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2007-07-05

『孫子 勝つために何をすべきか』谷沢永一、渡部昇一


東郷平八郎は無謬の将軍ではない――谷沢


 これは日本海海戦のときですが、この「算」のために憂き目を見た将軍がいます。それは海戦に秘められた嘘から始まっている。日本海で日露両軍の艦隊が出会います。バルチック艦隊の旗艦スワロフには司令長官のロジェツトウェンスキーが乗っている。その舵のところに日本の連合艦隊の砲弾が命中して、スワロフは迷動します。

 ところが海戦のしいところは、味方の被害はよく分かるのですが、敵の被害が分からない。それで連合艦隊司令長官の東郷平八郎は、〈これはスワロフが日本の第一艦隊をすりぬけて、ウラジオストックへ行こうとしているのだ〉と判断し、「左へ回れ」と命令を下す。

 ところが、第二艦隊の参謀長藤井較一が東郷の判断を無視して、「違う! 方向転換ではなく、あれは迷走しているのだ」と叫び、第二艦隊司令長官上村彦之丞に「わが艦隊は直行すべきです」と訴えます。上村は「分かった」と答えて、そのまま真っ直ぐスワロフへ突っ込んでいく。

 これは大変なことです。間違っていれば、軍法会議です。

 第一艦隊は北へ向かって大きく迂回している。軍艦はいったん方向を転換すれば、すぐにそれを修正することはできません。結局スワロフは沈没し、連合艦隊は大勝利をおさめます。

 したがってこの海戦の死命を決したのは、藤井較一と上村彦之丞ということになります。ところがこの二人は、顕彰されません。

 二人を顕彰すれば、東郷が間違っていたことを天下に広めることになります。だから藤井は中将どまり、上村は大将どまりで、功績を消されてしまうわけです。こうして、無謬(むびゅう)の将軍としての東郷のが残ることになるわけです。

 日露戦争では同じようなことが、他にもあります。旅順の二百三高地で多くの兵士の無駄な血を流した第三軍の司令官は乃木希典、その参謀長は伊地知幸介で、この二人は乃木が伯爵、伊地知は男爵になります。

 ところが、伊地知の無能のために殺した兵士の数は無数です。日本陸軍としては、聖将乃木を讃えるために、乃木は間違わなかったことにしなければならない。そこで間違いに間違いを重ねた乃木に伯爵を与え、無能以上の罪悪だと司馬遼太郎が言うほどの伊地知に男爵を与えています。つまり、まっとうな論功行賞は、すでに日本では行われなくなっていたのです。


 バルチック艦隊の話は創価班でも幾度となく教わったが、舞台裏でこんなことがあったとは知らなかった。時に闘争の目的のためには、上官の命令を無視することもやむなし。逆らうことが真の忠義という場合もあろう。闘争の的を外すな。学会組織が政治で動くようになれば最早、和合僧に非ず。速やかに避せよ。


いまの不況を招いたもの――谷沢


 総量規制とは、平成2年327日に、ときの大蔵省銀行局長だった土田正顕が発した「土地関連融資の抑制について」と題する通達のことで、日本経済を不況のどん底に陥れたのがこれなんです。

当時、私があるところで講演したあと、銀行の頭取と雑談していて「ねえ頭取、大蔵省の通達ちゅうのがありますな。あれを無視したらどうなりますか? あれは法律ではないんですから」と聞いたとき、その答えは「そんな恐いことを。震えがきます」というものでした。

 通達は法律ではないわけですから、黙殺できると高をくくるのは素人考えであって、それを無視した場合に受けるいやがらせたるや、像するだけで全身に震えがくるほどの、絶大な報復であるというのです。

 この通達は、不動産者ならびに不動産関連者には、平成2年41日から有志をすること罷りならぬと読み取れるような内容で、あらゆる銀行が横並びになって戦(おのの)きながら拳々服膺(けんけんふくよう)したわけです。

 つまり不動産向け融資の増額は、総貸し出しの伸び率以下に抑えなければならないということですから、銀行がお金を出さないということで、当然ながら地価は下落へ向かう。

 総量規制は平成4年1から廃止されましたが、この間に、日本の土地の担保価格が3割減ったと言われています。そういうことをやったのが総量規制であるわけで、これはもう土田正顕が日本の不況をつくった元凶だ。そう私はっています。


 これが官僚による統治の仕方。真綿にくるまれた暴力だ。その本質は村八分である。やり方が、やくざ者と変わりがない。弱い者を徹底して痛めつけるのだ。権力による巧妙なコントロール。銀行はバブル期にあって、「1億円でも、2億円でも借りて下さいよ」と手をすり合わせて頼み込み、総量規制が発動するや否や、貸し渋り・貸しはがしに狂奔した。銀行は、官僚に額(ぬか)づく犬に過ぎない。バブルが弾けると、暴力団から金を取り立てることができない銀行のために、数千億円もの税金が投入され、預金者は雀の涙にもならぬ低金利で我慢させられ、挙げ句の果てにはATMを使用するたびに手数料を取られる羽目となった。そして銀行は合併を繰り返し、今頃になって利益を出して涼しい顔をしているのだ。銀行という銀行は、社会保険庁並みのダニといってよい。


生かさなければならない財閥の情報網――渡部


 先ほど、私は笹川さんの例を挙げましたが、もうひとつの例を挙げれば、フジ・サンケイグループの鹿内さんです。谷沢さんと一緒に箱根の彫刻の森美術館へ行ったことがありますが、外国人はあの美術館を見て、みんな激する。あれほど雄大な構の美術館をつくったのは、世界で日本が最初です。その美術館の真ん中に、迎賓館がある。

 これは実質上は鹿内家のものでした。鹿内さんはロックフェラーでもだれでも、ここにお客さんを招く。そうすると、ロックフェラーは鹿内さんを同格の人間だとじる。これだけの美術品をパークに並べて、中に住んでいるヤツということになります。

 鹿内さんは私に言ったことがありました。「美術館を持っているということは、大したことです」。世界中どこへ行っても、すべて「開け、ゴマ」なのだそうです。「ロックフェラーの本宅へ行った日本人はあまりいないとうけど、私は呼ばれる」。本当に、周囲に何もないところに、一族が固まって住んでいるんだそうです。そこには美術館からなにから、すべて揃っている。そういうところに、日本人は普通呼ばれない。ロックフェラーは同格の人間しか呼ばないのです。

 そのレベルの交際がないと、情報戦に負けます。


 美術館が持つ力は私の予をはるかに超えているようだ。「文をもって化する」力は、やはり武力に勝るのだ。

孫子・勝つために何をすべきか (PHP文庫)

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