警察署に職務質問を自主的に受けに行ったらこうなった!

行政が提供するサービスのうち、何が一番好きかというと、個人的には、「警察サービス」が一番好きである。警察機能が行政の提供する役務のうち最も重要なものの 1 つであることに疑いはない。その他に、国が提供する重要な機能には、裁判所機能、(自衛的) 軍隊機能がある。これらが欠けると、物理的な安全が維持できなくなる。国が提供するその他の機能 (福祉、経済介入など) と比べて、警察、裁判所、軍隊の機能の重要性は計り知れないほど大きいと思う。


さて、昔、警察官の方に、警察では、市民に対して、免許の更新などのサービスの他にも、「職務質問」というサービスを提供しており、希望する市民は職務質問を受けることができるらしい、という話を聞いた。


そして、昨年の夏、インターネット上で目的もなく色々 Web サイトを見ていると、「俺は職務質問を受けたぞ」といった自慢のような記事や YouTube の体験ビデオなどを見つけた。
実は、私は、生まれてから今まで、警察官から職務質問サービスを受けたことがない。それらの記事を見て、うらやましいと思い、自分も生きている間に一度で良いから職務質問というサービスを受けてみたいと思った。


そこで、まず、職務質問というサービスを自主的に受けるにはどうすれば良いか調べてみた。Wikipedia の「職務質問」によると、「職務質問(しょくむしつもん)は、警察官が、不審な点のある者を呼び止めるなどして質問を行う活動」のことらしい。つまり、警察官の前で、不審な点のある者と認識されれば、職務質問サービスをしてもらえるかもしれない、ということだ。


しかし、東京などの都心と比較して、茨城県つくば市 (特に大学周辺) には、街を歩いたり自転車などに乗ったりしてパトロールしている警官はほとんどいない。そこで、警官が必ずいる場所はどこだろうか、と考えた。会社の建物から歩いて 5 分くらいのところにある「つくば駅前交番」(つくば駅の交差点にある) へ行けば警察官がいるに違いないと思い付いた。
ただし問題がある。たとえ「つくば駅前交番」の前で不審な行動をしたとしても、「つくば駅前交番」の所長とは知り合いなので、不審な行動と思われず、職務質問サービスを受けることが期待できなさそうである。そこで、所長が居ないと思われる深夜 (午前 3 時頃) につくば駅前交番へ行くことにした。



つくば駅前交番 (写真は「つくば市エリアガイドブログ」から引用。)


インターネットで調べたところ、警察官は、特に、半ズボンをはき、ジャージを着て、ポケットの中に何か色々入っているように見える人を、不審人物と判断する場合が多いらしい。できるだけ職務質問をしてもらいたかったので、試しに、半ズボンをはき、ジャージを着て、ポケットの中にそこら辺にあったコンピュータ用のメモリ (PC133 SDRAM 128MB など、不要なもの) を大量に詰めて膨らませ、午前 3 時ごろに、つくば駅前交番の前へ行った。夏の夜なので気温は温かい。このような時間はだれもつくば駅前の交差点を通らないから、人通りはほぼゼロである。


交番の中を見ると、警察官が 1 人座っていた。警察官は暇そうで、新聞か何か読んでいるようだ。そこで、交番の前の道路 (警察官に見える場所) で、交番の中に目線を向け、チラチラと警察官の目を見ながら、ポケットの中にある PC133 SDRAM 128MB を出したり入れたり、メモリの表面を眺めたりする行動をした。


ところが、交番の中の警察官はこちらに気がついて数秒間注視してきたが、しばらくしてまた机の上にある新聞か何かを読み始めた。数分してまたこちらを見てきたが、すぐに目線が新聞に戻ってしまう。どうやら、不審とみなされなかったようである。


そこで、ちょうど散歩をしたくなったので、ついでにより確実に職務質問サービスを受けることが期待できる場所まで散歩することにした。つくば駅前交番からさらに 5 分くらい南に歩き、「つくば中央警察署」の前まで行った。つくば中央警察署は、我々が免許の更新や国際免許の取得などの際によく行く警察署である。



つくば中央警察署 (茨城県の Web サイトより引用。)


つくば中央警察署の前の駐車場のところへ行き、そのあたりをぐるぐる回りながら散歩した (なお、警察署の敷地の中には入らずに、敷地の境界線の外側の歩道をぐるぐる回りながら散歩した)。やがて、警察署の中から警察官が 2 人出てきて、恐らく定期的なパトロールに出かけるために、駐車場に停めてあるパトカーに乗り込もうとした。その際に散歩している私に気がつき、「どうかされましたか?」と声を掛けてきた。私は「いえ、別に。」と言ったら、警察官は「そうですか。」と言い、パトカーに乗った。パトカーの中を見ていると、2 人の警察官がなにやら相談を初め、1 分くらいして、無線機で何かを (恐らく) 警察署の中の人に伝えた。そして、2 人はそのパトカーに乗ってどこかへ行ってしまった。


その後 5 分くらい警察署の前の歩道を散歩していたら、警察署の 3 階のこれまで真っ暗だった部屋に電灯が点き、しばらくして 7 人の警察官が正面玄関から走って出てきた。恐らく、先ほどのパトカーからの無線連絡を受けたのだろう。「警察署の前に不審な人がいる」というような無線に違いない。
7 人のうち 1 人は、「刺又(さすまた)」という犯人を捕らえる用具を持ってきた。



刺又(さすまた) (Wikipedia より引用。)


警察官が 7 人も走って出てきたのを見て、単なる職務質問サービスに必要な人数としては少し過剰な人数であり、申し訳ないという気分になったが、「これでようやく職務質問サービスを受けることができる」と喜んだ。


早速、走って近寄ってきた警察官のうち一番年配の 1 人が随分と怖い声で聞いていた。

警察官: 「こんな時間にここで何をしているのですか。」
自分: 「散歩ですよ。」
警察官: 「警察署の前で夜中に散歩をする人がいるわけないじゃないか。」
自分: 「警察署の前なら夜中でも不良が来ないから、散歩に向いていると思うのですが。」
警察官: 「あっ、そうか! 確かに!」
他の警察官: 「なるほど!」


そして 7 人くらい出てきた警官のうち 6 人はすぐに警察署の中に戻ってしまった。


刺又(さすまた)を持って出てきた一番若い警察官だけがまだ残っていた。まだ職務質問を受けるチャンスはある、と期待して、「その物騒な道具は何ですか?」と聞いたら、「はい、これは刺又と言いまして、怪しい奴を捕らえるための道具です。・・・ あっ、貴方が怪しいという意味ではないですよ!」と言われてしまった。
結局、職務質問サービスを受けることはできなかった。


いろいろ (こちらが) 質問すると、なんと、偶然にもその警察官の方は筑波大学の情報学類出身で (つまり自分の先輩)、しかも西川研究室 (データ駆動プロセッサというものを作っている)の出身であることがわかった。奇妙な偶然もあるものだ。



結局、未だにまともな職務質問サービスを受けることができずにいる。つくば付近の警察官の方で、まともな職務質問サービスを実施してもよいという方は、出向きますのでご連絡いただければ幸いです。