、どの企業についても「まだまだこれから」なのです。そういう意味では、どこの企業が一番になるのかはまだ不明ですし、今知られていない企業が一番になることもありえます。

あえていうならば、国内勢としてはDeNAが海外進出で先行していますが、それは当然「国内勢としては」というものであり、激戦で淘汰される可能性もあります。

グリーはつい昨日、中国の最大手SNSであるTencent社と提携しました。また、ミクシィは昨年中国のCyworld、韓国のRenrenと提携したのに加え、ドイツVznetと提携することが発表されました
これらのSNS間で共通のプラットフォームを提供することによって、アプリ開発者をひきつけて供給を増やすという戦略といえます。つまり、これ自体は海外進出ではありません。
少なくともミクシィは日本国内で、Facebookとの戦いを実施する作戦と思われます。

海外のソーシャルゲームの超基本知識

「そんな基本的なことを改めていわれても…」というかもしれませんが、まだ一部では理解されていないようなので。

ブログや掲示板などでは「ソーシャルゲームなんてやってるのは日本だけ」「ガラケーが終わったらソーシャルゲームも終わる」「アイテム課金なんて海外ではすぐに規制される」なんて書いてる人もいますが、当然ながらそんなことはありません。

海外と日本の違い

むしろ海外の方が大規模であり、日本と同様、アイテム課金がメインとなっています。
ただし、日本とは大きな違いがあります。

日本ではモバゲーやGREEが合わせて1000億円規模の市場を作っていますが、アメリカでも同様に10億ドル超の市場となっています。

有力企業

さて、海外ソーシャルゲームで有力な企業としてはZynga(アメリカ)とplayfish(イギリス)があります。
Zyngaにしろ、playfishにしろ、Facebookなどの大手SNSにゲームを提供することで成り立っています。つまり、基本はPC向けです。
さらにいえば、Facebookも収益はfacebook内の仮想通貨(モバゲーで言えば、モバコイン)から挙げています。そしてその少なくない部分がソーシャルゲームに使われます。)

日本では、プラットフォーム提供者(つまり、モバゲーやGREE)が提供しているゲームが目立ちますが、Facebookの場合にはゲームはZynga等に任せて、プラットフォーム側で十分な収益を上げています。

スマートフォン市場

そして、現在各社が進出しようとしているのがスマートフォン市場です。
iPhoneアイテム課金が可能になってからはiPhone向けにも各社がソーシャルゲームを提供するようになりました。先ほどのZyngaやplayfishもです。とはいえ、まだまだ発展途上です。

DeNAは米ngmocoを買収しました。ngmocoはアメリカで1200万ユーザということですから、買収はアメリカ進出の意味も持っています。が、それよりもむしろスマートフォン対応のソフト基盤(ngCore)の入手という意味を持っています。(ngCoreは、Android/iPhone両対応ゲームを作るためのフレームワークです。)
GREEも同様に、スマートフォン対応を進めています。

「巨大なZyngaが来たら日本のソーシャルゲーム企業は終わり」というのも間違いで、スマートフォン市場についていえば、まだまだ海外企業もこれからなのです。

では今後どうなるのか

では、今後どうなるのか、それについて次回に書いてみます。